雪風に転生しました。これより深海棲艦の指揮に入ります! ……どうして? 作:氷水メルク
駆逐艦の名前は天候や自称、自然現象系が多いよね。
ならまずはセオリーに当てはめて考えた方が良いよね。
といっても、有名どころはもう既に居る。
やっぱり神様の名前に肖った方が良いかも?
「ナンダッタカ。レア艦、フリーザー、駆逐艦川内、アトナントカモチッツッテナ?」
「それを言うならフリーザっぽい?」
「あぁ、確かに。良く雪風は知ってたね」
「ソウナノカ?」
こっちの世界、普通にポケモンとかドラゴンボールとかあるんだ。
わたしの転生前の世界と文明はあまり変わってないのかな。
無人島生活だと知る機会ほとんど無いからね。
あぁでも、わたしの持ってるスマホに対して何にも反応を示してなかったもんね。
あんまり文明の発展度は変わらないのかも。
聞いてみよ。
「ねぇ白露、夕立。スマホって知ってる?」
「知ってるよ」
「知ってるっぽい」
白露は怪訝そうにわたしの質問に答えてくれる。
流石にスマホはあるかぁ。
今何年だろうとスマホで調べてみたところ、現在西暦2023年とのこと。
白露も知ってるということは、一般的に普及されてるってことかな。
「じゃあ、今ってなにがリリースされてる?」
「リリース? 逃がす?」
「えっとね、ゲームは何が発売されてるのかなって。分かる範囲でいーから」
「うーん、あたしは知らないかな」
「はいはい! 夕立はシノビガミや人狼、パラノイアなんかが好きっぽい!」
友情破壊ゲームばっか。
シノビガミとパラノイアはPVP勃発するからね。
それ初心者にやらせるとリアルファイトに発展する恐れあるからね。
最も、リアルファイトに陥る原因の八割ほどは煽りだったりする。
転生前、男同士で10秒告白ゲームをプレイした時、外野の女子たちから絶妙に気持ち悪いと言われた記憶が。
……深呼吸しよ。
白露がエアゲーム機を操作するかのように手を動かして続ける。
「こうポチポチする奴?」
「そう、それそれ!」
「今艦娘と深海棲艦が戦っているから、娯楽に資材を投げる余裕はないんじゃないかな?」
「どこも深海棲艦との戦いでいっぱいいっぱいっぽい?」
なるほど。
資材を使う娯楽よりも紙やペン、サイコロを使った娯楽が今は中心的って感じなのかな。
道理で白露は伊5679の元ネタについて知ってるわけだね。
この世界での艦娘と深海棲艦での戦いも何となく透けてきた。
恐らく深海棲艦があまり攻めてこないような、平和な世界ではないんだろうね。
むしろよく攻めてくる方。
深海棲艦がきちんと脅威として機能してる世界。
だから娯楽はほとんど発展してない。
MMDでよくあるような、FGOがある世界とかではないのだと思う。
だとすると、深海棲艦と艦娘が一緒にいるここは本当に珍しいのかも?
「むしろ逆にさ、雪風っていつもどこで資材を調達しているの?」
「天から降ってきます」
「天から……降ってくる?」
「わたししれぇだし! 自然回復で天から無限に資材が」
「あぁうん。理解した。秘密ってことね」
「
時雨なら信じるよ? 見たことあるからね。
見たことあるというか、毎日海岸に資材が流れ着いてるのを見てるからね。
毎回天の存在が付けたと思しきマークが入ってるから、わたしはそうだと判断してる。
じゃなきゃ今日までずっと流れ着いてこない。
どんだけ資材を蓄えてるの? って話になるから。
「あのさ、もし、もしもよ? もし本当なら絶対周りに言わないで」
「なんで?」
わたしの呟きを聞いた白露が、わたしの両手首を乱暴に掴んでくる。
「雪風確保!」
「えっ、えっ?」
「ってなるよ」
「そーなの?」
「良く考えてみて」
うん?
わたしがいると資材が無限に手に入る。
何かおかしいかな?
資材は消耗品だからお裾分けくらいしても良いと思うけど。
うーん?
資材は消耗品で娯楽に費やせない。
でもわたしは無限に資材が手に入るから。
……あっ。
……もしかしてわたし、この世界の住民からするととんでもないお宝なのでは?
ここは現実だから、自然回復なんてものはない。
あったとしても大本営? から着実に資材が減ってく一方。
そこへ現れた無から資材を生み出す艦娘。
おまけにわたしの近くにいると深海棲艦に襲われない。
白露に指摘されたことでわたし自身さっと血の気が引いてく。
白露はわたしの手首を掴んだまま悪雨へと向く。
「悪雨もゴーロも! 人型じゃない深海棲艦の言葉を通訳できる、敵対しない深海棲艦なんて。捕まったら最悪ばらされるよ?」
「オッ、オウ、肝ニ命ジルゼ」
「アタイニハ関係ナイモンネ!」
悪雨は問題ない。
問題としてイゴーはどこ吹く風といった様子で口笛を吹く。
白露はわたしの背中に手を回すと、そのままドンとイゴーへと押し出す。
「提督の雪風は危険性をちゃんと把握しとかないと。艦娘だけ守っても意味ないでしょ?」
「は、はい!」
「分からないことがあったらあたしや夕立、もちろん時雨にも頼って良いから。あたしはこの中で一番艦娘歴長いから頼りになるよ!」
白露は自信満々にウインク交じりに胸をドンと叩いて見せた。
でもそれの対処法で一番簡単なの、艦娘と敵対関係になるってことだよね?
もしくはわたしたちの場所を認知してもらうことだけど。
元人間的な視点で見ると、それって結構難しいことなんだよね。
人間って新しいものに対しては、わたし含めて臆病な人が多いから。
勇敢に新しいものを取り入れることが出来る人って、ほんの一握りくらいしかいないんだよね。
沈めない程度に攻撃……、わたしの艦隊以外の深海棲艦に攻撃される恐れがあるよね。
必要以上に干渉しないが正解かな、多分。
……あと、わたしも人型じゃない深海棲艦の言葉を理解できる機械か装置が欲しい。
白露はわたしから手を放すと、次にわたしの持つスマホを指さした。
「それでさ、もうひとつ聞いて良い? 雪風はなに弄っているの?」
「スマホだよ」
「それスマホ? でも、何もついてなくない?」
白露の言葉に夕立も「ぽい」と頷いて同意する。
返事はそれで良いの?
わたし目線だと画面表示されてるけど?
ロ級の名前について何か良いの無いかなと検索を掛けてるよ?
わたしはポケモンの記事、ピカチュウの奴を画面上に映して見せる。
しかし白露と夕立、二人ともやはり首を傾げて反応をした。
えっ、流石にピカチュウは知ってるよね?
大人気であり、一部馬鹿な奴からはにわか判定を受けるほど知名度あるキャラクター。
艦娘勢の反応……、わたしを含まない艦娘勢の反応を見て悪雨がスマホを覗き込んでくる。
イゴーはわたしの手を掴んで下げてくる。
「ピカチュー? ヘッ、ヘェー、……ピカチュー」
「オッ、イゴーモコウイウキャラクター好キナノカ?」
「ハッ? スキジャネーシ! ゼンゼンスキジャネーシ!」
キヒヒッ! と笑って見せる悪雨にイゴーはむきになって反発する。
見えてる? 深海棲艦には?
白露が良く分からなさそうな顔で「ピカチュウ?」と呟く。
隣りの夕立も「見えないっぽい」と首を振って同調した。
わたしは次にセグレイブについての種族値を悪雨に見せる。
「ナンダコレ?」
「読んでみて」
「ンッ? セグレイブ、HP115、攻撃145、防御92、特攻75、特防86、素早サ87。ナンダコレ?」
「やっぱり読めてる!」
「ソウ書イテンダロ」
悪雨は胡乱気にわたしを半目で見つめてくる。
悪雨、後ろの二人の艦娘を見て見て。
さっきからはてなマークを浮かべてるから。
多分、セグレイブと唐突に出てきた数字に困惑してるからかもしれないけど。
このスマホ、深海棲艦には見える仕様なのかも。
もしくは、わたしの艦隊にだけ見えるとか。
結構悪用できそうだね、これ。
潜入するときとかすっごいうってつけじゃん。
隠れて深海棲艦と連絡を取り合うことも可能かも?
機会があったら試してみよ。
あとさらっと、この世界には無い概念について調べることが出来てたね。
セグレイブってこの時代にはいるけど、この世界にはいないんじゃないかな。
「変ナテートク。イヤ、テートクハイツモ頭オカシイカ」
悪雨さんや。
変なから頭おかしいにグレードアップしないで。
せめて変なので止めて?
痺れを切らした様子で夕立が両腕を振り上げる。
「そーれーよーりー! 夕立はモチが気になるっぽい!」
「ソーダッタナ。ナニモチツッタカナ。攻メモチツッタカ?」
惜しい!
「ウケモチだよ」
「ソーダソーダ! ウケモチ!」
神様の名前なのだから忘れないで欲しい、とは言えないか。
結構マイナーだもんね。
日本神話、食物の神様って調べないと出てこないし。
大抵のゲームだとアマテラスとかスサノオとかばっかだもんね。
日本書紀、古事記を読んだことあるけどツクヨミなんてほとんど出てこないのに。
やっぱり夜の神様って部分評価かな。
それにしてはアマツミカボシという星の神様、全然有名じゃないけどね。
ちなみにわたしは古事記ではなく、日本書紀でようやくウケモチの名前を知った。
ついでに言うと2ページくらいしか出てこない。あれ1ページだっけ?
めっちゃ影薄いんだよね。食用動物や海の幸や山の幸を生み出した神なのに。
なおツクヨミも1ページくらいしか登場しない。あれは古事記だっけ。
白露が訪ねてくる。
「具体的に何をした神様なの?」
「ふっふっふー、そーれーはーねー? 口から出した食べ物を料理して、アマテラスとスサノオ、神話によってはアマテラスとツクヨミに食べさせた食物の神様だよ!」
「……アァ?」
「スサノオとツクヨミは汚い! って怒ってウケモチを斬るんだけど。アマテラスはそんな二柱に対して、もう二度と顔を見たくないって怒るんだよね。それで、そのウケモチの遺体から馬や蚕などの食べ物が湧いて…………。なんか良ー笑顔してるね? 良いことあった?」
悪雨がすんごい良い笑顔でわたしに笑いかけてくる。
具体的に言えば、最高のネーミングセンスから溢れるこれ以上無いほどの名前をありがとうって言ってるように見える。
「ソーカソーカ、最後ノ悪雨サンスマイルヲ良ク見トケヨ」
表面上は。
ついでに言うと白露と夕立までもが、わたしに冷えた視線を向けてるように見える。引き気味に。
可哀想でも何でもなく深海棲艦になるんだろうなぁって感じの。
あの……もしかしてわたし、地雷踏んだ?
「ナァ? クソガキニハ悪雨サンガゲロ吐キ野郎ニ見エタノカ?」
クソガキ!?
遂にはテートク呼びされなくなった!?
悪雨は楽しそうに笑いながら艤装を持ってくる。
資材を勝手に使わないでと言える雰囲気じゃない。
悪雨は正座した状態のまま謎原理で空中を浮遊して戻ってくる。
そして状況に追いつけてないわたしの有無を言わさず、わたしの襟首を掴んでくる。
「ねぇ、なんで襟首を掴むの? ねぇ、なんで海に行くの!? あと、ウケモチは女神らしいよ!」
「ンッ、最高ノ名前ヲ付ケヨウトシタテートクニ、悪雨サンカラ最上級ノアリガトウヲ伝エタクテナ?」
「もう伝わった! ありがとー! だからせめて……、せめて艤装を付けさせて! 流石に沈む!」
待って! 本当に!
今脳にグルメレース流れ始めてきたから!
あの序盤フレーズがイヤーワームしてきたから!
お腹の音聞こえてきたから。
艤装を背負ってないから悪雨に成すがままになってるから!
試したことないけど、艤装ないまま攻撃受けたら多分木っ端微塵だから!
ベジータにギャリック砲を撃たれた地球みたいになるから!
「助けて白露! 夕立!」
「夕立は心底失望したっぽい」
「この場に時雨が居なくて良かったー。安心して、雪風。ちゃんと土まで持っていくから」
「話のタネ!? わたしの骨!?」
「多分どっちも?」
「届かないのは頼みの声!」
「微妙に韻踏んでる」
待って本当に止めて!
悪雨から本気で沈めてやるという意思を感じる!
わたし沈んだら深海棲艦に変性しないから!
割と真面目な生命の危機だから!
ずるずると引き摺られながら、わたしは悪雨に改めて懇願してみる。
「
「確カテートクニ相応シクナイト判断シタラ、撃ッテイインダッタヨナァ?」
「それはせめて艤装を付けた状態であって。生身で撃たれるのとではわけが違うと言ーますか! ほらっ、結果的に悪雨って名前になったじゃん! 結論で言えばセーフだよセーフ! わたしたち同じ仲間じゃん! 同じひとつの島で暮らす仲間同士! 多少の黒歴史も笑って水に、いや海に流そ?」
「ソウダナ、腐ッタリンゴハ海ニ流サナイトナ」
「バッドアップル!?」
意味、腐ったリンゴはタル全体をダメにする。
待って! ちょっと待って!
わたし食べ物吐きとかそんな意味じゃなくて、本当に食物の神様という意味合いでしか付けてないよ!
というか他だと農作物の神様ばっかなの!
ホデリとホオリは絶対違うと思ったの!
なんて思ってるときにちょうど良く、幸運にもロ級が改装を終えて戻ってきた!
助けてロ級ー! とわたしは手足をじたばたさせる。
奇しくもイゴーがやってたやつをわたしはやってる。地べたでだけど。
ロ級はわたしを見つけると、ため息なのかな? らしく顔を伏せる。
それから何やら口をもごもごさせてる。
悪雨が止まる。
「アァ? コイツガ悪インダガ?」
わたしはロ級に頼むしかない。
両手を組んでお願いと命乞いをするしかない。
シロコはわたしたちを見てから、いつものことかって感じでホ級を連れて行っちゃったから。
多分、真相を知ったら助けてくれるだろうけど丸一日お説教コースだろうなぁ。
「ッチ、ッタク。ワァーッタヨ。オイ、クソテートク」
「はいなんでしょー!!」
「ロ級ガ助ケテクレルッテヨ。良カッタナ」
悪雨から解放されたわたしは速攻ロ級の元まで駆けて抱き着きに行く。
頬擦りも込み!
助かった! 本当に助けられた!
あぁ、わたしの目には今のロ級が本当の女神さまに見えるようだよ。
「ありがとー! ロ級!」
「ソレト伝言ダ。上ニ乗ッテモイイケド、変ナ歌ヲ口ズサムノハ止メテッテヨ。頭ガオカシクナルトノコトダ」
変な歌?
うんうん止めるよー!
ロ級様がそうおっしゃるなら是非とも止めさせていただきますよ!
変な歌が何かは分からない。
でも歌全般を止めれば良いってことですよね!
イエスマム!
さぁさぁ、ではではではでは。
女神の御影であらせられるロ級様の名前を考えよう!
命の恩人だから、それはもう良い名前を贈らないと!
改めてロ級を見てみると……、こっちも後期型だね。
漆黒の繭は剥がれ落ち、雪色の生体が顔を覗かせてる。
イ級のように異形の手足が出てきているわけではなく。
あくまでお腹の辺りが少し見えてる程度。
後ろの少し白い部分は……ヒレなのかな?
撫でてみるとロ級は嫌がるかのように、わたしに身体をぶつけてくる。
そんなに嫌ですか? 承知しました、ロ級様の仰せのままに。
変わったところといえば、目が青から金色に変わったくらいかな。
他のロ級後期型と違って変化が少なすぎる。
もっとイ級みたいに、如月の髪飾りを付けてくれるとかしてくれれば分かりやすいんだけどなぁ。
わたしは少し迷った末に、ひとつ考えついてた名前を口にする。
「ロ級の名前なんだけど、渦潮ってどう?」
艦隊を飲み込み、資材を減らしてくる罠。
艦これに渦潮っていなかったはずだし。朝潮みたいで良いかなって思うんだけど。
わたしの上げた名前にロ級が顔をぐりんとこちらに向けた。
おっ、もしかして一発正解来たかなぁ?
そんなわたしの手ごたえをよそに、白露が待ったを掛ける。
「うずしおはもう居るよ!」
「……えっ、居るの?」
「潜水艦に。艦娘ではまだ確認されていないから、雪風が知らないのも無理無いかも」
本当に?
わたしはスマホで検索を掛けてみる。
……ほんとだ。うずしおって名前の潜水艦? 練習艦って出てきた。
良い名前だと思ったのに既に居たんだ!
というか、潜水艦って伊とか呂とかUとか以外にも居たんだ。
アズレンをやってた限りだと、他にもあったけど……確かZだっけ?
記号とかアルファベットじゃなく、ひと単語で潜水艦は初めて聞いたかも。
それじゃどうしようかなぁ。
イ級がエビっぽいとか言われてるんだよね。
わたし的にはサメのようにも見える。
サメの神様……、あぁちょうど良くいる!
「じゃあ豊玉姫とか」
「佐世保に喧嘩売ってるっぽい?」
「豊玉姫は佐世保で祀られているから! 深海棲艦に付けちゃダメ!」
せっかくのアイデアが夕立と白露にストップを掛けられた。
またダメ!?
あっ、ほんとだ。スマホをスクロールすると、豊玉姫がちょうど佐世保で祀られてるってでた。
深海棲艦に佐世保で祀られてる神の名前。
時雨に顔を合わせにくくなるかも。
「じゃ、じゃあ豊玉姫の
「だからダメ!」
なんで。なんで!
なんでホオリとかシホツチとか無いのに、豊玉姫と玉依姫はちょうどよく佐世保にあるの!?
おかしいでしょ!
浦島太郎でいう乙姫ポジだよ! あの人たち!
トイレについてるあれと名前一緒だよ!
シホツチが亀ポジでホオリが浦島ポジだよ!
なんだったら豊玉姫って育児放棄して、海に帰った神だよ!?
別の神話だと白兎神に騙されて頭踏まれてるのと同じ種族してるよ!
悪雨が頭痛そうに顔を抑える。
「コレガ平常運転ダ。何デモカンデモ神ノ名前ヲ付ケヨウトスル」
「うわぁ……」
「でも、シロコは普通の名前っぽい?」
「ソレハ時雨姉貴ガ付ケタ名ダ。クソテートクガ付ケタノハ確カ……」
悪雨は記憶の回廊を辿るかのように指を振る。
ちょうどシロコについて話題を出してたからか、シロコ本人が話に混じってくる。
「私ガ言ワレタノハ、ヒトリ連合艦隊、量産型ノ悪夢、ブラックバイパー、戦艦雷、ハクアノオロチヨ」
「異名混じってるじゃん」
「戦艦雷。なんか分かるっぽい」
「司令官ノ名前モ決シテ悪ク無イノヨ? 悪気ガアッテ付ケテイルワケジャナイシ。神様ノ名前ヲ付ケルノハソレホド大切ニ思ッテクレテイルッテコトダカラ。チョットユニークナダケナノ」
シロコ……!
わたしから名前を貰う時、やっぱりいいって拒否してなかったっけ?
指示されれば分かるって言ってたよね?
ねぇシロコ。どうしてわたしから目を背けるの?
目を合わせようとするとどうして逃げるの?
なんで悪雨は「甘ヤカスト調子ニ乗ルゼ?」とか言い出すの?
ねぇねぇなんで?
「むしろよく雪風がシロコで通したよね! 通さなさそうなのに」
白露が頬を指で掻き、乾いた笑顔で何気ない感じで口にする。
「よくぞ聞いてくれました!」
気になる?
そうだよねそうだよね、気になるよね!
わたしもね。時雨からシロコって言われて脱帽したんだよね。
簡潔でキラキラネームっぽくなくて、良い名前だねって!
わたしは言い出しっぺの白露の両手をガチャンと掴む。
わたしにはもう目の前の白露に何が何でも語りたくて仕方ない。
むしろこれは語るべき。
気になってるんだもんね、しょうがないね!
「じゃあ教えるね!」
「あっ……」
「まず初めにシロは分かるよね、シロコは白いから。でコなんだけこれは虎と書いてコと読むこともできる。なんで虎かというと、まずね? 海や人を守る神は龍神に多いんだよ。天女の遣いとか白蛇でしょ? 昔はヘビの見た目から龍を連想されたりとかしていたもんね。他にも淤加美神っていう雪や雨を司ってる神様も龍神として祀られてるの。これは龍が超常的な力を持つこと。人々には出来ない不思議な力を持ってるからとも取れる。他にも有名なのは八岐大蛇の力が宿ってるとされる草薙の剣。草を薙ぎったから草薙の剣とされてるけど、あれ正確には主人に降りかかる火の粉、厄災を振り払う力を持ってるとも言われてるんだって! 厄災を振り払う叢雲の剣。正しく艦娘はわたしの中で水の守り巫女。龍は艦娘ってイメージなんだ! 他にも海や人を守り、海の恩恵、幸などの自然物をもたらしてくれるでしょ? 他には深海棲艦という人類じゃ太刀打ちできない厄災を、その力を持って切り開く! 正しく人には出来ない自然現象を起こせる龍でしょ! それにほらっ、駆逐艦は自然現象の名前が多い! で、ここからが本題なんだけど」
「こっ、ここからっ!?」
「そうここから! でね、龍の対義語は虎なんだよ。これは日本より中国の思想の方が強――」
無言で悪雨が後ろからわたしの口を手のひらで被せてきた。
無言で何か目配せをしてるのか白露がこくりと頷いた。
悪雨、その手をどけて?
両手塞がっているからさ。
ここから面白くなるからさ!
時雨の天才的名付けセンスが光るところだからさ!
白露が頬を引きつらせてわたしの手を放す。
そして夕立、イゴーやロ級の輪に戻っていった。
……わたしをそっちのけで会議してる!?
わたし抜きでロ級の名前について話あってる!?
わたしは悪雨の手を口からどけて吐露する。
「せっかく名前の由来を語ったのに! 酷くない!?」
「シロコが白いからシロコだってのは分かった!」
「一番初め!?」
「興味ネー」
「ぐはっ!」
「ロ級はそもそも何型っぽい?」
「シロコ~!」
わたしは白露から手を放してシロコに抱き着きに行く。
せっかくシロコって名前を認めたわけを話したのに!
誰も聞いてくれない!
どうでも良いで流されたー!
「ヨシヨシ、司令官。自分ノ好キナコトダケヲ話スノハ嫌ワレルヨ?」
シロコはわたしを慰めるように頭を撫でてくれる。
だって。
だって艦これって日本神話から多く取り入れてるから、みんな興味あるのかなって。
沈めるとか巫女の服装をしてる金剛型とか!
深海棲艦なんてもろ悪神なのに。
御霊信仰。悪霊を鎮めてその力に肖るところなんか、まさに艦娘と深海棲艦の関係じゃん!
さっきも言ったけど、女神を殺すほどの炎神カグツチを悪、虎とした場合。
防火の神様であるカグツチの別名、愛宕様は龍なんだよ!
艦娘の愛宕様は龍なんだよ!
なのに誰も、誰も興味ないでバッサリ斬られたー!
……カイドウは艦娘だった!?
肩を落とした様子の白露の元に悪雨も合流する。
「……次からは気を付けよっ」
「隙ヲ見セチマッタナ」
「多分、時雨もそんなに深くは考えてないっぽい」
「ソレヨリ名前ドウスッカ。意外ト悩ムナ」
「時雨のシロコって雪風にドンピシャな名前だったってことだね」
絶対そう! 絶対時雨はシロコにそういう意味を込めてるって!
スマホで調べてみるとなんか白いケモミミの可愛い娘が出てきたけど。
銀行強盗が趣味?
……えぇ?
ロ級の黒鎧をガンガン叩いたイゴーが、少し涙目になりながら手を抑えて言う。
「ナァナァ、モウウズシオデイイジャン!」
「うずしおは既にいるっぽい」
「うーん……難しいね」
むぅ。
うずしおは既に居る。
潮と言えば朝潮型が多く出てくるからなぁ。
元々渦潮もそこの着眼点から浮かんできたものだし。
うーん。何かないか。深海棲艦も踏まえて名前を考えられると……。
「
「御潮? ……あっ、えっと雪風! 出来るだけ短く! 短くね!」
白露はぼそりと呟いた言葉に慌てて付け足す。
なんでわたしが長いこと語りだす前提なの?
「深海棲艦の力を借りる、御霊信仰。そこに潮をくっつけただけだよ。御潮って名前はどうかな? ロ級」
わたしが出来るのはあくまで名前を出すことだけ。
自分を指す名前なのだから、悔いのない選択をしてほしいんだけど。
でも、ロ級のことだもんね。
「ソレデイイッテサ」
悪雨がロ級の言葉を代弁すると、ロ級は興味なさそうに工房から出ていく。
相変わらずドライだよね。
元の艦娘はいったい何なのだろう。
多分今までの傾向で行くと……、普段クールじゃない子がそうだと思う。
……ぱっとこれ、って出てくるほど艦娘の数は少なくないから分からないや。