カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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139 巨大カードショップの闇を暴け! ①

 この世界のカードショップにはいくつかの形態がある。

 一つは俺の店のような個人経営の店舗。

 もう一つが超巨大なカード専門店。

 前者に関しては言うまでもないだろうが、後者は前世にはなかった概念だ。

 イメージとしては、カードを取り扱ってるチェーン店。

 ほら、全国チェーンの本屋とかゲーム屋の一角に、カードコーナーがあったりするじゃん?

 扱いとしてはあんな感じ。

 この世界の扱いとして一番近いのは……家電量販店かな?

 日常的に誰しも触れるけど、必ずしも常に必要じゃないもの。

 という意味では、この世界で家電とカードは同列である。

 

「いやー、相変わらずデカいですねぇ」

「このあたりで、一番大きいカード専門店だからな」

 

 そんなカード専門店に今日、俺とエレアはやってきていた。

 その名もカード専門店”スピリッツ”天火店。

 テンが多いよぉ……!

 というわけで、ここはこの国有数のカードショップ専門チェーンであるスピリッツの一店舗だ。

 他には”ザ・ガード”とかが有名なカードショップチェーンだな。

 

 そんなカード専門店スピリッツだが、とにかく広い。

 下手なデパート並の広さを誇る店内に、所狭しとカードが並べられている。

 まぁ、店内の大部分はイグニッションフィールドとフリースペースが占めるわけだけど。

 それを加味しても、俺の店の数倍の品揃えを誇る凄い店だ。

 

 まぁ、この世界にはこのくらいの規模のカードショップはごまんとある。

 それだけあっても、まだ世の中には未発見のカードとか、誰も知らないカードとかがいっぱいあるのだから凄い世界だ。

 

「とりあえず、まずはイベントの申込みだけしてきちゃいましょう」

「そうだな。そうしたら少しフリーでもして腰を落ち着けるか。ここに来るまで結構かかったからな」

 

 さて、そんなどでかいカード専門店に俺達がやってきているのには理由がある。

 敵情視察……ではない。

 基本的にカード専門店と個人経営のカードショップでは、客層も取り扱うカードの種類も全然違う。

 参考にできることはすくないのだ。

 具体的に言おう、()()()()()()()()()()()()()()()()

 一枚数十万する、クソたっかいことで有名なレアカードを、カード専門店は扱っていない。

 そりゃそうだ、こんな目立つ場所でそんなレアカードを扱ったらダークファイターがわんさか押し寄せてくる。

 そういうカードを扱うのは、信頼できる実力の店長がカードを守れる個人経営店舗の役割だ。

 

 話を戻すと、俺達がやってきたのはとあるイベントのためだ。

 そのイベントは、その名も「<星道の魔女(トゥインクルスター・ウィッチ)>レプリカ争奪戦」。

 名前の通り、レプリカの<星道の魔女>を賭けた大会である。

 <星道の魔女>といえば、イグニッションファイトで一番有名な美少女カードであり、その本物はとんでもない値段で取引される。

 以前、俺の手元にその本物が舞い込んできたことがあるが、流石に扱いきれず博物館行きになったのが懐かしい。

 今回は、そのレプリカが賞品となっている。

 

「なんで<星道の魔女>にだけレプリカが存在するんでしょうね?」

「そういうものだから、としか……」

 

 何を以てレプリカなのか、どうしてレプリカが存在するのか。

 よくわからんが、まぁ存在するのだから仕方ない。

 そしてこの<星道の魔女>レプリカ、こちらもレアカードである。

 一枚十万円くらい、まぁレアカードの中では安い方。

 ただ、カード専門店が扱うカードとしては高額だ。

 

「大々的に市内で広告を打ってましたけど、まさかお呼ばれするとは思いませんでしたね」

「俺達の名前も、天火市だとビックネームだからな。呼ぶだけで宣伝になるんだろう」

 

 んで、俺達はそのイベントに招待されたのである。

 仮にも競合の店長とかを呼んでいいのかと思うけど、むしろ今回の場合は呼ぶことに意味がある感じかな。

 まぁ、色々あったのだ。

 

 さて、受付を済ませてフリーのテーブルに座る。

 適当に三回くらいエレアとファイトしていると――ちなみに、二勝一敗で俺が勝ち越した。こういう時のファイトは普通に負けることもある――俺達に声をかけてくるものがいた。

 

 

「これはこれは”デュエリスト”店長様、お待ちしていたザンス!」

 

 

 やたらと顔の濃い、小物悪役みたいな人がそこにいた。

 名を金ケ関ヨシゾウ、あの天火市市長、金ケ関ワルゾウの弟である。

 

「やぁ、ヨシゾウ店長。少し前のスピリッツカップ以来だな」

「ええ、ええ。お久しぶりザンス、棚札店長。……おっと、ややこしいですからミツル店長と呼んだほうがいいザンスか?」

「何いってんですかぁ!?」

 

 ヨシゾウ店長の余計な気遣いに、エレアが吠えた。

 まぁ、うん。

 そこら辺は触れると長くなるから、一旦脇において。

 

「それで、こうして俺を招待した以上、今回のイベントはちゃんとしたイベントなんだよな?」

「もももちろんザンス! なんたって今回はネッカくんも招待してるザンスから、仮にあったら今度こそワタクシ、店長クビ、ザンス!」

 

 ――さて、例に漏れずヨシゾウ店長は元悪役だ。

 ネッカ少年にボコられて改心した、今は善良な店長……のはずである。

 ワルゾウ氏と違って、俺が少し警戒しているのは彼が元は善良な店長を装っていたからである。

 

 今から少し前、このスピリッツ天火店は満を持してといった感じで天火市にオープンした。

 それまで、天火市にはカード専門店がなく、スピリッツ天火店はそこに鳴り物入りで参入してきたわけである。

 当然市民は注目を集め、ネッカ少年も店を訪れた。

 そこで待ち受けていたのがヨシゾウ店長。

 あのワルゾウ市長の弟ということで警戒していたネッカ少年だったが、善人を装っていたヨシゾウ店長はネッカ少年を騙した。

 表向きは、優良店としてスピリッツ天火店はスタートしたのである。

 

 しかし、実は裏で精霊型モンスターをこき使っていたことが判明。

 更にはスピリッツ天火店で開催された大規模大会”スピリッツカップ”でついにヨシゾウ店長が正体を現し、ネッカ少年と激突した。

 その後はまぁ、言うまでもなくネッカ少年が勝利し、ヨシゾウ店長も改心したわけだが――

 

「今回は、ワタクシが改心したことを、天火市一番の店長であるミツル店長にお見せするために、招待したザンスからね!」

「そこは結局ミツル店長で行くんですね……」

 

 エレアの呻きはさておいて、俺達が招待された理由はこういうことだ。

 あの大会で俺は、珍しく観客として事件に関わっていた。

 ヨシゾウ店長が改心したことを証明するには、最適な証人というわけである。

 加えてネッカ少年も招待しているなら、よっぽどのことがない限りは大丈夫だろう。

 

「というわけで、棚札夫妻には楽しんでいってほしいザンスー。アデューザンス!」

「最後に言い逃げしましたね!?」

「落ち着くんだエレア、悪いことじゃないから」

 

 というわけで、ヨシゾウ店長は去っていくのだった。

 恥ずかしげなエレアを宥めつつ、見送ったうえでエレアに問う。

 

「……それで、今回は何が起きると思う?」

「ミツルさんって、たまに容赦なく闇堕ち疑いますよね」

 

 いやだってほら、ここまで何も無いアピールされるってことはなにかあるってことじゃん。

 ヨシゾウ店長本人に悪意はなくとも、ヨシゾウ店長がなにかに巻き込まれている可能性はある。

 俺はレプリカの<星道の魔女>が実は悪魔のカードだったって可能性を推すね。

 

 と、そんな時である。

 

 

「あの、失礼します。棚札ミツルさんでよろしいでしょうか」

 

 

 不意に、俺へ声を掛ける女性。

 見ればそこにはスーツ姿で緑髪の、エレアと同年代くらいの女性の姿が。

 若干童顔な所はあるが、仕事のできる女性って感じだ。

 俺は、そんな彼女の胸元に”スピリッツ”の社員であることを示すバッジがついているのを見逃さないぞ。

 

「ええ、そうですが。……貴方は?」

「失礼しました」

 

 そうして女性は一礼。

 若干センサーを発動させて、女性のことを鋭い視線で観察しているエレアと一緒に俺も一礼する。

 

「私は、このスピリッツの事業監査部に所属している、良空(よぞら)ミトリと申します」

 

 ――あの、ヨシゾウ店長。

 本当に改心したんですよね?

 

 脳内でそう問いかけながら、俺は差し出された良空さんの名刺を受けとった。




ちなみに、前に話題に出ていたネッカ少年が改心させた別の街の市長はダメゾウさんです。
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