カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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135 劇場版ヒロインの今昔 ③

 ミーシアさんの店は、ダイアの実家がある街に建っている。

 勘違いされがちだが、ダイアは天火市の出身ではない。

 俺とダイアが出会ったのは私立の中学に入ってからで、その中学も天火市にはない。

 そんなわけで、俺はシフトの入っていない休日に一人で店を訪れたのだ。

 

 ミーシアさんの店、”ドリームランド”は俺の店と同じく市内の中央。

 駅から歩いて通える場所に建っている。

 ここらへんは、俺の店を意識しているんだろうな。

 開店はこっちの方が早いけど、土地自体は俺も押さえてたからな。

 外観なんかは本人の趣味が反映されていて、非常にファンシーだ。

 夢の世界に入り込んだような……という表現がピッタリ。

 

 この世界のカードショップは、ミーシアさんの店のように店長の趣味が存分にでた外観の店も多い。

 中にはファイトカフェみたいな側面の強い店もある。

 そういう店は、思いっきり制服も凝ったデザインだったりして、なかなかおもしろいんだよな。

 もちろん、俺の店みたいに前世とそこまで変わらない作りの店もあるぞ。

 いやまぁ、イグニッションフィールドが存在する関係で、前世のそれとは絶対に同じ作りにはならないんだけど。

 

「いらっしゃいませー。……ん、ミツル、来てくれたんだ」

「どうもミーシアさん。せっかく呼ばれたんだし、久しぶりに競合の調査もしないとな」

「ふふふ、存分に偵察していってね」

 

 中に入ると、ミーシアさんが出迎えてくれた。

 服装は先日と同じような白いワンピースの上に、可愛らしいエプロン。

 うちのそれと比べると、大分ファンシーさが強い。

 エレアはこういうエプロンの方が好きそうなんだけど、あんまり元デザインからイジらないよな。

 ……俺が初めてエレアに贈ったものだったから、とかだったりする?

 

「こっちの店も盛況だな」

「今は土曜だから、かきいれ時」

 

 そう言って力こぶを作ろうとするミーシアさん。

 なお、全然できていなかった。

 そして店内は、俺の店と変わらないくらい賑わっている。

 さすが話題の有名店。

 

「今はショップ大会参加受付中、ミツルもどう?」

「そうだな、せっかくだし――」

 

 どうせ今日一日はオフなんだから、大会にも参加してみようか。

 よそのショップのレベルってやつを肌で感じるのもいいだろう。

 そう思っていると、不意に声をかけられた。

 

 

「あれ、店長じゃん。どうしてここに?」

 

 

 振り返った先に、見慣れた人物。

 似たような状況は店長集会でミーシアさんに声をかけられたときもあったが。

 あの時は、集会の会場ならミーシアさんと顔を合わせてもおかしくないので、驚くこともなかった。

 しかし今回は、思わず目を見開いてしまう。

 意外な人物が、そこにいた。

 

「――クローじゃないか」

「それはこっちのセリフだよ。俺はほら、この街に俺の実家があるんだ」

「ああ、そういえば天火市には引っ越してきてたんだったな」

 

 クール少年のクロー。

 ネッカ少年と並ぶ天火市の名物小学生が、ここにいた。

 そして思い出す、クロー少年は転校して天火市にやってきたのだ。

 もとはとある大会でネッカ少年と出会い、すったもんだの末に和解。

 それと同時に、両親が天火市に転勤してきたんだったか。

 

「すっかり店長の店がホームになってたけど、それより前はこの店が俺のホームだったんだよ」

「クローは、開店初期からのうちの常連だった。……ミツルに取られたけど」

「そんな人を悪人みたいに」

「すっかり、店長呼びも私じゃなくてミツルのものに。よよよ」

 

 ああ、ミーシアさんが崩れ落ちた。

 なんか申し訳無さそうにクロー少年が慰めている。

 そして冗談だったと立ち上がって、クロー少年が突っ込んでいる。

 クローはこういうのが似合うなぁ。

 

「今日こっちにいるのは?」

「家族が実家に帰るっていうからついてきた、それと――」

 

 ふと、クローがある一点に視線を向ける。

 そこには人だかりができていた。

 

「今日はあいつ、こっちの店に行くって前に言ってたから」

 

 そこにいたのは――

 

 

「あいつ……って、ダイアじゃねーか!」

 

 

 ダイアだった。

 いつも通りの不審者ルックで、子どもたちを相手していた。

 いやまぁ、考えるまでもなく自然なこと。

 ダイアは基本的に俺の店とミーシアさんの店をどちらも利用している。

 どちらも本人にとっては大事な友人の店だし、ミーシアさんの方には実家がある。

 実家に顔出しつつ、ミーシアさんの店にも顔を出す。

 そんなルーチンが形成されているんだろう。

 

「俺、ダイアがこっちの店に顔出す時は、事前に聞いてできるだけこっちに来るようにしてるんだ」

「それは……強くなるため?」

「そう、俺が強くなるにはネッカと戦うか、店長と戦うか、ダイアと戦うか。何にしても、強い相手との対戦経験が一番の近道だからな」

 

 なるほど、さすがクール少年。

 色々考えているわけだ。

 しかしそうなると、クロー少年はもしかしたらショップ対抗戦で――

 いや、考えても仕方がないな。

 まだ正式に発表されてないことを、噂が広がっているからとは言えみだりに広めるもんでもない。

 とにかく、俺もショップ大会に参加するため、受付をミーシアさんに頼むのだった。

 

 

 □□□□□

 

 

 で、初戦。

 

「いきなりお前と当たるのか――」

「ふふ、いい機会だ。ここであのときの決着をつけるか、ミツル」

「どの時の決着だよ……」

 

 いきなりダイアと激突した。

 普通こういうのって決勝で当たるもんじゃないのか? とか思わなくもない。

 大会決勝はクロー少年と俺達のどっちかになりそうだな。

 そして初戦で俺達が当たってしまった結果、スイスドロー形式でクロー少年が負けた方のどっちかと当たるには階段にならないといけない。

 階段とは、勝ち残り戦であるスイスドロー形式で、勝ったプレイヤーが奇数だった場合に発生する負けたプレイヤーとの対戦カードだ。

 とにかく、大会で俺達と戦う可能性が著しく減って、クロー少年も残念そうだ。

 

「そういえば、ふと思ったんだが」

「どうした? ミツル」

 

 どうでもいいが、ダイアはこの店の店内だと俺をミツルと呼ぶ。

 ミーシアさんがこの店の店長なんだから当然だが、ちゃんとそういう気遣いもできる男なのだ。

 正確に言うと、できるようになった……が正しいが。

 

「ミーシアさんって、どうしてカードショップ店長を志望したんだろうな?」

「ふむ」

「昔から教師志望だったコハナちゃんと違って、ミーシアさんならいろんな選択肢があっただろ」

 

 コハナちゃん――ダイアの幼馴染である彼女は、幼い頃から教師を目指していた。

 理由は様々だが、とにかくコハナちゃんはファイト推薦枠で進学校の超絶火札中学に通っていたわけではない。

 普通に勉強が得意だったんだな。

 んで、対するミーシアさんは途中で編入してきた形だが、その枠組はファイト推薦枠である。

 つまりファイトに強い、プロファイターでもエージェントでも、なろうと思ったら何でもなれる。

 その中から、わざわざミーシアさんがカードショップを選んだ理由。

 

「そうか、ミツルは知らなかったんだな」

「……ん? ああ、そういうことか?」

 

 ダイアの言動。

 それで一つ、ピンとくるものがあった。

 対するダイアも頷いて。

 

 

「この店は、彼女の故郷を模したモノなんだよ」

 

 

 ――あの騒動の後。

 夢想郷との行き来は、難しくなった。

 決して行き来できないわけではない、ただ行き来しようとすると結構大変で。

 ミーシアさんも、故郷に帰れるのは大きな休みの時くらいだ。

 だから、故郷のことを多くの人に知ってもらいたい、故郷を身近に感じたい。

 そう考えるのは自然なことだな。

 

「何よりあの場所は――本当に、いい場所だったんだ。多くの人々がファイトを自由に楽しむ夢のような場所。そりゃまぁ、ほとんどの人にとっては夢そのものなんだから当然だけど」

 

 夢想郷というのは、人々が夢の中で迷い込み自由にファイトする場所らしい。

 寝ててもファイトしたい人間が大半の世界で、そういう場所はまさに天国だな。

 それを、少しでもこっちの世界で体験してもらいたいわけだ。

 

()()()()()()()? ミツル」

「あー、まぁそうだな」

 

 なんてやり取りをしつつ、俺達はファイトを続ける。

 

「ただ少し気になるんだが……ミーシアがショップ店長を志した最後の要因は、俺がミツルも店長を志していると話した時だったんだが」

「……それ、本人の前で疑問に思っちゃだめだぞ」

 

 単純にそれは俺とダイアの関係に対する嫉妬だからな!




ちょっとずつ縦軸も進んでいく感じ。

評価者数が1500人を超えました!
応援いただきありがとうございます!
書籍も出ますし、今後も頑張って行きますのでよろしくお願いします。
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