ふと自分の顔が気になった
しかし近くに自分の姿見を確認出来る物はなく、手鏡なんか普段持ち歩かないので確認する術が無かった
幸いにも周りに人は沢山いた。老若男女問わず一杯の人がいて、中には人とは思えない姿をした者や、漫画のキャラクターやアニメに出てくるキャラクターもいたし、悪鬼羅刹に神様だっていた
人に話しかけるのは緊張するが、勇気を出して背の高い男性に声をかけてみた
しかし声を出そうとしたが声が出ない。いや、正確に言うなら声を出しているはずなのに自分の声が聞こえない
尋ねた相手は何をしているのか分からない顔というをしていて、相手も自分の声が聞こえていないのだと悟った。結局男はその場から去ってしまった
これ以上時間を取るのは失礼だと思って後を追いかける事はしなかった。他にも人はいるからその人達に鏡を貸して貰えば良いと思ったからだ
しかし次の人に話しかけても自分の声が聞こえなかった。声は出しているはずなのに全然聞こえないのだ
それは相手も同じようで、先程の人と同じ様に良く分からないという反応を返してその場を去ってしまった
また別の人に話しかけても声が聞こえない。更にまた別の人に話しかけても全く声が聞こえなかった
神様に話しかけても心を読んでくれる事はなかったし、悪鬼羅刹に話しかけようとも無視されるか唾を吐きかけられるだけだった
いよいよ話しかけられるのは後一人となってしまった。しかし先程と同じ様に自分の声が出なかったらどうしようと考えたが、出なかったら出なかったで仕方が無いと諦めてしまおうと思った
意を決して必死に説明をしようとする。しかし声は出る事は無かったが、それでも何とか伝えたくて体も使って必死に説明をした
そうするとその人は理解をしたかのように自分の懐から鏡を出してくれた。ようやく伝わったのだと知り鏡に手を伸ばすが、手を伸ばして静止させられてしまった
人「これは自分の姿しか見えない鏡なんだ。誰しも必ず持っている筈だから、君も自分の持っている鏡を使えば良いじゃないか」
そう言われて自分の体を探るが、やはりどこにもそんなものは無い
それを伝えようと再び目の前の人に話しかけようとしたが、その人は何処か悲しそうな顔をするだけだった
人「すまないが僕では君の助けになれそうにない。こればっかりはどうしようもないんだ」
その人は本当に申し訳無さそうな顔でその場から去ってしまった
そこで自分は考えた。鏡が無いのなら代わりを用意すれば良いのだと
しかし今の自分には何も持っていない。それを理解してしまい、どうしようもなく悲しくなって目から涙が大量に流れ出した
どれ程長い時間涙を流しただろうか。ピチャピチャと足元で音が鳴るほどに涙が水たまりの様になっており、それを見てハッと閃いた
これほどの水たまりなら自分の顔が確認出来るのでは無いか?そう思った自分は足元に出来た水たまりから一歩引いて顔を覗かせた
そこには何も映っておらず、自分を確認する術など無いのだと直感的に理解した
次の瞬間、どうしようもない虚無感に襲われ、その場で膝を折って真っ黒の地面を見ることしか出来なくなっていた