外様神機使いの日常   作:ネコ削ぎ

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 大爆発が三回。

 けっこうな爆発を前にして身を伏せた俺は何とかなったが、バカみたいにボケーっと突っ立っていたオペ子は無様に吹き飛んでいった。地面に叩きつけられながらも「先輩の愛が痛くて目覚めそうデス」なんてそれこそバカみたいなことを言っていたから、きっと軽い打ち身だけで済んだな。

 オペ子が目覚めたんじゃないかと思いたくなるような笑みを浮かべて立ち上がるのを確認してから、俺も身を起こす。やっぱなぁ、先に起き上がって攻撃を受けるのは勘弁したいからな。

 

「やったかなー? まぁ、これ言うと大体やってないんだけど」

 

 昔から連綿と受け継がれているフラグという奴だ。爆風が晴れた先を見てみれば、やっぱりまるドッグは蠢いていやがった。お兄ちゃんはしつこい人もそれ以外もけっこう嫌いだ。

 

「致命傷は与えられないと思ってたけど、致命傷負ってねぇじゃあねぇか!?」

 

<何言ってるんですか?>

 

「ヤマブキちゃん。冷静なお返事は要らない」

 

 ゆっくりと構えて見据えてくるまるドッグと、爆心地からは離れていたとは言えダメージを受けてヘタレているスサノーとクアドリカ。クアドリカくらいは消えてもらってもいいんだが、世の中そうよくは回ってくれない。

 さて、ここからが問題だ。俺の立てた作戦の達成条件はまるドッグの殺害もしくは追っ払うことだ。別にヤマブキちゃんの腕を過信して、全員葬ってやれとかは一切考えていないので、他のアラガミは基本的に無視。まるドッグちゃんさえ何とかすれば、こっちの神機が息を吹き返すので、蚊帳の外の奴らはその時になって仕留めてやればいい。

 と、言っても全員相手はしんどいのでクアドリカとスサノーのどっちかをぶっ潰したら撤退しようと思っている。だって、いちいち相手すのも面倒だし、命が勿体ない。命を燃やすときは死ぬときだって決めてるから、こんなんところで熱くなる必要はないんだ。

 

「さぁーてと。大声で威嚇すればビビッて逃げてくれるかいな?」

 

 実行した瞬間に喰い殺されそうだから止めておこう。オペ子が俺の前に居てくれればやるんだけどなぁ、アイツぶっ飛んでちょっと後ろの方にいるし。

 まずはオペ子よりも後方まで下がるか、なんて考えちゃってるとまるドッグが動き出した。

 遠吠えするように顔を空に向けたかと思うと、何か身体から真っ赤な何かを吹きだしてくる。血だったらいいなぁ、と思いながら眺めていると、ハリトラの慌てた声が聞こえてくる。

 

<マズイっす!? マルドゥークが周囲のアラガミを呼び集めているっす!>

 

 どーやら嫌なことをしているらしい。俺は別にアラガミ博士でも勤勉家でもないからぜんぜーん分からない。意外に勉強しているヤマブキちゃんが近くにいないと、敵の行動がヤバいものかどーかも分かったもんじゃない。

 周囲のアラガミを呼び寄せタイムを終えたらしいまるドッグは満足したのか赤い何かを出すのをやめてくれた。

 

「おっ、おー」

 

 アラガミを呼び集める。つまりは援軍要請して一気に揉み潰しにくるのかと思っていたのだが、まるドッグは知能指数が低いのか小者なのかもう俺が相手する必要ないだろうと思ったのか、そのまま背を向けて逃げ出してくれやがった。

 

<マルドゥーク撤退。およそ一分後に有効範囲から抜けるっす>

 

<よーし。ミチオ、今すぐ車で送ってください>

 

<やだ! 絶対にいやだ! アレがいなくなってもまだ二体もアラガミがいるんだ。ぜぇったいに車には乗らない!>

 

「いいから車に乗れ。そして事故って死ね、この裏切り者めが!」

 

「そうですヨ。役に立たないテメェは事故ってアラガミの餌食になるのがイチバンの有効活用なんダヨ!」

 

 スサノーとクアドリカが襲ってくるので、プラント方向にダッシュしながらの会話。先行するオペ子が羨ましい。

 普通ならすぐさまアラガミに追いつかれる状況なのだが、俺もオペ子も追いつかれそうになりながらも追いつかれずに逃げ続ける。やっぱりスタングレネードは役に立つ。ミチオの何乗も役に立つ。

 走って走って走っていると、ちょっと前を走っていたオペ子が何もないところで躓いてこけやがった。顔面で地面をすべるという、それはもう盛大なものだった。

 俺はすぐさま跳んで避けようとしたが、すぐ後ろに着弾したミサイルの爆風でバランスを崩してオペ子と同じように転んでしまった。

 

「助けてオペ子ちゃん!」

 

「勝手に死んでロ!」

 

 せっかくここまで逃げたのに、完全に追いつかれてしまった。こりゃあマズイ。

 マズイけど、既にまるドッグの感応現象の有効範囲からは抜け出せているようなので、しぶしぶ神機を構えて応戦することにした。

 クアドリカがミサイルポッドをパカッと開いて攻撃しようとしたので、俺は逃げることにした。ミサイル掻い潜って接近する度胸なんてないし、あってもやらない。

 さぁ、避けるぞって時にクアドリカのミサイルポッドがオラクル弾によって爆散する。

 

「おまたせしましたぁ!」

 

 背後を振り返ると、ミチオの運転する車から半身を乗り出して神機を構えているヤマブキちゃんがいた。

 

「到着!」

 

「ふぎゃっ!?」

 

 ミチオが巧みなハンドル捌きでヤマブキちゃんを振り下ろす。傍から見ると事故現場にしか見えない。

 

「そしてさらばだ!」

 

 ドリフトの容量で瞬時に方向転換をしてプラントへと逃げ帰っていくミチオ。振り落とされたヤマブキちゃんが無言で、逃げるミチオの車に向けてオラクル弾を撃っていた。当たるか当たらないかのギリギリの射撃だった。ずいぶんと腕を上げたと思う。

 一通り撃った後にヤマブキちゃんが合流した。これで飯番隊内で現在動ける人員が揃ったというわけだな。

 

「よーしよーし。数の不利は覆した。お前たち、やぁっておしまい!」

 

「悪人の台詞ですね。しかしながら半年先輩。遠くの方……ほら、あそこらへん、何かコンゴウとかオウガテイルとかザイゴートが向かってきてますよ。数の不利再びですよ」

 

「今度こそ逃げるべきですネ、ヤマブキ先輩。囮はそこの鼻くそマンに任せテ。おい、鼻くソ。貴方の言う通りデス、オペ子様って言いナ」

 

「えー、めんどー」

 

「じゃあ、ここは尻尾を巻いて逃げるってどうです? そして籠城しちゃいま……あぶな!?」

 

 ヤマブキちゃんが言い終わる前に攻撃を仕掛けてくるスサノー。よく分からないオラクル弾みたいなのを連射してきた。避けられなさそうなので、全員でシールドを展開してガードした。危ないったらありゃあしない。

 スサノーの攻撃を必死にガードしていると動けなくなって、それを見たクアドリカが遠慮なくミサイルなんざ撃ち込んできやがった。

 

「ちょーし乗り過ぎだ」

 

「でもでも、こんなに弾幕張られると動けませんよ。それに援軍が合流してきました」

 

「ちくしょーめが。やけに頭脳プレー旺盛に来やがって。エリート神機使いでも喰ってパワーアップしたのか?」

 

「以前出会ったスサノオだとしたら、ジーン喰ってますよ。それじゃあないですか?」

 

「いいや、ジーンはありえない。命令無視して死んだ奴に頭脳プレーは無理だ。きっと別の誰かだ。だってアイツ神機使い殺しなんだろ。きっとたらふく喰ってんだ」

 

「どーせ喰うのは男だけだロ。というわけダァ、半年男、テメェは死ネ」

 

「お前、俺のことそんなふうに呼んでたのか。今まで女子の名前しか言ってなかったくせに」

 

<諸先輩方……ずいぶんと余裕そうっすね>

 

 心外なことを言われてしまった。ハリトラの奴は目が節穴か。このミサイルと訳の分からない光弾の雨あられに晒される俺たちのどこが余裕だ。もう死にそうです。

 

「どうすればいいかねぇ?」

 

 余裕はないけど、軽口は叩けちゃうんだぜ。表面上はけっこう余裕なんだぜぇ。

 敵の攻撃がやんだ時には眼前には援軍が大集合していた。まるドッグめ、犬の分際で頭の回ることをしてくれる。

 

「よし、ヤマブキちゃん。後は任せたぜ!」

 

「オッケーです、先輩。逃げたらその背中をエミッターで焼いちゃいますので任せてください!」

 

「お前は先輩を敬うということを知らんのかい」

 

「先輩こそ、後輩を大事にする心がありませんね」

 

「ねぇよ。そんなめんどいもん」

 

「こっちもありません」

 

「このオペ子はありますヨ。ヤマブキ先輩に対する敬愛を、半年男に対する蔑みの念ヲナァ」

 

「くそ、俺を含めてサイテーな奴らめ」

 

<本当に余裕そうっすね!?>

 

 表面上は確かに余裕だが、内心では大パニック状態だ。囲まれてはいないが絶体絶命の大ピンチ。早まった小型アラガミの進軍に超ピンチだ。

 オウガテイルが飛びつてい来るから避ける。隣にいたヤマブキちゃんも突っ込んでくるザイゴートの攻撃を回避して離れてしまった。オペ子も同じように遠く離れて、見事分断させてしまった。

 小型アラガミのちまっこい攻撃に混ざるようにコンゴウたちが拳を振るってくる。そしてさらにスサノーの尻尾突きが繰り出される。クアドリカの方はヤマブキちゃん征伐に向かっていて助かる。

 

「冗談抜きでマズい。援護呼べ、援護を!」

 

<到着する前に全滅するのがオチっす!>

 

 援護まではもたせてやる、なんてど根性は持ち合わせていないので、口を噤んだ。これはもう人生ゲームオーバーだな。

 こんなご時世だから死は覚悟する。だけど死に急ぐ気はないので最大限の抵抗はさせてもらう。そうすれば奇跡的に助かるような出来事が起こるかもしれない。たとえば、こここらへんの地形が崩れてアラガミ共が生き埋めとか。まぁ、地質調査でそんなことにはならないって結論がでてるんだけどなぁ、数年前に。

 ザイゴートの毒ガス攻撃を避けて、飛びかかってくるオウガテイル堕天を盾で弾き、コンゴウの空気弾に吹き飛ばされて、スサノーの尻尾攻撃を慌てて回避する。

 統率もなく個々でやってきてくれるのなら、こっちも上手く立ち回って数を減らせるのに、コイツらは本当に何でか上手く連携してくる。おっかげで防戦一方だ。

 

「ふざけんなって!? 本当にふざけんなって!?」

 

 バスターブレードを振るう暇もないぞ。振るってる最中に攻撃受けてキャンセルだ。

 それでも動き回って、ようやくオウガテイルを一匹ぶっ殺す。

 そして一匹潰した腹いせにコンゴウ回転アタックを受けてぶっ飛んだ。ギリギリクリーンヒットしなかったけど、痛いもんは痛い。そして痛いと訴えても無視して迫りくるアラガミ団の横暴さに心までもが痛い。

 これはマズいとヤマブキちゃんにアイコンタクトで救援要請しようとしたが、あっちはあっちでクアドリカの攻撃から身を守る最中に、寄ってくる小型アラガミを銃身の底面に装備された小型スパイクハンマーで追っ払うので精一杯みたいだ。

 じゃあ、ダメ元でオペ子はどうだと見てみれば、性別女以外の生命体に囲まれて発狂していた。あれはもう末期の病気だから放っておこうか。どーせ死ねばなんとか治るさ。

 

「ええと。悲しいかな……この度を以て飯番隊解散だわなぁ」

 

 とっても悲しい宣言をしたら風が吹いた。それも宣言を覆すような力強い風が。

 正面を飛んでいたザイゴートがポトリと地面に落ちる。

 

「ひゃっはぁっ!」

 

 ザイゴートが落ちる瞬間に何かが動く。目にも止まらないスピードで。

 ソレは動く度にアラガミを足場にして、他のアラガミに飛び移る時に足場のアラガミを絶命させる。それを何度も何度も繰り返して周囲の小型アラガミを一掃した。

 

「アァァァアアアイムゥッ!! ハァッッッピィィィィイイイイッ!!!」

 

 綺麗で品のある顔を下品な笑みで歪めたお嬢ちゃんが吼えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シィアワァセェイィ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昔からそうでした。

 弟が生まれてきてからというものの、わたくしはお父様やお母様から怒られてばかりでした。

 理由の全ては弟の仕出かした事についてでした。わたくしの一切関与していないことで怒られました。

 廊下に飾られていた高価な花瓶を弟が割ったら、何でちゃんと見ててやらなかったと怒られ、弟が勉強から逃げ出したら、お前がしっかりとやらないから真似するんだと怒られ、先日も弟がお父様に反発してゴッドイーターになりたいと言って家を飛び出した時に、お前が余計なことを吹き込んだからだと怒られてしまいました。

 どれもこれもわたくしの関与していないことでしたが、そのようなことはお父様もお母様も問題ではありませんでした。長男という跡取りの弟を可愛がるあまりに怠った教育や、叱りつけたことで嫌われたくないという幼子のような理由で、疎ましく思っているわたくしを叱りつけるだけなのです。

 わたくしはお二人から好ましく思われていないので、ちょうどいい矛先だということです。

 嫌われる理由はわたくしが人間離れしているからです。

 まずはリンゴを握りつぶすということをしてしまいました。次はわたくしの方へと傾いてきた天井まで届きそうな衣装ダンスを支えてしまいました。最後は風に飛ばされ木に引っ掛かってしまった帽子を取る為に木を引っこ抜いてしまいました。

 わたくしは小さいころより大人以上の力があったのです。それも身体が成長していくにつれその力も増していきました。

 お父様もお母様も酷く恐がり、わたくしを化け物呼ばわりするほどのことでした。

 そしていつしか弟の仕出かしたことを肩代わりする役目だけが与えられるようになりました。

 お父様に怒られるのは嫌でした。

 自分が怒られないことを理解しているけど、その代わりにわたくしが怒られていることを理解できていない弟が嫌いでした。

 ですが、だからといって弟を突き放すことができないわたくし自身も嫌いでした。

 だって、弟を突き放して何かあれば、わたくしがお父様にお叱りを受けてしまいますから。そんなのは嫌です。

 だからわたくしは常に弟のそばに控えて、何もないことを祈り続けました。

 しかしながら、弟は反抗期でお父様やお母様に反発して悪いことをするばかりで、何もないことなんてありませんでした。弟が両親の気に食わないことをする度に、わたくしが怒りのはけ口として怒られる日々です。

 反抗期の弟が何時だったかゴッドイーターを知り、その活動を知り、自分自身でアラガミを倒す妄想をして、お父様やお母様にそれを言って反対された。

 ゴッドイーターなんてものは野蛮な仕事だから下賤な者共にでもやらせておけばいい。

 お父様がそう諭すが、弟は意地っ張りで自分の都合のいい場所しか掬い上げない性格だったから反論しました。

 そして、いつも味方してくれるからという理由でわたくしをつれてゴッドイーターになってしまいました。わたくしは完全に巻き込みでした。

 しかたありませんでした。わたくしは常に弟の犯した罪を肩代わりする立場。悪い意味で弟と一心同体なのです。

 神機の適合が確認され、神機使いになってすぐに、わたくしの元にお父様から手紙が来ました。内容は読まなくても理解できてしまいますが、もしもの可能性を信じて中身を確認しましたが、もしもはなく弟に傷一つ負わせるなという内容が書かれているだけでした。何かあったらお前が弟の盾になれとも書かれていました。

 わたくしは手紙をそっとゴミ箱の中に投棄しました。

 どうか弟が強くなって危険な目に遭わないように願うしかありませんでした。

 

 

 

 

 わたくしと弟が配属されたのは極東地域で最も暇で寂れたフェンリル極東支部所属食料貯蔵プラント護衛部隊でした。神機使いにとって最も安全な場所だそうです。

 所属している神機使いはお二人で、一人は金髪碧眼の半年先輩という方で、もう一人は褐色の肌と橙色の髪をしたヤマブキちゃんという方でした。

 弟は血気盛んなようで、すぐにでもアラガミ討伐にでましょう、とお二人に進言しますが、お二人はのんびりとした方のようでまずは訓練からな、と申し出をあしらっていました。

 わたくしはこのお二人がいる場所に来れて良かったと思いました。これで、弟がゴッドイーターが詰まらないものだと思ってやめたいと言ってくれればどれほどよいものでしょうか。

 ですが、弟はゴッドイーターに大きな幻想を抱いているようで熱心に鍛錬を積んでいました。それを見る半年先輩さんとヤマブキちゃんさんの目はとても冷やかだったのを覚えています。それと、お二人は顔を見合わせて「鬱陶しいな」と言っていたのを聞いてしまいました。相性が悪いということなのでしょう。

 事実、のんびりと過ごすお二人と、変に熱のある弟は決して仲良くすることはありませんでした。

 弟の方も歩み寄ることはしませんでした。弟はゴッドイーターを高潔で志高い人間だと思っているようでして、半年先輩さんとヤマブキちゃんさんを軽蔑するようになってきました。

 だからでしょう。弟はヤマブキちゃんさんの命令を無視してアラガミに立ち向かい、身体を横に真っ二つにされてしまいました。

 弟が死んだこと分かると、お父様から手紙が届きました。内容はありったけの暴言が書かれていました。弟を死なせ、お前が生き残るとは何事か。お前が死ねばよかった。

 どうして弟の仕出かしたことで、関係のないわたくしがそこまで言われなくてはいけないのでしょう。わたくしは何もしてはいないというのに。

 弟の死が持ってきた両親の怒りの手紙が辛くて、わたくしは部屋に閉じ困って日々を過ごしました。何かをやりたいとは思いませんでした。

 部屋の片隅で蹲っていると、定期的にヤマブキちゃんさんがやってきてわたくしの頭を抱きしめてくれました。

 そうして、何度も何度も囁きかけてきました。

 

 お嬢ちゃんは悪くないですよ。ジーンが死んだのは誰のせいでもなく、あの時配慮を知らずにやってきたスサノオが悪いんですよ。

 弟の仇を討つべきだよ。

 そもそも奴が現れなければ弟は私の命令を無視してむざむざ死ぬことはなかった。

 だから私たちは一切悪くない。

 

 その言葉はゆっくりとわたくしの中へと浸透していき、段々と心地よいものになっていきました。特に私たちは一切悪くない、という言葉が。

 そうです。わたくしは悪くありません。

 そもそもお父様やお母様がきちんと弟を叱りつけることができれば良かったんです。

 そもそも弟が悪いことをちゃんと知っていれば良かったんです。

 そもそもゴッドイーターなどにならなければ良かったんです。

 そもそも弟が生まれなければ良かったんです。

 そもそもわたくしにこんな怪力が備わってなければ良かったんです。

 そもそもスサノオがいなければ弟は死なず、わたくしもお父様に怒られなかったんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 そうです。全部スサノオが悪いんです。

 じゃあ、全部スサノオを殺してしまいましょう。

 だって全ての原因はスサノオなのですから。

 

 

 

 目を開けるとわたくしの部屋でした。電気はついていません。物は何も置かれてません。初めて来てから一切物を持ちこんでいません。そもそも私物なんて持っていませんので持ち込めません。

 蹲ったままの体勢を解いて立ち上がります。あの日の任務から帰ってそのまま耳につけっぱなしのインカムから聞こえてくる半年先輩さんやヤマブキちゃんさん、オペ子さん、ミチオさん、ハリトラさんの声。聞いていると、危機的状況にあることが分かります。そして、スサノオがいることも理解できてしまいました。

 スサノオがいることを知ったわたくしは迅速に動きました。神機を取りに行ってプラント防壁の高いところから飛び降りて、戦場へと急ぎます。位置は防壁の上から見渡して分かりました。

 服装はあの日のままでしたが気にせずに走り続けていると、半年先輩さんが尻餅をついた格好で

 

「ええと。悲しいかな……この度を以て飯番隊解散だわなぁ」

 

 と言っていました。

 それは悲しい。せっかくわたくしは場所を見つけたというのに。せっかく復讐しようと思っていたのに。

 そんなのは嫌です。だから私は地を蹴ってザイゴートの上に着地します。それも一瞬、槍型神機をザイゴートに突き刺して抜く容量で蹴って、次の標的へと着地して突き刺し、また跳んで移動します。

 

「ひゃっはぁっ!」

 

 跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺して跳んで着地して突き刺していくと、小型アラガミはいなくなりました。

 

「アァァァアアアイムゥッ!! ハァッッッピィィィィイイイイッ!!!」

 

 そう、この結果はスサノオのせいです。小型アラガミが全滅したのも、わたくしが全滅させたのも全てスサノオのせいなんです。

 そして身体の内側から溢れ出てくる幸せもスサノオのせいです。

 

「シィアワァセェイィ!」

 

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