カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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109 とんでもファイターいろいろ参戦!

 俺達はその後、休憩から戻ってきたヤトちゃんに挨拶してからその場を離れた。

 休憩中どうしてたか聞いたかって?

 流石に聞けなかったよ……

 

 ともあれ、次に向かうのはメインステージだ。

 俺達が開会式をした場所だな。

 みたいな話をヤトちゃんにしたら、

 

「ああ、あのイチャイチャ開会式……」

 

 と渋い顔をされた。

 イチャイチャ開会式じゃないからな!?

 

 ともかく、メインステージでは開会の挨拶をした後、色々とイベントを行っている。

 主にやっているのは仮装モンスターとゲストのファイト。

 各地から招いたゲストが、仮装したモンスターとファイトするという趣旨のものだ。

 なお、その仮装したモンスターの中に入っている人物は様々だ。

 闇札機関のエージェントである場合もあるが、招待したゲストである場合もある。

 

「このイベントのいいところは、ゲストが仮装することも可能だということですねー」

 

 例えば、最初のゲストが俺だったとする。

 俺と戦うのは俺と因縁のあるダイアのモンスター、中身はダイアだ。

 その後、今度はダイアがゲストとして登場する。

 そんなダイアと戦うのはダイアと因縁のあるシズカさんのモンスター、中身はシズカさん……みたいな感じ。

 なんか……バトスピで旧作のXレアがゲストのエースとして再利用される奴みたいだな……

 いや違うか。

 

「というわけで戻ってきました。今は誰と誰がファイトしてるんですかね?」

「人、多いな……」

 

 どこもかしも人だかりができているわけだが、メインステージは見る場所が一つだからか特に人が多い。

 ほんと、何人単位で人が来てるんだろうな……。

 イベントが全て終わったら集計が出るわけだけど、もう全く想像もつかないぞ。

 

『では、次のファイトを始めるぞ! さぁ、次なる狂騒はどのような調べを紡ぐだろうなぁ!』

 

 ふと、マイク越しに聞き覚えのある声が響き渡る。

 話の内容からして、おそらくはメインステージの司会をしているのだろうが……

 

「なんでレンさんが司会を……?」

「さぁ……なんかいつの間にかレンさんがやることになっていて……」

『では、次のゲストを紹介しよう! 今回のゲストは数年ぶりに帰ってきた異世界勇者! 草壁ユウトー!』

 

 ステージの中央で、白いガスがぶしゃーとなって、その奥からゲストが現れる。

 あんなプロレスの登場演出みたいなやつ、いつの間に用意したんだろう。

 

「あれは私の肝いりですよ! 絶対に必要だと思って用意しました!」

「お、おう。いやまぁ有効活用できてるなら何よりだ。というか、レンさんマイクパフォーマンスいい感じじゃないか?」

「すごいハキハキ喋れてますねぇ、プロ顔負けって感じです」

 

 まぁ、レンさんってとにかく器用だからな。

 経営も、小学生も、中二病も、エージェント機関の盟主も、とにかくなんでもできるのがレンさんだ。

 司会の一つや二つ、できないほうが不自然だ。

 それはそれとして、なんで司会やってるのかは不明だけど。

 

「んで、ゲストはユウトくんだな、いやぁ帰ってこれてよかった」

「ユウトさんってアレですよね? 本来だったら店で店員になるはずだった刑事さんの弟さん」

「そうそう。なんでも先日、異世界での戦いが一段落したってことで帰ってきたらしい」

 

 そのことが雑誌なんかでも話題になって、結構有名人になってるんだよな、彼。

 連日取材を受けたりとかで大変そうなんだが、結構ノリのいい性格なのでそういうのも楽しんでいるようだ。

 そんな彼は、明らかに異世界の勇者が着ると思われる服を身にまとっていた。

 如何にも転生モノの勇者って感じ。

 この世界の人間は髪にメッシュが入ってたりするので、結構似合う。

 

『対戦相手は当然コヤツだ! この街を守るネオカードポリスの刑事! ネオカードポリスに刑事という役職はない! 草壁刑事-!』

 

 レンさんの紹介を受けて、白い煙がぶしゃーっとされた後、咳き込みながらでてくる刑事さん。

 どうでもいいけど、刑事さんは下の名前で呼ばないんだな。

 というかよくよく考えると、レンさんが普通に名前で呼んでいる。

 司会なんだから当然か。

 

「げほ、げほっ、煙がむせ……ああったく、俺はこういう場に似合わないだろうに」

「そう言う割には結構声援が大きいぜ、兄貴!」

 

 かくして草壁兄弟が向かい合う。

 刑事さんはいつもの刑事さんっぽい衣装だ。

 観客にはこの街の市民も多い、ユウトくんと刑事さんなら、実は刑事さんの方が馴染みある人も多いだろうな。

 

「しかしなぁ、異世界から最初に連絡が来た時は驚いたぞ。まさか結婚したとか言い出すとはなぁ」

「へへ……実は子供もできました! 今度の里帰りであいつと一緒に連れてくるぜ!」

「げほっ! ごほごほっ! そういうのはこういう場で初めて明かすもんじゃねぇ!」

 

 会場が歓声に沸く。

 なんと子供までできるとは。

 そりゃあ結婚してもう半年以上経ってるんだし、やることはやっててもおかしくはないんだけどさ。

 

 おい、どうしてレンさんはこっちの方をみてるんだ。

 

「兄貴も、早く結婚して親父とおふくろを安心させてやれよ!」

「結婚した余裕をにじませやがって……まぁいい。ご祝儀ファイトだ、受け取りな!」

「異世界を一回救った俺の今の実力、兄貴に味わわせてやるぜ!」

 

 かくして、二人はイグニッションを宣言。

 ファイトが始まった。

 んで、結果は――

 

「こいつで終いだ! <世界聖剣エクスカリバー・アルトリウス>! 攻撃!」

「ぐああ――――!」

 

 ユウトくんが勝った。

 いやぁアレだな、さすがは異世界召喚勇者。

 普通にプロでもやっていけそうなくらいつよい。

 元々強かったからこそ、俺の店で店員を任せたいと思ってたんだけど。

 磨きがかかっている。

 その後、二人はお互いの健闘をたたえて握手をしてから去っていった。

 

『ううむ、草壁ユウトには異世界守護を頑張ってもらいたいものだ! では、次のゲストをお呼びしよう! 覚悟の準備をするがいい!』

 

 なんか、詐欺罪と器物損壊罪で訴えられそうだな。

 ともあれ、次なるゲストが入場してくる。

 景気よく白いガスがぶちまけられていた。

 

『次なるゲストは――真なるモンスター、ドラゴンの化身! リュウナ!』

 

 続いて現れたのは、リュウナさんだ。

 なるほど確かに彼女はモンスター、このイベントにおいてはある意味ぴったりなゲストだろう。

 と思っていると――

 

「見てください店長! リュウナさんドラゴンモードです!」

「ドラゴンっていうか竜人って感じだけど」

 

 現れたのは、ドラゴンとしての側面が強く現れたリュウナさんである。

 もともと彼女はエレアと違ってモンスターっぽさが強い。

 瞳とか、明らかにドラゴンの瞳だったからな。

 そんな彼女が、鱗とか翼とか、尻尾を伴って現れた。

 アレが本来のリュウナさんってことか?

 

「――お嬢様、リュウナあらため、<ガイアストラ・ドラグーン>……ここに」

『うむ。その姿、まさしく我が配下<ドラグーン>! その鱗、いつになく輝いておるぞ!』

「感謝の極み。であればお嬢様、私から一つご提案が」

『言ってみよ』

 

 恭しくレンさんに傅くリュウナさん。

 まさに王と臣下、二人の信頼関係を感じられるやり取りだ。

 

「では――私に、一手指南をお願いしたく」

『ふむ。我とのファイトを望むか、いいだろう!』

 

 そしてこのやり取りは、次なるファイトへのパフォーマンス。

 盛り上がる会場、レンさんとリュウナさんはファイトのため向かい合う。

 というわけで、今回の対戦カードはレンさんとリュウナさんだ。

 

『イグニッションだ!』

「イグニッションでございます」

 

 かくして、二人のファイトが始まったわけだが――

 

 

『ぐえー!』

 

 

 レンさんがものの見事に敗北した。

 そこはレンさんが勝つ流れじゃないの!? と思うが。

 そこで勝てないから表世界のレンさんは大変なのだ。

 とはいえファイトの内容はとても充実したものだった。

 観客も大満足である。

 

「お嬢様……一手指南、ありがとうございました」

『ぐず……精進するのだぞ』

 

 完全に自分が勝つつもりだったレンさんが泣きそうなこと以外は、実によいファイトだったといえる。

 まぁ、それはそれでレンさんの子供らしい部分が見えて会場もほっこりしているわけだが。

 さて、気を取り直して。

 レンさんも切り替えが早い、すぐさま調子を取り戻して声を張り上げた。

 

『では、次のゲストは――いよいよお待ちかね、あのプロファイターの登場だ!』

 

 さて、ここまでもメインステージではトップクラスの実力を誇るファイターが何人も登場してきた。

 ユウトくんも、リュウナさんも、その実力は本物だ。

 ただ、そんな二人の後でなお、「お待ちかね」とレンさんが断言できるファイターがいる。

 今回のメインステージに登場するゲストとしては、最大の目玉とも言えるファイター。

 それが一体誰かと言えば――

 

 

「そう、私よ!」

 

 

 白いガスの奥から、彼女は姿を見せた。

 水面シズカ。

 日本トップクラスの女性ファイターであり、当然その知名度も抜群。

 お忍びでこっそりやってきているダイアを除けば、プロファイターとしては今回もっとも知名度が高い。

 結果、メインステージでは歓声が沸き上がる。

 

 では、そんなシズカさんが戦う相手は――?

 

 

「そこまでです!」

 

 

 ふと、メインステージ脇に建てられた謎の柱の上から声がする。

 観客たちがそちらに視線を向けると――そこには痴女がいた。

 ごくり、と誰かが息を呑む音がする。

 

「……月兎仮面だ」

 

 そう、彼女の名は月兎仮面。

 ここ最近、良くも悪くも天火市を騒がす――この街だけで言えば、知名度はシズカさんにも負けずとも劣らない、女傑の姿がそこにあった。

 

「いやぁ……」

「……とんでもない対戦カードですねぇ」

 

 そんな二人の姿を、俺達はどこか遠い目で見守っていた。




この後ユウトくんは、現代みやげを抱えて異世界に帰っていきました。
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