カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
エレアが時たま起こす漫画的表現なのか、モンスターだからなのかよくわからない生態には驚かされるばかりだ。
溶けるだけじゃないんだ……エレアって……。
そういうところも、一緒にいて楽しいと思うから俺は好きだ。
流石にさらさらしていくのは想定外だったのか、キアが慌てたものの。
すぐにエレアがもとに戻って。
キアがエレアをエレアねぇと呼ぶことに決まり――誕生日もギリギリエレアの方が早かった――俺達の話は一段落。
ただまぁ、話としてこれですべてが終わるわけではない。
そもそもアロマさんは俺と話をするためにマスターズへ呼び出したわけだが。
それを最初に提案したのは、他でもないキアだ。
何かしら狙いがあって俺を呼び出したわけだが、その理由に関しては正直想像がついていた。
エレアが概ね落ち着いた後、時計をちらりと見やったキアがつぶやいた。
「ちょうどいい時間だね」
それと同時に、二台あるフィールドのうち、使われていなかった一台に映像が映る。
この時間は使わないようにと、キアが手配しておいたらしい。
理由は今から映る映像を店中に放映するため。
お客も、その放送の重要性はわかっていたから、快く引き受けたそうだ。
なぜなら――
『元気にしていただろうか? 日本チャンプの逢田トウマだ! こうして話ができることを私は嬉しく思う!』
映像には、ダイアの姿が映っていたからだ。
それは動画投稿サイトで、今の時間から配信されることが告知されていた。
ダイア――この国で最も知名度が高いファイターである逢田トウマが、この国のすべての人々に向けての告知。
そりゃあ注目を集めないわけがない。
キアはこの配信を俺と見たくて、わざわざ俺を呼び出したのだ。
そこからエレアや俺の周りの人々が釣れることも考慮して――俺とキアの周辺人物をここに集めたかったってところか。
「なにか始まりましたわ!」
「ネットでもずいぶん話題になってたけど……なにが始まるのかしら」
アロマさんやヤトちゃんが、不思議そうに配信を見ている。
一般のファイターは、これから告知される内容が何なのかを知らない。
「ミツルさん、もしかしてこれが例の……」
「そういうことだな」
対して、カードショップに勤めるものは、なんとなくその内容を知っている。
それ以外だと、レンさんも概ね内容を予測できているだろう。
そんなふうに、色々と各人が反応を見せる中。
映像の中のダイアは口を開く。
『さて、まず初めに。皆は考えたことがあるだろうか。最高のカードショップとはなにか、と』
その言葉に、映像を見ている人々は顔を見合わせる。
ちょうど、ショップにいるタイミングでショップの話が始まったからだ。
『品揃え、値段、サービス、内装、店長の人柄。多くの要因があるとは思うが、それらは複合的で評価が非常に難しい』
複合的……ダイアのやつ、そんな難しい言葉を人前で使えるようになって。
俺とナギサはなぞの感動でほろりと涙を流して、周囲から何だアイツラと思われていた。
『だが、一つだけ決められることがある。それは――強さだ! 最強とは、競い合い高め合うなかで、頂点を求めることができるものだ!』
無論、歴代最強のファイターが誰かという疑問には、諸説があるし火種の元だ。
だが、今この瞬間誰が最強かという問いに対しては、一つの答えを出す方法がある。
『そう、大会だ! 強さは大会で決めることができる。最後に勝ち残った者がその瞬間の最強だ!』
今この瞬間、逢田トウマが日本のプロファイターの中で一番強いように。
『まぁ、仮に負けても俺は次の大会でリベンジするけどな』
と、そこで一瞬話がそれる。
負けたら次、勝てばいい。
ダイアとはそういうやつで、そしてそれを今この瞬間もブレさせてはいない。
まぁ、今の話とは何の関係もないんだけどさ。
『こほん、そういうわけで俺は――俺達は、最強のカードショップがどの店かということを、決めたくなった!』
かくして、話は一気に核心へと至る。
ダイアが勢いよく拳を振り上げて、そして叫んだ。
『よって、俺はここに、日本最強のショップを決める大会――ショップ対抗戦の開催を宣言する!』
その言葉で、一気にざわめきは盛り上がりに変わる。
そりゃあこんな話を聞いて、黙っていられるファイターはいないだろう。
「全国規模の、参加者を問わない大会ってことですの!?」
「そんな大会、いつ以来よ。少なくとも私は経験ないわよ」
なんやかやで顔見知りのアロマさんとヤトちゃんが騒ぐ。
そう、この大会の凄いところは――参加者を問わない全国規模の大会であるということだ。
なぜ凄いかっていうと、そういう大会はめったに開催されないからである。
大抵は参加できるファイターの条件が決まっていたり、プロしか参加できなかったりするのだ。
「これの警備、凄まじく大変であろうなぁ」
レンさんが頬杖を突きながらぼやく。
その通り、こういった大会がめったに開催されない一番の理由は、警備がめちゃくちゃ面倒だからだ。
だってこういう大会には、悪の組織やダークファイターが絡んでくるものだろ?
というかまず間違いなく絡んでくる。
少なくとも、コレを世界規模で行った大会――ファイトキングカップはその三回の開催のウチ、すべてにおいて悪の組織が暗躍していたからな。
第三回だけは、表に出ることなく終わったそうだが。
俺は関われないので、そこら辺は話に聞く程度だ。
『開催にあたっては、私、逢田トウマが特別サポーターに就任することとなった! 皆の大会を健全に運営できるよう、私も粉骨砕身努力させてもらう!』
ダイアが粉骨砕身なんて……じゃない。
つまり、今回の大会にはダイアが警備として加わるということだ。
それは心強い、大抵の悪の組織はそれだけで尻尾を巻いて逃げ出すだろう。
『詳しいルールについては、後日公式サイトにて発表させてもらう。私から言えることはただ一つだ』
そして、ダイアは常に浮かべていた笑みを更に深めて続けた。
『最強のカードショップとは、店長、店員、そして客のすべてが高いレベルになければならない! ショップ対抗戦は、ショップに関わる全てのファイターの協力が求められる!』
――その瞬間。
俺はキアと目があった。
お互いに、言いたいことは同じのようだ。
『チームとしてショップ一丸となり、この大きな大会に挑んで欲しい! 発表は以上だ!』
かくして、発表は終わった。
映像も途切れ、ショップには沈黙が広がる。
「――ミツルにぃ」
「……ああ」
キアが、俺の方に振り向いた。
お互いの視線と身体が向き合う。
それから自然と、エレアとヤトちゃん、それからレンさんが俺の方に立った。
キアの方には――アウローラさん、小中井さん、そしてナギサ。
アロマさんは……二つの集団を見てキョロキョロと視線を彷徨わせている。
「きっと、決勝で当たることになるね」
「それを運命が望むなら、きっとな」
「……ふふ、ミツルにぃはそればっかり」
昔からそうだったよね、とキアが笑った。
少し複雑そうなエレアをなだめつつ、俺はそれに応える。
「でも、きっとそうなる」
「ミツルにぃがそういうなら、そうなんだろうね。じゃあ――」
「ああ――」
かくして、俺とキアはお互いの意志をぶつける。
「勝負だ、マスターズ。最強のショップは、俺達デュエリストだ」
「受けて立つよ、デュエリスト。私達は、誰にも負けない」
配信を行ったダイアは、この状況を想定しているのだろうか。
俺と、キア。
この国トップと言われる二つのカードショップ。
そしてこの国で、”店長推薦状”を有するただ二つのショップ。
それらはきっと、どこかで激突することになる。
俺はそれが決勝になるだろうと思っているが。
どちらにせよ、ぶつからない事はありえない。
大会というのは、俺が関われる唯一の大きなイベントでもある。
かつては、ファイトキングカップで第三位という結果に終わったが。
今度こそは、必ず勝つ。
そう心に決めて、俺は――カードショップ”マスターズ”の人々との邂逅を終えるのだった。
というわけで、いよいよショップ対抗戦です。
ダイアは出禁になりました、あいついたらデュエリストが勝つに決まってるじゃん!
なお、出禁なのはダイアだけです。