カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
カードショップ店長集会というものがある。
一般的に店長集会と呼ばれるそれは、店長達が集まって意見交換をしたりする場だ。
基本的にカードショップというのはそれぞれが競合であると同時に、相互扶助の対象だ。
何せカードショップは街のインフラの一つ、この世界に於いてはスーパーマーケット並になくてはならない存在である。
周囲の住人が困らない程度の数が、常に運営されている必要があった。
何よりショップ店長は、その地域において最もカードに詳しい存在。
常に周辺住人のカードに関する疑問を解決する立場でなくてはならない。
そのためには、やはり店長同士の助け合いが大事なんだよな。
もちろん、周りの店長同士とは誰だって常に交流を持っているものの、遠方となるとそうは行かない。
特にカードショップは連休を取りにくいからな。
そこで、遠方の店長と交流するための機会として店長集会は存在していた。
内容は純粋に店長同士でファイトしながら話をしたり、先輩店長が行う後輩向けのセミナーがあったり。
後は外部の講師を招いての経営に関する講義とかだな。
うちみたいに盛況なショップならいいが、経営が厳しいところは結構あるしな。
後まぁ、店長っていうのは割と仲間意識が強い。
お互いに難関と言われる店長資格の試験を突破した仲だ。
久々に知り合いとあって話をしたいという店長もいる。
そういえば、店長になるには資格が必要だったりするんだよな。
前に本当にちょっとだけ触れたけど。
まぁ、このあたりは今度話をするとしよう。
今は店長には店長資格というものが必要だということだけ、覚えてもらえばいい。
というわけで、そんな店長集会に俺はやってきていた。
元々俺はこういう集会には予定が合う限りは顔を出すようにしている。
ただ、今回はただ顔を出すだけ以外にも目的が存在していた。
それが何かといえば――
「――ん、ミツル? 久しぶり、元気そうだね」
と、そこで知り合いに声をかけられた。
そこにいたのは、白髪のどこかぼんやりとした表情をした女性だった。
年の頃は俺と同じくらい。
白いワンピースと、病的なまでに白い肌も相まってとにかく白い印象を受ける女性。
名を――
「こんにちわ、ミーシアさん。そっちも元気そうで何よりだ」
ミーシア・ドリム。
夢想郷という場所からダイアの手によって連れ出された少女であり――今は、俺と同じショップ店長だ。
かつての劇場版ヒロインにも、今は人としての普通の生活がある。
事件解決後、ミーシアさんは俺達の通う「超絶火札中学」に編入してきて、以来俺は学友として接してきた。
そんなミーシアさんは、大学卒業後カードショップ店長になるためにカードショップに就職。
今から一年前、念願かなってショップを開店したという。
以来、こうして店長集会でちょいちょい顔を合わせるようになったんだが。
そもそも店長集会が月に一回くらいしかないから、会うたびに久しぶりとなるのは当然だ。
「まずは、エレアちゃんと結婚おめでとう」
「んグッ! ごほっ、ゴホッ! ……いや、まだ結婚はしてないよ?」
「そうなの? でも、二年もお付き合いしてるなら結婚も秒読みだと思うけど」
いやそもそも、この二年間俺とエレアは色々あって恋人関係にはなっていなかったんだが。
ミーシアさんは、なんというか天然なのか鋭いのかよくわからないところがあるからな。
付き合う前の俺とエレアの状態を「恋人」と認識していたのか、俺とエレアの関係の本質を見抜いていたのかはよくわからない。
ダイアから普通にあの件を聞いてる可能性もあるしな。
「私も、頑張る」
「ああうん、それは頑張って……」
「式場も……決めてある!」
「それは頑張りすぎじゃないか!?」
とにかく、ミーシアさんは独特な人だ。
もとは別世界からやってきた人だし、何より浮世離れした雰囲気の人だった。
そんな人が十年ほどこの世界で生活して、独特の感性というか、
まぁ、このくらい濃ゆい人はこの世界にはいくらでもいる。
普通、の範疇ですむだろう。
そんなミーシアさんだが、ダイアに惚れている。
何だかんだ二年で恋人関係まで進展できた俺とエレアに対して、こっちはかなりの難物を相手にしているわけで。
頑張ってもらいたいものである。
「そういえば、今日のセミナーなんだけど」
「ああ、ミーシアさんはセミナー目当てか」
「うん。そのセミナー――キアが来れなくなったんだって」
むむむ、それは困ったな。
今回俺が集会にやってきた目的の一つは、キアのセミナーを受講するためだったんだけど。
何でも、昨日突然ショップにダークファイターが襲撃してきて、今も戦ってる最中なんだとか。
なお残すはボスだけなので、助力は必要ないらしい。
キア。
カードショップ”マスターズ”の店長。
現在、この国で最も有名なカードショップを経営する新進気鋭の美人カリスマ店長だ。
何と言ってもその美貌とメディア露出に積極的な姿勢が知名度を稼ぐ要因になっている。
「今、この国で一番のショップはマスターズかデュエリスト。その片方がセミナーを開くっていうから、楽しみにしてたんだけど」
「代わりに俺が講師をすればいいって言われても、なんの用意もないから無理だぞ。そもそも先月やったし」
そしてありがたいことに、現在この国のカードショップ界隈では俺の経営するデュエリストかキアの経営するマスターズが、カードショップの“トップ”だと言われている。
とはいえ俺としては、そこまで言われると少し言い過ぎなんじゃって気もするしな。
だって知名度では間違いなくマスターズの方が上だし、売上も多分あっちの方が上だぞ?
何せあっちは経営の分野においてもカリスマって言われてるんだから。
俺が経営に関して、何か工夫といえる工夫をした覚えはそんなにないな。
「しかしそうなると、今日はファイト以外にやることがないな」
「開店二年でキア以外のセミナーを受ける必要がなくなる時点で、ミツルは上澄み中の上澄みだよ」
「そうかもしれないけど、ミーシアさんだってかなり経営はいい感じらしいじゃないか」
「わかりやすいところに、追いかけても追いかけても届かない目標がいるからね」
それは……まぁ、俺のことだよな。
ミーシアさんは、はっきり言って店長としてはかなり優秀な部類だ。
大学卒業から三年で個人の店を持ててるし、店も非常に繁盛しているらしい。
イグニッションフィールドも、今年中には買い取って店の所有物にできるそうだ。
一般的に、カードショップ店長はフィールドを買い取れると一流と認定される。
俺の場合はそもそも大きい大会での賞金があったわけだから、少し話は違うんだけど。
そもそもフィールドを買い取れる賞金の出る大会で勝てる実力は、ショップ店長のステータスとしては十分すぎる感じもあるな。
「ミツルはすごい。ダイアも日本一すごくなった。コハナも学校の先生として頑張ってるし、シズカもすごい。他にも、私の知り合いは皆頑張ってる。私も頑張りたい」
「ミーシアさんも頑張ってるよ。しかしそういう話をしてると……また同窓会でもしたくなるな」
「ん、今度シズカに話しておく」
大学卒業から、もう四年。
卒業する前も色々あったけど、卒業してからも色々あった。
それぞれがそれぞれの分野で頑張っていて、なんというかダイア以外の知り合いと話をしてると当時のことが懐かしくなってくる。
ダイアはそもそも、定期的に顔を合わせてるからそんな風に思わないけど。
「そういえば……ミツルは聞いてる? あの噂」
「ああ、聞いてるよ」
そんなこんなで、話が移り変わっていく。
”噂”、今回俺が集会に来た目的。
その噂の真偽を確かめること。
その名も――
「――ショップ対抗戦」
曰く、日本一のカードショップを決める大会。
カードショップ店長と、ショップに通う常連客を一つのチームとして争う。
そんな大会が開かれると、まことしやかに噂されていたのだ。
「キアなら、何か知ってるかな」
「知ってても話さないんじゃないかな、契約とかの問題もあるだろうし」
「ミツルは何も聞いてないの?」
「聞いてないから、ここに来たんだよ。多分、まだ企画として進行してる段階。正式発表はもう少し先だろうな」
噂として流れているのは、おそらく意図してのこと。
事前に噂を流して、ショップ店長の理解を得やすいようにしているんだろう。
こういう事を考えそうな知り合いを、俺は一人知っている。
「ん、わかった。私はこれからセミナーがあるから、終わったらまた話をしよう」
「ああ、ファイトもしながら、な」
んで、その日。
俺は結局そのショップ対抗戦について、何ら情報を得られなかったけれど。
ミーシアさんから、今度ウチの店にこないか……と誘われたりするのだった。
Amazon様他にて、本作の予約が開始されました。
発売は9月頃になります、よろしくお願いします!
Amazon様
また、合わせまして書籍版のカバーイラストが公開されました。
こちらも合わせてご覧ください!
【挿絵表示】
見てください、カードショップです!
個人的には凄いカードショップだと思います、シングルを展示してるショーケースに見覚えがありすぎる
やたら広い気がしますが、イグニッションフィールドが店内に入る関係で広くなるんですよね。
店の規模がデカいのもあります。
店長とエレアもイラスト初公開、店長はメッシュの存在がすごくカードゲームの主人公って感じを出してます、正面から見ると凄いぞ
エレアはかわいい、小さい。
というわけで、書籍の方ももうしばらくお待ちいただくことになりますが、是非ともよろしくお願いします!