カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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150 チームメンバーは揺れ動く ①

「んで、何だよ話って」

「ああ、……今度の、ショップ対抗戦のことだ」

 

 誰もいない店内で、ネッカ少年とクロー少年が向かい合う。

 正確には、まだ客もそんなに来ていなかった店内で、クロー少年がネッカ少年に大事な話があるといったところで、気を利かせたエレアが俺をバックヤードに退避させた感じだ。

 んで、扉を少しだけ開けてそれを覗き見している。

 退避させた意味ってなんだよ……。

 まぁ、クローもエレアがそういう変なことするのはわかってるので、時折こちらに視線を向けているので問題ないだろう。

 ネッカ少年は……まぁ、はい。

 

「ふおー、ついにこの日が来てしまいましたね……」

「何が来たんだよ、別に愛の告白でもないんだから。ショップ対抗戦のことだろ?」

「言ってみたかっただけです」

 

 言ってみたかっただけかぁ。

 まぁ、ノリで生きているエレアのことはいいのだ。

 クローがネッカ少年……と、おそらくは俺に対して伝えたいことがあるというのは、なんとなく想像ができた。

 ショップ対抗戦のことなら、なおさらだ。

 

「ショップ対抗戦か、楽しみだよな。店長とチーム組めるなんてそうそうないからな! ま、その前にチームに選ばれないと意味ないんだけど」

「そのことなんだけど、ネッカ。俺は――」

 

 ネッカ少年の言葉を少し遮るように、クロー少年は真面目な顔で告げる。

 

 

「俺は、別店舗のチームで大会に参加しようと思う」

 

 

 それは、意外と言えば意外な発言で。

 当然といえば当然の決断だった。

 クロー少年は、俺の店以外にも足繁く通っている店があるのだ。

 

「……」

「カードショップ”ドリームランド”。俺が昔ホームにしてた店で、俺の故郷にあるんだ。そこから対抗戦に参加しようと思ってる」

 

 現在はこの”デュエリスト”をホームにしているクロー少年だが、元のホームはミーシアさんが経営するドリームランドだ。

 そして、今でも時折その店に通ってもいる。

 ダイアがその店に顔を出すからだ。

 

「最初の頃、俺はネッカに対してもっと敵愾心を持ってた。今でもライバルとして負けたくないとは思うけど……正直、現状に満足してる自分もいる」

 

 けど、とクローは続けた。

 

「けど……それじゃダメだと思うんだ。俺にとって、ネッカは誰よりも負けたくないと思うライバルだ。現状に満足してたら、どんどんネッカに置いてかれる気がするんだよ」

 

 ――だから俺は、ネッカとは同じチームで戦えない。

 そんなクロー少年の言葉に、ネッカは。

 

 

「だろーなぁ」

 

 

 そう、軽い調子で返した。

 クロー少年は、一大告白をその調子で返されて口をあんぐりあけている。

 

「いや、もともとクローがそういうこと考えてるのはわかってたしな」

「じゃ、じゃあ俺がドリームランドのチームで参加することも……?」

「そりゃお前、いつだったか昔のホームだって言ってそこにつれてってくれたじゃん。いい店だよな」

 

 ネッカ少年からしてみれば、ようやくかーという感じなんだろう。

 ここ最近ずっと、いつ話そうか様子をみていたからなクローは。

 もはややきもきを通り越して、悟りの域に達しそうな心境のようだ。

 

「それに、俺だって楽しみなんだぜ、クローと本気でやれるって」

「……!」

「サイコーのファイトにしような!」

 

 そう言って、どこか挑戦的にネッカ少年は笑みを浮かべる。

 対するクローも、少しだけ目を見開いてから、笑みを浮かべた。

 お互いに、どちらからともなく拳を突き出して、

 

「……ああ!」

 

 クロー少年が、ネッカ少年の言葉に同意した。

 

 

 □□□□□

 

 

「いやー、これでクローくんが別チーム行きですかぁ」

「まぁ、そこは既定路線だろ」

 

 現在、我がデュエリストにおいて一番の話題は、「誰がショップ対抗戦のメンバーに選ばれるか」である。

 そしてこれは、俺とエレアも例外ではなかった。

 なぜなら、まだチームのメンバーを募集してないからだ。

 そもそも開催までまだしばらくあるしね。

 

「まず、店長と私とメカシィさんは確定ですよね」

「店長と店員は三人までなら参加確定だからな」

 

 ぴったり、うちのスタッフと同じ人数である。

 なのでここは迷うことなく決定である。

 

「他には誰が来ると思いますか?」

「そうだな、まずネッカ少年は確定だろう」

 

 わざわざクローが別チームに行った以上、うちのチームに参加しない理由がない。

 加えて、俺の店で一番強い常連はダイアを除くとネッカかクローだからな。

 最近はヤトちゃんも伸びてるけど。

 

「後は、ホームがうちしかない常連も来ると思う」

「ヤトちゃんとレンさんですね」

 

 まぁ、レンさんの場合はチームメンバーに選ばれるかという問題があるが。

 なんだかんだ言って、うちの常連は皆強い。

 表舞台で全力を出しきれないレンさんがメンバーに選ばれるかは……まぁ、そのときになってみないとわからないな。

 なお、ヤトちゃんに関しては言うこともない。

 うちのメンバーでネッカ少年に次ぐエース格だ。

 むしろ期待していると言っていいだろう。

 

「そういえば、刑事さんがショップ対抗戦の時期は時間を作れそうって言ってたな」

「あの人も強いですしねぇ、参加できるってことになればメンバーには入ってきそうです」

 

 他にも風太郎や、その相棒の任次郎。

 あまり店にやってこないメンバーだと、闇札機関の十二天将とか。

 とはいえ彼らは、基本的に俺の店以外の天火市の店舗をホームにしている。

 なので、大抵はその店舗から参加することになると思う。

 

「ネッカくん、レンさん、それからヤトちゃん。これで六人」

「刑事さんが入れば七人、あと一人は風太郎か……」

「……そういえば、結局彼女はどうするんでしょうね」

 

 そう言いながら、エレアは視線を店舗の一角に向けた。

 そこには一人の少女がいる。

 ドリルが特徴的なお嬢様ファイター――アロマさんだ。

 うちの店をホームにしているファイターのひとりでもある――が。

 

「同時に、マスターズをホームにもしている、か」

「多分、どっちで参加するかをアロマさんが選んだ時点で、そっちの枠が一人埋まるな」

「強いですからね、アロマさん」

 

 具体的には、ヤトちゃんとほぼどっこいだ。

 エレアもこの枠に入る。

 まぁ、あくまで平均値だから格上に勝ったり格下に負けたりするけどな。

 

 そんなアロマさんは、何やら悩んだ様子でデッキを一人回ししている。

 普段なら自分からフリーの輪に入っていくタイプ。

 それなのにどこか心此処にあらずといった感じでポツンとなっていた。

 これはアレだな、どこの店舗で参加するか迷っているやつだ。

 

「アロマさんが入ったら、確実に一枠埋まりますから……残り二枠を争うことになりそうですね」

「争うのは……刑事さんと風太郎と……レンさんか?」

「ですかねぇ」

 

 まじでレンさんがチームに入れるかどうかは、結構ギリギリな感じだ。

 俺としては、いつもお世話になってる相手だが、だからこそ贔屓はできない。

 ほぼ確定扱いになっているネッカ少年やヤトちゃん達を含めて、ショップ大会を選考会をする予定である。

 

「それで、ですけど」

「……なんだ?」

「一人ナチュラルにスルーされてる人がいますが」

「…………いやまぁ、そりゃ」

 

 ちらり、と俺は視線を別の場所に向けた。

 そこにいるのはヤトちゃんだ。

 ネッカ少年と激しいファイトを繰り広げている。

 ショップ対抗戦や、自分自身に関することで気合が入っているらしい。

 

「……あの人は、うちじゃ参加せんだろう」

 

 俺がそう言ったその時。

 突如として、天井から人が降ってきた。

 今は未使用で人のいないフィールドのうえに、ストンと。

 

 

「――月兎仮面、参上」

 

 

 バニーっぽい衣装の痴女、月兎仮面ことハクさんが飛び降りてきたのだ。

 

「やっぱり出たわね、姉さん」

「姉さんではありません、ヤト。月兎仮面です」

 

 そんないつものやり取りをしつつ、ちょうどネッカ少年とのファイトが終わったヤトちゃんが立ち上がる。

 ネッカ少年もおー、といった感じで視線を向けている。

 めちゃくちゃ教育に悪い光景だが、もはや日常風景になっているのでネッカ少年はスルーを覚えていた。

 それでいいのか……?

 

「いいですか、ヤト。私は今日、ある宣言をするためにここへ来ました」

「……ショップ対抗戦は仮面舞踏会の方で出るんでしょ? 頑張ってね」

「そう、私は――ってちょっとぉ!?」

 

 と、いうわけで。

 うちの店をよく利用している常連のうち、ハクさんとクローは別店舗での参加を決めたようだった。

 なお、どっちも本人はかなり悩んでいたが周囲からすれば知ってた案件である――




というわけででチーム分けのお話。
そこら辺やって、キアとの過去話やったら前半戦は終了です。
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