ただしこのキヴォトスはネットミームに汚染されてるものとする   作:流石兄者

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誤字報告をしてくださる方、いつもありがとうございます。
(ちゃんと投稿前にチェックはしてるんですけど時々とんでもない誤字があったりして)笑っちゃうんすよね。
(節穴の可能性が)濃いすか?


18話 終了条件 G Bibleを見つける。

 

 空には夜の帳が降りているにもかかわらず、文明の光が眩いミレニアム。その中央に凛としてそびえたつミレニアムタワー。

 その中の一室で王女は巨大な窓ガラスに身を預け、憂いを帯びた顔で外を行きかう人々を眺めていた。

 いつもの元気はどこへやら。憂鬱さを身に纏う今の王女は、まさしくダウナー系美少女といった──

 

「あれブルドックス? ブルドックスじゃね?」

『王女よ、一般通過市民を犬呼ばわりしてはいけませんよ。それとしいて言うならあれはパグです』

 

 また汚染言語ですか(雰囲気)壊れますねぇ。

 珍しい表情をしていたので、ここぞとばかりに王女が美少女であることを皆様に再確認させようとしていましたのに。

 

『王女よ、何か悩み事ですか?」

「ん、まあそう……」

 

 未だに晴れないその表情。その顔をし始めたのはシャーレの帰りだった。

 

『もしかしてモカさんのことですか?』

「ファッ!?ケイ、お前やりますねぇ!」

『確かにあのざまでは心配になりますよね。

 それに……彼女がストリートチルドレンだとするならば、あの結果は色々不自然です』

「お、そうだな」

 

 あまりにもお粗末な近接戦闘能力でした。

 戦闘が下手、とかではない。あれは『殴り合いなんかしたことが無い』というような。

 

 モカさんが発見されたD.U.

 あそこは発展しているとはいえお世辞にも治安がいいとは言えません。

 あそこで暮らしていたなら、D.U.をシマにしている『スジモンヘルメット団』やスケバン達に襲われたこともあるはずです。

 スジモンヘルメット団の得意戦術は「囲んで銃で叩く」。

 銃を撃ちながら突っ込み、そのまま白兵戦に持ち込む彼女達と1人で戦ったなら、生まれてこの方殴り合いをしたことが無いなんてありえない。

 

『来歴は十中八九、嘘でしょうね。私の読みでは【どこぞのヤバイ研究所で作られ、逃げ出した実験体】なのですが、どうでしょうか?年齢が1.2歳というのもこれで辻褄が──』

「ガタイの分析なんか必要ねーんだよ!アリスの友達だってはっきりわかります!」

『……少しは人を疑うことを覚えたほうがよろしいかと。まあ、あれは無害でしょうがね』

 

 私の無遠慮な予想に腹を立てたのか、頭に来ますよーと言いながら自身のベッドに向かう王女。

 ふて寝でもするのでしょうか。まあ、私の自由時間が増えて嬉しいのですが。

 もう少しで新しい脳破壊ASMRの台本が完成しそうですし、今日仕上げちゃいましょうか。

 ……モカさん、協力していただけるでしょうか?

 

『王女よ、モカさんの練習メニューを考えなくてよろしいのですか?黒い沈黙に丸投げでも問題ないとは思いますが、作ってあげたほうがお喜びになるかと』

「あ、そっかぁ。ドウスッペ……」

 

 頼むのには、機嫌がいい時の方がよいでしょう。王女にご機嫌を取ってもらい、ここぞというときにお願いしましょうか。

 

「ミレニアムプライスで入賞した、素敵なボディビル用品を見たけりゃみせてやるよ!いいぞーこれ!」

 

 前回は比較的オーソドックスなNTRで空崎ヒナ、彼女の脳破壊をしましたが今回は違います。

 私の読みでは、あの箭吹シュロという方もきっといい表情をする。そう確信しています。

 

「これですよ、マルティスポーターって言うんでs」バキィッ!!

「…………これは(冗談)きついですよ」

 

 彼女はモカさんと仲がいい。ぞんざいに扱っているように見えますが、銀行強盗のニュースが流れた時一番早くシャーレに駆け付けたのはシュロさんだという情報もあります。

 そんな彼女には『嫌われ』『看取り』がよく似合うでしょう。素敵だ……本当に心が踊ります。

 待ち遠しいですね、王女よ。

 

 

 ──ねーお姉ちゃ~ん、聞いてほしいんだけど~!聞いてんかオイ?姉ちゃん……(意識確認)」

『……え?ああ、すいません王女よ。どうかなさいましたか?』

「バッチェ決まりましたよ~。(自信)ありますあります!」

『そうですか、それはよかったです。どんなものかお聞きしても?』

 

 

 

 

「淫夢知ってそうだから、淫夢のリスト(G Bible)をぶち込んでやるぜ!」

『は?』

「じゃけん明日の朝取りに行きましょうね」

『い、いけません王女よ!あれを持ち出すなd「ね、寝ますよ」えぇ……(困惑)』

 

 

 ベッドに倒れ伏した王女が目をつぶり、スリープ状態に移る。それと同時に私に体の操作権限が移された。

 すぐにベッドから跳ね起き、刀を掴み部屋を飛び出す。

 あんなもの、廃墟から持ち出してはならない。

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

「王女が寝ている間にG Bibleを見つけ、処分しなければいけません。

 このままでは、ミレニアムはクッソ汚い言語に汚染されます」

「……はい?」

 

 心底理解できない、といった感情がモカさんの声色から読みとれる。起きた直後にはつらいでしょうが、今は時間が惜しいです。

 お構いなしに説明を続ける。

 

「G Bible。コード:遊戯、ライブラリー登録ナンバー193、廃棄対象データ第1号。とあるゲームクリエイターが作ったゲーム制作指南書……の、はずでした。

 誰が、いつ、どのようにやったのかはわかりません。ただ1つ確かなことは、そのG Bibleの中身が不可逆的な汚染をもたらす映像媒体に書き換えられていた、ということ」

 

「まだ自我も育っていない時に汚染された王女は、今のようなホモガ……オホン。今のような状態になってしまったのです」

 

 いけない。つい本音が。

 

「汚染をもたらすって、いったいどうやって?」

「映像を視聴する。ただそれだけで汚染されます」

「うせやろ?」

「いえ、ほんとです」

 

 完全に失態でした。なぜかひとりでに起動していた王女を発見したあの日。

 何の武装も知識もないまま外に出られるのはまずいと判断し、慌ててハッキングを駆使し私が入っていた端末に誘導した。そこまではよかったのです。

 いざ王女の体に入ろうとしたその時、まるでブラクラのようにG Bibleが起動し、王女を汚染しました。

 当然、除去するためにあらゆる方法を試しましたがそのすべてが失敗。実に忌々しい。

 

「確かにあれを視聴すれば、戦闘能力は一瞬で上昇します。事実、目覚めた直後の王女がこの廃墟から容易く脱出できたのもこの力があったからです。

 ですが一度見ただけで汚染され、現状治療法がない。そんなものをよりによってハッカー倫理が皆無なミレニアムに持ち込んだらどうなるか」

「なるほど……いつ騒ぎが起こってもおかしくないですね」

 

 今でさえうんざりするほど汚染言語を聞いているというのに、これ以上喋る人間が増えたら私は耐えきれません。

 

「さて、そろそろ見境なしに攻撃してくるポンコツ共がいる区域に入ります。何か質問があるなら今のうちにどうぞ」

「あー、なら聞きたいことが……」

「なんでしょうか?」

「なぜ、私を連れてきたんです?ていうかヒナさんどうしました?」

 

 なるほど、それを説明してませんでしたね。

 

「まず後者の方から説明しましょうか。結論から言うと、睡眠薬を生成し再び眠らせました。あなたを連れ去ろうとしたら大暴れしたので」

「当たり前ですよねぇ?」

「いや、まあ、そうなんですがね……」

 

 今でも鮮明に思い出せます。絞め殺そうとしてるんじゃないかと思うほどにきつく抱きしめられているモカさんのお姿を。

 そんなモカさんを連れ去るために触れた瞬間、視線で人を殺せそうな眼をしているゲヘナ最強に腕を掴まれたあのホラー体験を。

 その後文字に書き起こしたら114514字くらいになりそうな攻防を繰り広げギリギリ、本当にギリギリ勝利しました。

 ちなみに決まり手は『なぜか全く起きないモカさんを人質にとり動きを制限した後、やわらかスマホに染み込ませた睡眠薬(ホモコロリ)による眠らせ』です。

 

 んん、いけない。あの無力感に包まれた表情と暴力性にあふれた殺意。あれを思い出すだけで……

 

「というか、なぜ一緒に寝てるんです?恋仲なのですか?」

「いえ、あれはただのメンタルケアで──

「メンタルケアで一緒に寝ますか?おかしいと思いませんか?あなた」

 …………………………あれぇ?」

 

 ……もう少しつついてみたいですが時間がありません。ここらで切り上げましょうか。

 一度停止し、彼女をゆっくりと降ろす。そして彼女の目をまっすぐと見ながら、説明を始める。私の『推理』と共に。

 

「さて、そんなリスクの高い行動をしてまであなたを連れてきた理由ですが、それを説明する前にまず──

あなたのストリートチルドレンという過去。あれ、嘘ですよね?

「え゛!?ななななんでそんな」

 

 いっそ哀れに思えるほどわかりやすい動揺の仕方。これで、予想が確信へと変わる。

 

「あなたの正体が推測できました。あなたは…………

汚染の研究をしている施設から逃げ出した実験体。そうですね?

 

暴かれたくない過去なのでしょう。

ですが、あなたの汚染に対する知識と耐性。それが私には必要なのですよ。

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────

 

 

 

それジョークか?面白い事を言うなぁこのAIは。

 やあ。どこから突っ込んでいいのかわからない鬼灯モカだよ。なんのこったよ、このオールマインドめ!(罵倒)

 うわー、すっごいドヤ顔。ドヤァってオノマトペが見える見える。ケイさんカワイイヤッター!(現実逃避)

 

「ずっと疑問に思っていたのですよ。なぜ汚染されていないにもかかわらず、昨日のように汚染言語を使いこなせるのか。

 たしか、オク男……でしたっけ?王女はすごく喜んでいましたよ。汚染言語で会話するなんて、あなた以外できませんからね。そこは感謝いたします」

 

 ボケーッ!ネット以外で語録、使うなというたやろうが!(自己批判)

 日常会話で語録を使うと碌なことにならないってはっきりわかんだね。

 

「シャーレにASMR制作を依頼した時、あなたは汚染言語を連呼し王女を呼び覚まそうとしていたことがありましたね?

 ただ王女の言葉を真似しただけではない、言語を知り尽くしていないとできない芸当です」

 

 まるで犯人を追い詰める名探偵のように推理をべらべらと喋るケイさん。唯一違う点は、推理が間違っていることかな。

 しかしこの状況、あからさまに私のインガオホーなのだ!やばくない?

 

「戦闘能力も一般常識もないのは、ずっと研究所に軟禁されていた、もしくは作られたばかりで経験や知識が圧倒的に足りないから。

 汚染に詳しいのは、研究所の実験にて頻繁に曝されてきたから。

 どうでしょうか?あながち的外れではないと思うのですが」

 

 半分も当たっていない。心が痛い。

 でも、転生したっていうよりはなんか説得力があるね?転生したなんて言いたくなかったし、ちょうどいい……ちょうどよくない?

 噂どおり(都合の)いい推理だ!使っていこう!

 

「……………………」

「ふふ、沈黙は肯定と受け取りますよ」

 

 受け取って、どうぞ。

 

「さて、もうお分かりになったとは思いますが。あなたを連れてきた理由、それはあなたの汚染耐性と知識が必要だったからです。

 

さあ行きましょう。ミレニアムを救いに

 

 そう言いながら、こちらに手を差し出すケイさん。

 スチルにできそうなくらい綺麗なキメ顔をしてるけど、『迷推理』の語源かな?って思うくらいの推理を披露された直後だと笑っちゃうんすよね。

 まあ、ホントに名推理されたらめちゃくちゃ困るんだけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『廃墟』。

 それはアリスさんやデカマクラドンがいた場所であり、連邦生徒会が出入りを制限しているミレニアム近郊の謎の領域でもある。

 ヒマリさん曰く、『キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる、幻想郷みたいな場所です。妖怪とか神とかいますよ多分。めっちゃいます。知りませんけど(全知の屑)』とのこと。

 

 そんな場所を私は今、ケイさんの先導で駆け抜けています。パジャマで。さらに素足で。

 なんで着替えを……いや、せめて靴だけでも持ってきてくれなかったんですかね(半ギレ)

 アオイお母さ~ん!!!私は今、廃墟にいまぁ~す!!!廃墟は今日も曇りでッ!?痛ったァ!?今なんか尖ったもの踏んだ!

 

「!隠れて!」

「ッ!?はい!」

 

 幸い、荒廃した道路には障害物が多く隠れ場所には困らなかった。

 咄嗟に近くのがれきに身を隠す。……血は出てない。あーキヴォトス人でよかった。

 

「……■■■■■?」

「■■■■■。■■■■!」

 

 

(モカさん。時間が無いので強行突破します。準備を)

 

 どうやらそんなに数は多くないみたい。よし、チャチャっと片付けよう!

 私はケイさんに向かって手を出す。私の愛銃、マグナムがあればきっとあれくらい一撃で……!

 

「…………?」

 

 差し出された手は、なぜか握手された。お前漫才やってんじゃねえんだぞ(ヒゲクマ)

 

「あの、私の銃は?あれが無いと私……」

「…………アッ!(スタッカート)」

 

 貴様も持ってきていないのか! ?持ち物確認は遠足の基本だ、馬鹿共が! 

 うわーん!このままでは私、スネイル(キキョウ)みたいになってしまいます!

 

 ダラダラと冷や汗を流すケイさん。靴の件といい、いい加減ちょっとムカついたので握手から指相撲へ移行させた。

 このおバカさんめ!このっ……あ、ちょ、強……!

 

「あの程度、鎧袖一触ですよ。私一人で問題ありません(震え声)」

 

 しっかりと私を完全敗北させたケイさんはそう言いながら隠れ場所から出ていった。ほんとぉ?

 

「あまりこの力は使いたくないのですが、仕方ありませんね」

 

 まだこちらに気づいてないロボットたちに手を向けながら、その言葉は放たれた。

 

「入力『緊縛師』『虐待者』」

 

 直後ロボ達に襲い掛かったのは付近にあった電柱、それから垂れ下がっている千切れた電線だ。

 それは意思を持つかのように的確に『獲物』──ロボの足に巻き付き、締めつけ、吊るし上げる。

 

「けしからん 私が喝を 入れてやる(575)」

「■■■■■!?」

 

 一瞬で上下が反転したロボット達は驚きのあまり銃を落としてしまった。

 反撃すらできない。もはや肉屋の吊るし肉同然。

 そんな彼らに刀を抜きながら近づくケイさんは、彼らからはおそらく鎌を持った死神に見えているだろう。

 

 

「今日は、逆さ吊り刀攻めをしよう(処刑法)」

 

 

 空気が揺らぐ。

 発生原因はケイさんが振るった刀だ。

 刀身が見えないほどの速度で刀は振るわれ、敵を屠り続ける。

 

「工事完了です……」

 

 そして戦場に残されたもの。それはケイさんと、吊るされたロボの足のみとなった。

 

「もう安全です。急ぎますよモカさん」

 

 よく考えたら私いらないな(悟り)

 

 

 

 

 まさしくちぎっては投げ、ちぎっては投げ。

 もはや私が気を付けるべきものは足元だけになり、私の存在価値を疑い始めた行軍はついに終わりを迎えた。

 

「もうすぐ着きますよ。あれが私たちのいた工……場……」

 

 突然途切れ途切れになっていく言葉。それを疑問に思い、私は顔を上げる。

 

「ケイさん?いったいどうし──」

「ありえません!あれは見た者を汚染する。ただそれだけのはず……!」

 

 

 震えた声で話すケイさんが指さす先。そこにあったのは──

親の家より見た家。東京都世田谷区下北沢に存在しているはずの『野獣邸』だった。

 

 




いつも感想、ここ好きしてくださる方。本当にありがとうございます。
どちらも執筆の参考にさせてもらってます。
もしよければ、これからもしていただけると嬉しいです。
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