死んで生まれ変わる魔法   作:トマトルテ

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15話:複製

 

 エーヴィヒの弟子になって1年が経った。

 

「買い出しに出かけて来る」

「暗くなる前には帰るんだぞ? それから知らない人にはついていかないように」

 

 それからの私はと言うと。

 

「魔法薬の調合に必要な材料があるから、魔物を退治しに――」

「魔物だな? 任せろ、俺が狩ってくる」

 

 修行の日々に明け暮れ。

 

「ふう、ごちそうさま。もう、満腹だ」

「おかわりなら、まだまだあるぞ。子供が遠慮するな」

 

 明け暮れ。

 

「良い魔導書が手に入った。今夜はこれを読みふけろう」

「ダメだ。子どもは早く寝るんだ。でないと、背が伸びないぞ」

 

 明け暮――

 

「そういえば、今月のお小遣いをまだ渡していなかったなぁ。大切に使うんだぞ」

「ええい! 私を子ども扱いするなぁッ!! 師匠(せんせい)は私の祖母か!?」

 

 訂正。まるで、修行というものが出来ていなかった。

 子ども扱いをされて、端的に言えばめちゃくちゃに甘やかされていた。

 

「子ども扱いも何も、まだ子供だろう」

 

 そう言って、エーヴィヒは私の頭をグシャグシャと撫でて来る。

 私の身長はちょうど、エーヴィヒの腰の高さまでしかないのでされるがままだ。

 

「子どもではない! いいか、私達エルフは長命種だ。人間の師匠(せんせい)から見れば、子供のように見えるかもしれんが、こう見えてもう100年は生きているんだぞ」

「100年なんて、赤ん坊みたいなものだ。1000年は生きてから出直してこい」

「私より年下のくせに!」

「年上であることでマウントを取ろうとするのは、若者の証だ。本当の年寄りは若さの方を自慢する」

 

 ああ言えばこう言う。

 私の抗議の声など、子供の癇癪と言わんばかりにまるで取り合わない。

 おかしい。出会った頃は、こっちの方が上だったはずなのに。

 

「大体、弟子に取ると言ったくせに魔法もまるで教えてくれないだろう!」

「何を言ってる。この前“料理の塩を砂糖に変える魔法”と“雑草を枯らす魔法”を教えてやっただろう」

「そんなのでどうやって魔物を倒すんだ!?」

 

 そして、エーヴィヒは1年経ったのにまるで魔法を教えてくれない。

 いや、確かに教わりはしたのだが、酷くどうでもいい魔法ばかりなのだ。

 特に“料理の塩を砂糖に変える魔法”なんて、料理で塩と砂糖を間違えた時にしか役に立たない。

 用途が限定的過ぎる。

 

 因みに“雑草を枯らす魔法”は、農家のお婆ちゃんにめちゃくちゃ褒められたので保留にする。

 

「弟子に取るとは言ったが、魔物を殺す魔法を教えると言った覚えはない」

「ひ、卑怯者が!!」

「うかつだったな。今度から発言はよく考えてからするんだな」

 

 大人って汚い。

 思わずそう思うが、声に出すと自分が子供だというのを肯定してしまうので、グッと我慢する。

 

「それに、魔導書は色々なところで読ませてやってるだろう」

「まあ、そこは感謝する。師匠(せんせい)が貴族や王族に顔が利くのは驚いたが」

「コネは大事だ。何事にもなぁ」

 

 エーヴィヒから、直接魔法を教わることはほとんどないが魔導書などはよく読ませてもらっている。まあ、その中にも“服の汚れをきれいさっぱり落とす魔法”などの戦闘に使えない魔法も数多くあるのだが。

 

「だが、所詮は既存の魔法だ。第一、本なのだから後で読めばいい」

 

 私は今すぐに強くなりたいんだ。

 だから、戦闘以外の魔法は後回しで良い。

 

「ゼーリエ、本は腐るぞ」

「……? “防腐魔法”がかかっているだろう?」

「いいか、人間は書物に“防腐魔法”をかけることはほとんどない。本が腐る前に人間の方が先に死ぬからなぁ」

「なん…だと…?」

 

 衝撃の事実に思わず唖然としてしまう。

 人間が書いた書物は痛むのが早いなと思っていたが、そういうことだったのか。

 今度から、人間の書物の保管には気をつけるとしよう。

 

「それとな……魔導書の類はそのうち破棄される可能性が高い」

「は? なぜだ?」

 

 声を小さくして、周りに聞こえないように話すエーヴィヒ。

 しゃがみ込んで、私の視線に目を合わせてくるのが、子ども扱いされているようで気に食わないが、まあ許そう。

 

「魔族……まあ、人の言葉を話す魔物のことだが、奴らの被害が最近は特にひどくなっていてな」

「それが魔導書の破棄と何の関係があるんだ?」

「やつらは魔法を使う。だから、魔法は魔族の使う汚らわしいものと思われ始めているんだ」

「はあ? 馬鹿なのか。そもそも、魔物は大昔から魔法を使っているだろう」

 

 魔法は人類も魔物も分け隔てなく使う。

 魔法に善悪などない。結局は何に使うかが全てだろう。

 

「ああ、お前の言う通りだ。だが、人間は分からないものに理由をつけたがる。魔族が厄介なのは魔法があるからと考える。そして、魔族のイメージにつられて魔法のイメージまで悪いものに変わってきているんだ」

「それで、魔法を禁止にしようと? 馬鹿か、こっちが禁止にしたところで相手が使うのをやめるわけがないだろう」

 

 いたずらに、自分の戦力を減らして何になるんだ。

 そんなことをしても、ますます人類が不利になるだけだろう。

 

「偉い奴らはそんなことも分からないのか?」

「いや、偉い奴は分かっている。だが、一般の人間が魔法に悪いイメージを持つのを止めることは出来ない。お前だって、どれだけ俺に玉ねぎは美味しいと言われても、嫌いなままだろう?」

「例えがおかしくないか?」

 

 まあ、嫌いなもののイメージを払拭するのは難しいというのだけは分かるが。

 

「それとだ。偉い奴は偉い奴で、魔法の対策がしたいという思惑がある。魔法使いを目指す道が無くなれば、勇者や戦士や武道僧や盗賊が増えるからな。人類と魔物の魔法のレベル差を考えれば、魔法使いを増やすよりも勝率は上がる」

 

 魔法使いの勝負はじゃんけんみたいなものとはいえ、魔力量の差や魔法の威力の差は大きい。

 単純なスペック差があれば、石を切断できるハサミも作れるのが魔法だ。

 そして、その傾向は人類よりも魔族の方に多い。

 確かに、言われてもみると魔法使いよりも戦士を増やした方がいいかもしれない。

 

「と言っても、長期的に考えれば下策だがな」

「なぜだ?」

「例えばだが、“物理攻撃が利かない魔法”を相手が使ってきたらどうする?」

「魔法で攻撃すれば……ああ、そうした状況に対処できなくなるのか」

 

 魔法使いは魔法を使う前に戦士に攻撃を受けたら、まず勝てない。

 だが、逆に言えば先に発動してしまえば、同じ魔法使いでもなければ突破できない。

 

「手札はバラエティーに富んでいた方がいい。相手の動きにそれだけ柔軟に対処出来るからなぁ」

「さらに言うと、こちらが魔法を使わないなら魔族側は魔法への対処を捨てて、リソースを物理対策に全て持っていくことが出来る。逆に言えば魔法を使い、相手にこちらの魔法を警戒させれば、それだけリソースを割かせることが出来る」

「そういうことだ。そのために、お偉いさんの説得に回っているんだよ、俺は。……もっとも、魔法の衰退を引き留められるのは俺が死ぬまでの間ぐらいだろうがな」

 

 なるほど、だから今のうちに魔導書を読み漁って覚えておけというわけか。

 貴重な魔法を失伝しないように、私に生き字引になれと言っているのだ、こいつは。

 そう考えると、意外と考えて指導してくれているのかもしれない。

 

「魔導書を読ませる理由は分かった。……だが、師匠(せんせい)の魔法を教えない理由はまだ聞いていないぞ」

「……さて、陛下に謁見して“()()()()()”の研究成果を報告しないとな」

「おい! 誤魔化すな!!」

 

 訂正、やっぱりこいつはダメな師匠(せんせい)だ。

 

 

 

 

 

「ということで、水鏡の悪魔(シュピーゲル)を捕まえてくることになった」

「何がというわけなんだ?」

 

 何も言われずに連れてこられた洞窟の入り口で、エーヴィヒが唐突に口を開く。

 

「陛下がな、自分の墓を作る際の墓荒らし対策に水鏡の悪魔(シュピーゲル)を設置したいらしい」

水鏡の悪魔(シュピーゲル)……確か、自分の住処に入ってきた敵の()()を読み取って、複製体を作り出してそいつに敵の排除をさせる魔物か」

「正解だ。良く勉強しているな」

「ふん、この程度常識だ。それで、なんだ? 王は急病で倒れたのか?」

 

 頭を撫でてこようとするエーヴィヒの手を避けつつ、会話を続ける。

 自分の墓を作るというのだから、今の王は死にかけなのかもしれない。

 

「いや、後数十年は生きるだろう」

「そうか、たった数十年の寿命……いや、人間なら墓を作るのは早くないか?」

 

 後、数十年しか生きられないのかと思ったが、よくよく考えると人間なら十分な寿命だ。

 そもそもなんで、生きている間に墓を作るんだ。

 普通は死んだ後だろう。

 

「偉い奴の墓っていうのは例外なくデカいんだ。当然、作るのに時間がかかる。死んでから作っていたんじゃ、墓に入れる前に腐ってしまう」

「だから、死ぬ前から作るのか? せっかちなことだな、死ねば骨しか残らんというのに」

「そう言うな。生きた証を少しでも残すことで死の恐怖から逃れたいんだよ」

 

 洞窟の中を進みながら、エーヴィヒと会話を続ける。

 しかし、墓か……こいつもいずれは死ぬ時が来るんだろうな。

 その時は花でも供えてやるとしよう。すこぶる似合わないだろうが。

 

「それにしても……複製体とやらは出てこないな。ここには水鏡の悪魔(シュピーゲル)が居ないんじゃないか?」

「いいや、ここに居るのは分かっている」

「じゃあ、奥で待ち構えているのか?」

「その可能性もあるな。だが、俺の考えが正しければ……()()()を起こしているんだろう」

「エラー? 何のこと―――む、ようやくお出ましか」

 

 一体、何のことだと聞こうとした所で、魔力探知に2つの反応が引っかかる。

 すぐに、目を凝らして前を窺うと2つの影が見えた。

 1つは私に瓜二つの複製体。そしてもう1つは。

 

()…? 誰か他にこの洞窟に入ってきているのか?」

 

 見たこともない男の複製体だった。

 一体、何者だと考えていると目の前で複製体が頭を抱えて苦しみだす。

 そして、私の目の前で今度は()()()()()の姿に変わる。

 かと思ったら、今度はドワーフの姿になる。

 

「複製体には出せる数が決まっているのか…?」

「まあ、魔力が無尽蔵でない限りは限界はあるだろうが、こいつは俺を完璧にコピー出来ないだけだ」

「なに? それは何かの精神魔法か――」

 

 水鏡の悪魔(シュピーゲル)に何か仕掛けたのかと、聞こうとしたところで私の複製体からの攻撃を受けて、慌てて躱す。こっちは、普通に動けるのか。

 

「さて、ゼーリエ。この前お前に言われて、俺も過保護に育て過ぎかと反省したんだ。俺の魔法を教えるかはともかく、戦う術は生きるためには必要だとなぁ」

「おい、呑気に話している場合か? 相手は完全にやる気だぞ」

「だが、魔物を相手にする以上は想定外の行動で命を落としかねない。()()()()()()()()()()

「だから、話を聞け!」

「しかし、自分自身を相手にするなら想定外など起こり得ない。所詮は自分だ」

 

 エーヴィヒがこちらの援護に加わる気は無いと分かったので、複製体との戦闘に集中する。

 クソ! 流石は私だ! 強い上に魔力量も多いッ!

 なんて理想的な魔法使いなんだ!!

 

「子どもの練習相手にこれ以上適した存在もいない」

「誰が子供――と! ええい、()が鬱陶しい!!」

「陛下には水鏡の悪魔(シュピーゲル)が安全に運用できるかの確認期間と言って、時間は貰っている。存分に訓練をするといい。自分と同じ力量の相手と競うのが、成長には一番だからな」

 

 今度は魔族の姿になった自分の複製体を見下ろしながら、エーヴィヒが笑う。

 確かに、実戦的な指導を望んではいたがその顔はムカつく。

 私を倒したらすぐにでも、殴りに行ってやる。

 

「安心しろ、万が一死んでも生き返らせてやる」

「誰が死ぬか! 待っていろ、偽物程度すぐに片づけてやる!」

 

 こうして、私の初めての実戦訓練が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 あれから何時間経っただろうか、もしかすると日が変わったかと思う程に長く戦った。

 だというのに、決着はまだつかない。

 こうなったら、自爆覚悟の特攻で――

 

「おーい、そろそろ飯にするぞ。地獄の業火を出す魔法(ヴォルザンベル)

 

 そう思った所で、エーヴィヒの魔法で複製体の私が一瞬で消し飛ばされる。

 1日中顔を突き合わせてきた同じ顔だ。

 一瞬、自分が攻撃を受けたような錯覚を覚えて固まるが、すぐに崩れこむ。

 

「流石にあれだけの長時間の戦闘は堪えたか」

「……違う」

「ん?」

師匠(せんせい)にとって私は……一撃で葬れる程度の存在なんだな」

 

 崩れ落ちたのは、肉体的疲労からではない。

 自分が取るに足らない存在だと、そう突きつけられた気がしたからだ。

 

「当たり前だ。俺と対等になろうなんぞ1000年は早い」

「1000年か……長いな」

「……大分疲れているな。飯を用意してる、まずはそれを食べろ」

 

 師匠(せんせい)がポンポンと私の頭を撫でて来るが、今は振り払う気力もない。

 大人しく、ご飯を受け取り口に運んでいく。

 お腹は空いていないつもりだったが、食べ始めると止まらなくなる。

 そして、胃の中に物が入ると同時に少しだけ気分が軽くなっていく。

 

「いいか。気分が落ち込んだ時は美味いものを食べて、ぐっすりと寝ろ。精神は体を整えれば勝手に整うもんだ」

「……私の心はそんな単純なものじゃない」

「ものを食べて命を繋ぐ。生命の根源的なシステムを超える心なんて存在しない」

 

 空になった器におかわりをよそいながら、師匠(せんせい)が告げる。

 悔しいが、私の身体がそれを証明してしまっているのでそれ以上の反論は出来ない。

 

「まったく、お前は表面上の力にばかり囚われ過ぎている」

「表面上?」

「ああ、俺は確かにお前よりも強い。だが、俺を殺すだけなら今のお前にも出来る」

「どうやってだ?」

 

 自分でも師匠(せんせい)に勝てる。

 その言葉に思わず身を乗り出す。

 だが、続く言葉は到底受け入れられるものではなかった。

 

「不意打ちしたり、毒を盛るなり、寝込みを襲うなりいくらでもある」

「いや、それは強くなったとは言えないだろう」

「じゃあ、お前は自分より強い敵にあったら潔く死ぬのか?」

 

 しかし、受け入れられないからと言って、無視することも出来ない。

 これは一生付きまとう問題なのだから。

 

「自分が相手より強くなるまで鍛える。間違っていない、王道だ。だが、それは相手にとっても同じだ。相手だって鍛えるし、当然自分より弱い敵しか襲わない。特に魔族はそれが顕著だ。魔力量で相手を判断する。自分よりも魔力量の低い相手しか狙わない」

 

 私は魔族が憎い。

 根絶やしにしたい、いや、根絶やしにすると決めている。

 だが、それほどの力を手に入れるまで奴らは待ってはくれない。

 

「だから、頭を使うんだ。魔力量を誤魔化して相手に油断させる。自分が敵わない敵なら別の人間に戦って貰う。そもそも無理なら戦わない。戦闘はそういう判断の連続だ。今回は修行の一環として、自分の複製体と戦って貰っているが本来なら戦う意味はない。俺にやらせるか、逃げて水鏡の悪魔(シュピーゲル)本体を叩くのが普通だ。自分と戦っても徒に体力を消耗するだけだ」

 

 説教くさく言われてしまうが、事実なので黙って頷くに止める。

 

「いいか。()()()()()()()()()()、戦うのは最終手段だ。仮に戦うとしても戦わずに勝て。戦いっていうのは最後まで立っていた奴が勝者なんだ。どれだけ、凄い魔法が使えても死んだら無意味だ」

 

 卑怯なやつだ。

 今までなら、そう口にしていた。

 だが、今は違う。

 卑怯だとしても、目的のために必要ならやるしかないのだ。

 

「……分かった。師匠(せんせい)の言う通りにする」

「よし、なら明日からは体外への魔力放出を10分の1に抑えた状態で戦え」

「は?」

 

 そう思った所で師匠(せんせい)がそんなことを言ってくる。

 待て。魔力放出を抑えるのは出来る。エルフなら誰でもできる。

 だが、その状態で私の複製体と戦えだと? 無理だ。

 殺される。

 

「安心しろ。体外へ漏れ出る魔力を抑えるだけだ。魔法の威力を抑えるわけじゃない」

「いや、それでも同じ力の相手に無駄なリソースを使ったら」

「大丈夫だ。お前が魔力を抑えている状態を自分の最適解に出来れば、複製体も同じようにする。何せ完璧なコピーだからなぁ。まあ、それまでは」

「それまでは?」

 

 グッと親指を立て、師匠(せんせい)が良い笑顔で微笑む。

 

「……頑張れ」

「急にスパルタだな! このダメ師匠(せんせい)!」

「さあ、分かったなら早いところ寝るんだな。寝不足で死んだなんて笑えないぞ」

「ああ、クソ! やってやるよ! お休み!!」

 

 見ていろよ、すぐに習得してぎゃふんと言わせてやるからな。

 そう、心の中で誓い私は毛布にくるまって瞳を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

「やっぱりそうか……水鏡の悪魔(シュピーゲル)の魔法も何でもかんでも複製できるわけじゃないのか」

 

 ゼーリエが夢の中に旅立ったころ、エーヴィヒは人間のような魔族のような、エルフでありドワーフである複製体(肉の塊)を見つめながら1人呟いていた。

 

「イメージできないものは魔法で再現できない。何度も別の種族に生まれ変わっている記憶を持つ存在を1つの姿に現すことは出来ない。恐らくは、水鏡の悪魔(シュピーゲル)の想像を超える存在全般が駄目だろうなぁ」

 

 残念そうに呟きながらエーヴィヒは複製体(肉の塊)を音もたてずに消し去る。

 

「まあ、支配の石環が魔物にも使えると分かったから、今回はそれだけでいいか」

 

 水鏡の悪魔(シュピーゲル)を墓守にするには、王墓に留まる選択をさせないといけない。

 だが、生物である以上は自分の意思を持っている。

 引っ越しされては敵わない。

 そこで、エーヴィヒは支配の石環を使えないかと考えて、ここまで来たのだ。

 

 魔族は人の言葉を話す魔物。なら、簡単な指示程度なら大本の魔物にも使えるのではないか。

 そうした、エーヴィヒの目論見通り支配の石環は魔物にも機能した。

 現状、魔物がすぐ傍に居るのに()()()()()()()寛げているのは、そういった事情からである。

 ゼーリエの安全は既に確保されているようなものだ。

 

「それにしても惜しいな」

 

 だが、エーヴィヒの顔は浮かない。

 何故なら。

 

 

水鏡の悪魔(シュピーゲル)に魔王の複製体を作らせて戦力にしたかったんだがなぁ」

 

 

 割ととんでもないことを考えていたからである。

 

 




水鏡の悪魔(シュピーゲル)は修行相手にて最適。
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