カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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144 さすらいの風来坊(住所不定無職) ③

 前に少し、店長になるには店長資格がいるという話をした。

 その店長資格に必要なものが、店長推薦状である。

 これを出すのが、世界各地にいる十三人――今は十五人――の店長。

 言うなれば、店長推薦状を出すことのできるカードショップの店長は、世界最高の店長といえる。

 店長を志す人間は、その世界最高の店長の元で修行して、推薦状をもらわなくてはならない。

 まぁ、なんというかそういうホビアニみたいなノリが店長界隈にも存在するんだな。

 ただこの推薦状を出せる店長――長いから推薦状店長にしようか。

 推薦状店長、中には仙人みたいな人もいる。

 いつぞやの仮面店長みたいな、秘境に店を構える店長をすごくした感じのやつ。

 本当に秘境中の秘境みたいな場所に店があって、たどり着くのも一苦労。

 

 とにかく、この店長推薦状を手に入れるのは非常に難しいのだ。

 一般的に、一人の店長が推薦状を一枚集めるのに掛かる期間は、概ね()()と言われている。

 店長資格を得るための試験には、()()一枚の推薦状が必要で、数は多ければ多いほど試験で有利になる。

 一般的な店長の推薦状取得枚数は三枚が平均だと、以前何処かで聞いた。

 ただまぁ、推薦状を集めること自体は別に店長になるつもりがなくてもできる。

 それこそナギサのように、推薦状を集めることそのものが目的ってヤツもいるな。

 他にも、学生の間に推薦状を集めることができるので、多くの店長志望のファイターは時間に余裕のある大学在学中に各地を回って店長推薦状を集めるのが基本だ。

 

「ミーシアちゃんなんかが、そのタイプだったよね。大学四年間に、推薦状を六枚集めたんだっけ?」

「そうだな、途中でナギサと同じ店で修行した時もあったと言っていたぞ」

 

 ファイトをしながら、当時のことを俺とナギサは回想する。

 ちなみに、推薦状は最低一枚集めればいいだけなので、集められるなら複数集めるに越したことはない。

 集めた推薦状の数が店長としての将来性に直結するからな。

 

 現在、ファイトは一進一退の攻防が続いていた。

 ナギサの使用する「風来坊」モンスターは、サモンするとサモンしたそのターンに手札へ戻ってしまう性質を持つ。

 代わりに、特定の条件を満たすと相手のターンにもサモンすることができ、サモンした時の効果で戦っていくというデッキだ。

 とにかく奇襲性の高いデッキなので、どこから風来坊が飛んでくるかを警戒して戦わなくてはならない。

 

「さぁ、もっともっとギアを上げていこうか! 出てこい、<颯爽の風来坊 鎌鼬のジン>!」

「出たな、ナギサのエースモンスター……!」

 

 『風来坊』モンスターは和風の妖怪みたいなモンスターが多い。 

 現れたのも、そんな感じのモンスターだ。

 ファイトは更に加速していく。

 

 さて、話を戻すと店長資格はこの推薦状を貰ったうえで、試験を突破する必要がある。

 そしてこの試験、えげつなく難易度が高い……らしい。

 筆記も実技も、とんでもない水準を要求されるんだとか。

 ただ、俺はこの方法で店長資格を取得していない。

 俺が店長資格を得た方法、それは――

 

「それにしても、まさか推薦状を出せる店長が増えてるなんてね。これでボクも店長資格持ちだって思ってたのに」

「店長資格を得るには、()()()()()()()()()後に国際店長連盟に申請を出す必要がある。今のナギサは店長資格を得られないことになるな」

 

 そう、店長推薦状をすべて集めることだ。

 一枚以上集めて試験突破するのとどっちが難しいかと言ったら、当然こっちが難しい。

 何せ、現在世界に店長推薦状をすべて集めて店長になった人間は()()()しかいないんだから。

 つまり、店長推薦状を発行するための要件には、店長推薦状をすべて集めることが含まれてるってわけだな。

 これ、正確には少し前までナギサもここに入ってたんだけど。

 俺と()()()が推薦状店長になったことで、ここに含まれなくなってしまった。

 

 そういえば、現在店長推薦状をすべて集めきった日本人――推薦状店長は三人いる。

 ただ、一人は世界中を旅して世界のあらゆる場所でカードショップをやっているナギサのような風来坊の人だ。

 というか、彼に憧れてナギサは風来坊になった感じだな。

 なので、現在この国に推薦状店長は二人しかいない。

 

 というか個人的にあの人、何かのシリーズの主人公とかそんな匂いがする。

 アロマさんやネッカ少年みたいな。

 

「それで、いつの間に推薦状発行の許可なんて出たのさ、ミツル店長」

「つい最近だよ。言って伝わるか解らないが――モンスターランドカーニバルを成功させて少ししてからだな」

 

 推薦状発行の許可は、店長推薦状の他に実際の経営実績も見られる。

 つまり、あのイベント成功が俺を推薦状店長にする最後の一押しになったんだな。

 どうでもいいけど、あのイベントが俺とエレアの告白イベントなんて言われているせいで、周囲からはこの許可がエレアとの交際許可みたいになってるとか言われている。

 そういうんじゃねぇよ!

 こほん。

 

「ふぅん。まぁ、めでたいことには変わりない。せっかくだし、ボクにもその推薦状をお一つわけてくれよ」

「俺に勝ったらな!」

「ハードル高いって!」

 

 なんて言い合いながら、ファイトを始める。

 配信しながら実況するエレアが、若干むくれている。

 いや、俺とナギサはそういう感じじゃないから!

 センサー反応する辺り、やっぱりナギサは女なのか……!?

 わからん、なにもわからん!

 

「とにかく行くぞ! <大古式聖天使 ディザスター・ジン>をサモン!」

「……ボクの<ジン>とよく似たカード!」

 

 ファイトはいよいよ最終局面。

 俺が<鎌鼬のジン>の他人の空似モンスターをサモンして、一気に勝負をつけにかかる。

 

「……やっぱり強いな、ミツル店長は」

「悪いな、これでもこの国トップクラスのカードショップ店長をやっている以上……そうそう負けるわけにはいかん!」

 

 俺の言葉に、ナギサは薄く笑みを浮かべた。

 どこか憂いのある、けれども自嘲とかは感じない前向きな笑みだ。

 

「ミツル店長は、どうしてボクが店長推薦状を集めているか……知っているかい?」

「それが、その店を訪れた一番の証だからだろ?」

「まぁ、以前にはそう言ったけど……やっぱり、ボクとショップ店長って職種としては相性最悪なんだよ」

 

 確かに、それはそうだ。

 常にひとつの場所にとどまるショップ店長と、風来坊のナギサは相性が悪い。

 それなのに、わざわざ店長推薦状を貰うくらい本気で店員としてのスキルを磨く理由は一体?

 

「答えは、とっても簡単だ」

 

 ナギサの笑みが、どこか力強いものに変わる。

 

 

「君に憧れたからだよ、――ミツルくん」

 

 

 そして、俺への呼び方がいつものモノに戻った。

 俺は、その言葉を聞いて無言で頷く。

 なんとなく、以前から感じていたことだ。

 

「ボクの得意分野は人間観察。その分野で、一つでも勝てないところがある。……そのことが悔しかったし、いつか越えたいと思っていた」

「ナギサも、根っからのファイターだからな」

「そうだね。風来坊をしていても、そこは変わらない。君やダイアくんに勝ちたいって思いは、今も」

 

 だからこそ、ナギサは俺と同じように店長推薦状を集めた。

 俺に並び、俺を越えるため。

 そして。

 

「――そして、今その時は来た! 君に勝利し、君の店長推薦状を手に入れることでボクは君を越える!」

「……っ!」

「さぁ、コレがボクの旅の集大成。旅の果てに出した答え! <颯爽怒涛の風来坊 疾風鎌鼬のジン>!!」

 

 現れたのは、ナギサのエースモンスターの強化体。

 俺の<メタトロン>やダイアの<ゼウス・ドラグバニシメント>のような、最終エース!

 

「ボクの答えは一つ、これからもボクは旅を続け、人との関わりの中で成長し続ける!」

「これは……!」

「ミツル、ボクは――異世界に行くよ! 行け、<ジン>!」

「……っ! こい!」

 

 なるほど、俺を越えるためには人との関わりで成長するしかない。

 そしてもうこの世界に行く所がないなら、異世界に行けばいい。

 なんてわかりやすい答えか、これは――勝てないな。

 

 かくして、ナギサのエースが俺のそっくりさんを撃破、勝ったのは――ナギサだ。

 

「――と、いうわけで、これが推薦状だ」

「おお、これが……うわ、シンプル」

「そうなんですか?」

 

 俺が推薦状――巻物タイプ――を手渡す。

 横から、エレアが推薦状を覗き込んでくる。

 

「推薦状は、店長の実績や性格を反映したデザインになるんだよ。特にそういうものが反映されないとこのデザインになる」

「店長は、店長としてはプレーンですからねぇ」

「それ以外の部分が全然プレーンじゃないけどね」

「うっさいな……」

 

 からかうように笑うエレアとナギサ。

 こいつら、結構相性いいな?

 

「さて、これで推薦状が十四枚になったわけだけど……」

「全部、ではないな」

「最後の一枚は、やっぱりあの子?」

「どの子ですか?」

 

 こうして、俺から推薦状を手に入れたナギサだが、すべての推薦状を手に入れたわけではない。

 あと一枚、推薦状を手に入れる必要がある。

 その相手に、ナギサは心当たりがあったのだ。

 小首を傾げるエレア、不思議に思うことか? エレアも知っている名前だが。

 

 

「決まってるだろ、カードショップ”マスターズ”の店長、明日原(アスハラ)キアだよ」

 

 

 ああー、とエレアが至極納得する。

 現在日本で最高峰と言われるカードショップは、俺のデュエリストともう一つ。

 マスターズのキアも俺と同じ店長推薦状の発行が許可されている。

 ナギサはこれから、キアの元へ向かうことになるだろう。

 

「そうと決まったら、次はそこを目指さないとね」

「そうだな」

「がんばってくださいね」

 

 まぁ、流石に今日はこのまま仕事してもらうけど。

 

「それにしても――懐かしいねぇ。ボクとミツルくん、それから――」

 

 と、そこでナギサが過去を回想する。

 

 

「キアちゃんの三人で、仙人店長のところで修行した頃。いやぁ、懐かしい」

 

 

「……店長って、キアちゃんと一緒に働いてたことあるんですか!?」

「あ、ああ。学生の頃にな、()()とはその頃から仲良くしてて――」

「よ、よよよ」

 

 あ、コレはアレだ。

 エレアセンサーが入ったやつだ。

 

 

「呼び捨て――――――ッ!?」

 

 

 ……そうだけど。

 でも、それ言ったらナギサもそうじゃないか。

 と言ったら、エレアは少し考えてから、ナギサさんはいいですといった。

 いいんだ……。




推薦状店長、一人は日本人でなんかのシリーズの主人公でした。
今は世界中を飛び回ってカードショップを開いてるので日本にはいません。
他にはファイター仙人なる亀仙人の亜種がいます。
後は未定。

推薦状枚数を最低三枚だったのを一枚にしたのに、三枚になっていた部分を修正しました
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