【改訂】剣士さんとドラクエⅧ   作:ryure

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第17話 伝説

亡くした王妃を悼むあまり、こうまで長い期間治める国を巻き込むなんて。

国王としてはまったく褒められないこと。

こんな事がこれ以上続いてしまったら愚王として名前が残っても可笑しくないよね。

ま、こんな状態で王国がいつまでも存続するのか謎だけど。

 

昼間は完全に自室に閉じこもりっきりで悲しむだけ、夜になると玉座まで出てくるも書類のひとつでも目を通すわけでもなくただただ嘆きっぱなしという話を聞いて改めてそんな感想が浮かぶ。

みんなもお城にいる手前、大っぴらに口を出さないけれど考えていることは同じような気がする。

ヤンガスとか分かりやすいくらい半目になっている。

綺麗で清潔で人の営みがあるのになんとも「辛気臭い」もんね。

 

逆にエルトはトロデーンから出たことがないし、外の国のことを全く知らないタイプの人間なので他の王国の今後とか心底どうでも良さそうで純粋に物珍しくきょろきょろ見回したりしている。

他国がどうでもいいのは私も似たようなものだけど。

世界全部が滅んでトロデーンだけになっても、それで国民が困らなきゃなんでもいいじゃない?

……今は、「外」で別の出身の仲間ができたから、心底そういう風には思えないけどね。

 

せっかくこんな治世が続いても暴動も起こらないくらい穏やかな人が多くて平和な国なのに。

実りも豊かな土地なのに。

断崖絶壁の崖っぷちの海に面していて、南の荒野は良質な岩塩が取れるのはいいけどそのせいか多少の塩害で農作物は限られる。

国の中枢部が崖っぷちにあるものだから港を作る場所を城から遠くしなくちゃ行けなくて、漁業をやるにも別の拠点を築く必要がある。

 

アスカンタはどう?

見るからに緑豊かでいいじゃない。

土地の高低差も少ないし、穏やかな海だってあるし。

まぁ、立地条件はかなり似通ってるけど。

 

またパヴァン王に呆れてから、さっき出会ったキラさんというお城のメイドさんに言われたことを思い返す。

なんでも、願いを叶えてくれるというおとぎ話があって、それが本当ならパヴァン王を慰められるかもしれないとか。

昨晩泊まった川沿いの教会のそばにあった民家がキラさんの祖父母宅で、その手のおとぎ話については祖母が詳しいとか。

 

願いを叶えるって、亡くなった王妃を生き返らせるってこと?

いや、それは魔法のチカラでも不可能だろうから、パヴァン王を過去に戻して、最期の別れを告げさせるとか?

うーん。

三年も泣き暮らしているような王さまの目を覚まさせるなんてどうしたらいいのか想像もつかないよ。

 

だから正直眉唾物だけど、ありえないって一蹴するわけにもいかないよね。

だってこの世界には、おとぎ話そのものだった魔物も魔法も呪いも実在しているし、理屈の分からないことなんていっぱいあるんだから。

実体験として原因不明で髪の毛や目の色が変わったりする変な経験もしたし。

はっきりとそんなの信じられないとは言えないよね。

しかも話を聞かれた陛下は大変乗り気でいらっしゃるし。

キラさんが姫と同年代だから感じ入ってしまわれた。

もう夜なんだけどなぁ。

まさか今から行くおつもりか。

流石は我らが君主、バイタリティが他国と大違いです。

 

とはいえ……今日は城下町の宿に泊まってお風呂に入るか、せめてゆっくり体を拭くくらいはできると思っていたんだけど。

いやいや、陛下は街に入れない。

この旅で大変不自由なさっているんだ。

臣下の私がそんな贅沢を言う訳にはいかないよ。

 

「にしても、気が滅入る国だったわね」

「どこもかしこも真っ黒でがした」

「そんなにも王妃さまを愛してるんだったら……なおのこと、表向きだけでも王妃さまに顔向けできるようにすべきだと……思ったけど……」

「想像以上に複雑なモンだぜ、エルト。……愛ってのは時に人をおかしくするんだ。折れちまったんだろ」

「なんか説得力あるね」

「なんかあるわね」

「うるせぇぞ」 

「だって……ねぇ? 短い間だけでもとても『紳士的』だったわ。真っ先に一目散な安否確認、誰よりも元気なのに擦り傷ひとつにご丁寧。頼もしいんじゃない?」

「あっしはトウカの兄貴をなにより優先するってのは異論は全くないでがすが、さすがに露骨すぎとも思ってるでがすよ」

「……もう少しで何とか飲み込むからちょっと茶化すのはよしてくれ」

「うわ重症だ……罪だね、トウカ」

「罪? ボクなんか悪いことしたっけ?」

「ううん、悪いことはしてない。気にしないで。かなり気の毒になってきた」

 

城下町から外へ出て、すぐに堰を切ったように喋り出すみんな。

ククールの声が若干震えてたのは何でだろう。

自分の言うことをなんだか信じてないみたいだった。

なら言わなきゃいいのにな。

それに「紳士」ならなによりゼシカを優先したらいいのに。

あ、後衛より前衛の方が負傷しやすいからってことだよね?

本職は優先順位の見極め方からやっぱり違うな。

 

当然、まだククールと壁がある気がするけど、思ったよりはみんなと馴染んでる。

なんだか分からないけどみんなからククールに対する「同情」がみてとれる。

何が哀れに思われているのか、心当たりは幾つかあるけど……うーん、触れない方がいいよね。

私はなんとなくククールから壁を感じるような……うーん、壁というよりはなんだろう?

彼、とっても友好的だけどね。

戦闘後に真っ先に回復してくれるし。

なんだか聞いていたよりもずっと真面目な人だ。

お兄さんが言っていた「顔だけ」なんてことは間違ってもない。

それに結構話好きなのか、この短期間でもみんなと会話が多いし、こっちも視線を感じる。

旅は道ずれ、友好を深めて悪いことはないなら私もタイミングが合えば沢山話をしたいところ。

 

でも、なんだかメンタルが本調子じゃないように見えるね。

 

あれだけ確執があったお兄さんとあんな別れ方をしたんだし、そりゃそうか。

そう簡単には仲直りや和解はできそうには見えないけど、望んでもないだろうけど、ますます遠ざかった感じがあった。

その上、旅の仲間に加わる時に私をレディ……もとい正しい性別である女だと見抜いて、まさか初対面の人に見抜かれたのはびっくりしたけど、エルトの十年モノの先入観が助けてくれて……私は助かったけどククールからしたら「いつも通り」のつもりがうっかり男性に好意を持ったみたいに見えたわけで。

話を聞く限りはククールは異性愛者だから何かしらショックだったんじゃないかと。

 

今までバレたことも、バレそうになったこともなかったんだけど。

とはいえ私の成長期は終わってると思うけど、一緒にいるエルトの方はまだ背が伸びてもおかしくないはずだし、これまでバレなかったのが奇跡なのかも。

 

どんなに取り繕ってもやっぱり身体的に性差はある。

体格だって重ねた装備で誤魔化しているだけだ。

声だって首に巻いているチョーカーで低く変えている。

一生隠し通すことは不可能だし。

小さな「桃華」と違って「トウカ」は身体能力に関してはなにか才能があったみたいで非力さはないけれど、それでも気づかれたんだし、そろそろ腹を括った方がいいのかも。

……自分から言い出す勇気なんてないけど。

 

なんでもかんでも腕力で全部を解決できるかと思い込んでいたけど、見た目もムキムキにならなかったらそのあたりは意味なかったのかもね。

 

「あのおとぎ話が真実に基づいていたらいいな。そう思わない?」

「さてどうだかね」

「ククールはせっかく魔法が使えるのにそういうことは信じないの?」

「夢を持ってもらっているところ悪いが、『魔法が使える』のと『眉唾物のおとぎ話を信じる』のは別カテゴリだからな。それに俺は生まれてからずっとこの大陸に住んでいるが、そんなおとぎ話は聞いたことがないんでな」

「ふぅん? マイエラからそんなに距離が離れてないのにね。ごくごく局地的なおとぎ話か。確かに有名じゃないなら尚更信じる気は失せるけど」

 

なんかあるとは思いたいけど。

せめてなにか。

無駄足は嫌じゃないか。

 

エルトがルーラで川沿いの教会まで飛ぼうと提案して、皆が頷いた途端、呪文が発動して夜空へ舞い上がる。

冷たい風が一瞬、くまなく刺すように身体中を吹き抜けて、そのまま暗転する景色。

 

数秒後には色の戻った世界があるわけだけどこのルーラの感覚は何度経験しても不思議でドキドキする。

キメラの翼にしろ、ルーラにしろ、空高く舞い上がる感覚がいかにも魔法らしくて面白い。

 

降り立ってすぐ、周囲にいた魔物たちから一斉に殺気が飛んでくる。

こっちも剣を抜いて威嚇すると、いくらかは逃げたみたい。

逃げる相手は追わない主義だけど、向かってくる奴らは倒さなきゃ!

早速魔物に向かって走る私と、反対に背を向けて馬車に向かって走り出すエルトとゼシカ。

ヤンガスとククール、そして私を残して先に教会の敷地内へ行ってもらう。

せっかく教会がそこにあるんだし、護衛対象が居ない方が思いきり気にすることなく戦えるじゃない?

 

陛下と姫さまの安全を確保したふたりはそのまま急いで橋を渡って民家の方へ。

ゼシカがメラを乱射しながら走っているので道は開けている。

エルトも槍を構えているから大丈夫。

二手に分かれて話を聞いてきてもらったら、今晩も教会のお世話になった方がいいかもね。

 

それにしても月の光が明るい。

満月が近いのかな。

視界が確保できるのはいいけど、満月に近いほど魔物が活性化している気がするんだけど。

 

「夜の闇はどうも魔物に力を与えるな。ったく、夜はうかつに外に出るもんじゃない」

「満月が近いみたいだし、余計かもね」

 

同じ前衛のヤンガスと背中合わせに戦って、私たちのやや後方でククールがレイピアを抜きながら呪文で支援してくれる。

戦力が多い方が戦いは楽だけど、それとは別に少人数の方が守りやすく攻めにくいと思う。

人数が少ないと、簡単にこっちに降りかかる攻撃を払いのけられる。

 

「前」で言うならあれだ、ドッヂボールは味方が減ってからの方がコートの中で動きやすいから当たりにくいってやつ。

ま、運動が得意でも苦手でもなかった小さなあの子と違って私はきっとボールも遠くまで投げられるし、(たま)を取るのはとっても得意だし!

 

うーん。

ちまちま一匹ずつ撃破していると時間がかかっちゃうな。

エルトが軽く薙ぎ払ってくれたり、ゼシカがギラで攻撃してくれたりしていると数が減らしやすかったのだけど。

ヤンガスは私と同じで各個撃破型、ククールは攻撃呪文も使えるはずだけど回復呪文に魔力を取っておいてくれているのか攻撃はレイピアでやっているし。

 

今は剣より間合いのある槍の方がいいかも。

 

剣を手袋の中にしまうと、代わりに槍が現れる。

念じるだけでこんなことが出来るなんて、まるで私が魔法を使っているみたいだね!

 

「よーし、ちょっとだけエルトの真似をしよう!」

「槍も使うのか……」

「トウカの兄貴に使えない武器はないでがす! 多分」

「あは、ありがとう。でも弓は使えないかな。一回二回ならともかく戦ってる途中につい引きちぎっちゃうから。あとブーメランも投げたら相手に突き刺さって返ってこないから使えないかな!」

「さすがはトウカの兄貴でがす!」

「それ褒めてんのか?」

 

ちまちま倒してもいつかは終わるだろうけど多勢に無勢。

面倒だからエルトお得意の槍を私も使おう。

私が兵士の給金だけで特注した、重槍。

とはいえ、父上と母上のコネあっての作成だけど……。

私の剣と同じ鍛冶師が作成し、母上力作の魔法が掛けられている。

剣と同じく、「マホトーンの呪い」が掛かっているんだ。

対象は装備者、私には効果なし。

装備を外せない効果はなし。

わざわざ「私には効果なし」の呪いにしなくても「装備者はすべからくマホトーン」の呪いの方がずっと簡単なのに、養子の娘に魔法の才能がないってとっくに分かりきっているのに母上はお優しいね。

その重量は優に百キロを越え、穂先の切れ味は抜群、だけど見た目は細くて軽そう。

ヘビーメタルとミスリルの合金で、装飾にほんの少しだけシルバーが使われている。

そんな高価な代物を自分のお金だけで用意できたのも、つまりは実家から職場に通っている生活費の一切に心配が要らない成人済みモラトリアム貴族が小遣い代わりの給金を注ぎ込んだ半ば道楽武器ってわけ。

だいたい、「剣士」だから槍を使うのなんて仕事中に飾りで装備している時くらいだから。

 

でも、ヤンガスに言ったように私は繊細な力加減の必要な武器は装備できないし、使えてもすぐに破壊してしまう。

弓もブーメランも、当たり前だけど杖も、ハンマーのような重量武器も棍棒のように一体化していなければ持ち手をへし折ってしまう。

動きの問題じゃないから注意すれば使えるんだろうけど、戦っていたらすぐに夢中になってしまうから無理な話だ。

だからもっぱら特別に頑丈に作ってもらった剣を使っているわけで。

そして、手段を増やすために用意したのがこの槍だ。

 

この槍は仮に武器を奪われても相手は使えないという利点もある。

それにもしパワー溢れる相手に奪われたとしても呪文封じの効果があるし。

ま、私の槍を使えるような相手が果たして封じて意味があるくらい呪文に長けているかは謎だけど。

 

私にどうやら魔力がないから、大抵の魔力を使う技が使えない。

と、思う。

どれだけやろうとしても何一つ魔法らしいものを使えなかったからそう考えたってだけ。

習った相手は世界有数の魔術師である父上と母上なんだから教え方が悪いわけじゃないだろうし。

 

故に、例えば先輩兵士みたいに魔物を一閃突きで倒そうとするとか、どこかの物語みたいに地面に武器を突き刺して地獄の雷を呼ぶジゴスパークとかはどんなに努力しても出来ない。

だからこそ、これは武器としては小細工なしのただただ重い槍なんだけど。

切れ味鋭く、ひたすら重いだけ。

単純に物理攻撃力を上げれば大抵の相手には勝てるからね。

マホトーンは攻撃しても相手にかからないし。

 

ま、私が見よう見まねでなぎ払いもどきをするだけで魔物たちは吹き飛んでいくんだけどさ。

魔力を消費する特技だって動きだけの「もどき」ならできる。

きっといかにも魔法的な超常現象系が不可能で、物理現象なら可能なんだと思う。

本当につまらない。

 

繰り返し繰り返しなぎ払いながら前に突進していくと、いつの間にか放つ相手がいなくなっていた。

 

「……魔物が全滅したな」

「槍は一度に沢山攻撃出来るから実に便利。エルトが好むだけある」

「剣の方が得意だったとしても、十分それだけの力があるなら槍使いとして大成出来ると思うんだが」

「あくまで剣士だからね。そこに剣があって、ボクははじめにそれを使おうとしたんだ。槍だって嫌いなわけじゃないけど、剣でぶった斬っている時こそここで生きているって感じがするんだ」

「よくわからない理屈だが、そうか。一途なんだな」

「そうとも言う! いいこと言うね」

 

あと槍はリーチがある、つまり戦闘において場所を取るからパーティメンバーに槍の被りがあったら場合によっては戦い難いことがあるかもだし。

 

それに昔から私は剣が好き、エルトは槍の方が得意って分かってたのもある。

兵士の仕事中は持ち場に合わせて決められた武器を持つけど、プライベートとか、単純に得意武器としてはさ。

 

「そうそう、エルトの槍、ドルマゲスに吹き飛ばされて歪んでるのを無理やり引き伸ばしててさ。本当はこれを貸してもいいんだけど……ちょっと見てて」

 

手に持っていた槍を目の前で地面に落としてみせる。

これぐらいで傷がつくことはないから平気。

 

途端、ドンと鈍い音を立てて槍が地面にめり込み、地面に軽くひびがはいる。

 

目に見えてククールの顔がひきつったね。

ヤンガスは……こっちをキラキラした目で見てる。

照れる。

 

「エルトはトロデーンで二番目にチカラ持ちさ。でもこれは使えないって言うんだよ」

「エルトの兄貴……」

「あいつも苦労してんだな……」

 

何さ。

 

ま、でもなんか錬金で作ろうとしてたから武器に関して心配はしてないけど。




・素直に文章直したら話がちっとも進まず
・トウカの義母に魔法でできないことはほぼなし、ただし体調が追いつかないので家の外に出るのも辛い、なので娘に可愛い格好をしてもらいたくても好きにさせる方を選んだらねだられるものが剣! 剣! 剣! 鎖帷子! 鉄板仕込みブーツ! 頑丈な槍を作れる鍛冶師へのコネ! 変声チョーカー!
・現状欲しいものはドルマゲスの首 さもありなん
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