擬人化っていいよね、人なのか、ポケモンなのか分かんないあやふやなところで、色んな悩みがあるけど頑張ってるとか、そんな物語がいいです。
(練り込んだ設定では)ないです。
擬人化、技と個体値の独自解釈なんか気にしない~♪な方はどうぞ!
山の管理を任されてから2年、色々な事があった。トレーナーや旅行客が落としていったゴミの清掃や、怪我や遭難の対策。その一つとして、山の中腹に山小屋を建てる計画も無事完了し、今ではそこに住んでいる時間の方が長くなっていった。
「そろそろ、かな」
今では手持ちのポケモン、コジョンド、タブンネ、グレイシア、ドレディアが擬人化し、ミロカロスが巨大化という形で6Vメタモンの影響を受けている。トレーナーであった頃から、山の管理に至るまでずっと共に過ごしてきた相棒達だ。どれだけ感謝の言葉述べても、足りない程。だからこそ、告げなければならない、そう決心した。
「今までありがとう」
モンスターボールから全てのポケモンを繰り出して言葉を告げる。俺の手でモンスターボールを一つずつ壊していく。
「これでお前達は自由だ、俺のことは気にしないで自由に生きていってくれ」
胸が張り裂けそうな程、不安だった。誰ひとりとして相談なんかできなかった。こう決断してから何度、誰もいなくなった山小屋で独りでいる姿を夢に見ただろう。皆戸惑ったみたいだが、ミロカロスは近くの湖の方向に去っていった。山の管理をしている間もお気に入りの場所だったからこれからもそこに居つくのかもしれない。他のポケモンもそれに続いて、去っていった。コジョとターネとシアを除いて。
「どれだけ待っても、私達は動かないわよ」
ターネが口を開いた。驚きの余り、すぐに返答することが出来なかった。
「当然でしょ、この姿で野生に戻れる訳ないじゃない」
「あ、あのね……ボクは、シンと一緒に……いたい、よ」
シアは、一番最後に変身したからか、そもそも喋るのが余り得意ではないのか、たどたどしく言葉をつづる。
「ターネ、シア……」
それ以上は何も言えなかった。相応しい言葉が出てこなかったんだ。
「それにね、私達が居なくなったらどうやって山小屋の管理を続ける気なの?」
「そ、それは……なんとかするさ」
「怪我人の治療は、木材の伐採は、家事一式は? 一つくらいならまだしも、シン独りじゃ出来ない事ばっかりじゃない」
ターネの言葉が胸に刺さる。言われてみれば一人で此処を切り盛りしている情景が全く浮かばない。
「コジョも、そう思うわよね?」
今まで無言だったコジョも、口を開いた。
「……そうだな」
コジョにまで言われると、どうしようもない。恥かしさと嬉しさがないまぜになって、自分でもどんな顔になっているのか分からなかった。
「悪かった、これからも、よろしく頼む」
意の一番にシアが飛びついて来た。抱きかかえると、ターネがやれやれといった風に呆れ、コジョは複雑な顔をしている。いつもと変わらない生活を、トレーナーとしての関係がなくても続いていく絆を、心の底から感謝した。
ここまで詳細を語ったのはアララギ博士にもなかったことだ。恥かしいという事もあるが、擬人化したポケモンの事を言及する事自体を避けてきたのだと、改めて思い知った。人との関係を知らず知らず避けてきたのも同様の理由だったのだろう。
「なるほど……これは一面記事に」
「するなっつってんだろ!」
舌の根乾かない内に何言ってんだこの馬鹿は。
「冗談ですよ、流石にそのまま乗せたら没になるに決まってますしね」
「こ、これが人とポケモンの絆なのね」
アララギ博士がハンカチで目の端を拭っている。そんな感動的な物語じゃなかったとおもうんだけれど。
「しかし、意外ですね。擬人化したポケモンをポケモンとして見続けてるなんて」
「いや、当たり前だろ」
あやは首をかしげる。
「当たり前なのは付き合いの長さからくるものですよ。初めて見た姿があれだと、ポケモン扱いは難しいです」
なるほど、言われてみるとそうかもしれない。
コンコン
ドアのノックする音。アララギ博士が答える、どうやら研究員の一人の様だ。
「分かったわ、今行く」
そう言って出ていってしまった。
「何かあったのか?」
「……気持ちの整理が出来たら、会いに来るって言ってたから」
あやが言い辛そうに告げる。気持の整理をつけなければいけない人物等、俺に思いつくのは一人しかいない。
「コジョ……」
扉を開いた時に現れたのは、想像した通りの人物だった。少し顔色は悪い気がする。もしかすると、へんしんに副作用があったのかもしれない。目があって、表情が一瞬明るくなったが、またすぐに暗くなってしまった。あまり口数が多い方ではなかったが、以前にも増して、無口になっていた。
「怪我は……ないか?」
俺から問う。きっとそうしないと会話にならないから。
「っ、お前が、言うのか!」
振り絞るような声、何をそんなに苦しそうにしているのか。いつだってそうだ、俺はコジョの気持ちを分かってやれない。ポケモンの気持ちなんて、分かった事等、一度も無いんだ。
「言うよ、心配だから。お前はきっと、新しい道を見つけられるから」
あの時、闘っている時のコジョンドを見て本当にそう思ったんだ。やっぱり、ポケモンバトルが心の底から好きなんだと。俺もその姿を見ることが楽しい、鍛え上げたその体と技は、その為にあるんだと思うから。
「お前は、戻れるだろ?」
「……あの時の、言葉は」
そういう意味だったんだ。俺は出来ると思ったんだ。そうだよ、メタモンがそうであるように、非可逆的な変化だとは限らないじゃないか。
「……なんて言ったんです?」
あやが尋ねる。まったく好奇心が強いにも程がある。もう一度言わせるなんて、恥かしいんだが。
「『コジョ、へんしんだ』ってね」
まるでポケモンバトルで伝えるように、命令のように、彼女に告げた。崩れ落ちる意識の中でどれだけ言葉に出来たか分からなかったが、彼女には伝わっていたはずだ。
「そっか、そういう考え方もあるのね」
アララギ博士が納得したように頷く。勿論、出来るという保障があった訳じゃないけれど。
「……私はっ!」
コジョが、必死に何かを言葉にしようとしている。そうだ、いじっぱりな彼女はいつも言葉を詰まらせてばかりだ。
「……昔みたいに、戻れるんだ……って」
昔、昔って何時だ。ポケモンバトルをしていた時期なら、ジムリーダーと闘っていた時なら、ポケモンリーグを目指していたあの時なら、遅くはない戻れるんじゃないのか。
「だから、お前だけでもまた戻れるじゃない……」
「どアホぅ!」
あやに思いっきりチョップを振り下ろされた。
ドスンッ
手がジンジンと痛くなる。全力でやると叩く方も痛くなるのだと初めて知った。
「馬鹿ですかあなたは! 何を勘違いしてるか知りませんけどね!」
シンが目を丸くしている。駄目だこいつ、なにも分かってない。これじゃいつまで経っても平行線だ。アララギ博士も起こってる事はなんとなく理解しているみたいだけど、そういう仲介事が出来ないらしい。
「彼女は、あなたと旅していた頃に戻りたいって言ってるんですよ!」
私が伝えてやるしかない。この話をする前にあんな言葉を使った唐変木なんだから、きっと分かってないだろう。いじっぱりなコジョも似たような性格だから、仕方ないんだろうけど。
「そう、なのか?」
衝撃、と言った顔でコジョに尋ねる。むしろそれ以外に何があるというのだろうか、本当に痛みさえなければ後何回殴っても気が収まらないに違いない。
「……そう、だけど」
言葉を詰まらせながら、それでもなお、伝えようとする意志はなくならない。
「バトルは……いい。したくない……わけじゃないけど」
その場の誰もが静まり、コジョの言葉を待っていた。
「シンと……一緒が、一番大切だから」
そう言って、シンに飛び付いた。反応を見るに激痛がはしったようだが、自業自得だ。涙を流して泣いているコジョの頭をゆっくりと撫でている。これ以上此処にいても、無粋なだけだ、お節介役は冷静に去るとしましょう。
読了ありがとうございました。
ポケモンとトレーナーっていう関係があってもいいじゃない(恍惚
書いている間に思いますた、人生のパートナーでありながら、男女の関係でもない、そばにいて当たり前で、いなかったら不安になる様な、なんというか、そんな感覚。
そんな出会いが現実であったらなぁ(現実逃避
とりあえず、シンとコジョの話はこれで一単締めくくりです、第Ⅰ部完ってやつです(笑)
次の話は、脳内にはあるけど……いつか書けたらいいな、って感じです。
もしもこの話を読んでくださっている方がいたら、どんな形でもいいので感想をいただければ嬉しいです、罵倒でも大丈夫です(どM