カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
160 開幕! ショップ対抗戦!
そして、その日はやってきた。
ショップ対抗戦、開催当日。
俺の店、カードショップ”デュエリスト”はといえば。
大変なことになっていた。
「だから言ったであろう、備えるべきだ……と」
「まさか本当に、レンさんの言う通りになるとはなあ」
というのも、店に集まる人、人、人。
いつぞやの動画がバズったとき並みに、人が押し寄せていた。
何でこんなことに?
理由は簡単。
「有名ショップで観戦すれば、生ファイターが見れてお得。本当にその通りでしたね」
「だなぁ。街中からあつまってるだろ、これ」
このショップ対抗戦は、イグニッションフィールドのオンライン機能を利用して行う。
だから対戦の映像は、イグニッションフィールドをシアター代わりにすることで観戦できるのだ。
こう、イグニッションフィールドに他店で行われているファイトの試合がホログラフ映像で投影される感じ。
なので、せっかくならばと生ファイターを拝むために、有名ショップのイグニッションフィールドで観戦しようとする人は多い。
「それにしたって、フリー用のテーブル全部どけて、椅子を並べてもなお足りないとは」
「この店の規模を考えれば、これでも少ないくらいだ。天の民は経営に関しては見通しが甘くて困る」
「それは本当にごめん」
現在、店の機能はすべて外に移している。
以前のように、近くの公園を借りて一時的なショップとしているのだ。
そっちには現在メカシィが行ってもらっている。
俺とエレア、それから今回のアドバイザーであるレンさんの三人で店の様子を見ている感じ。
「機関のイグニッションフィールド、貸してくれてありがとうな」
「うむ、確かに公園にもフィールドが必要だという天の民の考えはもっともだ。そういうところは、さすがに店長として気が利いているな」
そして、公園のほうにもフィールドは設置してある。
そっちでも、ショップ対抗戦の様子は観戦可能だ。
そちらでは、イグニスボードやテーブルを使ってファイトしながら、ショップ対抗戦の観戦もできる。
俺はこれを、レンさんからフィールドを一時的にレンタルすることで賄っているわけだな。
もちろん、お代は払っているぞ。
「しかし、まだ県予選だっていうのにこれだけ人が集まるって、本選や決勝トーナメントになったらどうなっちまうんだ?」
「おそらくは、今が一番のピークのはずだ。人間、何事も熱意というのは冷めていくものだからな。来週になれば人も減るだろう」
ショップ対抗戦は、三つの区分に分けられる。
県予選、本選、決勝トーナメント。
それぞれ、土日を使って行われる。
一週目は県予選だ。
二週目に本戦、三週目に決勝となる。
「そも、今は開会式の直前。対戦カードの発表すらこの後行われるのだ。今この瞬間こそがもっとも熱の高まっている瞬間だろう」
「それは確かにです。今、私は燃えていますからね! めらめらと、煌々と!」
「なんか、エレアが物理的に輝いて見えるのは気のせいか?」
気のせいだよな? 最近のエレアを見ていると物理的に輝ける気がしてくるけど、気のせいだよな?
それはさておき、そろそろ開会式だ。
時計を見れば、もうすぐ予定された時刻を迎える。
イグニッションフィールドは、開会式の様子が放映される番組をホログラフで映すように設定されている。
時間になれば、フィールドに開会の宣言をするダイアが出現することだろう。
そして、
「時間だ」
時計をみながら、ぽつりとつぶやく。
『みんな! よく集まってくれたな! ショップ対抗戦の開会式へようこそ!』
ダイアが、フィールドに投影される。
いつも通りというべきか、はたまた普段は不審者ルックだから珍しくというべきか。
笑みを浮かべたダイアが開会の前口上を述べていく。
『あらためて、今回はこのショップ対抗戦を開催できたこと、俺は心から嬉しく思う。皆の思いが一つになって、最強のショップを決めたいと思ってくれたからこそだ!』
観客たちはダイアが現れた瞬間歓声を上げ、それからすぐに押し黙る。
ううん、無駄に統制がとれている……。
『さて、今回俺たちは最強のショップを決めるべくこのショップ対抗戦を開催するわけだが。俺が最初に投げかけた問いは、まだみな覚えているだろうか』
「覚えてますか、レンさん」
「さすがに忘れるわけないだろう!」
皆が各々に顔を見合わせる。
最初の問い。
すなわち、あれだ。
『
あの放送でダイアが。
かつて、仙境で仙人が。
そして先日、メッセージでキアが。
多くの人が言及する永遠の課題。
最高のカードショップとは何か。
『皆が、このショップ対抗戦にその答えを秘めて、臨んでいるのではないかと思う。その答えを求めるために、ショップ対抗戦に臨んでいるのではないかと思う』
これまで何度も、それについて考えてきたが。
先日キアが言及した以上、俺はその答えをこの大会で考える必要がある。
『一人のファイター、一人の客でしかない俺からいえることはただ一つ! その答えを探すため、皆はこのショップ対抗戦に臨んでほしい!』
では、とダイアが言葉を置く。
皆がおお、と盛り上がる。
開会の宣言を、ダイアがこれからするからだ。
『では、改めて。ショップ対抗戦の開幕を、俺はここに宣言する!』
再び歓声が上がり、ダイアの演説は終了した。
それから、えらい人たちのありがたいお話や、ショップ対抗戦に関するルールの再確認が行われる。
大会の開催日程は、今日から三週間。
一週目に県予選、二週目本戦、三週目が決勝トーナメント。
本選までは各ショップに必ず設置されているイグニッションフィールドを利用する。
決勝トーナメントは、指定された舞台に集まって行う。
なので、決勝トーナメントにコマを進めたショップは、店員に余裕がない場合、臨時休業することになる。
まさか土日に二日も店を閉めることがあるとはなぁ。
ルールはライフ引継ぎ制の団体戦。
全体ライフは20000、4000削り切った時点で次のメンバーと交代。
これを大将――店長まで続ける。
チームは各ショップ最大八人。
専門チェーンは企業内で選抜を行い、勝利したチームが本選から合流。
決勝トーナメントに進めるチームは8チーム。
などなど、ルールはまぁいろいろだ。
それらの確認が終わると、この開会式の最大の目玉。
対戦カード発表が行われる。
といっても、最初に表示されるのはあくまで各県の一番最初に行われる試合だけ。
それ以外の対戦カードは、ネット上にアップされるものを確認する必要がある。
「さて、対戦カード発表だな」
「なんか緊張しますねぇ」
「そうだな。……まぁ、なんだ」
そして、俺の中では一つの確信があった。
この対戦カード発表の中に。
「あ、出ました」
「……いつでも、戦える準備をしておいたほうがいいぞ」
――俺たち、デュエリストの名前もあるって。
俺たちが住んでいる県の対戦カードには、こうあった。
デュエリストVS闇夜の翼。
と。
「……闇夜の翼って、あの闇夜の翼ですか!?」
「そりゃあ、そうだろう。この素晴らしいデザインのロゴが、世界に二つとあってたまるか」
驚くエレアに、レンさんがうんうんとうなずく。
いやなんというか、あれだ。
すごい自画自賛だなぁ。
まぁ、しょうがないのかもしれない。
ショップの看板のデザイン考えたの、レンさんらしいし。
というわけで、記念すべき第一戦。
対戦相手は闇夜の翼。
その特徴は――俺たちデュエリストと同じ街にある。
なんとまさかの同郷対決。
そして何より、闇夜の翼はレンさんが出資している店だ。
必然的に、そのチームメンバーは、闇札機関の十二天将が大半を占める。
「最初から、強敵登場ってところだな」
かくして、ショップ対抗戦は開始する。
一つの問いかけと、無数の思いを乗せて。
というわけで四章後半戦スタートです。
多分本作でもっともファイトシーンが多くなる章です。
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