カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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102 主催者のおしごと

 イベントが始まって、スタッフは忙しく動き回っている。

 イベントスタッフは主にモンスターに扮したキャスト――闇札機関の学生たちで構成されている――と裏方のスタッフに分かれている。

 俺の仕事は、主に裏方。

 というか、責任者として会場を見て回りつつ発生した問題に対処するのが主な役割。

 細かい問題なら、現場の判断にまかせても問題ないが、非常事態ならそうはいかない。

 こういう大きなイベントは、ダークファイターが潜り込んでるものだからな。

 

 ショップの方はメカシィと闇札機関から雇った臨時のバイトにまかせている。

 あっちにも結構な人が来ているそうだが、流石にバズって大繁盛している時ほどではなさそうだ。

 なので俺はイベント会場を見て回るのが主な仕事なのだが。

 

「あ、店長。あっちでネッカくんがファイトしてますよ、隣にはアツミちゃんもいます」

「おー、クローはいないんだな」

 

 俺の隣には、エレアがいた。

 なんというべきか、いつの間にかイベント中はずっと俺とエレアの二人一組で行動することになっていたのだ。

 いや本当にいつの間にかそういうことになっていた。

 エレアが企画書に無意識に盛り込んだのか、シズカさんがこっそり盛り込んだのか。

 はたまた誰からともなく俺達は二人一組だろうと言うことになったのか。

 真相はわからない。

 とはいえ――

 

「イベント、始まっちゃいましたねぇ……」

「始まったなぁ……」

「私、こうやって店長と二人でイベントを見て回れて、とっても楽しいです」

 

 ――これはこれで、俺達はイベントを満喫していると言えた。

 ぶっちゃけ、俺達がこのイベント開催中にやることはあまりない。

 雑用なら専門に雇ったスタッフがいるし、キャストも十分な数揃えている。

 なのでイベント中は警備がてらイベント会場を見回って、何か大きな出来事がおきたら現場に駆けつけるのが主な仕事と言えた。

 

「いいイベントになったな」

「最後まで、そうであってほしいです」

 

 なのでまぁ、こうして二人でイベント会場を眺めて楽しそうなお客を見守るのが今回の役割なわけだ。

 ……ああいや、もう一つ大事な仕事があったな。

 

「失礼いたします、店長ミツル殿、主催者エレア殿」

 

 ふと、声をかけられる。

 俺達が振り返ると、そこに立っていたのは――

 

「貴方は……ベアトリクスさんじゃないか、お久しぶり」

「あ、この方が噂の姫騎士さんなんですね。エレアです! お会いできて光栄です!」

「エレア殿、ベアトリクスだ。よろしくお願いする」

 

 ユースティア家に仕える姫騎士、ベアトリクスさんだった。

 相変わらず、物々しい甲冑姿である。

 エレアが目を輝かせていた。

 というか目にしいたけができている!

 

「本日は、モンスターランドカーニバルが開催できたこと、お祝い申し上げる」

 

 そう言って、一礼してみせるベアトリクスさん。

 彼女は――来賓だ。

 現在、このイベントには多くの来賓が訪れている。

 ベアトリクスさんのような、エージェント組織の一員から、行政のおえらいさん。

 それから興行系のプロファイターなんかも、このイベントを視察しに来ているな。

 後は、個人的に俺に興味ある客も来ているらしい。

 

 そう、俺達の大事な役割とはおえらいさんの挨拶を受けることだ。

 これが中々馬鹿にならない……というか、前世のそれは社交辞令でしかなかったが今は違う。

 単純に、挨拶してくる人たちの個性が濃いのだ。

 相手をしていて飽きないというか、興味深い話が聞けるのである。

 なので、俺はこういう挨拶も結構楽しみにしていた。

 

「今回、私がこのイベントに参列したのは、お礼を申し上げたかったからなのだ」

「と、いいますと?」

「…………エクスチェンジスーツ、アレは革命だ!」

 

 と、このように。

 歓喜に満ちた叫びを上げるベアトリクスさん。

 不意に、周囲の視線を受けて恥ずかしそうに咳払いした。

 

「見ての通り、私はユースティア家の騎士として、正式な場では甲冑を身にまとう必要がある」

「……なるほど、大変そうだな」

「そうなのだ! 夏は暑いし、着替えるのも大変! 女性だけで構成される騎士団なのに鎧のデザインが無骨過ぎる!」

 

 とても大変そうだ。

 ちなみにベアトリクスさんは色々と鎧を改造していて、結構おしゃれなのだが、これは身分が高く給金にも余裕があるからできることらしい。

 下っ端はモブデザインの鎧強制だとか。

 

「というわけで、いずれエクスチェンジスーツが安価になった暁には、正式に騎士団に採用したいと考えているのだ……!」

「お、応援してます……!」

「そういうことなら、研究所の人にも挨拶していくか? 今なら多分副所長のクレハさんがコスプレブースにいると思うけど」

「ぜひ!」

 

 ずいっ。

 すごい勢いだ。

 鎧の存在感もすごい。

 あ、エレアはむくれないで。

 

 というわけで俺がクレハさんに連絡を取って、ベアトリクスさんが向かうことを告げる。

 ベアトリクスさんは、顔を輝かせてコスプレブースの方へ向かっていった。

 

「コスプレブースであれば、アロマ様もそちらにいるはずだ! アリス様から護衛の任を承っている身、都合がいいといえる!」

「いってらっしゃーい」

 

 どうやら、俺への挨拶以外にも仕事があるらしい。

 忙しくて来れないアリスさんの代わりに、アロマさんの護衛か。

 まぁ、アロマさんなら心配はいらないだろうけど。

 ともかく、そんなベアトリクスさんを俺とエレアは見送るのだった。

 

 

 □□□□□

 

 

 その後も、更なるアイサツの使い手が現れる。

 

「――貴様が、このイベントの主催者だな」

「……! 何者だ」

 

 暗がりから、声をかけられる。

 俺は少し警戒しながら、そちらに視線を向けた。

 ちらりとエレアの方に視線を向けると――注意はしつつも警戒はしていない。

 どうやら、敵意はなさそうだ。

 

「我らは“ディバイン・シャドウ”、影に潜み、闇を滅する刃」

「ディバイン・シャドウ……!」

 

 その名前に俺は――

 

 

「……聞き覚えあるか、エレア」

「な、ないです」

 

 

 小声でエレアに確認した。

 ――聞き覚えがない!

 知らないエージェント機関だ!

 闇を滅する刃と自称するあたり、秘匿組織タイプのエージェント機関であることは推察できる。

 エレアが敵意を感じていないあたりからも。

 ただ、名前は聞いたことがない。

 レンさんの組織のように、調べても出てこないが情報統制はしていないタイプよりは、隠蔽がしっかりしている組織のようだ。

 

「貴様の存在は、我々も聞き及んでいる」

「……そうか」

「その刃、実に研ぎ澄まされている。使われぬのが惜しい限りだ」

 

 ディバイン・シャドウの刺客は朗々と告げる。

 

「この集い、多くの大衆が駆けつけ、宴に酔いしれている。実に誉れ高い」

「そ、そうか」

「それを成した手腕は、並々ならぬ物だ。貴様にも、この集いに関わった多くのものにも敬服する」

「あ、ありがとうございます」

 

 なんというか、これは――

 

「今後も、このように民を導き、安らぎをもたらすことを願う」

「当然そのつもりだ」

 

 普通にお祝いされている――――!

 秘匿組織な上、隠蔽がしっかりしているから姿を表さないのと物言いが仰々しいだけだ!

 なんか、少し緊張し過ぎだったらしい。

 

「――ところで」

「なんだろうか」

「闇札機関の盟主は、今どこにいるだろう」

 

 そして、多分これが本来の目的だったに違いない。

 レンさんの居所を聞いてきた。

 俺に挨拶するついでに、レンさんの居場所を聞くため俺に声をかけたんだろうな。

 とりあえず、今ならメインステージで色々やっているだろうと伝えた。

 

「感謝する。では、失礼」

 

 そう言って、ディバイン・シャドウの人はいなくなった。

 ……なんだったんだろう。

 

 

 □□□□□

 

 

 それからも、俺は色んな人から挨拶を受けた。

 隣町の市長さん――小太り悪党タイプの人だったが、この人もネッカ少年によって改心済らしい――と挨拶して、ワルゾウ氏のところへ案内したり。

 アロマさんのファイトを見て、俺達のことを知ったらしいヒール系プロファイターに挨拶されたり。

 シュヴァルツ・イグニッション星人がイベントのプロモーターをしたいと申し出て来たり。

 最後のは本人的にはめちゃくちゃ急いで来たんだろうけど、もうイベント始まってるよ! あと多分胡乱なイベントになるからダメだよ!

 まぁ、いろんな奴が挨拶に来た。

 多分、これからもやってくるだろうが。

 

「……なんか、イベントが始まった、って気がしてきたな」

「そうですね……!」

 

 濃い来客に、俺達はイベントの始まりを感じるのだった。




この世界には色んな人がいます。
あと前回書き忘れましたが、ワルゾウ市長のモデルはクロノス先生+プリパラのグロリア校長です。
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