カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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97 過去:負けないでください、店長! 宿命の対決、店長VSダイア ③

 <破壊の雷>。

 シンプル極まりないそのカードは、俺の<ゴッド・デクラレイション>のような、ダイアが操る汎用パワーカードだ。

 その強烈な効果から、普段はうまく躱されたり、そもそも発動を防がれたりするわけだが。

 今回は俺のエースモンスター二体を一撃で粉砕するに至った。

 代名詞だけあって、普段はメタられる立場でも、有効に発動すればそれだけでゲームを終わらせうるカードである。

 

「……そんな、店長のモンスターが全滅しました」

「<破壊の雷>はそういうカードだ。とんでもない話だけどな」

 

 凄まじい雷鳴の後、俺のフィールドに残ったものはなにもない。

 <ウリエル>も<ラファエル>も、フィールドには残っていない。

 <ウリエル>には破壊を1ターンに1度無効にする効果があるのだが、この効果は自身の効果でターン終了時に戻ってきた時だけ適用される。

 <ラファエル>で蘇生した場合はその限りではない。

 まぁ、あってもこの後の展開を考えれば焼け石に水でしかないのだが。

 

「……だが、まだファイトが終わったわけじゃない。俺は<ラファエル>のエフェクトを発動! セメタリーから<古式聖天使>モンスター一体をサモンする! 呼び出すのは<ロード・ミカエル>だ!」

 

 何にせよ、使われてしまったものは仕方がない。

 ダイアのデッキには破壊効果を持つモンスターが多い、それを踏まえて対策としての<ラファエル>だ。

 破壊時の蘇生効果で、さらに破壊耐性を持つ<ミカエル>をサモンして攻勢に備える。

 

「流石に、ただで転んでもらっては困るからな! 俺は<心火の楽園>のエフェクトで<グランシオン・ディバイトウルフ>をサモン! こいつは<心火の楽園>のエフェクトでサモンされた場合、相手モンスター一体を破壊する!」

「<ロード・ミカエル>のエフェクトで1ターンに1度、デッキの上からカードを一枚墓地に送って破壊を免れる!」

 

 そしてその破壊耐性は、一瞬で使わされてしまった。

 まぁ、メインデッキのモンスターに破壊効果を持つモンスターが一体くらい存在するのは普通のことだ。

 それ自体は問題ない。

 ダイアは続けてモンスターを展開、大型エースをサモンする。

 

「さぁ、更に行くぞ! <グランシオン・エンデ・ドラグバニシメント>!」

 

 <ドラグバニシメント>の強化型エース。

 俺の<大古式聖天使>に対する<極大古式聖天使>に相当するモンスターだ。

 基本的なデザインは変わらないが、首が三つになっている。

 ()()()()は動画で見たことがある。

 

「<エンデ・ドラグバニシメント>をサモンする際の素材にした<グランシオン・バスタータートル>のエフェクトで、相手フィールドのカード一枚を手札に戻す!」

「素材でも除去しようとしてくるのか……! カウンターエフェクト<古式転換(エンシェント・エクストリーム)>!」

 

 <エンデ・ドラグバニシメント>を警戒していたらこれだ。

 その<バスタータートル>、動画で見たことないカードだぞ。

 

「これは、ダークファイターとのファイトでしか使ったことがないカードだからな」

「そんなことだろうと思ったよ! <古式転換>のエフェクトで、手札の<古式聖天使>とフィールドの<古式聖天使>を素材に、こいつを呼び出させてもらう!」

 

 俺が<ミカエル>を蘇生した理由はもう一つ。

 このカウンターエフェクトで呼び出す次のモンスターの、最も適した素材だからだ。

 

「現われろ! <極大古式聖天使 アークロード・ミカエル>!」

 

 かくして、俺のエースモンスターの一体がサモンされた。

 ちょうど、<エンデ・ドラグバニシメント>と同格のエースモンスターだ。

 そして、<ロード・ミカエル>をサモンの素材としたことで、<バスタータートル>の手札に戻す効果は無駄になった。

 

「ここまでは、当然凌いでくるな。であれば次も凌いでみせるか! <エンデ・ドラグバニシメント>のエフェクト! <心火の楽園>がフィールドにある時、1ターンに1度、相手モンスターを全て破壊する!」

 

 サンボルの二度打ちは反則だろ!

 理解ってはいても、この効果は強烈だ。

 そりゃあエースモンスターなんだから、これくらいしてもおかしくはないのだが。

 

「<ロード・ミカエル>は自身がフィールドから離れる時、それを二回まで無効にできる」

「ただし、二回目は手札を一枚すてる必要がある……だろう?」

「一回目はタダだ! 破壊から逃れろ、<アークロード>!」

 

 三つ首竜の炎を、水晶の天使が受け止める。

 凄まじい光景だ。

 単なる映像であると理解っていても、息を呑む光景である。

 

「まだまだ! <エンデ・ドラグバニシメント>は1ターンに3回攻撃が可能!」

「少しは加減しろよな!」

 

 恐ろしい話、この三回攻撃は<心火の楽園>がフィールドになくても使用可能だ。

 こいつのデッキ、たまーに<心火の楽園>がなくても発動できるエフェクトがあるんだよな。

 そしてそういう効果に限って強い、ずるいだろほんと。

 

「さぁ、三連打だ! 行くぞ! <エンデ・ドラグバニシメント>、一回目の攻撃!」

「セメタリーの<古式聖天使 スピサ>のエフェクト! ファイト中に一度、相手モンスターの攻撃を無効にする!」

「さっき、<アークロード>を呼び出す時の素材にしたモンスター!」

 

 エレアが驚愕の声を上げた。

 そして、俺もそう簡単にやられるつもりはない。

 ここで攻撃を二回以上通したら俺は負ける。

 そうでなくとも<アークロード・ミカエル>をフィールドに残して次のターンにつなげたい。

 正念場、というやつだ。

 

「ならば二回目だ! <エンデ・ドラグバニシメント>!」

「<アークロード>のエフェクトにより、戦闘による破壊を防ぐ!」

「だが、ダメージは受けてもらうぞ!」

 

 ここまでのやり取りで、お互いにダメージが蓄積している。

 これでやられることはないが、だいぶ危険域に突入しつつあった。

 

「このとき、手札を一枚捨てる。捨てたカードが<古式聖天使>モンスターだった場合、相手のカードを一枚破壊!」

「<心火の楽園 グランシオン>のエフェクト! 1ターンに1度、<グランシオン>モンスター一体を指定する。そのモンスターはこのターン、戦闘、エフェクトでは破壊されない!」

 

 <エンデ・ドラグバニシメント>への破壊効果は防がれた。

 そして、残る<エンデ・ドラグバニシメント>の攻撃回数は一回だ。

 

「そして、たった今捨てられた<古式聖天使 エクリクシス>のエフェクト。このカードがセメタリーに送られた時、フィールドの<古式聖天使>モンスター一体を指定。そのモンスターはターンに1度、戦闘とエフェクトで破壊されない」

「だが、戦闘によるダメージは受けてもらうぞ!」

「理解っているはずだ! <アークロード>のエフェクト! この戦闘中、セメタリーの<古式聖天使>モンスターの数だけ攻撃力を上げる!」

 

 ――ダイアが<エンデ・ドラグバニシメント>で<アークロード・ミカエル>を攻撃する。

 そして、先程<エクリクシス>をセメタリーに送ったことで、<アークロード・ミカエル>の打点上昇効果が意味をなすようになった。

 二体のモンスターの攻撃力が並んだのだ。

 攻撃力が同じモンスターがバトルすれば、当然お互いが消滅するが――俺は<エクリクシス>のエフェクトで、ダイアは<心火の楽園>のエフェクトで破壊を免れる。

 

「……痛み分け、だな」

 

 今度は俺が、笑みを浮かべてそういった。

 

「まさか全部防がれるとはな……」

 

 対するダイアが、今度は苦々しい笑みを浮かべている。

 まさか先程の攻防で、<アークロード>を倒しそこねるとは思わなかったのだろう。

 俺は倒しきれずとも<アークロード>くらいは……そう考えていたはずだ。

 

「……店長も、すごいです。あの攻勢をしのぎ切りました」

「そう言ってくれると嬉しいよ、エレア」

 

 そう言って、視線をエレアに向けてから。

 

「さぁ、決着をつけるぞ! 俺のターン!」

 

 そう言って、デッキに手を乗せて。

 カードを、引く。

 

「ドロー!」

 

 手にしたのは――一枚のカード。

 俺はそれに、一瞬だけ目を見開いてから――

 

「セメタリーの<スピサ>のエフェクト!」

 

 展開を開始する。

 やがて、フィールドに<アークロード・ミカエル>をはじめとしたモンスターが並び――

 

「……来るか、<エクス・メタトロン>」

「ああ、そうだな。俺の最後の切り札は、いつだってこいつだ」

 

 その瞬間。

 

 

「――――なら、私もそれにふさわしいモンスターを呼び出さなければな」

 

 

 ダイアから、濃密な気配が溢れ出す。

 

「っ……!」

 

 エレアが息を呑み、一歩後ろに退いた。

 コレは俺とダイアにとって譲れないファイトだが、世界を滅ぼすようなファイトではないというのに。

 それでも、ダイアの気配が見ているものを圧倒してしまうのである。

 

「こ、れが……日本チャンプ、逢田トウマ……さん……」

 

 ただ、立っているだけで、彼の存在を認めさせてしまう。

 アレだけ警戒していたエレアが、これまでのファイトとその存在感だけでダイアの実力を認めざるを得ないくらい。

 そこにいるのは、圧倒的な強者であった。

 

「カウンターエフェクト、<心火再熱(グランシオン・クロッシング)>! 私も、手札のモンスターとフィールドのモンスターを素材に、サモンを行わせてもらう!」

「来るか……!」

 

 そして当然、俺も自身の最終エースを呼び出す。

 このファイトに勝利するため、かつての敗北の借りを返すため。

 何より俺は――

 

 視線を、一瞬だけエレアに向ける。

 

 お互いに頷いて、そして俺はまたダイアの方を向いた。

 

 

「現われろ、<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>!」

「さぁ、顕現せよ! <グランシオン・デウス・ドラグバニシメント>!」

 

 

 両者の最後の切り札が、ここに顕現する。

 片や、無数の羽を伴った水晶の天使。

 片や、神の如き神々しさを放つ竜。

 思わず、息を呑む光景だ。

 

「<デウス・ドラグバニシメント>のエフェクト!」

 

 そして、即座にダイアが<デウス・ドラグバニシメント>のエフェクトを発動させる。

 処理の順番は、<心火再熱>を発動して<デウス・ドラグバニシメント>を呼び出してから俺が<エクス・メタトロン>を呼び出している。

 だから、<メタトロン>無効エフェクトを使用するには、このエフェクトを止めるしかない。

 このタイミングでエフェクトを使用することに違和感はあるものの、俺はこのエフェクトを止めざるを得ない……!

 

「……<エクス・メタトロン>でそのエフェクトを無効、手札に戻ってもらうぞ!」

「――<デウス・ドラグバニシメント>は<心火の楽園>がフィールドにある限り、モンスターのエフェクトを受け付けない! たとえそれが、<メタトロン>の無効エフェクトであってもだ!」

「何!?」

 

 ある程度は想定していたが、<エクス・メタトロン>の無効をはねのけてきた!

 心火の楽園を破壊する方法は、俺にはない。

 故に、このエフェクトは受けざるを得ない――!

 

 

「相手がモンスターをサモンした時、相手フィールドの全てのカードをセメタリーに送る!」

 

 

 セメタリーに送る効果は破壊ではない。

 <エクス・メタトロン>の破壊耐性をすり抜ける。

 

 ――それは、つまり。

 

「そんな……店長の<メタトロン>が、こんなに……あっさり」

 

 俺の最終エースが、いともたやすく除去されるということだ。

 <エクス・メタトロン>を入手してから。

 <メタトロン>が除去されたことは、数えるほどしかない。

 

 そして、何より。

 

 俺がこの店を開店してから。

 今――このダイアとのファイトからおおよそ二年後に至るまで。

 その期間に限れば、

 

 

 <エクス・メタトロン>を除去されたのは、これが唯一のことだった。

 

 

 ――――だが。

 俺は、まだ諦めてなどいない。

 

 視線を、手札のカードに落とし。

 それから、エレアに向ける。

 

「……店長」

「ああ、力を貸してくれ。エレア――」

 

 否、あえて俺はそのカードの名前を呼ぶ。

 

 

「――<エクレルール>」

 

 

 <帝国の尖兵 エクレルール>。

 そのカードを、俺は手にしていた。




ここまで店長とダイアの真面目な決戦、ここから店長とエレアのイチャコラ。
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