カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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126 メカシィと天才少年の依頼 ③

 まぁ、なんとびっくり。

 現れたのはロボっ娘だった。

 メカメカしぃ姿をしているものの、可愛らしい少女である。

 ここにエレアがいたら危なかった。

 おもに二つの意味で。

 一つは言うまでもなく、エレアの情緒がやばい。

 というか、このことをエレアに話したときの反応が怖い。

 崩れ落ちてしばらく復帰できないんじゃないか……?

 

 そしてもう一つ。

 このロボッ娘――フィレナと言うらしい彼女は、一言で言えば陰キャだ。

 一挙手一投足が言っている、自分なんかがロボ娘でゴメンナサイ――と。

 この卑屈さ、陰キャ以外の何物でもない。

 

「……フィレナは、目覚めた時から人付き合いが苦手だったであります」

 

 そしてどうやら、その陰キャヂカラは素のものであるらしい。

 人格形成というのは周囲の環境に依るものが大きいが、個人の素質も大いに関わってくる。

 ファイトロボが目覚めた時点で陰キャだったなら、それはもう魂が陰キャなのだと言うしかないだろう。

 しかしそうだな、魂が陰キャなのだとするとただ部屋の外に引きずり出すのもまずいだろう。

 

「店長、メカシィは思うのデスがフィレナは心の底から引きこもりを望んでいマス。それをただ外へ連れ出すのも不味いかと思うのデス。ピガガピー」

「さすがメカシィ、そのとおりだ」

「あわわわ、ワ、ワタシのためにそのように考えてもらえるなんて、恐縮すぎマス……! こ、こうなったら陽の光を浴びて溶けて死ぬしかありません。ピピピ……!」

 

 うわぁ極端に走るな!

 自分のために色々と考えてもらっていることへの申し訳無さで、フィレナが死にそうだ。

 メカは陽の光を浴びても溶けて死なない!

 それで死ぬのは吸血鬼だけだ!

 まぁ、この世界の吸血鬼は陽の光を浴びても死ぬわけじゃないのだが。

 

「ううむ、フィレナの人見知りはメカシィや店長殿相手でも発揮されるでありますな……」

「ゴメンナサイ、アキラさん……わ、ワタシが卑屈すぎるせいで……こんなワタシでゴメンナサイ……ピピピ」

「フィレナは何も悪くないでありますよー!」

 

 ともかく、フィレナの問題についてはよくわかった。

 フィレナが心の底から陰キャだというなら、それを無理に改善しようとするべきではない。

 本人の自発性に任せつつ、こっちから行動を起こすようアプローチをかけるしかない。

 一朝一夕で終わる話ではなさそうだ。

 

「店長、少し気になったのデスが。ピガガピー」

「んー、フィレナが普段何をしてるのか……ってところか?」

 

 ハイデス、とメカシィが頷く。

 メカシィは普段のフィレナの様子が知りたいのだろう。

 そこから取れるアプローチもあるかもしれない。

 そのことは、俺もきちんと理解している。

 

 ぶっちゃけて言うと、俺がつきっきりでなんとかすればこの問題はそれなりに解決するはずだ。

 しかし、今回依頼を受けたのはメカシィで、俺はその付添。

 メカシィの考えを俺がサポートするというのが、正しいあり方のはず。

 

「ワ、ワタシですか……? 知っても面白いことは何も……ピピピ」

「フィレナはすごいのであります! 現在、フィレナはこの大学の“システム”を一手に担っているであります!」

「それは……普通にとんでもなくすごいのでは?」

 

 たしか大学には、受講する講義を登録したり、お知らせを学生に伝えるポータルサイトがあったはずだ。

 他にも、学内のフィールドに使われているシステムとか。

 そういうシステムの処理を一手に担っている……と?

 素人の俺でも、それがすごいことだと解るぞ。

 さすが天才発明家少年のファイトロボだ。

 

「ふ、ふひひ……システムの処理は楽しいので……ピピピ」

「なるほど、そういう適性があったというわけだ」

 

 なんでも、引きこもってばかりのフィレナに、なにかできることはないかとアキラ少年が聞いたところシステムの処理なら……とフィレナが言ったらしい。

 これはアレだな、本人にとってはできて当然のこと過ぎて、自信に繋がらないやつだな。

 とはいえ、本人が望んだ役割を与えられているなら問題ないだろう。

 無理に外へ連れ出す必要はない。

 

 とすると気になるのは、別のこと。

 

「ところで、ファイトロボならファイトに゙関してはどうなのデス? ピガガピー」

「ファ、ファイトデスか……ピピピ」

 

 んで、メカシィは当然のことを聞く。

 仮にもメカシィと同じく、思考して成長するファイトロボとして製造されたフィレナがファイトできないということはないだろう。

 だが、肝心のフィレナはどこかファイトに及び腰だ。

 

「ええっと……ファイトに関してはボクも少し困ってるであります」

「と、いうと?」

 

 俺の問いかけに、応えたのはフィレナだった。

 

「――相性の良いカードが見つからないのデス。ピピピ」

 

 ふむ、と腕組みをして考える。

 メカシィも同じように腕組みをして、ピガガピーと唸った。

 

「そうだな、ファイトができるようになれば、ファイトを目的に外へ出ることもあるんじゃないか?」

「……そう、デスね。ファイトは外に出ないとできません。ピピピ」

 

 なら、やるべきことは決まりだな。

 とりあえず無理に外へ連れ出す必要はない。

 だが、外へ連れ出すきっかけとしてカードが見つからない問題を解決してフィレナをファイターにする。

 メカシィと俺が解決すべき問題は、これだ。

 

 それにしても、カードが見つからない……とは。

 

 相性の良いカードが見つからない。

 時折起こる現象だ。

 基本的にこの世界のファイターは、相性の良いカードを自然と集めることができる。

 だが、時折相性の良いカードが見つからず、ファイトが上手くならないファイターがいるのだ。

 その理由は様々だが、主な理由は二つ。

 

 一つは、本人が気付くことを恐れている。

 これは単純で、相性のいいカードが本人の性格上使いたくないカードだったりする場合。

 虫が苦手なのに昆虫系モンスターと相性が良かったり。

 使うと悪堕ちしてしまう類のカードだったり。

 

 だが、俺の見立てだとフィレナはこっちじゃないな。

 フィレナは、世界でも数少ないファイトロボだ。

 他にはない唯一無二の存在。

 そんな存在が相性の良いカードを見つけられない理由。

 そんな理由、一つしかない。

 

「……店長。ピガガピー」

「メカシィも理由はわからないか? なら、しょうがないな」

 

 そして、メカシィは俺が思いついた理由に思い至らなかったらしい。

 そりゃそうだ、理由としては結構特殊だからな。

 なので俺が口にする。

 

 

「存在しないんだよ、まだこの世界にフィレナと相性の良いカードが」

 

 

 そう、存在しない。

 これから作らない限り。

 

「……! なるほどであります、それなら……!」

「はっ、理解しました。ピガガピー」

「え? え? ピピピ」

 

 そして、口にしてしまえば天才少年はその解決方法をすぐに思いつく。

 そもそも天才であるはずの彼がどうして解決方法を思いつかなかったのか?

 思いつくための発想の種がなかったからだ。

 カードが存在しないということに、思い至らなかったのである。

 が、そこさえ俺が補強してしまえば後は簡単だ。

 

「ど、どういうことデス? ピピピ」

 

 対して、未だピンと来ていないのか首を傾げるフィレナ。

 そんなフィレナに、アキラ少年が答えを提示する。

 

「カードを()()であります! 今この場には、そのための設備が全部そろってるでありますよ!」

「え? あ――――()()()()! ピピピ!」

 

 そこまで言って、フィレナも答えにたどり着いたようだ。

 デジタルとは、この世界に存在するカードを生成する三つの方法の一つ。

 パソコンの処理能力で、他のカード生成方法を再現するというものだ。

 つまり――それを可能とするスペックのパソコンが必要になるが、今この大学にはそれが存在する。

 

「提案デス、アキラくん。ピガガピー」

「はいであります」

「ワタシとアキラくんのファイトエナジーを利用して、フィレナにパックを作ってもらうのデス」

「賛成であります」

 

 ――そう、フィレナだ。

 大学一つのシステムを容易に処理するスペック。

 カードの生成だってできるに決まってる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。ピピピ!」

「どうしたデスか? ピガガピー」

「危険すぎマス!」

 

 が、そこでフィレナ自身がそれを否定する。

 

「カードの生成実験は危険が伴いマス! それをワタシ達だけで行うのは余りにも危険で――」

 

 確かに、フィレナの言う通りカード生成実験は危険が伴う。

 悪魔のカードが生成されてしまったり、異界へのゲートが繋がってそこから凶悪なモンスターが侵入したり。

 特にデジタルは未だその機能が全て解明されているわけではない。

 普通、そんな実験を個人ですることはありえないことだ。

 だが――

 

「それなら、問題ない」

 

 俺がそれを否定する。

 ここは、俺が否定する場面だからな。

 

 

()()()()。だから、どんな危険なことが起きても対処できるよ」

 

 

 そう、断言する。

 仮にもファイトキングカップ第三位。

 仮にもこの大学の伝説を作ったファイター。

 そのくらいのことができなくて、何がデュエリスト店長か。

 というわけで、俺の監督下なら何も問題ない。

 もちろん、大学にはきちんと事前に伝えたうえでやるけどな?

 

 

 ――なお、伝えた結果大学中の学生と教授が押し寄せてきた。

 そのせいで、人見知りなフィレナが暴走しかけるのだが、それはまた別のお話。

 とりあえずアキラ少年がメカシィに出した依頼は、「引きこもりに関しては今のままでも問題ないが、少しずつファイトのため外に出るようにする」という形で解決するのだった。




私が来たならぬ俺がいるとかなんとか。
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