「久しぶりじゃのう、エーヴィヒよ」
「………やっぱり、
南の勇者対シュラハト率いる七崩賢の戦い。
その舞台で一番最初に現れた敵は
「魔王に生き返らせてもらったのか?」
「さよう。南の勇者を討ち取るために魔王様より、生き返らせてもらったのじゃ」
「その割には人間じゃないな?」
「戦いに来るのに、わざわざ弱い体にする必要もないのう」
見慣れた魔族の姿で出て来たクヴァールに探りを入れてみるが、魔王の判断かどうかは分からない。
ただ、人間の身体でない使い慣れた魔族の肉体なので、弱体化は期待できない。
……いや、そうでもないか。
「あら、クヴァール。しばらく見ないうちに魔力量が落ちたわね? 流石にもう年かしら」
「言ってくれるのう、ソリテール。お主もすぐに同じようになるというのに」
「残念。私の死に方はもう決めてあるの。今じゃないわ」
正確に言えば、肉体は死ぬので肉体に宿る魔力は帰って来ない。
魔力は筋肉のようなものだ。大人と子供なら大人の方が基本は多いし、逆に加齢を重ねていくと減って行く。
もちろん、老人になっても鍛えていれば維持できるが、やはり肉体が若い方が有利だ。
そして、一度死んで新しい体になるということは、筋トレの成果が0になるということでもある。
長命種は老いによるデバフは少ないが逆に、生まれ変わりの影響は大きくなる。
「これなら俺だけでもなんとなるか……南の勇者、この未来は知っていたのか?」
「ああ、そのために君を旅に連れ出したのだ」
「そういうことは先に言って欲しかったんだが……」
「君は追い込まれないと
「……期待には応えるよ」
敵に転移ゾルトラークを撃ってくるクヴァールも加わると、流石の南の勇者もきついらしい。
だから、俺達が相手をする。
これで南の勇者の相手は原作通り、シュラハトと全七崩賢だけに抑えられる。
……やっぱり、敵戦力がおかしいだろ。
なんで、クヴァールと戦うのが余裕に思えて来るんだ?
「出来るだけ、粘っていてくれ。クヴァールを倒して、すぐにフォローに向かう」
「ああ、私が敵を
自分が死ぬ未来が、すぐ目の前にあるというのに南の勇者の足取りは軽い。
まるで、自分の死の未来など見てもいないように。
やはり、彼は本物の勇者だ。例え、世界を救うのが彼でなかったとしても。
「舐められたものじゃのう。魔力が少なくなったとはいえ、儂のゾルトラークは健在じゃぞ?」
「そう言うな。俺達は
「まあ、友達の少ない旦那様が何か言っているわ」
ソリテールの煽りを無視して、俺はクヴァールに向き直る。
クヴァールは一度死んだ存在だ。
そして、この世に俺以上に死を共感できる存在は居ない。
「
クヴァールの言うとおりに、イメージを共有したところであらかじめ分かっていれば隙にならない。所詮はイメージだ。空想が空想である所以は、イメージするだけでは何も起こらないということに他ならない。
「クヴァール、面白いことを教えてやろう。
なんてことはない。
「お前も良く知るように、死とは生命がもっとも忌避する概念だ」
俺とクヴァールのイメージを共有する。
「クヴァール、お前は今まで
「……お主らにやられた1回だけじゃのう」
共有するイメージは自分が死ぬ瞬間のイメージ。
凡そ、全ての命が一度しか経験しないで済む瞬間。
「そうか。因みに俺は―――10万8千6百39回程死んでいる」
友達なんだ。相手のイメージをこちらが共有するだけじゃない。
自分の抱くイメージを相手に教えることもある。
そして、相手も同じ経験をすれば友人の仲はもっと深まる。
「まさか……お主!」
「想像してみてくれ。自分の脳裏を埋め尽くす、ありとあらゆる死。斬殺、撲殺、絞殺、刺殺、殴殺、毒殺、薬殺、扼殺、轢殺、爆殺、圧殺、焼殺、抉殺、溺殺、射殺。他にももっとあるかもなぁ。何はともあれ、人類と魔族が思いつく死に方は全て網羅している自信がある」
やることは簡単。
俺の今までの
もっとも今の俺に死ぬことは出来ないので、クヴァールもイメージで死ぬことはないだろう。
「させんぞ!
『―――
共有するのは、転生前に初めて死んだ瞬間から、最後に魔王に殺されるまでの全ての死。
死に慣れている俺には何てことはないありふれた日常の記憶。
だが、一度しか死んだことのないクヴァールには。
まだ、死生観が壊れていない存在には
「どうだ、俺の死のイメージは? ……て、もう聞こえちゃいないか」
「むごいわね、流石に同情するわ」
クヴァールはピクリとも動かない。
腕をダラリと下げ膝をつく姿は、一見すれば死んでいるようにも見える。
だが、魔力の塵になっていない以上は、クヴァールの肉体と魂は生きている。
ただ、心が死んだと思い込んでいるだけだ。
「ねえ、旦那様。さっきの死んだ回数って本当に数えてるの?」
「さっきは10万8千6百39回なんて言ったが、実際には何回死んだかなんて一々覚えちゃいない。本来覚えておく必要もないことだ。実際、お前を捕まえる時だって、100回自爆した後はカウントしていないからなぁ」
動かなくなったクヴァールに封印魔法を施しながらソリテールと話す。
魔法はイメージが大切なので、具体的な数を先に宣言したが実際にはもっと多いだろう。
自爆魔法を取得してからは、正直数えるのを忘れることの方が多かったぐらいだ。
「やっぱり、旦那様に友達は出来そうにないわね」
「今の話のどこに、そんな内容があった」
「あら、分からない? だって」
俺の心の弱い所を抉ってくるソリテールに唇を尖らせるが、ソリテールは余計に楽しそうに嗤うだけだ。まるで、俺が苦しむ姿が三度の飯よりも好きだと言うように。
「自分が何度死んだか分からないなんて、この世の誰も共感出来るわけがないでしょ」
生きてる人も、死んでる人も含めてね。
そう言ってソリテールはクスクスと笑う。
「
「……南の勇者の援護をしに行くぞ。無駄話は終わりだ」
孤独ね。
どこか、自分にも言い聞かせるようなソリテールの言葉を無視して、南の勇者の下に向かう。
間に合うといいんだが。
人類最強。
その言葉の意味を今まで俺は、真に理解できていなかったらしい。
「ちょっとシュラハト、こんな状況になるなんて聞いてないじゃない」
「悪いが、相手も未来視が出来る以上、見通す未来にも限度はある。許せ、アウラ」
魔王の腹心シュラハトと7人の七崩賢。
それが南の勇者の相手だったのだが、既に七崩賢は4人にまで減っていた。
そして、それを為した南の勇者の肉体と言えば。
「ようやく来たかね。このままでは私1人で全滅させてしまうと、冷や冷やしていたよ」
「すまない。どうやら、遅れたみたいだな……」
全くの無傷であった。
「増援か……シュラハト、少し手を貸してやろうか?」
「まさか、お前から手伝いを申し出て来るとはな。私の目でも見通せなかったぞ、マハト」
何をしたのか、何を使ったのかは分からないが、南の勇者は七崩賢を3人消していた。
シュラハトとの裏取引かとも思うが、それにしては他の七崩賢はシュラハトに疑念を抱いていない。
つまり、南の勇者は真っ当に戦ったということだ。
「これは私達も連携を取った方がいいかもしれませんね。個々で戦っていては、彼らの二の舞になりかねません」
「シュラハト。奴の魔法は……
奇跡のグラオザームが、不死なるベーゼが、ただ1人の人間に警戒を寄せる。
いや、あの2人の目は人間を見る目ではない。
間違いなくあの目は――
「南の勇者に魔法を使わせる隙を与えるな。私達の敵は―――1000年後の魔法そのものだ」
―――化け物を見る目だ。
「私が南の勇者の動きを抑える。お前達はその隙を狙え」
「まったく、初めからそうしてなさいよ」
「アウラ、お前は他人のために自分の命を投げ捨てられるのか?」
「
シュラハトが南の勇者と向かい合う。
未来視同士の戦いは先手の取り合いだ。
相手の次の手を先読みし、潰し合う。
故に発動に1アクション以上かける必要のある魔法は使えない。
「ふむ、やはりこうなるか。そうなると武器で戦い慣れている私の方が有利だね」
「そう思うか? 私は魔族だ。戦闘においても最初から
「なるほど……そちらも私と同じ結論に至ったわけか」
南の勇者が双剣を構える。
そして、シュラハトも鏡合わせのように双剣を取り出す。
どちらも同じ能力。同じ戦闘スタイル。
「未来が見えるのなら」
「無駄な小細工は必要ない」
「「ただ――」」
ならば、最後に勝負を決めるのは。
「「―――相手より先に命を断てばいい」」
殴り合いだ。
剣撃が鳴り響く。
全く同じ軌道、同じ速度、同じ威力で刃がぶつかり合う。
そこに遊びなど存在しない。
ただ、最適解だけが選び続けられる。
相手を最も効率よく殺すための。
「とんでもない戦いだなぁ……ここはあの2人に任せて俺達は帰らないか?」
「エーヴィヒ。魔王様がおっしゃっていた、死者蘇生の魔法の生みの親ですか」
「そうなるな。つまりだ、俺を殺した所でお前達には何の意味もないということだ。ここはお互い無駄な争いは避けよう」
「これが魔王様の命でなければ、私も同じ考えでしたよ。ですが、私も命は惜しい」
グラオザームがその手に魔力を込める。
同時に他の七崩賢も戦闘の構えを取る。
訂正、マハトだけはどこまでも自然に突っ立っているだけだ。
まあ、それでも容赦なく黄金化の魔法が使えるのだから、恐ろしいのだが。
「安心してください。私達は誰一人として直接人を殺す魔法は持っていません」
「奇遇だなぁ。俺も魔族を直接殺す魔法は今は使えないんだ」
俺の原作知識で分かる魔法は4つだ。
グラオザームの
アウラの
マハトの
そして、不死なるベーゼの結界魔法。
「貴方はただ永遠に続く幸せの中で、眠り続けるのです」
「なら体は私の軍勢に加えてあげる。魔力量はそこまででもないしね」
「くだらん」
「同感だな。私の魔法を使うまでもない」
魔族の1つの魔法しか使わない特性を考えれば、他の魔法は使われない。
マハトだけが特例だが、彼に魔法を教えるソリテールはこちら側にいる。
ならば、4つの魔法を、
『
『
喜べ、お前達の魔法は人類では到底たどり着けない
『
―――女神のお墨付きだ。
「はぁ!? 私の魔法がはじき返された!?」
だが、グラオザームの方は。
「…………」
「グラオザーム、魔族のお前が願う幸福っていうのが何なのか、是非とも教えて欲しいものだな」
自らの
「もっとも、ゆっくりと話す時間はなさそうだが」
グラオザーム本人の夢。
そこに興味はあるが、今は封印による無力化の方が先だ。
俺はグラオザームを封印するために、一歩踏み出す。
だが。
「役立たずめ。しばらく私の結界の中で眠っていろ」
「不死なるベーゼ……まさか、魔族が自分の魔法を仲間を守るために使うとはな」
「貴様は魔法を跳ね返す妙な魔法を使う。ならば、貴様に直接当てるよりもあの役立たずを囲った方が安全だと考えたまでだ」
ベーゼの結界魔法がグラオザームを覆うことで、近づけなくなる。
なるほど、こういった使い方もあるんだなぁ。
絶対に破れない結界を盾にするとは考えたものだ。
「で、どうする? このままその妙な魔法の餌食に……いや、自分の魔法の
うっすらと笑いながらハッタリを飛ばす。
だが、今ならば得体の知らない魔法として七崩賢を警戒させられる。
こいつらは自分の魔法に絶対の自信を持っている。
だからこそ、それが跳ね返ってくるという恐ろしさが分かるはずだ。
「こんなことなら、私の軍勢を連れて来るべきだったわね。魔王様の命令で無駄に減らしたくないと思ったのが悪かったのかしら」
「マハト、貴様は接近戦にも覚えがあるだろう? 貴様がやれ」
「何故、俺がお前達のために戦うなどと思うんだ? 人間の老人のようにボケたか」
そして、頭であるシュラハトが居なくなればこいつらに協調性など欠片もない。
1人1人が一騎当千ではあるが、それが万軍となることはない。
「魔王の命令は南の勇者の進軍を止めることだろう? なら、シュラハト1人でどうにでもなる」
「あら、仲間を見捨てる気? そもそもあなたも南の勇者のパーティーじゃない」
「俺は単なるゲストさ。南の勇者が死んだら引き返すよ。お前達だって魔王に忠誠心なんてないんだから、ある程度の成果があれば十分だろう?」
グラオザームもやられたんだ。
さあ、ここは大人しく引いてくれ。
そうすれば、俺達の目標は達成される。
「―――ええ、確かにある程度の成果は必要です」
自分の心臓がある位置から腕が生えて来る。
否、何者かに俺は
「……グラオザーム…?」
「こういった戦い方は魔族の主義に反しますが、恨まないでください。これも全ては
ゴボリと口から零れ落ちる血と共に、あり得ない名前を呼ぶ。
馬鹿な、グラオザームはベーゼの結界魔法に閉じ込められていたはず。
結界が解かれた形跡はない。ならば、あの中に居なければおかしい。
いや、まさか…!
「精神魔法…で…初めから…!」
「誇りある魔法使いの戦いには相応しくありませんが、貴方達が見ていた私は
「魔族に……そんな戦いを…させる程…警戒されてるとはなぁ……」
グラオザームは最初から精神魔法で俺に、いや仲間の七崩賢も含めて全員に姿を明かしていなかったのだ。うかつだった。魔族は1つの魔法しか使わない。だが、それは
飛行魔法は魔族にとっては魔法ではなく、人間にとっての歩く行為と同じものでしかない。
それと同じだ。
「貴様、隠れるつもりなら初めに言え。おかげで無駄な魔力を使ってしまった」
「敵を騙すには、まずは味方からと言うでしょう? それにこれは魔王様の命です」
「おいおい、俺達が味方だとでも言うつもりか」
「そうね、笑えない冗談だわ。命が惜しい気持ちだけは理解できるけど」
大魔族相手にでも自分の姿を欺けるグラオザームにとって、精神魔法とは呼吸と同じだ。
魔法という認識ですらないのだろう。
「安心してください、エーヴィヒ。貴方を殺すことはしません」
「……そいつは…嬉しいなぁ…」
「マハト、黄金化をお願いします。貴方には呼吸をするよりも簡単なことでしょう?」
「……いいだろう。
足元から黄金化が始まっていく。
そうだな、俺は死ねば生き返る。
なら、俺を無力化するにはこうするしかない。
俺でもそうする。
「恥ずべき戦いをしたお詫びです。最後の言葉があれば聞いてあげましょう。人間でいう所の遺言です」
腰の所まで黄金化が進んだところで、やっとグラオザームが俺の心臓から腕を引き抜く。
そのせいで、もう反撃することも出来ない。
随分と警戒されたものだ。
「支配の石環を外す方法があれば……自爆でもして…逃げられるんだがなぁ……」
「神代の
「……ははは」
律義にも独り言に付き合ってくれるグラオザーム。
姿を隠して魔法使いと戦ったことを気にしているのだろうか。
まあ、今はそんなことよりもマハトだ。
「マハト……
「……今の俺にもそれは出来ない。つまり、お前は永遠にそのままだ」
「永遠に黄金の塊か……そいつは……死ぬのと…何が違うんだ…?」
マハトは何も答えない。答えられない。
その間に遂に首元まで黄金に変わる。
今のマハトの認識では剣で切り捨てるのも、黄金化するのも同じことだ。
人間を殺す手段の1つでしかない。
つまり、今の俺は。
「そうか。
絶体絶命というわけだ。
Dea coeli, quaeso. Dic mihi quomodo non moriatur.
見たな?
Petite et dabitur vobis quaerite et invenietis pulsate et aperietur vobis.
見たな? 女神の言葉を。
Omnis enim qui petit accipit et qui quaerit invenit et pulsanti aperietur.
後悔してももう遅い。
Intrate per angustam portam quia lata porta et spatiosa via quae ducit ad perditionem et multi sunt qui intrant per eam.
お前はお前が生まれた意味を思い出すことになる。
Quam angusta porta et arta via quae ducit ad vitam et pauci sunt qui inveniunt eam.
思い出せ、お前がこの世界に生まれた時
Quis dixit tempus reverti non potest?
女神に何と言われたかを。
『―――
女神は言っている。天国にお前は相応しくないと。
女神は言った。今日からお前は―――
『―――
グラオザームが、アウラが、ベーゼが、そしてマハトが。
警戒態勢を取る。
黄金化し、もはや口しか動かせなくなっていた男に対して。
自分達には理解不能の言語を口走ったエーヴィヒに。
「……今の言葉は?」
「断末魔にしては、意味を持っているように聞こえたが……分からんな」
「まあ、どのみち今は黄金化しているんだから、気にすることはないんじゃない?」
「アウラの言うとおりだ。一瞬身構えたが、所詮は魔族の恥晒し。気にする程のことではない」
慎重に黄金化したエーヴィヒの方を窺うグラオザームとマハト。
最初は訝しんでいたが、動きが無いと分かると肩の力を抜くアウラ。
ベーゼは相も変わらずの相手を見下した態度でエーヴィヒから背を向ける。
そして。
「今は先程から
「あら、上手く隠れていたつもりだったのだけど、流石は七崩賢、不死なるベーゼね」
戦闘の開始から今の今まで、隠れていたソリテールに声をかけるのだった。
「ソリテールですか……」
「久しぶりね、グラオザーム。前に会ったのは300年ぐらい前かしら」
「部下からの報告で、エーヴィヒ以外にも魔族の裏切り者が居ると聞いていましたが、まさか貴方だったとは」
「裏切り者だなんて失礼ね。私は生まれてこの方、裏切りなんてしたことがないわ。だって、魔族の味方になった覚えなんてないもの。魔王様も含めてね」
七崩賢の4人の前に現れるソリテール。
大魔族と言えど、七崩賢を相手にするのは分が悪い。
だというのに、ソリテールは余裕の笑みを崩さない。
「随分と余裕そうじゃない。面白い命乞いの言葉でも披露してくれるのかしら?」
「命乞い自体は考えているわよ。でも、同じ魔族に言ってもつまらないでしょう。私の命乞いは人間相手に言おうって決めてるの」
今まで隠れていたくせに、あっさりと姿を現した。
その事実に、何かあるのではと七崩賢達は疑う。
「随分と余裕そうだな。まさか、俺達が同族だからという理由で甘くなるとでも思っているのか? 例え、こちらに寝返って来ても、コウモリなど誰にも信用されん」
「君がマハト? 初めまして、私はソリテール。人類を研究している魔族よ。それと、私は意外と一途よ」
ピクリとマハトの表情が動く。
ソリテールの言い方は、マハトという魔族が人間に興味を持っていることを知っている話し方だと。
「……南の勇者にでも俺のことを聞いたか?」
「安心してちょうだい。私が君に何かを求めることはないわ。だって、私は君のことが嫌いだから」
「そうか」
「でも、同好の士として1つだけ忠告を送っておくわ」
まるで世間話をするような気楽さで、マハトに語り掛けるソリテール。
それに対して、何か策があると考え、彼女に注視し目を離してしまう。離してしまった。
黄金化したエーヴィヒから。
「あまり人間を侮らない方がいいわよ、あなた達全員」
『―――
シュラハト「最初は強く当たって後は流れで」
南の勇者「了解した(七崩賢3人を初撃で葬りつつ)」