カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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131 やさしい先生に導かれ ②

 きぐるみ、そうきぐるみである。

 ゆるキャラとかああいう感じのあれ。

 <サーヴ・タイガー>は結構本格的にトラなのだが、今はデフォルメされて三頭身にされている。

 あと立ってる、二足歩行だ。

 そしてこれ、本物のきぐるみである。

 エクスチェンジスーツではない。

 どうしてこんなものをエレアは……?

 フゴフゴ言っている彼女は何も答えてくれない。

 

 まぁ、エレアのことはいいのだ。

 この状態でもファイトはできるから。

 どうやってカード持ってるんだよ、と思うができるものはできるのだからしょうがない。

 世の中には常にきぐるみ着てるプロファイターとかいるしな。

 

「と、いうわけで久しぶりだな、カードショップ“デュエリスト”店長の棚札ミツルだ」

『ふごごふごー!』

「こっちはサーヴ・タイガーの……エレ助……だっけ? まぁいい、気にしないでいいぞ」

『ふごー!』

 

 あ、エレアが怒っている。

 しょうがねぇだろ、あの設定資料めちゃくちゃびっしり書かれてたんだから。

 一応読んだけど、半分くらい覚えてないぞ!

 あと文句いいたかったら、せめて喋れるようにしてくれ。

 なんでふごふご言ってるんだよ、そこは鳴き声のSE用意しとけよ!

 

「とにかく、今回のテーマはタッグファイトだ。この中にタッグファイトの経験があるやつはどれくらいいる?」

「やったことあるぜ!」

 

 ぶっちゃけ誰がやったことあるかは知ってるのだが、授業の流れとして聞いておく。

 やったことあると答えたのは、案の定ネッカとクローとアツミちゃん、それからレンさんの四人だった。

 他の子たちは、興味あるけど実際にやったことはない感じ。

 

「じゃあ、どうしてタッグファイトに興味があっても、やったことがないんだ? 聞かせてもらってもいいか?」

「えっと……なんかハードルが高くて」

「相手に迷惑をかけるのが怖いんです」

「そもそも、ファイト自体見てるほうが好きだし……」

 

 ふむふむ。

 まぁいろんな理由があるな。

 子どもたちが挙げていく理由を、一つ一つ俺が飲み込んでいく。

 ハードルが高い、というのはそうだろう。

 タッグを組んだ相手に迷惑をかけるのが怖いというのと、根本的には同じ理由だ。

 タッグファイトには、タッグファイト用のデッキが必要になる。

 素のデッキ同士でタッグを組んで、問題なくファイトするためには相当な信頼関係が必要だ。

 そして、信頼関係を築いていてもネッカとクローのように、衝突し合うことで高め合うライバル関係だと協力は難しい。

 

 ファイトそのものを見ている方が好き、という人はこの世界にも結構多い。

 理由は様々だが、何にしてもそういう人はタッグファイトなんて余計に敷居が高く感じるだろう。

 そういう人に無理強いをする必要はないが、ファイトは知識があればあるほど見ていて楽しくなるものだ。

 知識を学ぼうとする土台くらいは、作りたいと思うのが先達というもの。

 

「んじゃ早速だけど、まずは実際にタッグファイトがどういうものかってのを見てみようか。経験者の中で、やってみたいって人はいるか?」

「はい! 俺がやるぜ!」

「ネッカとは組みたくないけど、タッグファイトはやってみたい」

 

 んで、俺が見本を見せるために提案すると、案の定ネッカとクローが手を上げた。

 アツミちゃんはそもそも見ている方が好き派閥の人間だし、レンさんはネッカ達が手を挙げると子供だなーと思って一歩引くタイプなので手は挙げていない。

 まぁ、やりたそうにソワソワしているので、次で指名するとしよう。

 

「んじゃ、俺とこのえーと……エレ助? が相手になろう。いいよな? エレア」

『ふごごー!』

 

 しょうがないだろ、エレ助ってなんかいいにくいんだから。

 文句ばかりなエレアを横に、俺はネッカとクローに向かい合う。

 

「へへ、店長と人前でファイトとか、燃えるぜ!」

「くれぐれも俺の足を引っ張るなよ、ネッカ」

「なんだと!? それはこっちのセリフだ、クロー」

 

 相変わらず仲いいなぁ。

 そして、それはそれとしてお互いの足を引っ張ること確定のセリフだ。

 まぁこの二人はいつもこうなので、クラスの子たちも何とも思っていない様子。

 

「イグニッション!」

『ふごごっふご!』

 

 早速ファイトが始まった。

 俺とエレアは、今回タッグファイト用のデッキ調整を行っている。

 ネッカとクローが序盤に足の引っ張り合いをするのが目に見えているからだ。

 

「いけぇ! <ハイパーバトルエンド・グラビティオーガ>! フィールドのモンスターを粉砕!」

「なっ……俺の<死神>まで破壊するんじゃない!」

「へへ、また呼び出せばいいだろ!」

 

 そして案の定である。

 序盤は自分が自分が、と主張し合うネッカとクローが足の引っ張り合いで苦戦。

 対する俺とエレアは息のあった呼吸でファイトをすすめる。

 

 とはいえこっちも弱点がないわけではない。

 エレアがきぐるみに合わせて普段の「帝国」デッキではなく<サーヴ・タイガー>を入れたデッキで戦っているからだ。

 きぐるみのお陰で補正を受けてデッキ自体はきちんと回っているものの、出力は明らかに普段のエレアより低い。

 こっちはデッキを調整しているが、ネッカとクローの息がピッタリ合えば逆転されるだろうパワーバランスだ。

 そしてこの二人は、そういう状況にこそ強い。

 

『ふごごー!』

「えーと、どうやらエレ助は『ライフもギリギリ、フィールドも全滅。こっちが勝ったも同然だ!』といいたいらしい」

「なぜ解るのだ、天の民!」

 

 そして、そこに追い打ちをかけるエレアのフラグ発言。

 レンさんが呆れているが、解るものは解るのだから仕方ない。

 んで、そこからネッカとクローはお互いに自分の悪いところを反省して、仲直りする。

 前回のタッグファイトは最後まで険悪な雰囲気だったそうだから、その解決も兼ねているのだろう。

 

「俺は……<バトルエンド・ドラゴン>のエフェクトを発動!」

 

 そしてクローのターン、クローは<バトルエンド・ドラゴン>のデッキトップじゃんけんエフェクトを起動。

 これにより、自分のデッキトップを墓地に送ってそのカードを利用、状況をひっくり返す。

 元々、<バトルエンド・ドラゴン>のデッキトップのモンスターをセメタリーに送る効果に対して、クロー少年の「蒼穹」モンスターはそれをメタる形で登場した。

 それが今、こうして連携による逆転のため使われている。

 なんというか、こういう光景を見るために俺はこの世界で店長をやってるところあるよなぁ。

 

 というわけで、最終的に俺達は逆転され敗北した。

 ここ最近、こういう負けファイトをやる機会がなかったので、個人的には大満足である。

 次は()()に負けないが……。

 

『ふごふご!』

「うわぁ、天の民おとなげないぞ……」

 

 何やらドン引きしてるレンさんと俺を止めようとするエレアがいるが、それは置いといて。

 気を取り直して、俺はタッグファイトの魅力を語る。

 

「とまぁこういう風に、タッグファイトには二つの魅力がある。一つは俺とエレ助のような洗練された連携を堪能すること。もう一つはネッカとクローみたいな凸凹コンビが、ファイトの中でお互いを理解し合い、真の連携に目覚めること」

「誰が凸凹だよ!」

「凹んでるのはネッカだよな? 店長、そう言ってくれ」

「とにかく! これがタッグファイトの魅力だと俺は思う」

 

 騒いでる二人は置いといて。

 タッグファイトってのは、見るのも楽しいしやってみるのも楽しいものだと俺は思う。

 そもそもファイト自体が楽しいんだから、そこは別に再確認する必要もないんだけど。

 俺は少しでも多くの人が、ファイトの楽しみ方を増やしてくれると嬉しいのだ。

 見ることも、プレイすることも、どっちも楽しいことなんだからな。

 

 と、そんな時である。

 

 

「あ、あの! 私もタッグファイト、や、やってみたいです!」

 

 

 そう声を上げる者がいた。

 ――アツミちゃんだ。

 普段はネッカ少年のファイトを見るのが好きだというアツミちゃんが、どこか力強い瞳で立ち上がった。

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