外様神機使いの日常   作:ネコ削ぎ

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 仕事場に近いところで営業している居酒屋は私の友人たちの行きつけの店だった。二十歳を超えて初めて入った居酒屋で、社会人になった後もずるずるとそこで集合しては酒を飲んでぎゃーぎゃーと騒いでいたものだ。おかげで店主には顔を覚えられ、けっこう親しくされるようになったほどに馴染みの店なのだ。

 友人たちの飲み会は大抵二週間置きに行われる。二十代も残り少しだけど大学時代からのメンバーの顔触れは一切ぶれることはない。誰かと疎遠になったこともなく、かと言って誰かが同僚を連れてきたこともない。既に完成された空間だった。

 そんな気の置けない集団の中で、私は変わり者だと認識されていた。

 まず仕事は定時で上がる。残業も誰かの手助けもなし。皆の視線が突き刺さる中でも構わずに帰宅する。羨ましいほどの心臓の持ち主らしい。そう友人たちが言っていた

 次に飲み会だというのにわざわざ車でやってきて酒を拒否。理由は足があると楽だからという利己的なもの。友人たちからは毎回呆れられている。

 最後にニートな妹を当たり前な顔して養っているからだ。別にそのことには苦労も苛立ちもないのだが、友人たちが言うには普通は追い出すものだと言う。

 他にも色々とあるらしいが、大体はこの三つのことで変わり者扱いを受ける。

 そんな変わり者な私でもその集団の仲間でいられるのだから、友人たちも大層な変わり者かもしれない。

 

「なぁ、×××。明日仕事終わりに飲みにいかないか?」

 

 ×××は私の名前だ。両親が考えに考え抜いてつけてくれた名前だ。昨今ブームになっているキラキラネームじゃなくてなによりだ。

 

「いいですけど、飲みはしませんよ。車ですから」

 

「……飲みに行くってことを前に知っても車で来るのか、お前は」

 

「行き帰りが楽ですから。〇〇〇もたまには車で来たらどーですか?」

 

 〇〇〇は友人の名前だ。友人たちの中で唯一同じ仕事場に務めるのは私と〇〇〇だ。□□□や△△△、☆☆☆、///はそれぞれが別の仕事場で生きている。

 勤め場所の違う私たちが集まってワイワイ騒ぐのは、友人たちのリーダー格である〇〇〇が声をかけるからである。〇〇〇はみんなで騒ぐのが好きなようなのだ。

 

「飲み会に車で行くバカはお前くらいだ。酒のためなら多少の不便さは我慢してこいよ」

 

「……私は何事も帰宅第一を考えている人間ですから」

 

「だからって、定時上がりはマズくないか。いつの日か首落とされるぞ」

 

「どんとこーい」

 

「さすがだな。伊達に好き勝手振る舞っているわけじゃないな。というわけで明日だ。明日だぞ。勝手に帰んじゃないぞ!」

 

 前に飲み会の約束を度忘れして帰ったことを根に持っているな。別に私一人いなかったとしてもがばがば酒飲んでよいよいやっているくせに。

 

「ところで、お前まだ一緒なのか? あの妹と」

 

 〇〇〇が他人の家庭事情に踏み込んでくる。なんとずーずーしーことか。

 

「居るけど。それが何?」

 

「いい加減に何か手段を講じたらどうだ。このままお前が養っていっても妹の為になんねぇぞ」

 

「知ってる」

 

「じゃあやれよ」

 

「でも私は別に妹を拒否するほどの不快感は持ってないし」

 

 高校二年の頃から引きこもりになり、今はニートに格上げされた妹だけど、私は追い出すつもりは毛頭ない。

 それは決して妹が可哀想だからでも、妹が可愛いからでもない。

 何となく置いていると言えばいいのか。両親の元から追い出された妹が悪びれもしない笑顔でやってきたから受け入れたと言えばいいのか。

 どちらにしろ〇〇〇には関係のない話なので、いちいち突っかかってこないでほしいものだ。

 しかし、〇〇〇は懲りずに何度も言ってくる。なんでも私のことが好きだからとかどうとか。△△△がそんなことを言っていた。

 好いてくれのは悪くはないが、だからといって妹を追い出すようなことを言い出すのは違う気がする。

 

「まったく五月蠅いな。そんなに他人のことに首を突っ込んでいると、車にぶつけられて死ぬぞ。具体的に言うと明日」

 

「どう考えても犯人はお前だな」

 

 最後は互いに笑い合って終わる。

 そして私は翌日、どーしてか激務を終わらせて飲み会に参加して、その帰り道でトラックと正面衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと背中に激痛が走った。仰向けに倒れているのだと気がついたのは青い空が見えたからだ。

 

<ヤマブキ先輩! ヤマブキ先輩!>

 

 耳につけたインカムからハリトラの焦り声が聞こえてくる。

 

「うーるーさーい」

 

<良かった。無事だったんすね>

 

「一応ですがね。それよりも私はどれくらい寝てた?」

 

<測ったわけじゃないすから正確には分かりませんが、大体20秒くらいっす>

 

 20秒の間に私は過去の出来事を思い出していたようだ。それも死ぬ日の前日のことを。これは何か、もしかしてこれから私の身に降りかかることの前触れだろうか。

 

「じょーきょーは?」

 

<現在は防壁の上で半年先輩が神機兵から逃げ回っています。どうやらアラガミ防壁を昇ってきたようっす。おそらくすけど、防壁のくぼみやでっぱりを利用したんだと思います>

 

「納得。蹴られたことには納得できないけど」

 

「今はオペ子先輩とお嬢ちゃんが諸先輩方の神機を持って向かっているっすからもう暫く頑張ってほしいする。ハイパー頑張ってください……と言いたいところですが、ヤマブキ先輩のバイタルが微妙っす」

 

 その通りだ。さっきから左腕に鈍痛が這い回っているし、右足もちょっと痛い。しかしこれだけで済んでいるとも言える。

 

「左腕は折れてると思う。全然力入れられないし。右足はなんとびっくり痛めた程度」

 

<さすが神機使いすね。戦えるんすか?>

 

「無理ですね。今日はもうベッドで安静にしていた方がいいですね」

 

「安心したっす。戦えるくらいには大丈夫なんすね」

 

 話が通じてない。私のさり気ない思いが却下されてしまった。

 今の私は左腕が重傷、右足がそこそこ重傷の患者さんだというのに、この仕打ちは如何なものだろうか。回復錠を飲もうにも日頃から有事に備えてアイテムを携帯しているわけではないから無理だ。アイテムを取りに行くのもこの足じゃあ暫く時間がかかる。

 というわけで暫く落下地点に留まって死んだふりでもしておこう。幸いなことに神機兵は先輩と遊ぶのに忙しいもたいだから、私が死んだふりの真似事で意識を失っていても気がつかれないはずだ。

 

「ヤマブキお姉様!」

 

 頑張って意識を飛ばしてしまおうと企んでいると、お嬢ちゃんの方が先にやってきてしまった。今から気を失ってももう遅いからこの作戦は諦めるとしよう。

 お嬢ちゃんは全速力でこちらに向かってきた。それはもう100メートルを5秒で走る勢いでだ。それも自分の神機と私の神機を持って。

 お嬢ちゃんに抱き起こされ、そのまま身体を支えてもらう。右足が痛くて立つのも辛い。

 

<ヤマブキ先輩。神機兵が落ちてくるっす。それも防壁の内側に!>

 

 見上げると確かに真っ赤な神機兵が落ちてくる最中だった。同時に先輩も落ちてきてきていた。察するに先輩が飛び蹴りかましてそのまま一緒に落下したんだろう。よりによって内側に。

 このまま落ちていくと先輩も私と同じ運命をたどるはめになる。

 

「お嬢ちゃん! 半年先輩をキャッチしに行きなさい!」

 

 戦力の減少は負担の増大につながる。良くない流れを断ち切るためには行動あるのみ。

 

「はぃ。半年先輩お兄様を救出します!」

 

 聞き分けのいいお嬢ちゃんは人間離れした跳躍力で先輩の元へと向かう。私を抱きしめたままで。抜かった。

 重力から解き放たれた存在なのか、お嬢ちゃんの動きはアラガミすらも手におえないほどのもので、一緒に跳んだり跳ねたりしている私は生きた心地がしない。もしもお嬢ちゃんが拘束を緩めたりでもしたら、私はまっさきに地面に叩きつけられて死んでしまう。

 だけど、お嬢ちゃんの腕の力も素晴らしく私は跳んでいる恐怖はあったが突き落とされる恐怖はなかった。

 抜群の身体力を誇るお嬢ちゃんは外部居住区の屋根の上を飛び回りながら先輩に接近し、空中でキャッチ。両腕の塞がった状態であっても華麗に着地した。

 

「死ぬかと思いました」

 

「キャッチされた瞬間、中身がそっくり出てくるかと思った」

 

 お嬢ちゃんコースターから解放された私と先輩の感想だ。

 

「で、でぇ、俺の神機を早く寄こせ」

 

 物凄い勢いで腹にラリアートを受けたダメージが残っている先輩はげっそりとしていた。神機兵との激しい運動の後に受けたのがまずかったのだろう。だからといって目の前で吐いたりしようものならエミッターで塵に変えてあげよう。

 ぐったりしながらも愛機を要求する先輩にお嬢ちゃんは首を傾げるだけだった。

 

「あ、あのですね。私、半年先輩お兄様の神機持ってないんです。半年先輩お兄様の神機は大オペ子さんが運んでいますから」

 

「マジか?」

 

「はぃ。マジなんですぅ」

 

 お嬢ちゃんから事情を聞くと、オペ子ができるだけ早く私に神機を渡すように指示を出したらしい。さすがオペ子。でも今回に限っては私よりも先輩を優先してほしかった。

 タイミングが悪い。深く溜息をつくと、ちょうど神機兵の少し後ろあたりにオペ子を見た。右手に自らの神機を構え、左手に先輩の神機を引き摺りながらこっちに向かって走ってくる。

 

「ちょっと待て! アイツ、俺の神機引き摺ってるぞ!」

 

 先輩も気がついたようでオペ子を指さしながら叫んだ。

 もちろんそんな叫び声なんてオペ子に聞こえていたところで改善されるはずがなく、容赦なく引き摺りながら、背後から神機兵へと襲い掛かった。しかしチャージスピアのバックフリップ並に華麗なジャンプで回避される。

 

「惜しイ!」

 

「全然惜しくねぇよ、バカ!」

 

 無事合流したオペ子の頭を叩いた先輩は散々に引き摺り回された神機をひったくった。

 

「よしよし。傷ついてない」

 

 愛用のバスターブレードのあちこちに目を走らせて、傷がないことを確認した先輩はホッと一息つく。

 なんにしても飯番隊全員が揃った。

 

<あー、イチャついているところ悪いんすけど>

 

「どした、ハリトラ?」

 

<表にスサノオが来てるんすよ>

 

 どうやら防壁の外側にお嬢ちゃんの大好きなスサノオが待ち構えているらしい。

 その報告を聞いたお嬢ちゃんはとてもいい笑顔をしているから誤情報というわけではないのだろう。

 

「てことは、戦力が減るってことだな」

 

「そーなりますね。それも一番強いのが離脱しますよ」

 

「しかも離脱したらすぐは帰ってきませンヨ、ヤマブキ先輩」

 

 お嬢ちゃんの悪い癖はどんなにピンチであってもスサノオを優先してしまうことと、スサノオをいたぶり殺すのに時間をかけすぎてしまうことだ。なんでスサノオってすぐに死んでしまうんでしょうか、なんて首を傾げるもんだから手に負えない。

 

「お嬢ちゃん」

 

「はぃ。なんですか、ヤマブキお姉様」

 

「私を防壁の上まで連れて行ってください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二度目の死ぬかと思った。まさかお嬢ちゃんが防壁のでっぱりやくぼみを利用して駆け上がるとは思わなかった。せめて階段を使ってほしかった。

 常識外れなお嬢ちゃんは、私を防壁の上に下ろすとすぐさま防壁の外へと飛び出していった。スサノオの死が確定しましたとさ。

 私の方はどちらの戦場にも属さない快適な場所で神機を構えていた。

 右足と左腕負傷につき、走り回ることも動き回る敵に狙いを合わせることも困難なので、足手まといにならないように高所へと避難したというわけだ。

 しかしながら高所へ来たのは避難するだけが目的ではない。

 とても分かりやすく言うと援護射撃を行うためだ。それも敵の上を取るということはけっこう優位に立つことができる。

 防壁の端に座って神機を構える。遥か下では先輩とオペ子が神機を振り回して応戦しているが、神機兵の動きは機械のくせして軽やかで二人の攻撃を危なげなく回避していく。まさしく舞っているような動きだ。

 ゲームでの神機兵はゴリラなんじゃないかってくらいにウホウホしていたというのに、実際の神機兵はまるで違う。

 さらにゲーム内では並の神機使いを超えると言われているだけだったが、現実ではその評価が嘘でないことを証明してしまっている。

 ジュリウスの教導の成果がアレだとしたら、ジュリウス本人も相当強い神機使いなのだろう。さすが主要キャラと感心すると共に、アイツは一体なんて化け物を生み出してくれてんだと抗議したい。

 さっきから誘導弾をばら撒いているのに一発も当たらない。そもそも掠りさえしないんだけど。

 

「どーやって主人公たちは駆逐してきたんでしょうね」

 

 地面に着弾した後に敵に向かって行くバレッドを撃ってもすんでのところで避けられてしまう。多方向からのバレッドも役に立たない。遠距離設置型の機雷を撃ち込んでも相手にされないし、場所柄大爆発するバレッドは撃てない。撃ちたくても許可下りない。結果、敵の動きをちょっとだけ邪魔することしかいできなくなってしまった。

 

<一発くらい斬らせろ!>

 

<オスゴリラのくせに避けてんじゃネェ!>

 

 インカムからは二人の怒声が聞こえてくる。かれこれ5分は経つけどヒット一発もないのにブッ飛ばされたりしているからそれはもう怒り心頭だ。

 

「敵に向かってドーン」

 

 ロケット弾を連射してみるが上手く避けられたり大剣でガードされてしまう。そこに先輩とオペ子が襲撃しても避けられるか防がれるかのどちらかだ。それどころか攻撃するより先に殴り飛ばされてしまう始末。

 

「お嬢ちゃんはまだ?」

 

<すみません! スサノオに続いてボルグ・カムランの群れがやってきてるみたいなんす!>

 

「だろーね!」

 

 暫くの間、お嬢ちゃんは戻ってこれないとのことだ。

 これはどうやら三人でなんとかクリアしなければならない課題のようだ。

 早くなんとかしないと先輩とオペ子がやられて、次のターゲットが私になってしまう。この万全じゃない状態で襲われたら絶対に勝てない。というかあの動きを見せられると万全でも勝てない気がする。

 

「さて、どうすべきでしょうか?」

 

 目的を神機兵の討伐だけに絞り、他の利害を一切カットして思案する。リスクもリターンも全部度外視。最悪命が助かっただけでも儲けものなんて考え方をすれば、方法の一つや二つ浮かんでくる。就職だって条件選ばなければ幾らでもできるんだ、作戦なんてもっと考えられるって話だ。

 

「半年先輩、オペ子ちゃん。とりあえず時間稼ぎよろしくぅ!」

 

 時間稼ぎを勝手に押し付けると、私は暫くの間オラクルリザーブの作業に入った。

 考えた作戦はとてもシンプルなものだけど、準備にけっこうな時間がかかるので、その間の囮役が必要になる。囮役というくらいだからしんどいのは囮役になった人。だけど、結果的に一番しんどくなるのは私になる。

 オラクルを溜めて溜めて溜めまくる。具体的言うと満タンになるまで溜める。今回はお薬でバーストできないからじれったいほどゆっくりとしかオラクルが溜まらない。

 じっと待っていると右足と左腕の痛みがやけに自己主張してきて、額から脂汗が噴き出してくる。痛みがなくなるというのなら足も腕も切り取って良い。それほどまでに足と腕にたむろしている痛覚が邪魔だ。

 思えば前世でもこんな痛み感じたことがない。あったとしたらトラックに衝突した時の一回くらいだろうが、嬉しいことにその時には痛みを感じる暇もなく死んだみたいだから激痛に悩まされた記憶はない。それとも記憶に残すこともできないほどの痛みだったのかもしれない。

 痛すぎるから頑張りたくない。でも頑張る必要があるから頑張るしかない。

 目をつぶって激痛に耐える。どれくらい耐えればいいのかも検討がつかない。

 喉はカラカラ、神機を握る手のひらは汗でびっしょりで不快だ。

 インカムから聞こえてくる二人の声も段々と荒い呼吸音だけになっていく。

 お嬢ちゃんはいまだに戻ってこず。

 

「こっちは周囲が羨む飯番隊ですよ。強敵がおいそれと来ていい場所じゃありませんて」

 

 テスカトリポカ然り、スサノオ然り、マルドゥーク然り、イカれた宗教団体然り、暴走神機兵然り。こういうのは主要キャラたちに領分だろうに。

 

 最後のオラクルリザーブを終える。

 少し端から離れてオラクルを何発か撃ち出す。

 これで準備は完了。後は神機兵を呼び出すだけなのだが、これがけっこう難しい。なにせ今の私は挑発フェロモンを持っていないし、神機兵から離れた位置にいる。ちょっとした大声や身振り手振りじゃあ何の意味もないだろう。

 遠くから見えるくらいの派手な何かをすればやってきてくれるかもしれないが、これも運頼みの方法だ。

 しかしやらないよりはマシだろう。

 右腕と左足と身体をうまく使って神機の銃口を空へと向ける。

 撃ち出す弾丸はとりあえず作ったけど使う機会に恵まれなかったものだ。一応何かあれば撃とうと思って携帯していたのが、今日出番到来した。

 

「たまやー」

 

 バレッドを発射。空へと飛んでいったオラクル弾はある程度の位置まで飛ぶと、三つに分かれて更に飛んでいき、大きな爆発を起こす。炎の大爆発と氷の大爆発と雷の大爆発だ。どれもこれも装飾弾を使っているので低燃費なバレッドで名前を『信号弾』という。ちなみに指示の内容は考えてない。

 空で起きたカラフルな爆発はそれはもう盛大で、下で無益な争いをしていた輩共はそろって空を見上げてくれた。神機兵ちゃんも空を見て、防壁端に立って右手を大きく振る私の姿をばっちりと見てくれた。

 問題はここから。ジュリウスの教導を受けた神機兵がどう動くのか。私の存在を注意しつつ戦いを継続するのか、あの爆発を警戒して潰しにかかってくるのか。そもそも何も考えずに本能のみで試合続行するのか。

 神機兵は動き出した。先輩のバスターブレードを避け、オペ子のブーストハンマーを弾き、防壁目掛けて跳躍する。

 神機兵がいかに人間を超えた身体能力を持っていようともひとっ跳びで防壁を超えることはできるはずがないが、神機兵は防壁表面に無数に存在するくぼみやでっぱりを上手く利用して昇ってくる。

 頂上到着まで一分とかからなかった。最後の最後で隙を晒すことをしようとしない神機兵は登頂と同時に跳び上がり、こっちの度肝を抜いてくる。

 ハイジャンプからの攻撃が来ることは予想できる。落下しながら振り上げた大剣で分かってしまう。

 狙うは着地の瞬間。足が地面にタッチするかしないかのギリギリで仕留めさせてもらう。

 神機兵が雄叫びを上げながら落ちてくる。

 私は無言で剣の軌道から抜け、神機兵の着地地点の近くに作っておいた大量の球形オラクルバレッド目掛けて自身の身を守る武器である神機を投げつける。

 私の作戦はシンプルかつデンジャラスなものだ。

 まずはオラクルを最大まで溜めて、そのオラクルを利用して触れたら大爆発するオラクル機雷を固めて置いておく。それが終わったら、相手の注意を自分に向けさせて、こちらに来てもらう。で、後は機雷にぶつけて終わりだ。

 途中までは作戦通りになったが、やはり最後は無理があるものだ。相手は戦いの最中にばら撒いた機雷の全てを避けつつ戦闘を続けていた。つまり機雷をちゃんと認識している。

 こちらに来た時に跳んでくれたのは嬉しいことだったが、残念なことに着地地点に機雷はなく、その少し横に機雷群があった。

 だったらやることは一つ。私が起爆スイッチになればいい。

 だから神機を機雷群に向けて投げつけた。これで事は成功した。これでせめて右足が無事だったならば急いで逃げ出して大成功になったというのに。悲しいことに今回の戦績は相討ちだ。

 だけど、私もまだ死ぬ気はないものだから無事な右腕で顔を庇って大爆発の嵐に飲まれた。

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