カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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119 ファイト構成作家は恋愛脳 ②

 取材を受けて以来、エレアがうへうへすることはなくなった。

 人に見られるという意識が復活してきたのだろう。

 いまだにちょいちょいギクシャクする場面はあるが、それくらいはまあ日常風景ってことで。

 そこに関しては、イベント以前の日常が戻ってきたと言える。

 

 映画の件に関しても、今のところ企画が始まって、スタッフが決定したという状況で。

 実際にこれが完成するのは来年以降とのこと。

 取材もあの一回きりということだから、しばらく映画に関して意識することはないと思っていた。

 

「――ツムグに会ったそうね」

 

 突然サングラスをかけてやってきたイケてるマブ、水面シズカにそう声をかけられるまでは。

 本当にいきなりのエントリーである。

 こっちに来るという話すら聞いていないし、そもそも今はプロリーグのシーズン真っ只中じゃなかったか?

 あと、そもそもツムグって誰だ?

 まぁ小中井さんのことなのだが、俺は彼女を名字で呼んでいたため結びつかなかった。

 

「え、えっと……急にどうしたんだ?」

「そこはちょっとくらいシリアスに返してちょうだいよ!」

 

 あ、シリアスに話を運びたかっただけか。

 でも無茶だろ、シズカさんが来たって時点でどうやってもシリアスにはならないよ。

 メンタルが強く、そしてメンタルが強いせいでどんな状況でも自分を崩さないシズカさん。

 結果、安心感と共にネタ感が強くなってしまうシズカさん。

 初見でシリアスに振れというのは無茶な話である。

 

「コホン……小中井ツムグに会ったそうね」

「小中井……ああ、あの構成作家さんの」

「その小中井よ」

「どうしてシズカさんの口から彼女が?」

「個人的に親交があるの」

 

 さすがシズカさん、関係構築能力はダイアとどっこいのスーパーコミュ強美女。

 恋人を作ること以外なら、彼女に交流できない相手はいないと言われたほどのコミュ力である。

 なんと、以前あったダークイグニッション星人とも、あの後交流があるらしい。

 まぁ、あのダークイグニッション星人、実は女性だそうなので相変わらず色恋とかそういうのとは無縁なんだけど。

 

「小中井さんがどうしたのか?」

「あの子には、裏の顔があるのよ」

「裏の顔?」

 

 なんだなんだ、ホビアニの単発ギャグ回みたいになってきたな。

 まぁ、会ってみた感じ悩みとか抱えてそうだったし、何かしら秘密はありそうだったけど。

 その時は突っ込まなかったが、まさかシズカさんからその話題が飛んでくるとは。

 

「いい、あの子はね――」

 

 ごくり。

 シズカさんの言葉に思わず息を呑む。

 雰囲気に呑まれているのだ。

 もしくは、シズカさんの要望に沿って雰囲気を作っている。

 満足げにシズカさんが頷いて――

 

 

「ネットで自分が関わった作品を下敷きに、恋愛小説を書いてるのよ――!」

 

 

 ガシャーン。

 なんとなくすごそうな効果音がして――

 

「……いや、それが?」

「それが……って、反応悪いわよ!」

「だって……要するにそれ、取材内容を下敷きにした作品を、更に下敷きにしてるんだろ」

 

 もうそれ、ほとんど俺関係ないじゃないか。

 多分、読んでも俺と作品の主人公を結びつけるのは無理だぞ。

 

「そもそも、俺は時間がないからネット小説はあんまり読まない。言われないと解らん」

「まぁ……普通ならそうでしょうね。でも、――エレアちゃんなら?」

 

 ……む?

 と、そこで少し考える。

 エレアなら……いわゆるネット小説の類もそこそこ嗜むだろう。

 そしてエレアは、勘が鋭い。

 仮に、二度原液(おれたちのはなし)を濾過したとしても――直感的に気付く可能性はあるな。

 

「そしてツムグは、登場人物の恋愛描写に関しては非凡な才能があるわ。ちょっと事情があって彼女の恋愛小説は知名度が低いんだけど……それでも、エレアちゃんが見つけてしまったら」

「……冷静でいられなくなる?」

 

 なんてこった。 

 それじゃあせっかく冷静になったというのに、エレアがまた恋の病を発症してしまう!

 

「そう、それこそが小中井ツムグの正体――」

 

 バッと、シズカさんが絵的に映えるポーズを取った。

 

 

「恋愛脳のコイナカ!」

 

 

 ばばーん、とそう宣言するのだった。

 ……いや、プライバシーとか大丈夫なのか?

 え? 許可は取ってある?

 まぁ友人同士ならそりゃそうか……

 

 後、ここ最近はこの店に遠くから遠征してくる客が多いから、めちゃくちゃ目立ってるぞシズカさん。

 

 

 □□□□□

 

 

 次の日、俺はシズカさんに案内されて小中井さんが普段仕事している喫茶店にやってきていた。

 まさか隣の県まで連れてこられるとは。

 具体的に言うと、以前デートに行った遊園地のある街だ。

 なお、当然ながら店の方は非番である。

 メカシィに諸々を任せていた。

 

「ここがツムグのハウスね」

「違うだろ」

 

 なんて話をしながら、喫茶店に入る。

 この喫茶店は、テーブルを使ったイグニッションファイトができる喫茶店だ。

 落ち着いた雰囲気の中で、ダンディなおじさんたちがファイトをしてたりする。

 アレは商談とかしてるんだな、この世界だと日常風景だ。

 俺は未だにちょっと違和感あるけど。

 

「――来ましたね、店長さん」

 

 俺達が店員に案内されて、小中井さんのもとへ向かうと――真剣な顔つきで小中井さんが迎えてくれた。

 その雰囲気は、まさしく臨戦態勢。

 このままファイトが始まる流れだ。

 

 ――なぜこうなっているかと言えば、簡単。

 俺としては、俺とエレアの話が世界中に公開された結果、それがエレアの目に留まってしまうと困る。

 小中井さんは、そのことを盾にシズカさんを通して俺をここに呼び出した。

 こんな感じだ。

 

 一方的な脅迫じゃないか、と思わなくもないが。

 この世界だと、それによって呼び出されてもファイトで勝たなければ要求を通すことはできない。

 だから俺がファイトに勝ってしまえばいいのだ。

 

 それに、俺としても小中井さんの態度には気になるところがあった。

 彼女が何か困っているなら、カードショップ店長としては相談に乗るのが責務というもの。

 ファイト構成作家の知り合いがいないので、そういった人がどういう悩みを抱えているのかというところに興味もあったしな。

 

「……どうも、小中井さん」

「おっと、今の私は小中井ツムグではなく……恋愛脳のコイナカ、そう呼んでもらいましょうか」

「自分から名乗っていくのか……」

「恋愛脳の……の部分まで含めてハンドルネームですから」

 

 そ、そうか……。

 

「とにかく、俺としては貴方の作品がネットに公開されて、万が一エレアの目に入ってしまうと困るんだ。それを止めてもらいたい」

「作品を公開するのは私の自由です。それを止めたいと言うなら……ファイトで私を倒してください」

 

 そう言って、小中井さんは俺にテーブルの反対側を指差す。

 同時に、作業用と思われるタブレットを脇にどけた。

 いや、よく見ると画面はソシャゲをオートで周回している。

 雰囲気を出すために置いてあるだけだ、アレ。

 

「それで、コイナカさんの要求は何だ?」

「私が勝ったら……私の悩みを聞いて下さい」

「それは別に、俺が勝っても聞くけど……」

「勝って話した方が、恥ずかしさが減るんです!」

 

 席につきつつ聞くと、そんな答えが返ってきた。

 よくわからない理由だ……。

 

「じゃあ、俺が勝った場合の要求として、悩みを白状することも追加しようか」

「では……私が勝った場合は逢田トウマさんのサインを要求します」

 

 それはシズカさんに頼めよ。

 ともあれ、ファイトを開始しようとして――

 

「……シズカさんも席につくのか?」

「ふふ……騙して悪いけれど、私はツムグの味方なのよ」

「なっ――」

 

 まさか、この人――

 

「このファイト、私がツムグにアドバイザーとしてつかせてもらうわ!」

 

 卑怯だぞ!?

 ええい、こうなっては仕方ない。

 シズカさんのアドバイスもまとめてはねのけてやる!

 

 

「イグニッション!」

 

 

 かくして、よくわからない意地とプライドを賭けたファイトが始まった。




だいたいホビアニの単発ギャグ回です。
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