カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
ふと、アロマさんに「わたくしのもう一つのホームに遊びに来ませんか?」と誘われた。
ファイターが拠点にしているカードショップをホームとこの世界では呼称する。
その中で、複数ホームのあるファイターはそこそこいた。
一番わかり易いところだと、ダイアがそうだろう。
俺の店と、ミーシアさんの店をホームにしている。
他にもアロマさんは、俺を師匠店長と呼んで慕ってくれているものの、他県在住だ。
なので、普段は近場のカードショップも利用している。
ハクさんやクロー少年あたりも、複数の店舗を足繁く利用していると言えるだろう。
まぁ、この二人はあくまで俺の店以外にも定期的に利用する店があるという程度だろうが。
というわけで、アロマさんのもう一つのホームへとやってきたのだ――
「なんというか、そんな気はしてたが――」
「いらっしゃいませですわ、師匠店長様。わたくしのもう一つのホーム――」
アロマさんは、その店の前まで俺を案内して振り返る。
そして、その店の名を口にしたのだ。
「カードショップ”マスターズ”へ!」
カードショップ”マスターズ”。
俺の店と双璧をなす、この国トップクラスのカードショップ。
なんと、県をまたいで俺の店のお隣に存在するのだ。
いやあびっくり。
俺とキアの故郷が隣同士じゃなかったら、もう少し離れた所にあったんだろうが。
ともかく、そんなカードショップ”マスターズ”に俺はやってきたのだ。
「――やっぱりアロマさんのホームはマスターズだったか」
「お察しの通りですわー! わたくし、こんなにも凄い二つのショップのお世話になっちゃうなんて、照れますわ―!」
いやんいやんと、頬を染めながらくねくねするアロマさん。
元気だなぁ、と思いつつ店の外観を見上げる。
俺の店も、フィールドが入っている関係でだいぶデカいが、マスターズは輪をかけてデカい。
外観自体は、きれいな装飾を施しているものの普通のカードショップだ。
ミーシアさんや仮面さんの店みたいなコンセプトショップではない。
「師匠店長様は、マスターズを利用したことはございますの?」
「開店してすぐに、一度な。キアとは昔なじみだから、お祝いに」
「そうでしたわね! では中に参りますわ!」
中に入ると、そこには多くのお客さんが。
うちの店も繁盛しているが、やはり人の多さという意味ではマスターズには敵わないな。
そして、入ってすぐにマスターズがどうしてデカいのかも理解できる。
フィールドが二つ設置されているのだ。
個人経営の店舗で、フィールド二つははっきり言って破格である。
カードショップは開店時にフィールドをレンタルできるわけだが、レンタルできるフィールドは一つまでだからな。
自分で買い取らなくてはならないのである。
それをいれる箱も含めて、だ。
俺も流石に、フィールドを二つ買う箱とフィールドそのものの代金は払えない。
今ならまぁ別に数台かっても痛くはないんだがな。
店を広くする理由がないので、特に導入の予定はない。
「うーん、キアちゃん店長様はいらっしゃいませんわね……」
アロマさんが周囲を見渡すものの、キアはいないみたいだ。
店員の姿は見えるものの、たしかに見覚えのある姿はない。
とりあえず、適当にフリースペースに座って時間を潰すことにした。
「今日はお休みではないと思うのですけど……」
「そうだな……とりあえず、フリーでもするか」
「はいですわ!」
というわけで、アロマさんとテーブルでファイトすることになった。
テーブルサイズに小さくなったモンスター達が戦うのを見ながら、俺達は話をする。
「それにしても、アロマさんは強くなったな」
「アレから色々ありましたわー!」
アロマさんはとても強くなっていた。
いや、もともと強くはあったのだが。
雰囲気が大きく変わっていたのだ。
当時は、こちらに対する遠慮のようなものがあった。
俺に対して、自分を挑戦者の立場に置いてしまっていたのだ。
それが、今では俺を正面から対等なライバルだと思うくらいに強くなっている。
すると、当然アロマさんの最近の出来事に話題が移る。
「じゃあ、そのネオデビラスの刺客の人とは和解できたのか」
「はいですわ。あの方も、色々とお辛い過去があったのですわねぇ」
どうやら、事態は最終局面といった様子。
ネオデビラスの刺客だった教師が改心して味方になったらしい。
そして、その教師を操っていた黒幕がついに姿を現した、と。
「ダークネオデビラスエンペラー……強敵ですわ!」
「……言いにくくない?」
「言いにくいですわ!」
いかん、どんどんボスの名前のIQが低くなっている。
この世界のボスは、たまに名前だけIQが低くなるから困る。
やってることはあくどいのに、名前が変だったりとかよくあるからな……。
「そういえば、和解した後その教師の人はどうなったんだ?」
「ネオカードポリスで、こってりお説教して反省文を百枚かかされてましたわ!」
「あー……アロマさんたちが事件を全部防いだから、被害が出なかったんだな」
「はいですわ!」
自信満々に頷くアロマさん。
実際、凄いことだ。
ダークファイターがとっ捕まるかは、犯した罪の重さによるのだが。
別に被害者がいなかったりすると、捕まらなかったりするんだよな。
今回の場合は、被害者と言えるのがマジカルファイターを除くとデビラスキングしかいなかったからな。
そういう場合は、今回みたいにお説教と反省文になる。
どうでもいいけど、いい年した大人がお説教と反省文とか、その方が辛くない?
「それで……師匠店長様に相談があるのです」
「ん? 俺にか?」
今更、アロマさんが相談するようなことがあるだろうか。
もう、アロマさんは自分の考えで前に進める。
俺に相談することなんて――
「……キリアちゃんは、きちんと未来に帰れるのでしょうか」
「ああ」
――うん、あったね。
こればっかりは、アロマさんにはどうしようもないからな。
何でも、実験の事故で飛ばされたそうだから、帰れるかは未来でその実験を主導していたミっちゃんとやら次第か。
とはいえ、こういうのは大抵事件が解決したらなんとかなるもんだ。
問題はないと思うが……。
とりあえず、聞くだけ聞いてみるか。
「なにかしら、こっちからできそうなアプローチはあるのか?」
「そうですわねぇ……」
考え込むアロマさん。
俺も少し、タイムトラベル技術に関して考えてみる。
もし仮に、そういった技術が誕生するとしたら、個人的には『デジタル』が原因じゃないかと思う。
カード生成方法の三つ目のデジタルだ。
アレは未だに原理の解明していない未知の技術。
何が起こっても不思議ではない。
「確かキリアちゃんはミっちゃん様が『デジタル』がどうとか『カード生成技術を利用して私達のカードを過去に』……とか仰っていましたわ」
「ああやっぱりデジタル……自分たちのカードを過去に!?」
え、キリアさんってモンスターなの!?
コハナちゃんもミーシアさんも人間だけど!?
ミーシアさんは若干特殊だけどさ!
「そうですわ! キリアちゃんとアウちゃんはモンスターですから、自分のカードを使えますの!」
「そうだったのか……いやでも、だとしたらどこから…………待てよ?」
そう言えば、確かダイアの祖先にモンスターがいるとかなんとか聞いたことがあるような……。
ってことはキリアさんはダイアから隔世遺伝してモンスターになった感じか。
たまに、過去にモンスターと結婚した一族の末裔が、隔世遺伝でモンスターになることがある。
とするとやっぱり、キリアさんの母親が誰かはわからないんだな。
特定するつもりはないけど……それはそれとして気になる。
後、そのミっちゃんとやらもモンスターなんだな。
おそらく誰かの子供だと思うんだが。
人とモンスターが結婚して子供を作ると、孫世代までモンスターとしての特徴が必ず受け継がれる。
それ以降はマチマチだ。
ミっちゃん、一体何者なんだ……。
何か、めちゃくちゃ心当たりがある気がするんだけど、おそらくタイムパラドックスか何かのせいで思いつけないんだよな。
「とにかく、ネオデビラス事件そのものは問題ありませんわ! 必ず、最終決戦に勝利してみせます!」
「おお、頑張ってくれ。……で、<メタトロン>で攻撃。何かあるか?」
「……ないですわ! 負けですわ!」
話は概ね終わった。
ファイトは俺の勝利で決着がついた。
まだまだ若いものには負けられん。
と、その時である。
「……アレ? 棚札さん?」
ふと、どこかで聞いた声がした。
振り返るとそこには――
「……小中井さん?」
「アウちゃんもいますわ!」
小中井ツムグさん。
通称、恋愛脳のコイナカ。
ファイト構成作家にして、恋愛小説で書籍化の決まった小説家の女性がそこにいた。
隣には――アウローラさん。
アロマさんの親友で、先程も少し話題になっていた――通称アウちゃん。
なんというか、珍しい組み合わせだな――と、その二人を見て思うのだった。
わかりにくかった店長資格に関するまとめ。
・店長資格は、店長推薦状と呼ばれるものを、世界に十五人しかいない推薦状店長から手に入れないと行けない。
・必要枚数は最低一枚、ただし入手すればするほど試験が楽になるし将来性にもつながる。一般の店長は三枚くらい入手して試験に臨む。
・それとは別に、推薦状をすべて集めきると、試験なしで店長資格を手に入れることができる。
概要としてはこんな感じです。
本編の方もそのうちわかりやすく改稿したいところです。
「推薦状を出せない店長には、試験合格だけで問題ない。推薦状店長になるには全員分集めて申請が必要」。
要点としてはこんなところでしょうか。