カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
私、明日原キアには大切な人が二人いる。
一人は良空ミトリ、大学時代の親友で私と同じ飛び級天才小学生。
私が一人で大学の門を叩いた時、偶然彼女は同じ大学に入学した。
天才小学生が二人も飛び級で入学するなんて珍しいことで、随分話題になったっけ。
それ以来、私達の付き合いは続いてる。
ミトリが、パパの会社である”スピリッツ”に入社した今も。
もう一人が、棚札ミツル。
ミツルにぃ。
私にとっては、兄のような存在であり……目指すべき目標。
ミツルにぃはいつだって私の前にいた。
出会いは、ファイター仙人の仙人窟。
私より一足先に店長資格を集め始めたミツルにぃは、そもそも仙人の考える店長の条件を最初から満たしてたみたい。
それはとんでもない話で、前代未聞のことだと思う。
そもそも、ファイター仙人の店長推薦状は入手が困難なことで有名だ。
今まで両手の指で数えられるくらいしか、それを入手した人はいない。
ファイター仙人の店長推薦状を入手した店長が、ことごとく店長推薦状をすべて集めているのがその証拠。
私もミツルにぃも、それからナギサも――ナギサは一応、だけど――店長推薦状をすべて集めきってるし。
なぜそんなに仙人の推薦状を入手することが困難かと言えば、仙人窟への道を踏破する難易度が人によって異なることに起因する。
仙人窟への道は、その人が登ることのできるギリギリの難易度に調整される。
ただし上限があって、店長資格を手に入れるための条件はこの上限――つまり最高難易度を踏破することが
だからどれだけ仙人の推薦状がほしいと思っても、登ったときの難易度が最高難易度じゃなければ門前払いを食らっちゃう。
そして、難易度は自分では選べないから、山を登り始めた時点で店長推薦状を貰えるかどうかが決まっちゃうの。
ただ、そこさえ突破できれば、店長推薦状を貰うことは難しくないって言われてる。
もちろん、その後の仙人の試練も大変だけど、山を最高難易度で登りきれる時点ですでにどんな難題も自分の力で乗り越える下地はできているから。
ただまぁだからといって、最初から仙人の試練がいらないって言われてたミツルにぃは普通じゃない。
どころか、仙人とのファイトで、仙人にすらまだまだ成長の余地があることを示してみせた。
だからその時から、私にとって最高の店長はミツルにぃであり、私はミツルにぃのような店長を目指してやってきたんだ。
ミツルにぃ自身も、最高のカードショップは最高の店長がいる場所だって言ってたしね。
ミツルにぃやナギサと世界中のカードショップで行き合って、店長推薦状を求めて切磋琢磨した日々は、今でもかけがえのない思い出だ。
ミトリと大学で過ごした四年間に負けないくらい。
でも、私の人生はそれ以外の部分だと、上手く行っていない部分も多い。
パパは、私が二十歳になっても私のことをみてくれなかった。
もう大人になったんだよ? お酒だって飲める、一人前のレディになったのに。
どうしてパパは私のことをみてくれないんだろう。
娘として会いたくないならともかく、社長としてアポをとってもパパは会ってくれなかった。
それってもう、パパが人間としても社会人としてもダメってことでいいんだよね?
まぁそれでもスピリッツの業績は好調だし、パパは多少ワガママを言っていいくらいあの会社を上手く回してると思う。
でも、それにしたって。
どうして私のことをそこまでして避けるの?
わからない、本当に。
なにより、私のためにわざわざスピリッツを進路に選んだミトリに申し訳ない。
元々ミトリはカード専門チェーンの店長になるのが目標だったけど、わざわざスピリッツを選んだのは私のためだ。
店長になれば、いつかパパに会えるだろうから……って。
私にそこまでされる資格なんてないのに。
パパに愛されない私なんて。
――パパに振り返ってもらうために、会社経営を始めた。
周りの人達はいい人ばかりで、私の経営は順調だ。
才能もあったんだと思う、でなければこれだけ多くの会社を経営することは難しいと思う。
ただそれでも、やっぱり多くの所はスタッフの頑張りあってこそ。
私は彼らに支えられてきたに過ぎない。
どこに行ってもそうだった。
私は一番にはなれない。
会社経営だって上手く行ってこそいるけれど、そのすべてが一番じゃない。
カードショップだって、経営に関しては日本で一番を自負しているけれど。
それが最高のカードショップだと、自分で断言できる気はしない。
ミツルにぃっていう、誰にも負けない確固たる信念を持った店長を前にして。
私が自分を誇れる日は来るんだろうか。
――これから、ショップ対抗戦が始まる。
そこで私は、私にまつわるいろんな因縁が、一箇所に集まっていくのを感じていた。
ミツルにぃと最強のカードショップを決めることができるのもそうだけど。
対抗戦にはカード専門チェーンの店も出てくる。
きっとミトリも、スピリッツの店長として出てくるだろう。
スピリッツが決勝トーナメントまで進出すれば、パパだって観戦に来るはずだ。
私とパパの因縁の決着も、そこでつけられる。
そんな確信が、私にはあった。
ああでもだからこそ、私は思う。
最高のカードショップとはなにか。
その問いに、答えなんてないとミツルにぃや仙人は言うけれど。
それは、本当なのだろうか。
もしかしたら、もっとも端的で誰もが認める最高の条件があるんじゃないか?
私には、その答えがわからないけれど。
ミツルにぃになら――
□□□□□
「つ、つまり……勝っちゃったんですか? 仙人に」
「まぁ、殆ど奇襲でもぎ取ったようなもんだけどな。それに、ダイアだって別の機会でファイトしてもらって勝ったそうだぞ?」
「いやそりゃあ……多分、その時にはもうダイアさんも”完成”してたんでしょうし」
話を終わると、一番にエレアが驚いたのはそこだった。
まぁそりゃそうだ、仙人は凄い、この世界の人間なら子供だって知っている。
異世界人のエレアだって知っているのだ。
「もちろん、今の店長なら仙人にも負けないと思いますよ?」
でもそれにしたって、高校生の頃に勝てちゃうなんて。
と、エレアは感心しきりである。
「それにしても、人に歴史ありって感じですねぇ。あんなにカリスマ美人店主って感じのキアちゃんにも、そんな悩みが……」
「難しいところだよな。そもそも会ってすらくれないんじゃ、問題を解決しようにもとっかかりがない」
話の流れで、キアの過去にも触れてしまったが。
それに関しては、キアは問題ないと言っている。
というか、このことは公には話してないけど、知り合いには結構話してることだしな。
何にしても、キアは父親に避けられている。
それはアレから十年がたった今も、だ。
何なら俺だって避けられているからな。
以前ヨシゾウ店長が悪さをした時、それを解決したネッカ少年にキアの父親が会いに来たそうなんだ。
ちょうど俺がいないタイミングを見計らって。
よっぽど、キアを避けたいんだろうな。
「でも、ショップ対抗戦じゃそうは行かないよ」
「絶対にスピリッツのチームと、マスターズのチームって決勝トーナメントでかちあいますしね……そこでまで避けると、流石に外の目に止まる……ってことですか」
そんなところだ、と頷く。
と、そこで。
ふと――メッセージが飛んできた。
スマホを取り出して、相手を確認する。
「――噂をすれば、かもしれないな」
「……キアちゃんからですか?」
そうだ、と頷く。
もうショップ対抗戦の開催は数日後に迫っている。
それに関する内容だとしたら――まちがいなく、大事な話だ。
俺は、ゆっくりとそのメッセージを確認した。
『やっほー、キアだよ。
こんな遅くにメッセージ送っちゃって、ごめんね。
この間は私の店に来てくれてありがとう、こっちからミツルにぃの店に行けないのはすっごく申し訳ないんだけど、機会があったら絶対遊びに行くね。
さっそく本題なんだけど、ショップ対抗戦、私はミツルにぃとのファイトを最高のファイトにしたいと思ってる。
きっとショップ対抗戦にはいろんな因縁や、大きな事件が絡んでくると思うけど。
それを乗り越えて、決勝で戦えることを楽しみにしてるね。
それと、これは個人的なお願いなんだけど、スピリッツの動向には注意してほしいんだ。
パパの件だけじゃないよ? ミツルにぃも知ってると思うけど、最近スピリッツで悪魔のカードが発生する事件が多発してるの。
そのことで、ショップ対抗戦に大きな波乱が起こるんじゃないかって私は考える。
その時に、ミツルにぃや周りの人が危険な目にあわないか、私は心配なの。
最後になんだけど。
ファイター仙人が言ったことは覚えてる?
最高のカードショップとは何か、ってやつ。
ミツルにぃや仙人は、その答えは人それぞれだって言うけど。
私は、もっと端的で普遍的な……絶対の定義があるんじゃないかって考えてる。
ショップ対抗戦には、全国のカードショップとその店長が集まってくるから。
きっと、その答えを探す助けになると思うんだ。
私はそこで、最高のカードショップがなにかっていう答えを見つけたい。
最強のカードショップを決める戦いの場で、最高のカードショップを見つけるんだ。
もしよかったら、ミツルにぃも一緒に考えてくれないかな?
もちろん、無理にとは言わないけど。
どっちにしろ、ショップ対抗戦が楽しみなことには変わらないしね。
それじゃあ、長くなったけど私の話はこれでおしまい。
きっと一緒にこのメッセージを見てるだろう、エレアねぇにもよろしくね。
二人の子供とか、私早く見てみたいなー? なんて。
じゃあ、またね!
明日原キアより』
「さささ、最後―!」
いや、まぁうん。
エレアが顔を真赤にするのは解るけど、冗談、冗談だから。
とにかく――
「……キアは、きっと本気で最高のカードショップがなにかっていう答えを探しに来るだろうな」
「そんなもの……本当に見つかるんですか?」
「難しいけれど、やること自体には意味がある。それに――俺も、そう言われたら答えを考えたくなった」
最高のカードショップとはなにか。
それはダイアもショップ対抗戦開催の演説で口にしていた、永遠のテーマの一つだ。
答えを出すことは、尋常でなく難しいだろう。
それでも、答えを求め始めたら、俺はその答えを追わずにはいられない。
だって、俺はファイターであり、店長なのだから。
「――ショップ対抗戦が、もうすぐ始まる」
「はい」
「……楽しみだな、エレア」
「……はい!」
かくして、多くの因縁、宿命、そして謎が絡み合い。
ショップ対抗戦の、幕が上がる。
というわけで四章前半戦はここまで、キャラ増やして、今回のテーマも提示して。
色々準備してきたものを、後半戦で回収したい所存。
まだまだ続きますので、お楽しみに。
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