カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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153 仮面の聖獣は仮面の配信者 ①

 俺とエレアがレンさんの実家にやってきた時のことだ。

 その日は一日、レンさんの実家に泊まっていくこととなったわけだが。

 俺には、少し興味のあることがあった。

 

 聖獣。

 レンさんの実家こと、”社”の守護を担当する役職の人物。

 彼女に会ってみたいと思ったのだ。

 何せ、この国有数のエージェントだというのだから。

 だいぶ興味がそそられる相手である。

 

「――姉上か」

 

 という話をすると、レンさんは微妙な顔をした。

 なんというか、そりゃ俺なら会いたいと思うよなー、みたいな顔だ。

 

「天の民なら会いたいと思うだろうな」

「あ、店長が言いそうだなと思っていることをレンさんが言いました!」

「なんでエレアが反応するんだよ」

 

 何にせよ、レンさんの微妙な顔は従姉であるその女性に色々と思うところがあるのだろう。

 

「姉上は……まぁ、一言で言えば変だ」

「変ですかぁ……」

「瞳の民より変ではない」

「どういう意味ですか!?」

 

 まぁ、言動とか行動とか。

 推しを前にすると溶けるところとか。

 モンスターであることを加味しても、変な部分が多いからなエレアは。

 まぁ、そういう所が一緒にいて楽しい所でもあるのだが。

 

「…………」

「ああ、レンさんがこいつまた心のなかで惚気けてるぞ、みたいな顔をしています!」

 

 ごめん。

 

「とにかく、一度会ってみれば解るだろう。姉上の変な所は一言では言い表せないからな」

「私の魅力が、一言では言い表せないのと同じですね!」

 

 レンさんは答えなかった。

 エレアは泣きそうだったので頭をなでておいて慰めておいた。

 スパァン!(ハリセンの音)

 

 さて、たどり着いたのは社の奥まった場所にある場所。

 奥の奥の、更に奥といった場所にその部屋はある。

 なんというか、進めば進むほど周囲の雰囲気が重々しいものになっていく。

 ”社”は神聖さこそ感じるが、楚々とした作りになっている。

 それがどういうわけか、進めば進むほど豪華なものに変わっていくのだ。

 同時に、御札とかしめ縄みたいなものも多くなってくる。

 これはなんというか――

 

「――祀っている?」

「解るか、天の民よ。かつてここには聖獣のお役目を担うものが”祀られて”いた」

 

 ふむ。

 それはなんというか――

 

「……? どういうことですか?」

「古い因習の話だ。今はもう、そのような宿業はここには残っていない」

「ああ」

 

 異世界人のエレアは、どうやらこのあたりの文脈が読み取れないようだ。

 とはいえ、そこはオタク創作にどっぷりのエレアだ。

 少し想像すれば、なんとなく理解が追いついたのだろう。

 ――だからか、三人の口から言葉が消える。

 沈黙が周囲を支配した。

 

 最終的にたどり着いたのは、それはもう豪華に飾り付けられた部屋だった。

 なんというか、神様がここにいるんだろうなー、というか。

 そんな感じの。

 思わず、神聖さと重苦しさに三人が口をつぐんでいると――

 

 

「だああああ! またダメだーーーーーっ!」

 

 

 少女の、変な声が部屋の奥から響いてきた。

 

「えっと、レンさん?」

「気にするな、いつものことだ」

 

 俺の視線に、レンさんは呆れ混じりのため息で返す。

 

「もーいっかい! もーいっかいだけでいいから!」

「誰かと話してるのか?」

「……ん? この声…………」

 

 どうやら、聖獣様は誰かと話をしているようだ。

 でも、誰と?

 こんな奥まった場所に、用事もなくやってくる人はそうそういないとは思うが。

 それと、エレアが何かを思い出そうとしている。

 うーん……?

 

「え? もうそんな時間? あーじゃあ、今日はこのくらいかな」

「あ、あー! 思い出しましたよ!」

 

 ――と、そこで想像する材料が揃った。

 エレアがピンと来たうえで、聖獣様のこの発言。

 つまり彼女は――

 

()()()()()はここまで。もしこの配信が面白かったら、チャンネル登録と高評価をお願いします!」

 

 ――配信をしているのだ。

 なるほど、エレアの同業者だったか。

 ……なんで?

 と、思っていると。

 

 

「というわけで、聖なる遣い系V()()()、聖山ツカサでした、まったねー!」

 

 

 ――Vの者であったかぁ。

 

 

 □□□□□

 

 

「じゃ、改めて。ボクは鵺野ヒジリ、社の聖獣様だよ、ヨロシクネー」

 

 そう言って、彼女はゲーミングチェアに腰掛けたまま、ケラケラと笑って手を振った。

 鵺野ヒジリさん。

 年齢は20と少し、レンさんと同じ金の髪はさらさらとストレート。

 そしてジャージ。

 まごうことなき芋ジャージであった。

 そして最も目を引くのは――

 

「ツカサちゃんって、アバターだけじゃなくて自分もマスクしてるんですね」

「今はヒジリちゃんでお願いね、エレアちゃん。マスクはほら、ここの職員ならだいたいしてるでしょ?」

 

 マスク、というか。

 仮面というか、紙で作られた面が目を覆っている。

 そしてエレアとヒジリさんは知り合いだった。

 何でも、一度コラボしたことがあるらしい。

 

「それにこれは、聖獣の拘束具だからね。業務中はつける規則になってるんだ」

 

 ――さて、話をまとめよう。

 彼女は鵺野ヒジリ、”社”を守護する聖獣である。

 なぜ彼女が、こんな場所でVの者をしているのかといえば――

 

「暇なんだよね、これが。聖獣って業務時間中はこの部屋を出ちゃいけない決まりになっててさ」

「それは……聖獣が、()()()()()()()()()()()から?」

「正解、店長さんは鋭いねぇ」

 

 まぁ、ここに来るまでのアレヤコレヤをみればすぐ解ることだが。

 ともかく。

 実は聖獣というのは昔は人身御供、もしくは人柱のようなものだったらしい。

 鬼門の方角に配置し、迫りくる魔を払うための楔。

 それがかつての聖獣の”お役目”だったわけだ。

 

「あ、でも実際に魔――ダークファイターが襲撃してきた時は外に出してもらえるよ。そこでファイトをして、終わったらまたこの部屋に戻されるの」

「……それ以外の時間は、すべてこの場に幽閉されている。我が一族の悪しき歴史だ」

 

 ふん、とレンさんが悪態をつく。

 まぁ、そうしなければこの国を守れなかったとか。

 そうしないとそもそも聖獣自体が危険だったとか。

 色々理由はあるにしろ、面白いことではないのは確かだ。

 

「でも、今は違うんだろ?」

「今は聖獣なんていなくてもなんとかなるくらい、この国には強いファイターがいるからねぇ。それに聖獣もほら、私みたいに温厚な人ばっかりになったから」

 

 そういって、ゲーミングチェアの背もたれを倒しながら笑みを浮かべるヒジリさん。

 まぁ実際、暴走とかしなさそうではあるな。

 

「今じゃ、聖獣がこの部屋をでちゃだめなのは業務時間中だけだ。タイムカードをスキャンして退勤するまででいいってわけ」

「うわ、部屋の入り口横にタイムカードをスキャンする機械がある……」

 

 ヒジリさんは、胸元にあるタイムカードの入った社員証を揺らしながら、入口脇の機械を指さした。

 木造の神聖な場所にタイムカードをスキャンする機械が設置されてる……!

 

「……じゃあ、どうして業務中にVの者に?」

「だって、聖獣って業務時間中にやることないんだもの。ずっと部屋の中でニートしてればいいんだけどさ、流石に暇じゃん?」

 

 じゃあ、なるしかないよね……配信者!

 と、ヒジリさんは両手を広げて笑顔で言った。

 ……濃いなぁ。

 ちらりとレンさんを見る。

 …………濃いなぁ。

 

「おい天の民。なにか言いたいことがあるならはっきり言え!」

「いや、なんでもないよ」

 

 コホン。

 

「でも、私って一応祀られる立場だから、流石に顔出し配信者ってわけにはいかなかったんだけど」

「今の時代、顔を隠すって手段もあるわけですからねえ」

 

 うんうんと、エレアが頷いている。

 同じ配信者同士、シンパシーを感じるところがあるのだろう。

 

「というわけで、私は顔を隠してVの者としてデビューしたわけだ」

「すごいんですよ、ヒジリちゃん!」

 

 言って、エレアがスマホを弄って画面を俺に見せてきた。

 そこにはヒジリさんの配信チャンネルが映っていて。

 登録者数は――

 

 

「金盾もってるんですから!」

 

 

 ――百万人かぁ。

 …………(チラ)…………濃いなぁ。

 

「天の民ー!」

「うわあレンさん! 惚気けを咎める以外にもハリセンを持ち出すのはやめるんだ!」

「――で、店長さん」

 

 と、そこで。

 倒していたゲーミングチェアを元に戻して、ヒジリさんが起き上がる。

 それと同時に――

 

「――早速だけど、ファイトしよっか?」

 

 ――イグニスボードが展開された。

 ああうん、やりますやります。




なんとなくお察しかもしれませんが、仮面舞踏会チームのメンバーです
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