カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
そういえば国立ファイト大学と言えば、俺の母校だ。
突然明かされる衝撃の真実だが、県内で一番ファイトが強い大学だからな。
俺が進学するのは当然の成り行きだ。
そんなこの学校には二つの学科がある。
ファイト工学科とファイト科だ。
前者はメカシィのようなファイトに関わる研究を行い、後者はファイトそのものを学ぶ。
俺の出身は言うまでもなく後者。
これでも、ダイアと首席を争う優等生だったりする。
「しかし、大学に来るのは刑事さんの卒業式以来か」
「そういえば、店長殿はここのOBでありますな。どうでありますか、数年ぶりの母校は」
「雰囲気はあんまり変わってないな、俺が卒業する頃は壊れかけだった銅像がきちんと修繕されてたくらいか」
国立ファイト大学初代学長の像。
長年雨ざらしにされた結果、だいぶボロボロになっていてこの像の下で告白するとその恋は絶対に叶わないなんてジンクスがあった。
そりゃそうだろと言わざるを得ない。
「初代学長の像でありますな。あそこで告白すると恋が必ず叶うとかなんとか言うであります」
「逆のジンクスになってる!」
直ったからそういう話になっただけだろ、それ!
ともあれ、校内を進んでいく。
もう卒業から四年が経過しているので、見知った顔はいない。
刑事さんの卒業とアキラ少年の入学が入れ替わりなので、そこの繋がりも期待できない。
まぁなんというか、OBとしては繋がりが薄いと言わざるを得ないな。
さて、国立ファイト大学は非常に広いキャンパスで、歩き回るのも一苦労だ。
というのも、ファイト科用に自由に使えるイグニッションフィールドやファイトスペースがあちこちであるのだ。
特にイグニッションフィールドの台数はとんでもない数で、闇札機関の本部と同じくらい多い。
「このあたりは特にファイト用のスペースが多いデスね。ピガガピー」
「ここはフィールド棟といってな、ファイト科の教室になってるんだ。フィールドそのものが授業の教室なんだよ」
「ファイト工学科でも結構な頻度で使うであります」
まぁ、ファイト工学科もファイトに関する講義とかあるしな。
見た感じ、アキラ少年はファイトの方もそこそこ強そうだ。
工学科の学生も、入試にはファイトの実技があるので、ある程度は強くないといけないのである。
さて、ほとんど俺がいた頃の名残はこの大学に存在しない。
だが、確かに存在する名残もある。
教授達だ。
教え子は四年もすれば巣立つものだが、教師というのは大学を巣立つものではない。
かつての恩師と、時折すれ違うこともあった。
そのたびに、思い出話に花が咲きそうになってしまう。
中にはファイトを申し込んでくる教授もいたが、断腸の思いで断らざるを得なかった。
今の俺達は、目的があって大学にきているわけだからな。
「店長は有名人デス。ピガガピー」
「まぁ、なんというかアレだな。俺もそうだけど、ダイアとシズカさんが同じ学年で大学に在籍してたことは、すごいことだと思うよ」
「当時のことは、伝説として語り継がれているであります」
なにそれすごい。
ともあれ、国立ファイト大学は県内随一のファイト校だ。
俺の母校である中高一貫の私立校、超絶火札校の生徒の半数が進学先として選ぶくらいには。
ただ、残りの半数は都会の大学に進学する。
プロを目指すために、より強い大学へ進学するのだ。
国立ファイト大学が県内随一とはいっても、日本一というわけではないからな。
名前負けである。
だから、普通プロを目指す上昇志向の強い人間は国立ファイト大学に進学しない。
この大学のファイト科に進学する学生は、そもそもプロを目指していなかったりする場合がほとんどだ。
エージェントとか、ショップ店長志望ってこと。
俺や刑事さんのことだな。
もしくは、
ダイアとシズカさんは、これに当たる。
んでまぁ、すでにプロになってるってことはプロを目指す学生より強いってことだ。
そこにそれと同レベルのファイターである俺まで入学したとなれば。
それはこの大学始まって以来のことである。
伝説にもなるというものだ。
「その御蔭で、この大学のファイト科はその後に入学してくるファイターの質が一段上がったと評判であります」
「教育の質があがったからな。上げないと俺達に教える内容がないんだから仕方ない」
自分で言って何だが、とんでもない話だな。
まぁ、それだけダイアやシズカさん、それから俺は当時からレベルが高かったという話。
そんな話をしていると、そろそろ目的地に近づいてくる。
「あの子はこのフィールド棟の端にある工学科のフィールド研究スペースで引きこもってるであります。もう少しであります」
「どんなファイトロボなのか、少し楽しみデス。ピガガピー」
で、話を戻してそのファイトロボ。
なんでもアキラ少年がメカシィの存在に感銘を受けて作られたロボらしい。
メカシィは学習し、成長するファイトロボだ。
もはや感情を持っていると言っても差し支えない、複雑な思考回路を有している。
俺の目から見ても、メカシィがとんでもないロボなのはよく分かる。
アキラ少年のような天才からすると、垂涎ものだろうな。
「所長さんからは共同開発しないかって誘われてたでありますけど、今回はボク一人で挑戦したかったのであります」
「それで実際に完成してるわけだから、すごいことじゃないか」
「ありがとうであります。……ただ、完成はしたものの、その後のことは全然だったであります」
メカシィのように考え、思考するロボならば。
完成した後のことは、人間と同じように考えるべきだろう。
そのうえで、アキラ少年はファイトロボの引きこもりに対して有効なアクションを取れなかった……と。
「それ自体は仕方のないことさ。人付き合いなんて、天才でも難しいことなんだから」
「ボクはこうして大学生として、大人とも対等に付き合えているつもりだったであります。自惚れていたでありますかねぇ……」
「ワタシは人間の自惚れといった感情にあまり理解はありませんが、アキラくんは他人に相談して助けを求めることができているデス。それだけで十分だと思いマス。ピガガピー」
実際、なんともならなかったから周囲に助けを求めるというアキラ少年の行動は正しい。
結果として俺とメカシィがここに呼ばれたわけだから、彼は何も間違っていないだろう。
彼だってまだまだ子供だ、失敗の一つや二つ当然する。
そこをフォローするのが俺達の役割だ。
――っと。
「ついたであります」
話している間に、目的地へ到着した。
無数のフィールドが存在するフィールド棟のはしっこに、掘っ立て小屋みたいな小屋がある。
屋根にはでかいアンテナがついていて、なんともそれっぽい雰囲気だ。
「ボクが声を掛けても、返事してくれないであります。よろしければメカシィか店長殿に……」
「なら、メカシィ。頼んだよ」
「かしこまりデス。ピガガピー」
そうしてメカシィが扉をノックする。
「コンニチワコンニチワ、ワタシの名前はメカシィデス。貴方と同じファイトロボです。ピガガピー」
すると、なんかすごい音がした。
なんか既視感あるな。
「大丈夫デスか? よろしければ貴方にお会いしたいのデスが……」
そのまま、ドタドタと中で音がする。
これはアレだな、中のあれこれを片付けている音だな。
しばらくそのまま騒がしい音を響かせるものの、最終的に諦めたのか扉がぎぃ……と音を立てて開いた。
「――ゴゴゴゴ、ゴメンナサイ。なな、中が汚れていて……とても人を呼べる状況じゃ……。ピピピ」
あの子。
メカシィもアキラくんも、頑なにファイトロボのことをそう呼んでいた。
だから、少しだけ予感はしていたのだ。
現れたのは――少女であった。
目はロボット特有のパネルで、球体関節が目立つものの。
確かに少女である。
ああ、なんというか。
この場にエレアがいなくて良かったかも知れない。
なぜなら眼の前の少女は、あきらかに挙動不審だったからだ。
いわゆる、コミュ障というやつだろう。
「ピピピィ! せっかく来ていただいたのに、こんな有り様でゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ! こうなったら死んで詫びるしか……!」
「わ、わー! 待つであります、“フィレナ”!」
そう、アキラ少年がフィレナと呼ぶ少女――彼女はいわゆる。
ロボっ娘であった――――
シズカさんは高校卒業と同時にプロ入りした感じです
そしてだいぶ予想されてましたがやはりロボ娘でした。