カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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156 伝説のファイター仙人って? ②

「ええと明日原キア……だよ。ミツル、仙人様……ううん、仙人」

「ほほほ、筋がええのう。それでいて、一発で正解にたどり着かないのも好印象じゃて」

「何故こっちをみる」

 

 目を覚ました少女――キアちゃんは俺達と少し話をして、自分の名前を名乗った。

 途中、仙人様といいかけて仙人に言い直したのは理由がある。

 

「儂は堅苦しいのが苦手でのぉ。頼ってここを訪れる客人ならそれも構わんが、儂に弟子入りを希望するなら、畏まってもらわれてはの」

「やっぱり。ミツルが砕けた態度を取ってるから、そうじゃないかと思ったよ」

 

 キアちゃんは他人との距離が近いタイプらしい。

 最初から俺をミツルと呼び捨てだ。

 もちろん、俺もそれは構わない。

 

「それで、早速なんだけど仙人。私も彼みたいに、店員としてここで働かせてもらえないかな? 店長推薦状をもらいたいんだ」

「うむ、相わかった。それと、こやつは店員ではなく勝手にいついているだけだ。こやつのことは気にせんでいいぞ」

「俺に対する当たりがきついなぁ」

 

 まぁ、そりゃ勝手に居座ってるわけだし、仙人的には俺は何の面白みもない人物らしいし。

 仙人は他人を導くのが役目だから、成長の余地がないくらい完成している人間には興味がないそうだ。

 俺がそんなタマか? と思いつつも、仙人基準ではそうなのだろう。

 ずいぶん大きく見積もられたものである。

 ところで何だが。

 

「それにしても、ずいぶんと簡単に許可するな? もう少し渋るかと思ったが」

「その辺りの問答が必要ないくらい、こやつは意志がはっきりしておる。それでいて、お前さんと違って成長の余地もあるからの」

「そう言われると、何か照れるね……」

「というか、そもそも仙人に弟子入りしようなんてやつ、誰だって自分の確固たる意志は持ち合わせてるものか」

 

 そうやって、儂の言いたいことを察して先回りするから、お前さんは弟子入りが必要ないのじゃ。

 と、仙人から言われつつ。

 

「さて、ではキアよ。儂の元で働くことは異論ない。しかし、それでも儂の元を訪れた者には一度は聞くことにしている」

「えっと……何かな、仙人」

「簡単なことじゃ」

 

 仙人はヒゲをもっさもっさしながら、鋭い視線をキアに向ける。

 キアが喉を鳴らす音が、こちらにも聞こえてきた。

 

「お前さんにとって、最高のカードショップとは何だ?」

 

 ――その問いは、俺に対しても行われた。

 基本的に俺への態度が雑な仙人だが、その問いかけだけは今のキアのように、真剣そのものな視線で行われたのだ。

 とはいえ、俺の答えは考えるまでもなかったが。

 果たしてキアはどうだろう。

 

「最高のカードショップ……えっと」

「一言で片付ける必要はない、思ったことをすべて話すのじゃ」

「うん。そうだね……私にとって最高のカードショップは、繁盛してる店……かなぁ」

 

 そう言って、キアは人差し指を口元にあてて、考え込むように視線を上に向けた。

 訥々と彼女は語る。

 

「繁盛っていうのは、二つの意味で。お客さんがいっぱい来て、皆が笑顔でいられる場所って意味と……経営が上手く行って、お店がすごく儲かってること」

「前者はありきたり、後者は俗物的だのう」

「そうかもね。でも、どっちも大切なことだし、どっちかだけじゃダメだと思うんだ」

 

 敢えて貶すようなことを言った仙人に、わかっているとキアは頷く。

 仙人はわざとこういうことを言って、相手の反応を引き出すことが多い。

 人の本質を見抜く力は高いけど、結構色々と俗というか、雑だよな仙人って。

 とか思っていたらジロっとした視線がこちらに向けられた。

 いや、事実じゃん、と俺も悪びれない。

 

「最高って、難しい言葉でしょ? 私にとっての最高と、二人にとっての最高はきっと違うから。私にとっての最高は、()()()()()()()なの。お客さんの満足度も、店の売上も、見れば一目で解るでしょ?」

「なるほど、目に見える結果……か。良い答えじゃの」

 

 最高という概念は人によって違う、当たり前のことだ。

 だからこそキアは、それをできるだけわかりやすい数字や客のリアクションに求めた。

 ()()()()()()()()だな。

 

「正直、お前さん(キア)其奴(ミツル)と同様に、店長としての資格は十分満たしておる」

「ほんと? っていうかミツルも仙人に認められてるんだ。すごいね」

「まぁ、ありがたいことにな」

「――じゃが」

 

 仙人が会話を打ち切るように続ける。

 

「其奴と違って、お前さんはここで()()()()()()がある。それを為した時、お前さんに店長推薦状を出そう」

「やるべきこと……? なんだろう、仙人のところで働けるのはいい経験になると思うけど」

「それを見つけるのが、お前さんがここに来た理由じゃろて」

「なるほど……そっか」

 

 そう言って、キアは眠っていたベッドから足を出して、地面につける。

 ベッドを椅子にするような態勢で、椅子に座っていた俺と仙人に視線を合わせた。

 

「わかった、ここでやるべきことを見つけて、仙人から推薦状を貰ってみせるよ!」

「うむ、その意気じゃ」

「頑張ろうな」

 

 かくして、キアと俺の――仙人のもとでの、修行の日々が始まった。

 

 

 □□□□□

 

 

 仙人窟には、一日に一人か二人は来客がある。

 大抵は、仙人にどうしても譲って欲しいカードがあったりするか、どうしても勝ちたい相手がいるので修行をさせて欲しいかのどっちかだ。

 前者であれば、仙人が出した試練をクリアすると、必要なカードを仙人が販売してくれる。

 そこはタダじゃないんだと思ったけど、金でカードをやり取りすることがカードショップの役割だからだそうな。

 まぁ、他所で買うよりは圧倒的に安かったり、殆ど投げ売りだったり、別のカードとの交換でも良かったりするけど。

 

 後者はもっと単純だ。

 仙人が出す試練をクリアするか、仙人が許可したら仙人がファイトする。

 試練の有無は、やってきた来客の精神面がどれだけ成熟しているかにもよるそうだが。

 俺もファイトしてくれねぇかなぁ。

 

 試練の内容は様々。

 滝行だったり、俺達と一緒に店の雑務を片付けたり。

 中には俺やキアとファイトする、なんてものもある。

 ぶっちゃけ、俺達とファイトすると仙人とファイトする前に問題が解決することもあるのだけど、いいのだろうか。

 俺だけじゃなく、キアもだ。

 キアも問題解決能力は高い、流石この年で店長志望ってところだな。

 

 後はまぁ、日常のあれやこれやを片付ける。

 炊事洗濯他色々だ。

 

 仙人は一日の大半をカードとの対話に費やしている。

 対話することで、そのカードの感情や願いを聞き届け、時には助けるのだとか。

 その助けを、俺やキアに投げてくることもあるな。

 なもんで、日常のことは俺やキアが片付けるのが基本。

 俺達がいない時は、仙人も一人で家事とかするらしいけど。

 仙人が炊事洗濯かぁ……シュールだ……。

 

 そうこうしている内に、日々はあっという間に過ぎていく。

 途中でやってきたナギサもメンバーに加えて、俺達は賑やかな日々を過ごした。

 なお、ナギサは俺達の中で一番仙人に弟子入りしたい人間の”平均”に近いらしい。

 なんか仙人が、ようやっと普通の弟子が入ってきたのう、と安堵していた。

 俺はともかく、キアの方も外れ値なんだなぁ。

 

 ともあれ、そこでの生活はなかなか充実したものだった。

 元々、推薦状店長は個性派が多く、その下で勉強することは良い経験だ。

 輪をかけて、元から知り合いだったナギサや、幼いながらも大人びているキアもいて。

 多分、俺の人生の中でもなかなか替えの利かない経験だったのではないだろうか。

 

 仙人に無茶な修行を言い渡されたナギサを、三人で煽ったり。

 ナギサの性別をキアが本気で解き明かそうとしたり。

 来客と偽って襲撃してきたダークファイターを迎撃したり。

 まぁ、最後のはほぼナギサとキアが何とかしてたけど。

 俺は襲撃してきたタイミングは店から離れてて、別のダークファイターと戦ってたよ。

 そんなに強くなかったから、襲撃してきたダークファイターの部下だったのだろう。

 仙人がなんかすごい目でみてたけど、何故かは知らない。

 

 とにかく、充実した日々だったことは間違いない。

 良くも悪くも、仙人の元で修行していないと味わえない体験。

 未だに仙人とファイトはできていないが、ファイトができなくとも満足の行く結果を得られるだろうなと、そんな想いも出始めた頃。

 

 俺は、夜遅くに何かをしているキアを見つけた。

 ノートパソコンで、何かをしているようだ。

 そしてこちらが気づいた時点で、キアも気がつく。

 お互いになんとなく気まずい雰囲気になりつつも、俺はキアから詳細を聞かされた。

 

「――私が経営してる企業の、いろんな処理をまとめてやってたんだ」

「経営してる……って、キアが?」

 

 思わず聞き返してしまった。

 この時点だと、俺はレンさんのような天才小学生の存在を知らないから、キアがこの若さで会社を経営していると聞いて驚いてしまうのも無理はない。

 

「そうだよ? いっっっぱい経営してるの。これでも大学を卒業した社会人だからね」

「だ、大学……」

 

 当時の俺は高校生だから、大学なんてまだ先の未来の話だ。

 

「……私がどうして、ここにたどり着くときに倒れちゃったのか……だったよね」

「ああ、仙人からそれを探るよう言われてる」

「うん、私もこれまでの生活でミツルを信頼できる人だと思えたし、教えちゃうね」

 

 そう言って、キアは少しだけ恥ずかしそうにしながら。

 

 

「仕事しながら山を登ったら、流石に力尽きちゃったの」

 

 

 答えを告げた。

 ……ああうん、そりゃあ流石に力尽きるよね。

 いやぁ、かなり無茶してるな!?




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