たとえば介入者が居たとして、原作というものは一体どのような動きを見せるのだろうか。介入者が介入しただけの成果を反映した未来を描いてくれるのか。それともどんなに頑張って介入しても原作通りの流れになってしまうのか。
どっちだろう。
前者なら介入した瞬間に原作は崩壊。あとは見知らぬ道のりだ。もう介入者の知識は役に立たない塵だ。
後者ならいくら頑張ったって無駄。助けたい人は助けられずムカつくアンチクショーは殺せずだ。原作進行の為の何らかの働きによって行動や思考の制限がされるだろうね。こっちも原作知識は役に立たない。もしかしたら原作の流れを乱そうとするといして未知の力によって処断される可能性がある。
もう一つ気になることがある。
原作は必ずしも原作通りになるのか、というものだ。映画とかは何度見ても同じ流れで同じ終わり方をする。人によって創作されたものだから当たり前だ。
ゲームも人がストーリーを作り上げプログラミングしたりしているから展開は同じ。選択肢を変えれば違う結末になるかもしれないけど、それも結局は同じこと。
じゃあ、創作物の世界と全く同じ流れを行っているこの世界は、必ずゲームと同じような流れになるのか。
私たちは今生きている。原作を知っている私がいなかったとしても生きている人がいる世界だ。そんな世界は本当にゲーム通りに進むのか。
これに対しての答えを述べるのなら、答えはゲーム通りに進む、だ。
何故なら数週間前リンドウが任務中に行方不明になったからだ。ゲーム通りの展開だ。
さらに数日前にリンドウの死が正式発表された。これもゲーム通りの展開だ。
神機使いの中でとても実力がある男の死は衝撃的だったそうだ。極東所属の神機使いのほとんど全員がリンドウの死に泣いた。
彼ほど多くに慕われた人間はいないだろう。彼ほど人類の希望たりえる強さを持った神機使いはいないだろう。
リンドウの人格と実力を惜しむ声がそこかしこで聞こえてくる。
極東支部所属食料貯蔵プラント護衛部隊。通称『飯番隊』もリンドウの死に嘆き悲しんだ……ということは特になかった。私たちに限ってそういうことはなかったみたいだ。
「リンドウねぇ……きっといいやつだったんだろうけどさ。オレ、一度もあったことないんだよな。泣けって言われて泣けるほどの付き合いがないじゃあしょうがないよな」
いつものロビー。そこに置かれたソファーに寝っ転がりながら言ってのける先輩。その顔は素晴らしくどうでもよさそうな顔をしていた。
「少しは悲しんだらどうですか。ボクらの同僚が死んだんですよ」
先輩がいるソファーの向かい側にある椅子に座るミチオがざまぁ見ろと言いたそうな顔をしていた。言っていることと顔が合っていないのは極東支部のエリートたちが気に食わないからだ。
「知らない他人相手に泣けるほど人間が出来てませんから」
どうせ生きているから心配するだけ無駄、と考えているのは私だ。それでも心配すればいいのに心配できないのは所詮は他人だからと考えているからか。
「で、今は新型くんがリーダーやってんだっけ。いやぁ出世だな」
「実力があればすぐ出世できるんだよ。そういう意味でいうのなら実力の足りない二人は万年辺境暮らしだよ」
「辺境バンザイだ。アラガミが少なくて命の危険が極力少ないのなら中心よりも外様が天国。地位や名声があっても死んじゃうようならやーだーね!」
「半年先輩に同意です。かっこよくとか尊敬されるとかどーでもいーです。地味で惨めでも安全第一」
「少しは向上心を持っていただけると助かるんだけど。二人してやる気なさすぎ!」
「やる気だけでメシが食えるならみんなそうしてる」
「そうですよ。根性論で全て片付くなら今すぐアラガミ消して見せろって話です」
プラントの護衛という仕事量が少ない割に衣食住が確約されていて、さらに命の危険に晒される心配が他の場所よりもかなり少ない職場の味を知った私と先輩は動かざること山の如しだ。
「それにしてもこっちに人は入ってこないのか。そこそこ腕の立つ奴来てくれねぇのか」
「先輩それは無理ですよ。だって腕の立つ人はいろんなところに引っ張りだこですから。こんな能無し神機使い二人でどうとでもなる場所に来てくれるはずがありませんよ」
「自分達で言っちゃうんだ。能無しだって」
「言えます。ゴッドイーターになった時から私はプライドを捨てました」
「かっこよくかっこ悪いこと言わないでよ!」
「ミチオ……オレたちは今の生活の為ならプライドとか尊厳だとかアラガミに喰わせてやれる。そういう生の感情の丸出しで戦うとか死にたい奴がすればいいんだよ」
「プライドとか捨てられちゃうほうが生々しく感じられるけど。それとボクの名前はミチオじゃないって言ってるよね?」
「知ってるけどさ。親しみを込めてミチオって言ってやってんだよ。感謝しろよ、このどうしようもねぇ豚野郎が!」
「感謝の押し付けが酷過ぎますよ、半年先輩。ミチオくんが泣いちゃいます」
「泣かないから。ていうかヤマブキもミチオって言うの!?」
「正式名称はミチミチオでしたっけ?」
「ちっがーう! 別に何も満ち満ちてないよ」
ミチオがそこそこのツッコミを披露してくれた。しかし、私と先輩の前では意味がない。興味がないから。
ミチオというあだ名は先輩がつけた。由来は確かミチオの正式名称から抜き出したとかで、今ではこのプラント内に浸透してしまった名誉ある人気者のあだ名だ。おかげでミチオの正式名称を口にできる人がいなくなるという事態になったが、この崩れ落ちた世界では立派な名前なんて飯の足しにもならないから気にしている人はいない。私もミチオの正式名称が何だったかもう覚えていない。
だが、ミチオはミチオで通じるのでもはや正式名称は必要ないことだろう。
この世界はアラガミの出現によってあらゆる抗争が消え去った。争いの原因である人間がひとまず喰い殺されたことが原因だ。
しかしながら、争いなんて考えの違う人間が一人二人いれば起きてしまうものである。人間がいる以上はたとえアラガミの脅威に晒されようとも争いが生まれる。
「我らの教祖様は今、神との対話をすべきだと仰られています」
争いの原因で多くあるのはやはり宗教観の違いだ。前世で見たテレビにはよく宗派の違いだとかで武器を取って戦うといった情報が流れていたもので、この世界でもまた宗教が争いを持ってきている。
アラガミという危機を前にして宗教が生まれるのは仕方がないのかもしれない。宗教は心の拠り所だから、追い詰められた人々が縋りたくなるものである。
「神との対話には供物が必要です。我らの教祖様は神と対話して、この混沌なる世界のために新たな秩序を授かろうとしているのです。それはとても素晴らしく立派な行いです。我らの教祖様は人類の救世主となるお方なのです。しかし、教祖様が神から秩序授かるには神を喜ばせるだけの供物が必要です」
しかしながら時にはおかしな宗教が出てくるものである。それもけっこうなトンデモ宗教。たしかこの世界ではサリエル種のアラガミを神と崇める宗教がいるとかいないとかゲームで言っていた気がするが、こんな宗教もいるものなのか。
「さぁ、この扉を開け放ちましょう。神の作り上げる新たな秩序の為に。教祖様と全ての人々の為に。ここにある全ての食糧を渡してください」
宗教団体『
という理想を掲げた宗教団体である。
規模は数十人くらい。教祖様が何者かは分かっていないが、ここ最近食料貯蔵プラントに神へ捧げる供物の提供を要求してきている。おそらく教祖様が贅沢な暮らしをするために信者たちにこのようなことをやらせているのだ。
よほど教祖の口が上手いか、信者となった人たちの心が限界を迎えていたか。
心が壊れかかっていようが馬鹿正直にそう信じて活動していようが、その活動に巻き込まれる側からしてみればたまったものではない。
わらわらとプラントを守る外壁の前に集まって要求を伝えてくる信者たちは鬱陶しいことこの上ない。彼等はただ要求するだけではなく、各々の棒とか石を投げつけてきたりしてくる。
悪い宗教だということは分かりきっているが対処ができない。
ゴッドイーターのすべきことはアラガミという脅威か人々を守ることであって、極悪人だったとして人間を裁くことではない。
だから私たちは外でワーワー騒ぎ立てる人々に対して何もできずにいる。
先輩は騒ぎ立てる信者を見ては私にモルターを撃ち込むことを命令してくるが、あいにく私は犯罪者になりたくないのでやんわりお断りしている。
「しかしまぁ……なんだ」
「何ですか?」
外壁の外で狂信的に教祖の素晴らしさを語りながら食糧を要求してくる信者たちを眺めながら、げんなりした様子で先輩が呟く。
「このご時世だってーのに神機も持たずにわーわーわーわー騒いで、アイツらが供物になるんじゃないか」
「あー。もうなってますよアレは」
私の記憶違いでなければ昨日よりも信者の人数が減っている。
「マジか。いやぁ、そうなると五月蠅い抗議もそろそろ終わるか」
「そうですね。きっと言われますよ」
「何をだよ」
「目の前の民間人を見捨てたゴミ屑神機使い二人組って」
「いいんじゃないかぁ、別にさ。そこまで名声にこだわってるわけじゃないしな」
「それもそうですね」
私と先輩は顔を見合わせて笑う。前世の私が見たら軽蔑されること間違いなしだ。
そうこう笑っていると後ろからフェンリル指定の制服を着た少女がやってきた。
「ヤマブキ先輩! お疲れ様デス!」
背後から飛びつかれる。背中に感じるほどよい温かさに心はほっこりする。
「よぉ、オペ子。どしたんだ急に?」
「きたねぇ声で呼ぶんじゃあネェヨ。言ってんダロ、オペ子って言うなっテ。許してないんだカラ」
「……ヤマブキちゃん」
「はいはい。オペ子ちゃん」
「はーイ! ヤマブキ先輩!」
元気いっぱいな笑顔で返事をするオペ子。ここのオペレーターをしているからオペ子という安直なあだ名を持つ少女だ。命名は先輩だ。
「オペ子よぉ。どしてヤマブキちゃんの時だけ可愛らしく振る舞うんだ?」
「あーン? 決まってんでしょうガヨ。女の子が大好きだからにサァ。男なんて女の子生むための種馬としてでしか価値のない獣ヨ。必要最低数だけ残して、後は消えるべきダネ。アラガミに喰われて死ネ」
重度の男嫌いで女性なら年齢関係なく大好きなオペ子に罵られる先輩。軽く涙目に見えたがあの先輩に限ってそれはないだろう。あっても私には関係のない話だから。
「でさ、オペ子ちゃんどーしたんですか?」
「指令が来ましタ! なんでも、こちらに向かってくるアラガミが居るとかデ。あの宗教団体が襲われないようにアラガミを討伐しろとのことデス。個人的には男だけは喰われても良いですけどネ……ケッ!」
唾を吐き出す。見た目はゆるふわ系だけど、男の前では口汚いヤンキー少女に大変身する。女の子にはとっても優しいから構わないけど。
「あーはいはい。分かった」
「おめぇにゃあ言ってねぇナ」
「オッケー。オペ子ちゃん、神機の整備終わってる?」
こう見えてオペ子はオペレーター業務だけでなく神機の整備などもできる素晴らしい子なんだ。
本職のミチオは逆に口先だけで何もできない整備士だ。整備士としての腕前は中の下で信頼できるものではない。
私と先輩はそれを知っているからミチオの数倍腕の立つオペ子に整備を任せている。もちろん頼む時は私が出向く。先輩は男だから門前払いにされてしまうことだし。
「既に完了してるヨ。後はヤマブキ先輩が存分に振るうダケ!」
プラントから少し離れた場所で私と先輩は淡々とアラガミを狩って行った。守られて起きながらも図々しく要求を述べてくる宗教団体を守るミッションなんぞ乗り気ではないが、所詮は宮使いの身分。やれと言われたからにはやるしかない。そうしなければ飯も食えないから。
「先輩。捕喰お願いします」
ブラストで撃ち抜いたザイゴートやオウガテイルは先輩が美味しくいただきました。それでもまだまだうじゃうじゃいるアラガミに、私はオラクル弾を撃ち込み先輩はバスターブレードを振るう。えっさほいさとアラガミを駆逐していく。
「にしても多いなぁ」
「ですね」
プラント周辺地域はアラガミの出現率が極めて低い。そして滅多に強いアラガミは現れない。そんな場所だからこそプラントが建設されたわけだが、今日は何だかアラガミの数が多く久しぶりの長期戦だ。
アラガミの質自体は低いから苦戦することはないが、数が多いということはそれだけ手間だ。たまに顔を出してくるシユウが鬱陶しい。
「大体五か月ぶりじゃないですか。こんなに相手するのは」
「ふうん……そーだな。まぁ、雑魚ばかりだから命の危険はあんまりないんだよな。いやー、いいねぇこの職場。戦闘がなければもっといいねぇ」
「それなら神機壊したーって虚偽報告すればいいんじゃないですか。そうすれば数週間は確実にサボれますよ」
「それすると怒られるだろ。どっちかが第二世代ならともかく第一世代なオレらは近接がいないと捕喰もままならないぞ」
「そうでしたね。じゃあ新人には第二世代がいいですね。そうすればほら、私たちサボっても文句言われませんよ」
「うん。名案なんだけどさぁ。今考えてみれば新人教育は酷く面倒だからちょおっと新人はご遠慮願いたいな。殺さないように配慮しなきゃいけないのも厄介だし」
「それって私にも思ってたんですか?」
「ちょっとな。だけどお前はけっこう飲み込み速いし、手間がかからなくてよかったと思うぞ。まぁ、基準がお前しかいないから分かんないけどな」
あはは、と笑いながらオウガテイルを真っ二つにする先輩。
「考えてみればオレの人生の中で出会った神機使いはお前と死んだ先輩の二人だけだったな」
「そういえば半年先輩にも先輩がいたんでしたね」
たしか私が赴任する一ヶ月前に戦死したとか。熱血漢で弱気を助けるを信条にしていた人で、神機使いとしてもレベルが高くて信条を貫けるほどの実力者だったのだけど、その信条を貫くことばかりをこだわり過ぎてアラガミに殺されてしまったとか。それから先輩が逃げることは生きることだ、を座右の銘にしたとか。
「おうよ。馬鹿な先輩だったよー。超反面教師だったな」
「……そう…なんですか」
世間一般的に先輩のような方の方が反面教師だと思うのだが。しかしまぁ、私としてもよく分からない熱血精神振りかざすような奴じゃない先輩の方が何倍もマシだから良しとしておこう。
周辺にいたアラガミをあらかた片付けた。先輩は神機を肩に担いで一息ついていた。
「お掃除終わりだ」
「お疲れ様でした」
私も神機を力なくぶら下げて休憩する。
<もしもーしデス>
暫く二人してのんびりしているとインカムからオペ子の声が聞こえてきた。
「どーした?」
<おまえの声はききたくないんだけド。私はヤマブキ先輩とだけ話したーイ>
「はいはいどうしました?」
<はい、先輩! 何だか不穏な動きを見ました>
「不穏な動き?」
<はイ! 少し前にあのうぉっとおしい宗教団体がいなくなりまシタ。しかも去っていった方向が今先輩たちがいる方向デ。そっちに本拠地があるのカ、それとも他に目的があるのカ。分かりませんが気をつけてくださイ。こちらもすぐに迎えを持っていきマス>
「分かりましたよー。じゃあよろしくね」
通信終了。どうやらあの宗教団体が動き出したようだ。
目的は不明だけど、オペ子の推測が正しい気がしてならない。
何故なら奴ら神人対話の考えではアラガミは浄化の術だ。世界をより良き方向に持っていく存在に抗う私たちは、彼らからしてみれば人々を悪に引き込もうとする反逆者だ。私たちに危害を加えようとする可能性がある。
「半年先輩。聞きましたか?」
「おうよ。しかしまぁ、その前にお客さんだぞーい」
先輩のげんなりとした声の通りアラガミ共がまたやってきていた。
「さてとさぁ、今日くらいは頑張って雑草狩りをするか。と言っても迎えのヘリが来るまでだけどな」
「了解しました」
全滅させる気はない。だってそんなことしてたら命の危険があるかもしれない。私も先輩も自分の身の安全が一番だ。
また暫くアラガミ狩りをしていると、ドタドタと複数の足音が聞こえてきた。二人や三人なんてちゃちな数じゃない。十人以上の足音が引っ切り無しに聞こえてくる。
「神の御意思に逆らう愚かな者め!」
前衛として頑張っている先輩と顔を合わせてから振り返ると、プラント前でたむろしていた信者たちが挙って向かってきていた。それも両腕を大きく振りながらの全力疾走。
「浄化を受け入れろ!」
アラガミとの命のやり取りをしている最中のことであり、さらには向かってくる相手は今回の任務で守らなければならない人間たち。
対応が遅れたと言わざるを得ない。後衛の私が逃げ出すよりも早く、何人もの信者たちが私にしがみ付いてきた。その数七人。
ゴッドイーターとして鍛えているが数の暴力には勝てず組み伏せられてしまった。
「ヤマブキ!」
相手していたアラガミをぶっ殺した先輩が急いで向かってくるが、他の信者たちに囲まれ取り押さえられてしまった。神機使いは人間を守らなければならないものだから、傷つけることはできない。その考えのせいで抵抗できなかった。
「貴方たちが神の怒りを恐れていることは分かります。しかし安心してください。我らの教祖様が神との対話を行い新たな秩序を授かった暁には、教祖様が全ての人間を創り直してくださります。だから恐がる必要はありません」
唯一私たちを押さえる役割に従事していない男が朗々と話し出す。説法というものなのだろうが、全然心に響いてこない。
「さぁ、浄化を受け入れましょう。そして綺麗な心と身体で新たな秩序の中で生を謳歌しましょう!」
荒唐無稽な未来の想像を恍惚な表情で語る信者。暫く空の一点を見つめてウットリとしていた。
「神様へと捧げる供物を手に入れに行きましょう。彼らを見せれば快く供物を提供してくれることでしょうから」
人質になりましたとさ、と思いつつも必死にもがくが段々重ねに乗っかられている為に動こうにも動けない。使えるのは神機を持った右手だけだ。
先輩の方もガッチリと拘束されていて抜け出せそうにはなさそうだ。先輩の助けは得られない。
「では行きましょう。神様の供物を取りに。さぁ、二人を丁寧に運んでくださ――」
言葉の途中で信者が吹き飛んだ。何事かと言えばコンゴウが丸まって突進してきたのだ。鍛えていない信者はピクリとも動かなくなった。
「おぉ、司祭様。神の浄化をお受けになりましたか」
頭がおかしいとしか言えない。私の上に乗っかっている信者の喜々とした声音は狂いに狂っているとしか思えなかった。
「一緒に浄化を受けましょう!」
先輩を押さえつけている信者の一人が両手を広げてアラガミを受け入れようとしている。実に狂気だ。
守らなきゃいけない人間は死にたがり。アラガミを浄化の術と思い込んで、死にたくない私と先輩を無理矢理に自分達の宗教を押し付けてくる。
私も先輩も自分が一番可愛い。他人の為に身を粉にして働く気なんてないし、自分が犠牲になるだけで世界が救われるなら安いものだなんてことも思わない。
自身が一番価値がある、彼氏だろうと彼女だろうと家族だろうと自分よりも下の二番目からの存在でしかない。
大切な人を守りたいとは思っているけど、だからといって自分を犠牲にしてまでとは思わない。
自分本位だ。でも仕方がない。
転生して悩んで決めた生き方だ。そこに母親の無残な死を見て更に自分本位になった。
向かってくるコンゴウ。私たちを殺そうとしているのが見て取れるが、いつの間にか背後から迫ってきていたヴァジュラに襲われてあえなくお討ち死に。そしてもっとおっかないアラガミが私たちを殺そうと向かってくる。
「新たなる秩序の世界で!」
来世なんて不確かなものを夢見る馬鹿たち。
私は唯一不自由なく動かせる右腕を動かして神機を使う。狙いはヴァジュラ……といきたいが腕の可動域内で狙える位置にいないため狙わない。そもそも狙うつもりはない。
ブラストの引き金を引く。発射されたのは球形のオラクルバレット。銃口のすぐ前に浮いているだけで動かない。
このバレットは何かにぶつかれば大爆発を起こすバレット。これからやることは至極簡単。私は顔を顔面を地面にくっつけてから、右腕を振るって神機をバレットに叩きつけた。