カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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141 巨大カードショップの闇を暴け! ③

 そういえば、俺はダークファイト事件には関われないが、事件の現場に居合わせることならできる。

 大きな大会の決勝でダークファイターが表舞台に上がった時に、その会場に居合わせたりとかな。

 これは特に俺の店の常連である、ネッカ少年の周囲で起きる事件でよく起こる現象だ。

 多分、ネッカ少年の物語では俺は準レギュラーくらいの立ち位置なんだろうな。

 そういえば、ここ最近はヤトちゃんの物語にも少し関わっていることがある。

 先日のファイト探偵とか。

 おそらくヤトちゃんの件にも、何かしら俺は関わることになるんだろうな。

 

「大丈夫か、ネッカ! ヨシゾウ店長!」

 

 というわけで、俺はバックヤードで悲鳴を上げるヨシゾウ店長とその場に居合わせたネッカ少年の元へたどり着く。

 そこでは――なんか変な光景が広がっていた。

 

 以前、ヨシゾウ店長が黒幕としてネッカ少年の前に立ちはだかった時、自身と精霊型モンスターを一体化させることで禍々しい姿に変貌していた。

 対して今回は――なんか、禍々しいモンスターに取り込まれている。

 こう、ヒロインが悪役に取り込まれてしまうような感じで。

 

「いやあー! 助けて欲しいザンス、ネッカくーん!」

「ヨシゾウのおっちゃん! おっちゃーーーーん!」

 

 ネッカ少年は手を伸ばすも、その手は空を切る。

 そしてヨシゾウ店長は、触手のようなものに絡みつかれ、禍々しいモンスターに取り込まれてしまった。

 何今の……。

 

「くそ……ヨシゾウのおっちゃんが!」

「まだだ、ネッカ! ファイトでヨシゾウ店長を取り返すんだ!」

「店長……ああ、そうだったな!」

 

 かけつけた俺の言葉に、ネッカ少年は冷静さを取り戻す。

 懐から取り出したイグニスボードを展開させ、デッキを装着すると構えた。

 

『――――!!!!』

「イグニッション!」

 

 いつぞやのエレアの陰のように、声にならない声を上げるモンスターとネッカ少年が激突した。

 

 ――さて、ファイト自体はぶっちゃけネッカ少年が勝った。

 理由は色々とあるが、最も端的な理由はファイト中に良空さんが語ってくれた。

 

「アレは……仇魂霊(ダーク・スピリッツ)!? この店にも存在していたの!?」

「知っているんですか、良空さん!」

「はい、あれはここ最近、我が社を騒がせている悪魔のカードです」

 

 オタクなら一度はやってみたい掛け合いに、喜色満面なエレアはさておいて。

 良空さんはその仇魂霊とやらについて教えてくれた。

 

「ここ最近、我が社の店長職の社員を狙って、悪魔のカードがデッキに入り込む事件が頻発しているのです」

「それ……かなりまずいんじゃ?」

「ええ、我々事業監査部も、非常に対応に苦慮しています」

 

 結構ネットでも話題になっているのだろうかと思っていると、エレアが横からスマホを見せてくる。

 どうやら多少話題にはなっているようだが、いつものことで流されているようだ。

 一般人に被害が出ない事件って、数が多すぎて話題にしてたらキリがないからそういうこともあるか。

 

「今のところは、水際でせき止めることができてるってことか」

「……今回は失態でした、私が早く気付いていれば、あの少年を危険に晒すこともなかったのに」

 

 なんだか悔しそうな良空さん。

 とはいえ、今回は完全に突発的な事故のようなもの。

 良空さんがこの場にいるのだって偶然だ。

 そうなると、ヨシゾウ店長と因縁のあるネッカ少年が対戦することになるのはこの世界の道理である。

 それに――

 

「何、問題はないよ。彼は以前ヨシゾウ店長の悪巧みを解決したこともある」

「……! では、彼が!」

「そう、彼こそがネッカ、天火市が誇る熱血カードファイターさ」

 

 ネッカ少年が、こんな所で再生怪人……もとい、ヨシゾウ店長を取り込んだだけの悪魔のカードに負けるわけがないのだから。

 心配はいらないさ。

 後、俺がこうやって彼を持ち上げると彼の勝率が上がるので、持ち上げない理由もない。

 

「……ミツルさんが、そのセリフを言いたかっただけでは?」

「それはエレアも似たようなもんだろ」

「…………仲、よろしいんですね」

 

 まぁ、付き合ってますしね。

 ちょっと半眼になりかけている良空さんから視線を逸らしつつ、俺達はネッカ少年のファイトを見守った。

 

 最終的に、仇魂霊は取り込んだ店長の心の闇を増幅する効果があったらしく、取り込まれたヨシゾウ店長の泣き言が聞こえてきた。

 とはいえ、ヨシゾウ店長もすでに改心した身、抱えている心の闇も微笑ましいものだ。

 

「うう、ワタクシも店長と呼ばれたいザンス……いくらミツル店長がネッカくんのマイフェイバリット店長だからって、ワタクシも負けたくないザンス……!」

「ヨシゾウのおっちゃん……」

 

 まぁ、その原因が多少俺にあったり、ここまでヨシゾウ店長がいってもネッカ少年はヨシゾウのおっちゃん呼びを止めなかったり。

 色々あったものの――

 

「これで終わりだ! <バトルエンド・ラグナロク・ドラゴン>! ヨシゾウのおっちゃんの目を覚ましてやれー!」

 

 まぁ、勝ったのはネッカ少年だった。

 ファイト内容自体は、途中若干追い詰められるところもあったが、きっちり逆転するいつもの単発回って感じだった。

 それはそれとして、この場に居合わせた上に今回はヨシゾウ店長の心の闇に俺が関わっている。

 纏めるのはネッカ少年じゃなくて俺の仕事だな?

 

「うう、どうしてワタクシはヨシゾウのおっちゃんで、ミツル店長は店長なんザンスか……」

「それはな、ヨシゾウ店長」

「ミツル店長……」

 

 ネッカ少年の横に並び立って、崩れ落ちるヨシゾウ店長に声を掛ける。

 

「ネッカ少年が、ヨシゾウ店長に店長としての尊敬以上に、同じファイターとしての友情を強く感じてるからだよ」

「え……」

「だから、おっちゃん呼びはネッカ少年なりの親しみなんだ」

 

 ぽんぽんとネッカ少年を撫でる。

 何やら恥ずかしそうなネッカ少年が、俺の手を払い除けた。

 

「ああもう……! 直接そういうのはずいんだよ……!」

「ははは、俺は他人に指摘されたほうが恥ずかしいと思うが」

「どっちもどっちだって!」

 

 まぁとりあえず、無事に全部収まったみたいでよかった。

 まだ今回のイベントまでは時間がある。

 これなら、イベントは楽しい時間になりそうだ。

 と、思いながらネッカ少年達から離れる。

 エレア達の元へ戻ってくると――

 

「……なんといいますか、ネッカくんに慕われているんですね」

「そう言われると、なんだか照れるが」

「わ、私もお慕いしていますよ……!」

 

 エレアはなんで自爆するってわかってるのにそういうこと言うの?

 

「貴方の店が、キアの店と並んで全国トップクラスのカードショップと称される訳ね……」

「ん? キアの店?」

「ええ、実は――」

 

 キア、キアっていうと……あのキアか?

 もしかして、良空さんはあのキアをライバル視して――?

 とか思って、話を聞こうとすると。

 

 

「た、大変だ、店長!」

 

 

 ネッカ少年が、俺の元へ駆け込んできた。

 話は中断されて、次回に回されるやつだなこれ。

 と思いつつ、俺はネッカ少年に連れられ再びバックヤードへ向かう。

 すると、そこには三度ヨシゾウ店長と、それから中央にはケースに入れられた一枚のカード。

 これは……<星道の魔女>か。

 

 何やらヨシゾウ店長が、ガタガタと震えながら尻もちをついている。

 いや、一体何があったんだよ。

 そう思って、ネッカ少年に促されるまま<星道の魔女>をよく見てみると――

 

「……これ、本物じゃないか」

 

 本物だった。

 一枚数億のとんでもレアカード、<星道の魔女>オリジナル。

 仮にも、ショップ店長をしている俺がその鑑定をミスる訳が無い。

 ヨシゾウ店長も同様だ。

 そしてその高価さ故に、ヨシゾウ店長がガクブルするのも納得だ。

 

 ……いや、マジでどこから紛れ込んだんだ!?

 俺が以前取り扱ったアレとは別物だよな!?

 

 最終的に、良空さんが所有していた会社の備品デッキに入っていた<星道の魔女>レプリカを賞品にすることで、なんとかその場は乗り切った。

 しかし、本物の<星道の魔女>がどこから入り込んだのかは、最後まで理解らずじまいだった。

 この世界、こういうオカルトがマジで起こるから困るんだよ。




完全にネッカ少年の単発回店長視点ですね。
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