カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「知り合いの少年から、助けを求められたのデス。ピガガピー」
という話をメカシィから受けたのは、つい先日のことだった。
なんでも、普段からファイト工学研究所と懇意にしている天才発明家少年が、メカシィ個人に相談したいことがあるのだという。
「デスが、メカシィとしては他人の悩みを解決できる自信がありません。ピガガピー」
「それで、俺に手伝ってほしいと?」
「店長はカードショップ店長デス。普段から色んな方の相談を解決するお悩み解決のプロ。そのお力をお貸しいただきたく」
まぁ実際、この街でお悩み相談を受けた場合。
その解決能力が最も高いのは俺だろう。
店長としても、ファイターとしても、そういう相談を受けてきた場数が違う。
次点でネッカ少年。
彼の場合は、彼本人が悩みを解決するとは限らないが。
「しかし天才発明家少年か、少し気になるな」
「店長がそういう子に興味を持つって、珍しいですね?」
俺達の話を横から聞いていたエレアが声をかけてきた。
現在は、俺とエレアが店番をしている状況に、休みのメカシィがわざわざ訪ねてきたという状況だ。
店はまだ開店したてで、ここ最近の繁盛を加味しても余裕がある。
「別に珍しいってことはないだろ。単純に、興味を持つまでもなく向こうから人がやってくることが多いだけだ」
「店長も大概巻き込まれ気質ですしねぇ」
「肝心要のダークファイト事件にだけは巻き込まれないけどな」
なんて話をしつつ、メカシィの相談は受けることに決めた。
天才発明家少年に興味があるだけではない。
メカシィの相談内容そのものにも、色々と気になるところがあるからだ。
なお、エレアは俺とメカシィが彼に会いに行く間、店番をしてくれることとなった。
これが天才発明家少女だったら、店を閉めてでも会いに行くんですけどねぇとは本人の談。
エレアは美少女ならなんでもいいんだろうか。
とか、そういう話があって。
数日後、俺達は彼が拠点としている国立ファイト大学の研究室へとやってきていた。
国立ファイト大学ってなんだろうな……。
「彼の名は初島アキラくん。飛び級でこの国立ファイト大学に通う二年生デス。ピガガピー」
「飛び級大学生かぁ。天才ファイターでも飛び級ってなかなかないよなぁ……」
この世界はホビーアニメ世界らしく、飛び級小学生なんてものが存在する。
アキラ少年の場合は、まだ大学を卒業していないそうだが。
世の中にはすでに大学を卒業して、企業で働く小学生もいるそうだ。
まぁ、どこぞにはそもそも飛び級すらせず小学生のまま、色々と経営とかやってる変な人もいるけど。
そして面白いことに、この世界に飛び級で大学生や社会人になる子供はいても、飛び級でプロファイターになる子供はいない。
どれだけ優秀でも、プロファイター並の実力があっても、プロになるのは高校生になってからだ。
それだけ、プロの壁ってやつは厚いのである。
エージェントなら、小学生でもなれるんだけどな。
――普通逆じゃない?
「んで、ここがその研究室か」
「はいデス。この研究室は名門大学であるファイト大ですら、高度すぎてついていけない分野を研究しているため、所属しているのはアキラくんだけとのことデス」
「ううん、如何にも天才発明家少年だ」
いるよね、子供でありながら大人に匹敵――どころか時にはそれを凌駕する天才キャラ。
アキラくんは典型的な天才少年だ。
この世界には、そういう天才少年少女が結構いる。
当然、ファイターとしても将来有望だ。
そういう意味でも会うのが楽しみだな。
「では、失礼しマス。アキラくん、いマスか? ピガガピー」
こんこん、とメカシィが戸を叩く。
すると少しして、すごい音を立てながら中から誰かが近づいてくる。
ああ、中で何が起きているか容易に想像がつく……!
「わ、わわわ、おまたせしてごめんなさいであります!」
「落ち着いてくださいアキラくん。ワタシデス、メカシィデス。ピガガピー」
「だからこそであります! あわわわ、掃除をしようと思ったら寝落ちしてしまうなんて、一生の不覚であります!」
そう言いながら、ドアが開いて中から一人の少年が顔を出す。
年の頃はネッカ少年と同じくらい、ぐるぐる目の瓶底眼鏡にブカブカの白衣。
これぞ天才少年ですと言わんばかりの天才少年だ。
「はじめまして、アキラ。俺は棚札ミツル。カードショップデュエリストの店長だ」
「あわわわわ、本物であります……! お噂はかねがね、本日はお会いできて光栄であります!」
んで、俺はそんなアキラ少年と挨拶をして握手を交わす。
おっかなびっくり、アキラ少年も手を握り返してくれた。
んで挨拶を終えたら早速話を……と言いたいところだが、アキラは中に俺達を入れたがらない。
掃除をしようとして寝落ちしたそうだから、中は大変なことになっているのだろう。
「まぁ、話の内容からして目的の“彼”はここにいないんだろう? だったら一度食堂にでも言って腰を落ち着けよう。話を聞いてから、”彼”に会いに行けばいい」
「お心遣いありがたいであります……。では、色々と資料を用意してから学食に行くであります。二分三十二秒おまちくださいであります!」
というわけで、まずは学食に行くこととなった。
待つ時間を正確に指定するとは、流石天才少年。
そのまま彼が扉を締めて、中で凄い音を響かせているのを聞く。
メカシィに計測してもらったら、ピッタリ二分三十二秒後にまた姿を見せた。
「では、案内するであります!」
というわけで学食へ。
途中、普段は研究室からあまりでてこないらしいアキラ少年や、外部の人間である俺が珍しいのか。
複数の学生が挨拶してきたりしたのに応えつつ、学食へやってきた。
アキラ少年は学食のおばちゃんに話をつけて、俺達の分まで料理を用意してくれた。
メカシィの場合は、おいしいお水だ。
「今回は正式に依頼を出したことで、報酬を出すための予算からお昼代を捻出できるであります」
「ちゃっかりしているというか、なんというか」
それから、軽くこの後のことを話す。
資料を用意すると言ったものの、基本的な概要はすでにメカシィから聞いているので話す内容はそのおさらいだ。
学食でわざわざ話をする本当の目的は、アキラ少年個人と話をするためだな。
「じゃあ、アキラはファイト工学研究所の所長夫妻にあこがれて、研究者を志したのか」
「はいであります。ボクの両親が所長夫妻の同級生で、昔から懇意にさせていただいていたであります」
「研究所にも、よく遊びにくるのデス。ピガガピー」
それでアキラ少年とメカシィに繋がりがあったんだな。
んで、それとは別に俺のことも聞いていた、と。
「店長殿のことは、
「GCH……」
そんな物があるのか……。
何でも、この世界の天才少年少女たちが集まったネット上のコミュニティらしい。
まぁ、飛び級なりなんなりするせいで、基本的に同年代と話が合わないだろうしな、天才同士で集まったほうが話題も盛り上がるのだろう。
アキラ少年のような子は、ネッカ少年やダイアのようなコミュ力おばけが近くにいないと、何かと孤立しがちだ。
「特に、主宰のレン殿はよく店長殿を話題にしているであります」
「レンさん主宰かよ……! あの人なんでもできるな……」
普段の立ち振舞は、中二病小学生とでもいうべきレンさん。
しかし、その実態は小学生経営者にして、秘匿エージェント組織の盟主だ。
俺の知り合いで、彼女ほど天才少女の称号がふさわしい人間もいないだろう。
「レン殿は我々GCHの憧れであります。大人の世界で切ったはったする子は、背伸びしたい我々にとっていつだって輝いて見えるであります」
そう語るアキラ少年は、本当にしっかりした子だ。
この年で、これだけしっかりしている子はそういないだろう。
そんなアキラ少年だからこそ、子供だてらに大人の世界を渡り歩くことの難しさは理解しているというわけだ。
レンさんに憧れるのも解るという話だし、レンさんが抜きん出た天才だというのも伝わってくる。
あの人のすごいところは、アレだけ激務なはずなのに小学校には通っているし、毎日八時間睡眠時間を確保していることだよな。
果たして、それだけゆとりをもって規則正しく生活できる大人がどれだけいるだろうか。
さて、そんな話をしている間に、俺達はランチを平らげてしまった。
「では、そろそろ移動するデスか? ピガガピー」
「わざわざお呼びしたのに、おまたせして申し訳ないであります、メカシィ」
「貴重な話をきけマシタ。こちらこそ感謝です、アキラくん」
この二人は仲がいいなぁ、と傍から思いつつ。
「それじゃあ早速だが――会わせてくれるか? その――」
「はいであります」
そして、今日ここにやってきた目的について、アキラ少年が改めて内容を口にする。
「ボクが開発した、ファイトロボに会ってほしいであります」
今回の依頼内容は、アキラ少年開発のファイトロボにあってほしいというもの。
なんでも――そのファイトロボ、自堕落な引きこもりと化してしまっているそうなのだ。
ホビアニ世界には天才小学生とか飛び級小学生が結構いるというお話。
アキラくんはまだ学生なので、はたらいてないひと側になります。