深夜テンションで書きあげたので、ノリと勢いしかないです(笑)
擬人化、技、三値の独自解釈がNGと言う方はブラウザバック推奨です。
それでも良いという方は、よろしくお願いいたします。
視界が揺れる。世界が回って、上が下に下が上になって直後に背中に強い衝撃がくる。肺の空気が全て押し出されて、意識が一瞬飛ぶ。
「がはっ!」
本日何度目になるか分からないが、とにかくシンに投げ飛ばされることにようやく慣れてきた。
「これって、何を鍛えてるんですか?」
ポケモンを鍛えるのなら分かるが、トレーナーを肉体的に鍛える事にどんなメリットがあるのだろうか。
「あれ、言ってなかったか」
ポケモンもまだ回復していないから組み手をしよう、と言う話になったのは覚えているが、何故かという話をしてもらった記憶はない。
「要するに、ポケモンの気持ちになるんだ」
「頭大丈夫ですか?」
手足を投げ出して、大の字に寝転ぶ。最早立ち上がる気力もない。
「トレーナーも闘う側の視点を持てるようになるべきなんだよ。どんな情報が欲しくて、どう行動すべきか。今闘っているポケモンが見れる情報が何で、分からない情報がどれで、必要としている情報を知ることが大事なんだ」
「組み手で、分かるんですか?」
シンは教えるのは嫌いじゃないらしく、私が不貞腐れている態度をとっても、聞く姿勢さえ崩さなければ応えてくれる。きく前に教えて欲しいとも思うが、やっぱり体を動かしながらの方が分かりやすい。
「対戦相手が近かったら、全体なんて見えない。トレーナーじゃなきゃ気付けないことは山ほどあるんだ。俺達はそれを最短で最速でポケモンに伝えなきゃいけない。判断するタイミングだって見極めなきゃ、意味が無い」
考えた事もなかった。そんな事をしなくても勝つことが出来ていたんだから。
「まぁ、ほとんどその辺りはポケモンが判断してくれるから、無くても勝てるんだけどな」
だけどそれじゃ、トレーナーは道具を運ぶだけの存在に成ってしまう。結局、そうなりたくないから、知る必要があるのだ。
「もう一回、お願いします!」
勢いよく起き上がって、一から組み手を始める。
週に一度の入浴の日、薪をして風呂桶の湯を温める。常に火の番をしていなければならないのだが、出来るのがターネとシンだけなので必然的に数が少ないということだ。シアは熱に弱く、コジョはむらっけが強く、茹でダコに成る可能性がある。
「ふぁあ~、良いお湯♪」
「そいつは良かった」
壁一枚隔てた向こうにシンがいる。とはいえ格子が入っているので、少し身を乗り出せば姿は見える。
「ねぇ、シンのポケモンはどうしたの?」
「逃がしたよ、全員ね」
二―ナは驚いて転げ落ちそうになる。
「えっ、嘘?」
「嘘じゃないよ」
風呂釜の縁に寄りかかって、残念そうに呟く。
「いつかシンとバトルしたかったのにな」
聞こえなかったのだろうか、返事はない。なんとなく話を続けたかったから、適当に話題を選ぶ。
「ねぇ、私は強くなったかな?」
「一週間じゃそんなに強くはならないだろう」
ばっさりと言われてしまった。
「……そうですよねぇ」
分かっているつもりだが、手応えがあった分期待してしまう。自分は強く慣れたのではないか、と。
「でも、変わったよ。バトルで気がつくところが多くなってる。今はそれが邪魔をすることもあるかもしれないけど、強くなれるさ」
強くなれる、その言葉は何度も聞いた。まだ見えない未来のことだけど、一週間前に信じられなかったことが、今では信じることが出来る。
「うん、頑張る♪」
自然と頬が緩んでいるのは、やはりお風呂が心地好いからだろう。
手持ちのポケモンも回復してからは一緒にトレーニングをするようになった。最初は物珍しそうについてきていたが、徐々に私の体力の無さに先先行ってしまう様になった。
「……いつか追い越してやる」
悠々と飛んでいくムドーを見送りながら、そう呟いた。
休憩地点まで何とか辿り着くと、シンと見知った顔がいた。
「やぁ、二―ナ。こんなところで修業とは精が出るね」
爽やかな笑顔の青年は私と同じスクール出身のエリートトレーナーだ。
「……何しに来たの?」
私はこいつに一度も勝てた記憶が無い。ポケモンがめちゃくちゃ強い訳ではないが、着実に相手の裏をかくスタイルで勝ちをとるタイプだ。要するに苦手だ。
「この山に興味があるから来たんだけど、折角だしバトルしてみようぜ」
気は進まないが、避ける理由もない。
「元気が良いな、それじゃ少し降りたところに広いフィールドがあるから、そこでやろうか」
シンが彼と一緒にフィールドに向かう。スクールの時の嫌な思い出が蘇る。気が沈んで脚が重たい。
「ムドォ!」
ムドーが私の背中を押す。
「……分かってる」
私だけ怖気づいてる訳にはいかない。覚悟を決めなければ。
トレーナーサークルにお互いが足を踏み入れ、最初に出すポケモンを決める。お互いが繰り出すポケモンを先に決めてしまうことで後だしの優位さをなくしてフェアな勝負にしようというローカルルールだ。
「お願い、ムドー」
「叩きのめせ、ヒヒダルマ!」
確か、彼が良く使っているのはヒヒダルマ、ピジョン、サイドンだ。3体中2体を受けられるエアームドを選んだが、これは逆を突かれてしまった。ヒヒダルマ相手では分が悪い。
(ちょっと待てよ?)
何かがおかしい。具体的に何かは分からないが、何故あの手持ちでヒヒダルマを選んだのだろう。早くポケモンを変えなければ、いくらエアームドとはいえ、ほのおタイプの技を喰らって無事で済む訳が無い。
「ムドー、きりさく!」
「ヒヒダルマ、くさむすびだ!」
エアームドの鋭い翼がヒヒダルマを傷つける。対して、草結びは殆ど掛からず、ダメージと言える程の効果はなかった。
「なっ!?」
「もう一度、きりさく!」
2度にわたって攻撃を続けられたことで、ヒヒダルマもエリートトレーナーも慌てている。
「く、くさむすびだっ!」
草タイプ くさむすび
その名の通り、地面から草が伸び、足を絡め取る技である。質量が大きい程、ダメージが大きくなる。特に草に耐性のない水タイプ、自重が重たい岩、地面タイプに効果が抜群だ。それを見越して、ヌオーに当てたかったのだろうが、予想外の行動に慌てふためいている。
(私なら……)
「戻ってムドー!」
「くそっ、フレアドライブだ!」
ほのおタイプ フレアドライブ
体中に炎を纏い、突進する技である。内燃機関を利用し突撃するこの技は、身体能力が高ければ威力とスピードが増す。さらにスピードが増すほどに熱が発生しやすくなるために、物理に長けたほのおタイプの必殺の技と言っても過言ではない。
「ヌオオオォオォオ!」
しかし、それも水・地面タイプのヌオーには大した効果が見られなかった。
「し、しまった」
「ヌオー、ねっとう!」
みずタイプ ねっとう
ヌオーの口から高温の水が勢いよく吐き出される。密着状態ということもあり、まともに浴びてしまったヒヒダルマは、あえなく瀕死状態になってしまう。
「こ、こいっピジョン!」
次に繰り出したのは飛行、ノーマルタイプのピジョン。一体を倒してなおほぼこちらのポケモンは無傷だ。これなら勝てるかもしれない。
「今回は調子が悪かっただけだ、勝ったと思うなよ!」
「……へ?」
そう言い残して、ピジョンの背に乗り、エリートトレーナーは去っていってしまった。
「な、なんじゃそりゃあ!?」
あんまりにも呆気にとられて反応がかなり遅くなってしまった。勝負を投げ出してしまうなんて、今まで経験した事がなかったのに。
「……お疲れ、まぁ、良い勝負だったじゃないか」
シンが少し気の毒そうな顔でこちらを慰める。このままなら勝てたのでは、という欲と理想のバトルを出来た感覚が嬉しい様な悔しいような色んな気持ちが綯い交ぜになって、ついつい声が大きくなってしまう。
「ねぇシン! 私、バトル上手くなったかな!?」
無骨で大きな掌が頭を撫でる。
「ああ、驚くぐらいにな。よくやったよ、ニーナ」
人から褒められるのはいつ以来だろう。あんまりにも慣れないことだから、予想以上に嬉しくなって、跳びはねてしまいそうだった。
「バトルって、楽しい!」
ヤミカラスの背から山小屋を見つけ、降りる。
「迎えに来ましたよ~」
特訓の2週間を終えたので、確認に来たのだ。私の声に気付き、勢いよくエリートトレーナーが飛び出してきた。
「アヤさん、お久しぶりです!」
アドバイスの通りにトレーナーを教えるところを記事には出来たので良しとするべきなのだろうが。
「アヤさん、おはよう」
二人で今まで組み手をしていたのだろう。なんというか、如何せん距離が近い気がする。
「それでは先生、行ってきます」
「いや、帰って来なくていいけどな」
ニ―ナが機嫌良さそうに笑う。
「そんな事言って、寂しいくせに。またバトルで負けだしたら戻ってきます」
腕を組んで少し考え込んだ後、シンが手を振る。
「せめて一つくらいバッヂを取ってこいよ」
それを聞いて喜び勇んでエアームドの背中に乗る。きっと彼女はこれから街を渡り歩き、トレーナーとして成長していくのだろう。
「……寂しいですか?」
「人が居なくなるのは、やっぱりね」
たった2週間でも、これほど濃い付き合いをする事は滅多にないだろう。多大な期待をすることも、それに答える人材も、そうある事ではない。
「話し聞きますよ、それが仕事ですから」
「……悪いね」
山小屋の中に入ると、1年物の果実酒と、半透明のグラスが二つテーブルに並べられていた。
読了、ありがとうございました。
小物っぽいエリートトレーナー君をもう少し掘り下げてあげたかったけど、頭が働かなかったので名前すらないです。
誰か名前を付けてあげて下さいな(笑)
ここまで読んで下さった方に、最大の感謝を。