カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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108 最強ファイターは、いつだって心に焼き付く

 コスプレブースを出て、今度はモンスターブース――仮装モンスターがお客とファイトするブース――へ向かう。

 ここは基本的にレンさんの管轄で、配下である闇札機関のメンバーがキャストとしてお客を出迎えている。

 イベントの目玉ということもあって、ここは特にお客が盛況だ。

 

「というわけで戻ってきたわけですけど、相変わらず盛況ですねぇ」

「だな。今回の目玉でもあり、他のイベントとは一線を画するブースだ、盛況じゃないと困る」

 

 キャストは交代制でお客を出迎えており、常に十人程度がファイトをしている。

 

「ヤトちゃんは……いないな」

「休憩中だと思います。というか、休憩中でないと困りますよ」

 

 キャストの中にヤトちゃんの姿はない。

 あの<ショルメ>がヤトちゃんだったのか、異界からやってきた<ショルメ>本人だったのかは解らない。

 だが、ヤトちゃんが休憩中でないタイミングで<ショルメ>が俺達に接触していると、あれがショルメ本人だと確定してしまう。

 一応、探偵を名乗っているくらいなのだからそのくらいは配慮するだろうと思ったが。

 案の定だったな。

 

「んで、今ファイトしてる見知った顔は――」

「まぁ、一応全員と顔を合わせてはいますけど。話したとなると……今は……あ、あそこにロウさんがいますね」

「これからファイトを始めるみたいだな」

 

 そう言いながら、俺はファイトが始まる場所へ向かう。

 どこも人だかりができているので、誰がファイトをしているか直接視認することはできないのだが、ファイトする場所はイグニッションフィールドだ。

 イグニッションフィールドにはでかいモニターを表示する機能があるのは、以前シズカさんがそれをプロジェクターにしたことからも解ると思う。

 今回はそれを、フィールドで行われているファイトを観戦するためのモニターとして使用していた。

 それぞれのフィールドのモニターを見て回って、知り合いがいないかを確認したというわけ。

 

 このモニターのいいところは、ファイトの順番を待っている最中もモニターでファイトが観戦できるというところ。

 通常、遊園地のアトラクションは待ち時間が大いにネックとなるが、このイベントでは待ち時間の間もモニターでファイトを観戦できる。

 待っている間の時間つぶしとして、これほど最適なものはないだろう。

 

「んで、ファイトしているのは……」

「知らないファイターですね、遠くから遠征してきたのかな」

「かもな。…………ん? あ、いや、まて。あいつ――」

 

 お互いに準備を整えて、ファイターとロウさん――が扮したモンスターは今まさにファイトを始めようというところ。

 そのタイミングで、俺はロウさんが戦っているファイターに見覚えがあることに気がついた。

 

「――まずい、あのファイター、()()()()!」

「えっ!?」

 

 直後、モニターの中で二人のファイターが、

 

「イグニッション!」

 

 ファイトの開始を宣言した。

 しまった、ファイトが始まってしまったぞ。

 

「え、いやでも、ダイアさんってあのダイアさんですよね? あんな、()()()()()()()()変装できるような人じゃ」

「流石にモニター越しじゃエレアも見抜けないだろうけど、直接見ればわかるはずだよ。あいつはダイアだ」

 

 実は、普段の不審者スタイルはダイアの本当の変装ではない。

 あんな如何にも目立つスタイルでは、おちおち町中も歩けない程度にダイアは有名人だからだ。

 普段この街であの不審者スタイルを通しているのは、単純にそれで問題ないくらいこの街の住人が慣れているだけ。

 

 そしてそれは、同時にダイアの変装能力に対する認識を歪めることにもつながる。

 実はダイア、それなりに変装ができるのだ。

 まぁ、それを教えたのはシズカさんなのだけど。

 というわけで今のダイアは、シズカさん直伝の本気変装モードというわけ。

 

「あいつ、その日は用事があるとか言っていたのに。……多分、突発的にその用事がリスケにでもなったんだろうな」

「じゃあ普通に来ればいいのでは?」

「来れないと言った手前、普通に来るのが恥ずかしかったんだよ。だからってあの変装……今日は俺もシズカさんもこのイベントに来てるのに」

 

 とはいえ、ファイトしてる姿を見られなければ、見つかることはなかっただろう。

 しかしそこはファイトバカのダイア。

 こんな場所でファイトを我慢できるはずもなく……

 

「しかし、よりにもよって対戦相手がロウさんか……まぁ、悪いことではないんだけど」

「どういうことですか? 別に、問題のある対戦カードには見えませんけど」

「いやぁ……ダイアっていうのは、正体を隠していても強烈なファイターなんだ」

 

 仮にも、ファイトが好きというだけで日本最強のファイターになった怪物。

 その生き様は、多くの人にとって余りにも眩しいのである。

 

「迷っているファイターがダイアと正面からぶつかってみろ、良くも悪くも影響を受ける」

「……それ、店長も同じようなものでは?」

「俺はいいんだよ、自覚してるから。ちゃんと方向性だって俺なりに考えてるし」

「でも店長も同じものですよね?」

 

 しかし、ダイアは違う。

 あいつは自分のファイトが他人に与える影響なんて考えていない。

 いや、考えてないわけじゃないんだけど。

 楽しいファイトができたらオールオッケーという結論を、確固たる信念のもと出してしまったのだ。

 信念を持って決めた答えを、他人がどうこう言えるはずもなく。

 

「だからこそ、ロウさんは間違いなくこのファイトで影響を受ける」

「そうなんでしょうけど、それはそれとして店長も同じですよね」

「…………」

 

 黙秘!

 

 何にせよ、ロウさんとダイアのファイトは続く。

 ロウさんは自身が操るデッキ「ライドウルフ」デッキのエースモンスターに仮装している。

 つまり、今ロウさんが使ってるデッキは、ロウさんのメインデッキである「ライドウルフ」デッキ。

 ただでさえ闇札機関最強のエージェント(レンさん除く)がメインデッキを使っているとなっては、ほとんどのファイターはそれに勝てない。

 故にロウさんは、ここまで全てのファイター相手に勝利してきた。

 まぁ、ネッカ少年がアツミちゃんとデートしているから、というのも理由ではあるんだけど。

 とはいえ、その不敗神話も今ここで崩れ去ろうとしていた。

 

「……なんて強さだ!」

「君も、素晴らしい実力だ。しかし、私も負けるつもりはなくってね!」

 

 ロウさんは押されている。

 このままでは負けるかもしれない。

 そんな時、ロウさんの“迷い”がファイトに現れる。

 

「……君、何か迷っているのか?」

「……え?」

「ああいや、なんとなくそう思ってね」

 

 その問いを、ダイアが指摘した。

 

「……始まったぞ、ダイアのファイトが」

「店長もだいたいあんな感じですよね」

「…………」

 

 ……ともかく。

 ダイアはその後、ロウさんから悩みを引き出した。

 将来の進路、その悩みは非常にシンプルだが、だからこそ答えを出すのが難しい悩みだ。

 対するダイアは――

 

 

「なら、やりたいこと全部やってみればいいんじゃないか?」

 

 

 そう、端的に言ってみせた。

 ロウさんは、その言葉に目を見開いて……それから、納得した様子で頷いた。

 

「別に、一つのことに目標を絞る必要はないだろう。君なら、その全てを目標にしても夢を叶えられるはずだ」

「……そうですね。()()()に言われたら、そうするしかなさそうだ」

 

 それまで、一応ロウさんはモンスター仮装の体裁を保っていたのだが。

 その言葉だけは、ロウさんの本音がこぼれだしたものだった。

 

 やがてファイトは決着。

 ロウさんもダイアも満足そうに頷き合う。

 最後には握手を交わして……その姿に観客は喝采。

 

「いやぁ、非常に白熱したファイトだったなぁ」

「ダイアさん、正体バレてません?」

「相手はロウさんだぞ、あんな姿見せたらバレないわけない」

「……そうですね」

 

 なんだエレア、さっきからジトーっとこっちを睨んで。

 

 

「――そもそも、ロウさんがダイアさんに悩みがあると露呈するくらい、自分の悩みと向き合い始めたのは、店長が指摘したからでは?」

 

 

「一理あるな」

「一理ですむわけないでしょうがぁ!」

 

 ぱしーん。

 店から持ち出してきていたらしいハリセンが、勢いよく俺の頭をはたいた。




こいつら、いつもこういうことやってんな回です。
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