ある日のトレセン学園の昼下がり………。
チーム『プロキオン』のトレーナーである俺は学園にある自身が担当するウマ娘の代わりに畑の雑草抜きと水やりを鼻歌混じりに行っていた。
「どどど、どうすんの。どーすんの?」
「おい」
「え?」
不意に声を掛けられて振り向くと、そこに居たのは学園で知らない者はいない程の有名人であり問題児。暴君と名高い黄金の輝きを放つウマ娘、オルフェーヴルが俺を呆れたように見つめていた。
「珍しいな。君がここに来るなんて」
「貴様、今が何時か分かっているのか?」
「何時って………」
オルフェーブルの問いに俺は一瞬時間を確認する現在午後の一時半。そろそろ昼休みも終わる頃だろう。
「……………あ」
そう言えば、だ。今日はオルフェーヴルととある約束をしていた。
俺は嫌な汗をダラダラと流しながら絶対に怒っているであろうオルフェーヴルにどうやって謝ろうかと頭をフル回転させる。
「余の命より土いじりの方が大事だったか?」
「い、いや。別にそう言う訳じゃあない。ただ………その………」
「どうした?余も暇ではない。疾く答えよ」
「最近忙しくて普通に忘れてました。すいません」
しばらくの静寂。遠くから「ハーハッハッハ!!!」と言う高笑いも聞こえてくるがそれが気にならないくらいオルフェーヴルの圧が強い。
だが、本当にしばらくするとオルフェーヴルは呆れたように息を吐いて口を開く。
「よい。許す。だが、忘れるなよ。貴様は余の物だ。他の者に靡く事は許さん」
「……………いや、俺トレーナーだからね。生徒に靡くとかはないよ。皆大切な担当ウマ娘だし」
水やりもそこそこにホースを片付けて雑草が溜まったゴミ袋を片手に更に俺はそう告げる。
今まで何人ものウマ娘を担当して来たが皆一癖も二癖もあるようなウマ娘ばかりだ。
あるウマ娘には身体を発光させられ、またあるウマ娘には吸血鬼退治と名打って日本からエジプトへの旅について行かされた。
「……………チームの民草ならまだ許容しよう。だが、桐生院。アイツはダメだ。事あるごとに貴様に擦り寄ってくる」
「同期としてトレーニングの話に花を咲かせてるだけだろ」
雑草を集めた袋をゴミ捨て場に置き俺は訳の分からない主張をするオルフェーヴルに眉を顰める。
ハッピーミークと言うウマ娘の担当トレーナーであり、俺の同期である桐生院葵。勉強熱心な人で俺からしても好印象な人だ。
「咲かせるなそんな花。咲かせたいなら余と咲かせろ」
「んな、無茶苦茶な………。あ、じゃあ樫本さんは」
樫本理子トレーナー。理事長の出張中にURAから派遣された理事長代入りで学園の運営方針を巡ってアオハル杯を彼女がトレーナーを務めるチーム『ファースト』と俺がトレーナーを務めるチーム『にんじんぷりん』で争った事もある。
だが今では問題も解決して樫本さんは先輩トレーナーとして俺の悩みなど聞いてくれる。
「何を持って良しとした。ヒトミミにかまうなら余にかまえ」
「いやいや、ほぼ毎日顔つき合わせてんじゃん。トレーナーの付き合いくらい許してくれよ」
「……………トレーナーとしての付き合いと言うのなら理解も示そう。ヒトミミとは言え佐岳も許す。が、トレーナーでは無いライトハローと未だに関わりを持っているのはどう言う事だ?」
ライトハローさんはグランドライブの件で出会ったトレセン学園のOBの人で多分俺の知り合いの中で一番一緒に飲みに行っているような気もする。
「あの人に関しては………何も言い訳しようないな。まぁ、友達的な関係だよ」
「友?酒を自宅で飲み交わしその前寝落ちし一夜を明かす関係が友と言うのか?」
「だ、大学だったら普通だったし………」
「既に二人とも社会人であろう」
「はい。すいません」
結局、何も言い返せずに俺はオルフェーヴルに頭を下げて予鈴が鳴り響く畑をオルフェーヴルと後にするのだった。