カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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149 カードショップ”マスターズ”の人々 ⑤

 エレアが時たま起こす漫画的表現なのか、モンスターだからなのかよくわからない生態には驚かされるばかりだ。

 溶けるだけじゃないんだ……エレアって……。

 そういうところも、一緒にいて楽しいと思うから俺は好きだ。

 流石にさらさらしていくのは想定外だったのか、キアが慌てたものの。

 すぐにエレアがもとに戻って。

 キアがエレアをエレアねぇと呼ぶことに決まり――誕生日もギリギリエレアの方が早かった――俺達の話は一段落。

 

 ただまぁ、話としてこれですべてが終わるわけではない。

 そもそもアロマさんは俺と話をするためにマスターズへ呼び出したわけだが。

 それを最初に提案したのは、他でもないキアだ。

 何かしら狙いがあって俺を呼び出したわけだが、その理由に関しては正直想像がついていた。

 

 エレアが概ね落ち着いた後、時計をちらりと見やったキアがつぶやいた。

 

「ちょうどいい時間だね」

 

 それと同時に、二台あるフィールドのうち、使われていなかった一台に映像が映る。

 この時間は使わないようにと、キアが手配しておいたらしい。

 理由は今から映る映像を店中に放映するため。

 お客も、その放送の重要性はわかっていたから、快く引き受けたそうだ。

 なぜなら――

 

 

『元気にしていただろうか? 日本チャンプの逢田トウマだ! こうして話ができることを私は嬉しく思う!』

 

 

 映像には、ダイアの姿が映っていたからだ。

 それは動画投稿サイトで、今の時間から配信されることが告知されていた。

 ダイア――この国で最も知名度が高いファイターである逢田トウマが、この国のすべての人々に向けての告知。

 そりゃあ注目を集めないわけがない。

 

 キアはこの配信を俺と見たくて、わざわざ俺を呼び出したのだ。

 そこからエレアや俺の周りの人々が釣れることも考慮して――俺とキアの周辺人物をここに集めたかったってところか。

 

「なにか始まりましたわ!」

「ネットでもずいぶん話題になってたけど……なにが始まるのかしら」

 

 アロマさんやヤトちゃんが、不思議そうに配信を見ている。

 一般のファイターは、これから告知される内容が何なのかを知らない。

 

「ミツルさん、もしかしてこれが例の……」

「そういうことだな」

 

 対して、カードショップに勤めるものは、なんとなくその内容を知っている。

 それ以外だと、レンさんも概ね内容を予測できているだろう。

 そんなふうに、色々と各人が反応を見せる中。

 映像の中のダイアは口を開く。

 

『さて、まず初めに。皆は考えたことがあるだろうか。最高のカードショップとはなにか、と』

 

 その言葉に、映像を見ている人々は顔を見合わせる。

 ちょうど、ショップにいるタイミングでショップの話が始まったからだ。

 

『品揃え、値段、サービス、内装、店長の人柄。多くの要因があるとは思うが、それらは複合的で評価が非常に難しい』

 

 複合的……ダイアのやつ、そんな難しい言葉を人前で使えるようになって。

 俺とナギサはなぞの感動でほろりと涙を流して、周囲から何だアイツラと思われていた。

 

『だが、一つだけ決められることがある。それは――強さだ! 最強とは、競い合い高め合うなかで、頂点を求めることができるものだ!』

 

 無論、歴代最強のファイターが誰かという疑問には、諸説があるし火種の元だ。

 だが、今この瞬間誰が最強かという問いに対しては、一つの答えを出す方法がある。

 

『そう、大会だ! 強さは大会で決めることができる。最後に勝ち残った者がその瞬間の最強だ!』

 

 今この瞬間、逢田トウマが日本のプロファイターの中で一番強いように。

 

『まぁ、仮に負けても俺は次の大会でリベンジするけどな』

 

 と、そこで一瞬話がそれる。

 負けたら次、勝てばいい。

 ダイアとはそういうやつで、そしてそれを今この瞬間もブレさせてはいない。

 まぁ、今の話とは何の関係もないんだけどさ。

 

『こほん、そういうわけで俺は――俺達は、最強のカードショップがどの店かということを、決めたくなった!』

 

 かくして、話は一気に核心へと至る。

 ダイアが勢いよく拳を振り上げて、そして叫んだ。

 

 

『よって、俺はここに、日本最強のショップを決める大会――ショップ対抗戦の開催を宣言する!』

 

 

 その言葉で、一気にざわめきは盛り上がりに変わる。

 そりゃあこんな話を聞いて、黙っていられるファイターはいないだろう。

 

「全国規模の、参加者を問わない大会ってことですの!?」

「そんな大会、いつ以来よ。少なくとも私は経験ないわよ」

 

 なんやかやで顔見知りのアロマさんとヤトちゃんが騒ぐ。

 そう、この大会の凄いところは――参加者を問わない全国規模の大会であるということだ。

 なぜ凄いかっていうと、そういう大会はめったに開催されないからである。

 大抵は参加できるファイターの条件が決まっていたり、プロしか参加できなかったりするのだ。

 

「これの警備、凄まじく大変であろうなぁ」

 

 レンさんが頬杖を突きながらぼやく。

 その通り、こういった大会がめったに開催されない一番の理由は、警備がめちゃくちゃ面倒だからだ。

 だってこういう大会には、悪の組織やダークファイターが絡んでくるものだろ?

 というかまず間違いなく絡んでくる。

 少なくとも、コレを世界規模で行った大会――ファイトキングカップはその三回の開催のウチ、すべてにおいて悪の組織が暗躍していたからな。

 第三回だけは、表に出ることなく終わったそうだが。

 俺は関われないので、そこら辺は話に聞く程度だ。

 

『開催にあたっては、私、逢田トウマが特別サポーターに就任することとなった! 皆の大会を健全に運営できるよう、私も粉骨砕身努力させてもらう!』

 

 ダイアが粉骨砕身なんて……じゃない。

 つまり、今回の大会にはダイアが警備として加わるということだ。

 それは心強い、大抵の悪の組織はそれだけで尻尾を巻いて逃げ出すだろう。

 

『詳しいルールについては、後日公式サイトにて発表させてもらう。私から言えることはただ一つだ』

 

 そして、ダイアは常に浮かべていた笑みを更に深めて続けた。

 

『最強のカードショップとは、店長、店員、そして客のすべてが高いレベルになければならない! ショップ対抗戦は、ショップに関わる全てのファイターの協力が求められる!』

 

 ――その瞬間。

 俺はキアと目があった。

 お互いに、言いたいことは同じのようだ。

 

『チームとしてショップ一丸となり、この大きな大会に挑んで欲しい! 発表は以上だ!』

 

 かくして、発表は終わった。

 映像も途切れ、ショップには沈黙が広がる。

 

「――ミツルにぃ」

「……ああ」

 

 キアが、俺の方に振り向いた。

 お互いの視線と身体が向き合う。

 それから自然と、エレアとヤトちゃん、それからレンさんが俺の方に立った。

 キアの方には――アウローラさん、小中井さん、そしてナギサ。

 アロマさんは……二つの集団を見てキョロキョロと視線を彷徨わせている。

 

「きっと、決勝で当たることになるね」

「それを運命が望むなら、きっとな」

「……ふふ、ミツルにぃはそればっかり」

 

 昔からそうだったよね、とキアが笑った。

 少し複雑そうなエレアをなだめつつ、俺はそれに応える。

 

「でも、きっとそうなる」

「ミツルにぃがそういうなら、そうなんだろうね。じゃあ――」

「ああ――」

 

 かくして、俺とキアはお互いの意志をぶつける。

 

 

「勝負だ、マスターズ。最強のショップは、俺達デュエリストだ」

「受けて立つよ、デュエリスト。私達は、誰にも負けない」

 

 

 配信を行ったダイアは、この状況を想定しているのだろうか。

 俺と、キア。

 この国トップと言われる二つのカードショップ。

 そしてこの国で、”店長推薦状”を有するただ二つのショップ。

 

 それらはきっと、どこかで激突することになる。

 俺はそれが決勝になるだろうと思っているが。

 

 どちらにせよ、ぶつからない事はありえない。

 

 大会というのは、俺が関われる唯一の大きなイベントでもある。

 かつては、ファイトキングカップで第三位という結果に終わったが。

 今度こそは、必ず勝つ。

 そう心に決めて、俺は――カードショップ”マスターズ”の人々との邂逅を終えるのだった。




というわけで、いよいよショップ対抗戦です。
ダイアは出禁になりました、あいついたらデュエリストが勝つに決まってるじゃん!
なお、出禁なのはダイアだけです。
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