カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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147 カードショップ”マスターズ”の人々 ③

「店長が……! 浮気しているかも! しれません!!!」

「してないだろ」

「してないでしょ……」

「まぁしてないでしょうけど」

 

 一瞬、凄まじい勢いでヒートアップしたエレアが即座に落ち着いた。

 してるわけないのだけど、それはそれとして叫びたい。

 そんな感情が、今のエレアを苛んでいた。

 それをレンとヤトが半眼で見ているのが、今の状況だ。

 

「カードショップ”マスターズ”のキアちゃんって、お二人もご存知ですよね」

「流石に知らないわけ無いでしょ……」

星の民(キア)か、ヤツがどうかしたのか?」

「レンさんは面識まであるふいんきですね!?」

 

 そりゃあ、日本有数のカリスマ店主と、日本有数のエージェントである二人が面識ないなんてことは早々ない。

 ただでさえ二人の拠点もそこそこ近くにあるのだから。

 

「先に出会ったのは天の民だがな」

「そりゃあ、店の場所が近いんだからそうなるでしょ」

 

 さて、そんな三人が現在どこにいるのかというと――天火市の隣町だ。

 つまり、カードショップ”マスターズ”のある街。

 県を一つまたいでいた。

 

「で、何だったか? 今日は天の民が星の民のところへ行っているんだったか?」

「はい、何でもアロマさんが呼び出したらしくって」

「それ、別にキアが目的じゃないんじゃ……」

 

 あくまで、アロマに呼び出されたのが主目的ならキアと会うことは目的ではないはずだ。

 エレアもそれはわかっているのだが――

 

「……それはそれとして、キアちゃんに会うとか妬ましいです!」

「それどっちに嫉妬してるのよ……」

「どっちもですよ!」

 

 カワイイ女の子に眼がないエレアは、当然キアも推していた。

 店長が何やら親しい様子のキアと会うのも嫉妬するし、キアに会える店長にも嫉妬しているのだ。

 一緒に同行している二人の視線が半眼になった。

 

「……というか、なぜ我々は同行させられているんだ」

「ちょうどそこにいたからですかね」

 

 そしてそんなエレアに、たまたま店に遊びに来ていたから連れ出された二人である。

 まぁ二人としても、エレアが交通費を出してくれるなら……ということで結構乗り気だった。

 そこそこ距離のあるマスターズに行くのは、電車にしろ車にしろ手間とお金がかかるのだ。

 そして、そこがカバーできるなら是非とも行ってみたいくらいにはマスターズはファイターとして魅力的な場所だ。

 

「にしても、マスターズってどんな所なのかしらね」

「ショップの規模で言えば、デュエリストより二倍くらいの大きさを誇る」

「嘘でしょ、デュエリストよりも!?」

 

 レンの言葉に、思わず目を見開くヤト。

 そもそも話で言えば、カードショップとしてデュエリストはかなり大きな店舗である。

 何と言ってもフリースペースの大きさがほかと段違いだ。

 

「そういえば、どのショップに行ってもフィールドって絶対あるわよね。……そのせいで、他のスペースが犠牲になってる店もあるし」

「カードショップって、フィールドを設置するのが義務化されてるんですよ。フィールドがないならカードショップである必要はないですしね」

 

 へぇ、とヤトは納得した様子で頷く。

 そもそも話、この世界は日常的にどこでもファイトができる世界だ。

 テーブルを使ってのファイトがしたいなら、ファミレスやスーパーのフードコートにでも行けばいい。

 イグニスボードを使ったファイトがしたいなら、開けた場所の公園に行けばいい。

 カードショップでしかできないこと、それがフィールドを使ったファイトとシングルの取り扱いなのだから。

 

「シングルを取り扱うには店長資格が必要で、カードショップを開店するにはフィールドが必須です」

「何か、前者はともかく後者は結構アコギに聞こえるわね……」

「見方によるな、そこは」

 

 ヤトのぶっちゃけた発言に答えるのはレンだ。

 経営者幼女は、いろいろなものが視えているのだろう。

 

「フィールドはレンタルが可能だ。はっきり言って、レンタル料はフィールドの値段と比べると格安だぞ。その状態で経営を維持できない店長など、店を畳んでしまったほうがいい」

「辛辣ですねぇ。まぁ、レンさんにしてみればそうですよね」

「カードショップとは、経営という視点だけで見れば子供でも経営が可能な楽な店なのだ」

 

 そもそも自分が子供だろ、と突っ込むとレンはむくれるので二人はスルーする。

 なお、ツッコミ待ちだったのでどっちにしろレンはむくれた。

 

「むくー! なにせカードは非常に高額で利益も出るからな、店の性質上客も途切れることは早々ない。カードショップに求められるのは経営ではないのだ!」

「お、落ち着いてください」

「ほら、余ってる飴あげるから」

 

 ヤトから飴をもらって、満足げにそれを転がしてからレンは続ける。

 

「店長に必要なのは、地域のインフラとして常に住民のカードに関する困りごとを解決する度量だ!」

「うちの店が、経営的にはマスターズに負けててもこの国ツートップ扱いされるのは、そこが理由ですよね」

「そういうことだ!」

 

 なぜかレンは胸を張った。

 自分のことなのでエレアも胸も張った。

 

「……これ、私もやらなきゃだめ?」

「わたしたちの中で一番大きいんですから」

「どこの話してるのよ……」

 

 というわけで、三人は胸を張った。

 

「さて、そうこうしているうちに、マスターズに到着です」

「……私、なんでこんなことしてるのかしら」

「ここで冷静になっちゃだめですよ、ヤトちゃん!」

 

 そこにあるのは、カードショップとしてはかなり大規模なマスターズの店舗。

 

「お二人はこれをどうぞ」

「なんだこれは」

「隠密用のサングラスです」

「逆に目立たない?」

 

 エレアは、懐からサングラスを取り出して二人に渡した後。

 自分も同じサングラスをかける。

 

「私を誰だと思ってるんですか? 帝国最強の偵察兵ですよ!」

「……最強だったのか?」

「もう帝国は存在しないので、最強を名乗ってもいいと判断しました」

 

 レンさんの疑問に、適当なことを言うエレア。

 とにかく、エレアならこの状態でバレずに中へ潜入することが可能らしい。

 ヤトとレンを連れたうえで、だ。

 というわけで中に入ってみると。

 

「……全然バレないわね」

「絶対可笑しいだろう……」

 

 全然バレなかった。

 見えるところで、店長達が色々話をしているにもかかわらず、だ。

 先ほど三人で謎に胸を張った時は、やたらと注目を集めていたにもかかわらず、だ。

 

「これどうなってるの?」

「偵察兵の必須技能ですよ、ニンニン」

「忍術じゃない、それ」

 

 まぁ、何かしらの忍術的なものを使っているということは理解できたので、ヤトはそれ以上考えないことにした。

 考えても無駄なことは、この世界にはあまりにも多すぎるのだ。

 と、そうこうしている内に、お目当ての人物がやってくる。

 

「……久しぶりだな、キア」

「うん、久しぶり。そっちも元気そうで何よりだよ」

 

 そして、圧倒的存在感で店長と話を始めた。

 

「アレが、マスターズ店長、カリスマ美人店主のキア……」

「星の民め、また存在感を上げたな? 言っておくが、我もやろうと思えばアレくらい威圧感だせるのだぞ?」

「どこで張り合ってるのよ。……ところでエレアは」

 

 ちらりと、ヤトがエレアに視線を向けると――

 

 

「ぷしゅう」

 

 

 エレアは、溶けていた。

 推しを前にすると彼女が陥るアレである。

 どうやら、生キアの尊さに耐えられなかったらしい。

 ヤトは心の中でエレアの尊死に祈りを捧げた。

 

「にしても、二年ぶりだね? 私の店の開店祝い以来だっけ」

「そんなところだな。ほとんど同じ時期に開店したから、俺の店にはそっちが来なかったけど」

「忙しかったんだから許してよ。私の方が少しだけ開店早かったんだよね。店舗としては私のほうがお姉ちゃんじゃない?」

 

 そして、エレアが尊死した状況でも二人の会話は続いていく。

 なんだか仲が良さそうなのは本当らしい、とヤトも感じていた。

 しかし同時に、この仲の良さは異性のそれとは少し違う気もしている。

 というか、ヤトには二人の関係に近い関係性に心当たりがあったのだ。

 具体的には――

 

 

「だから、私のことをお姉ちゃんって呼んでもいいんだよ? ()()()()()

「呼ばないよ」

 

 

 ――そう、ヤトとハク。

 姉妹関係だ。

 

 

「い、いいい、妹――――!?」

 

 

 そして、話だけは聞いていたらしいエレアがそこで再起動して叫んだ。

 結果、店長とキアの視線がこちらに向く。

 

「……やっぱり来てたのか、エレア」

 

 そして存在こそ察知できていなかったが、店長はエレアが来ることを予見していたらしい。

 さっすがぁ。




妹……?
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