カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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89 潜入! 闇札機関本部!

 イベントの準備が始まった。

 役所の人たちも、研究所の人たちも、今回のイベントについてはかなり乗り気だ。

 特に役所の人たちは、ついにあのカードショップ「デュエリスト」が大々的に動くのか……と謎に興奮している。

 何でも、本来なら世界的に有名なレベルのカードショップになっても問題ないくらいの店なのに、いまいち知名度が実績に伴わないのは見ていてやきもきするらしい。

 そこまですごいかなぁ……まぁ、エレアも銀盾持ちだし、すごいか。

 

「ファイトキングカップで第三位って時点で、店長もよっぽどですからね?」

「まぁ、それはそうなんだけどさ……」

 

 のんびりやりたかったんだよ……まだ開店して二年だぞ?

 何だかんだ、のんびり経営していても普通に繁盛できているのがいけなかったのかも知れない。

 まぁ、だからといってカードショップ単体で大きなイベントをやるつもりも今のところないけどな?

 あくまで今回も、ウチだけじゃなく街全体で盛り上がれそうで、街の方からもやってみてほしいと言われたからやっているだけだ。

 

 で、そうしてイベントはいい感じに準備が進むわけだけれど。

 一つ問題がある。

 この「モンスターランドカーニバル」、モンスターとお客さんがファイトするというコンセプトだ。

 当然、モンスターに仮装するスタッフ……この場合はキャストか? がそれなりに必要となる。

 俺とエレアとメカシィだけじゃ明らかに手が足りない。

 というか、俺達は運営スタッフとして動き回ることになっているから、キャストに関しては人を集めないといけないのだ。

 

 とはいえ、それに関してあてはある。

 というかこの問題が持ち上がった時、最初にその解決策は自然と出てきた。

 いるのだ、キャストとして最適なスキルを持った集団が。

 

「というわけで、やってきました。――闇札機関本部」

「ここはフロント企業の入口だから、まだ違うけどな」

 

 それが、闇札機関のエージェント達だ。

 なにせ彼らは、普段から従者ファイト喫茶でその実力を発揮している集団だ。

 まぁ、本職ではないんだけど。

 それでもこういうキャストとしてお客さんとファイトするイベントの人材として、この街で彼らより優れた者はいない。

 それに、彼らがキャスト向きな理由は他にもある。

 

「いやぁ、オフィス街にフロント企業を用意して、その地下に本部を建設とか……秘匿組織っぽさ極まってますね!」

「まぁ、中に学生がぞろぞろ入ってくせいで、ここが闇札機関のフロント企業なのはバレバレなんだが」

「流石にそこまでガチガチにしちゃうと、学生としては不便さの方が目立つっていうか……」

 

 まぁ、そうなんだけど。

 ともかく、俺達は闇札機関本部の前までやってきていた。

 闇札機関は秘匿組織であり、その本部は存在が秘匿されている。

 入口にはフロント企業である「翠蓮株式会社」なる企業が立っていて。

 その地下に入っていくことになるわけだ。

 

 なお、この翠蓮株式会社の事業内容は闇札機関の事務関係の処理である。

 年末調整とか……年末調整とか……年末調整とか!

 闇札機関の「秘匿」とは、「公表されていないだけ」なので、そこまで秘匿にこだわる必要はない。

 

 そして俺達は、そんな闇札機関の入口にやってきていた。

 「モンスターランドカーニバル」のキャストを依頼するためだ。

 レンさんから、せっかくだし本部へ遊びに来てくれないか……という誘いを受けてのことである。

 早速、中に入っていこう。

 

「うう、オフィスビルの香りがします……!」

「普段はカードショップで仕事してるからなぁ」

 

 サービス業従事者としては、サラリーマンの集まるオフィスビルの中って独特な香りがするよな……と思う所存です。

 ともあれ入口の事務員さんに挨拶をして、案内の人を呼んでもらう。

 やってきたのは――

 

「――お待ちしておりました、店長様、エレア様」

 

 なんか白い仮面を被った人だ――――!

 背丈はエレアより少し高いくらい。

 闇札機関のエージェントなら、おそらく十代半ばのはず。

 ……だけど、仮面が結構いい感じに雰囲気を出していてミステリアスさがある。

 何だか、自分がなんちゃって秘匿組織の闇札機関ではなく。

 本物の秘匿組織「ダークネスカードファイトクラブ」とかそんな感じの組織にやってきてしまったかのようだ。

 

「ああ、今日はよろしく頼む」

「店長店長……! 雰囲気出てますね……!」

 

 やめなさいエレア、興奮するのはわかるけどそれやると台無しになるから!

 とはいえ仮面の人は気にした様子もなく、キビキビとした動作で俺達を案内する。

 エレベーターの前に立つと、何か動作をしてから手のひらをかざし、最後に胸元からカードキーを取り出してスキャンする。

 結構警備がしっかりしている……が、多分ここまでする意味はないと思うので半分以上はレンさんの趣味だと思う。

 

 仮面の人に促されて、エレベーターで地下へと下る。

 しばらくの間、無言の時間が続く。

 というか全然つかないな……めちゃくちゃ地下に施設作ってるなこれ……。

 

「…………そわ」

 

 エレアはそわそわしていた。

 なんかこう、雰囲気の出る会話がしたいけどいい感じの内容が出てこない様子だ。

 だったらここは沈黙を貫けばいいと思うのだが、まぁエレアが話しかけたいなら俺は止めないぞ。

 

「……こ、この先には何があるんですか?」

 

 あ、どうやら事情を理解していない一般人路線で行くようだ。

 まぁ実際、エレアはここに来るのが初めてである。

 俺は前にお邪魔したことがあるのだが、エレアは中々外に出る機会がないからな。

 

「我々は……闇札機関。闇に潜み、闇の悪鬼を誅す者」

 

 仮面の人が、朗々と語り始めた。

 ところで闇札機関の正式名称って秘密闇札対策機関だったと思うんだけど。

 闇札機関の方で馴染みすぎているのか、所属してるエージェントすら闇札機関で通しているんだな。

 

「あなた達は、我らの盟主によってここに導かれました。盟主の寛大なる御心に感謝し、心して進みますよう」

「…………ごくり」

 

 まぁ、レンさんが呼び出したんだからその通りなんだけど。

 レンさんに寛大な御心なんてあったかな?

 

「そして、歓迎いたします。我ら闇札機関は、あなた達のような強者をお待ちしておりました」

 

 やがて、エレベーターが止まる。

 ポーン……と沈黙の中へ音が響いて。

 扉が開いた。

 そこには――

 

 

「あ、店長やっときた、待ってたわよ。エレアもようこそ。……って、リオン何してるの?」

 

 

 いつも通りのヤトちゃんがいた。

 違うのは、エージェントとしての制服姿を身にまとっていることくらい。

 この衣装……前に見たのはヤトちゃんと初めて会った時じゃないか?

 ともあれ、それっぽい雰囲気を醸し出していたエレベーターから一転、概ねいつもの空気になった。

 

「ヤトちゃんこんにちわー!」

「ええ、こんにちわ」

 

 と、エレアもいつも通り元気に挨拶をして。

 仮面の人――ヤトちゃんがリオンと呼んだ人が仮面を取る。

 

「おーっす、こっからの案内は任せたぞー、ヤトー」

 

 ――雰囲気ぜんぜん違う!

 仮面のせいでミステリアスさが先行していたが、仮面の下の相貌はどちらかといえばスポーツ少女といった雰囲気の快活さだった。

 

「いやだからその仮面はどうしたのよ……」

「何って……雰囲気出そうと思って。仮にもエージェント組織だぞ? いーじゃん、仮面の一つくらい被ったって」

 

 レンさんノリノリで用意してくれたぞ、とリオンさん。

 ヤトちゃんとは同年代らしい。

 

「ああえっと……なんかごめんなさいね? うち、基本的にこういうノリ大好きだから」

「あのレンさんの部下だからな、よく理解ってるよ」

 

 とりあえず、ここからの案内はヤトちゃんが引き継ぐらしい。

 わざわざここに来るまでをリオンさんが受け持ったのは……単純にやりたかったからだな。

 何でも立候補者多数のところを、じゃんけん大会の末勝ち取った権利らしい。

 そこはファイト大会じゃないんだ……

 

「あ、あのー……ところで店長サン?」

「あ、リオンさん。どうしたんだ?」

「え、えーと……」

 

 なんだか恥ずかしそうなリオンさん。

 横でエレアが若干センサーを反応させている、ステイステイ。

 んで、何かと思っていると――

 

 

「さ、サインください!」

 

 

 とのことだった。

 わざわざ色紙を取り出している。

 いや、どこから取り出したのそれ?

 

「アタシ店長のファンなんすよ! よければここにサインを!」

「それはもちろん構わないんだけど……だったらうちの店に通ってくれると俺としては嬉しいんだが」

「いやそれは……その、恐れ多くて……」

 

 ああ、うん。

 そうなんだ……。

 若干寂しさを感じつつ、俺はリオンさんにサインを書くのだった。

 なお、エレアは横で深く頷いていた。




ここからしばらく、闇札機関訪問編です。
謎の組織のベールがいま……

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