カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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140 巨大カードショップの闇を暴け! ②

 まぁ、なんというかアレな話なのだが。

 大型カード専門店というのは、時に悪役になりやすい傾向がある。

 一昔前の大型デパートに対するイメージが、そのままカード専門店にも当てはまるというか。

 そういうイメージに、大型カード専門店が引っ張られやすいのかもしれない。

 

 ただ、そういうイメージは大型カード専門店にとっても死活問題であり、対処しなければならない風評被害なのだ。

 結果としてそういったカード専門店の母体となる会社には、結構な権力を有する事業監査部が存在する。

 仮に社長が悪いことを企んでいても、それを咎めることのできるくらいの。

 下手すると、事業監査部の人間はプロのエージェントとして扱われるほどだ。

 

「事業監査部……ということは、やはりヨシゾウ店長になにか?」

「……あ、いえ。あくまでスピリッツの人間であるとお伝えしたかっただけでして」

 

 ――ふむ?

 俺はエレアと視線を合わせる。

 つまり、良空さんはヨシゾウ店長の監視に来たわけではない?

 

「実はこの店……以前の事件以来、急速に業績を上げてるんです」

「えっ!?」

 

 えっ!?

 いや驚くけど、声は出しちゃダメだよエレア。

 ともかく、良空さんは語る。

 

「それまで、ヨシゾウさんは精霊型モンスターを酷使することで人件費を浮かせていました」

「……知ってはいますけど、字面のパワーすごいですね」

「はい……」

 

 いやまぁ、実際そういうことをヨシゾウ店長がしたっていうのはそうなんだけど。

 それはそれとして、何かこうギャグみたいな感じだったよ。

 例のぐるぐるする奴を、精霊型モンスターがぐるぐるさせてたからね。

 アレなんの意味があったんだ……?

 

「ただ、それには問題がありまして。正直、人型ではないモンスターにできる業務はそこまで多くなく、却って普通のスタッフの生産性を落としていたのです」

「もしかして、あのぐるぐるするヤツ、意味なかったのか?」

「無かったみたいです」

 

 無かったのかよ!

 ネッカ少年とバックヤードに踏み込んだ時、リアルでアレに遭遇したことにこっそり興奮してたのに。

 意味なかったのかよ! がっかりだよ!

 まぁ、精霊型モンスターからしてみれば冗談ではない、とにかく解放されたことは素直に良かったと言えることだ。

 

「精霊型モンスターを解放したことと、ヨシゾウ店長が改善に取り組んだことで、この店の生産性は大きく向上したのです」

「ネッカ少年とのファイトで、結果として注目を集めていたのもあって、むしろ業績は悪化ではなく改善に向かった……と」

 

 良空さんが頷く。

 なんというか、この世界はちょっと悪いことしたくらいだったらそこまで悪印象を持たれることはない。

 その後きちんと改心したら、という前置きは付くものの。

 でなければ、金ケ関さんちの人があんなにお偉いさんにいっぱいいたりしない。

 

「私は、個人的にその業績改善の秘訣を聞きたくて、今回のイベントの視察に来たのです」

「そこで俺を見つけたから、ついでに声をかけた……と」

「はい、あ、いえ。ついでというわけではないのですが……」

 

 まぁ、俺もそこそこ店長としての知名度が上がってきたからな。

 もともと天火市では俺の店が一番のカードショップということになっているし、そうでなくともイベントの件もある。

 

「良空さんは、ショップ店長になりたいのか」

「私はこのスピリッツで、店長職につきたいのです」

 

 なるほど。

 個人経営のカードショップ店長と、大型カード専門店の店長職は似ているようで少し違う職種だ。

 前者は個人のセンスが大きく経営に絡むが、後者は良くも悪くも企業人としての立ち振舞が求められる。

 どちらが良い、ということはない。

 どちらにも魅力があるし、どちらを目指すかは人による。

 良空さんは後者だったのだろう。

 真面目な性格だし、会社の中で出世を目指すほうが向いてそうだ。

 

「……棚札さんにとって、店長とはなんですか?」

「俺にとってか?」

「私にとっては、世界で一番大切な人ですよ!」

 

 横から割り込んでくるエレアをそっと押し留めつつ考える。

 というか、冗談だからって変なことを言うんじゃありません!

 良空さんが困ってるだろ!

 そして、ツッコミ待ちだったのに微妙な反応をされて恥ずかしくなるのは自分なんだぞ!

 

「ゔうううう」

「あの、棚札さん。彼女……ええと、エレアさんは」

「放っておいてください」

「みあああー!」

 

 悶えるエレアの頭を押さえてぽんぽんとしつつ、俺は答えを出す。

 

「俺にとって……店長ってのは、自然となりたいと思えた自分の進路っていうのが一番でかいかな」

「進路……ですか?」

「ああ、この世界にはプロファイターやエージェント、いろんなカードに関わる職業があるけど。……俺がなるなら店長しかないだろ、って自然と思えたんだ」

 

 色々と、理屈をこねくり回して良さげなことを言うことはできるけど。

 結論から言って、俺が店長になったのはなりたかったからだ。

 それ以上でもなければ、それ以下でもない。

 

「それは……困りましたね」

「と、いうと?」

 

 俺の答えを聞いて、良空さんは考え込むように腕組みをする。

 なんとなく、その後の良空さんの言葉は読めているけれど。

 あえて、促した。

 

 

「――私も、同じ考えでしたから」

 

 

 なるほど。

 良空さんは、すでに自分の中である程度考えが固まっているようだ。

 俺に聞いたのも、他人の考えを取り込むため。

 真面目なだけあって、向上心の高い人だなぁ。

 

「ただ……流石に、そこまで確信を持って自分が店長になるべきだ、とまでは思えないのですが」

「後はそこに自信を持てるようになれば、良空さんも一流ってことだな」

「そうですかね。……まだ、店長職についてもいないのですが」

 

 正直、ここまで考えがしっかりしていれば、後は機会だけだと思うのだが。

 その機会がなかなか訪れていないのかもしれないな。

 カード専門店の店長職は、競争率が高いのだろうか。

 そう思って、実際に聞いてみる。

 

「……まぁ、そうですね。ヨシゾウ店長は一度悪事を働いたものの、その後は非常に優秀な経営者として社内でも評価されています」

「日本トップクラスのカード専門店ともなると、その店長職は狭い門ってことか」

 

 頷く良空さん。

 これが、もう少し規模の小さいカード専門店なら良空さんはとっくに店長になっているだろう。

 同時に、個人経営のカードショップを開店しても上手く行くはずだ。

 しかし日本トップクラスの専門店の店長ともなると、そう上手くは行かないらしい。

 

「ですが……妥協することはできません。私には、目標がありますから」

「目標……?」

「――負けたくない相手がいるのです」

「ほほお!」

 

 あ、エレアが復活した。

 何やら、熱血展開の予感にオタクの血がうずいたか。

 

「いいですね、宿命のライバル関係。お相手もカードショップの店長さんですか!」

「……ええ。今は少し私が遅れてしまっていますが。いずれ追いつきます」

 

 良空さんのライバル、かぁ。

 とりあえず俺でないことだけは確定だが。

 案外、仮面店長だったりするんだろうか。

 

「ちなみに、その店長さんって――」

 

 そこで、エレアが核心に踏み込んだところで。

 

 

「ななな、なんてことザンスーーーーっ!」

 

 

 ヨシゾウ店長の悲鳴が店内に響き渡った。

 同時に、店内がかすかに揺れる。

 何事か、起きているらしい。

 

「ミツルさん!」

「ああ、行ってみよう」

「……私も行きます。今回の目的からは逸れますが、事業監査部の業務の範疇です」

 

 かくして俺達は、店内で起きた事件の様子を確認するべく立ち上がった。

 

「ヨシゾウのおっちゃん! 何だよこれ!」

「せめて、店内でくらいヨシゾウ店長と呼んで欲しいザンスー!」

 

 あ、ネッカ少年の声がする。

 なら、事件自体はネッカ少年に任せればいい……というか、俺は関われないんだろう。

 さて、であれば一体何が事件の原因なのかな? と考えつつ、俺は現場に踏み込んだ。




基本的に世界観は緩めなネッカ少年ストーリーです
多分変わりに人間ドラマが濃い目何だと思います
特に決めてませんが、クローくんの過去が激重だったりとかしそうですね
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