カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
二日目も、俺達は順調に県予選を勝ち進んだ。
予定していた全十戦を終えて、残るはランキング一位と二位の決勝戦。
つまり、俺達とドリームランドの対決だ。
ドリームランド、ミーシアさんが経営する故郷を模したカードショップだ。
ファンシーな夢の世界は、なかなか居心地のいい場所なのだが。
今回は、お互いの店をオンラインで繋いでいるので、相手の店の様子は見れない。
今、俺達の眼の前に映っているのは、相手の店のフィールドの上に立っているファイターだけだ。
具体的には――
『……いよいよだな、ネッカ』
「そうだな、ワクワクするぜ」
向こうの店での参加を選んだクロー少年。
『……今日こそは、トウマにふさわしいのは私だと、証明する』
「俺はダイアの何なんだよ……」
店長のミーシアさん。
他にも、今回ミーシアさんの店から参加しているファイターもいる。
意外と言えば意外だが、そこにいるファイターは全員が見知った顔だった。
『よ、よろしくであります!』
『ひええ、本当に棚札店長さんです……。ピピピ』
「今日は負けないデス。アキラくん、フィレナ。ピガガピー」
ファイト大学の天才発明家少年、初島アキラくんと彼が完成させたファイトロボ、フィレナ。
なんとこの二人……一人と一ロボ? もドリームランドからの参戦だ。
何でも、
『家が近いであります!』
とのこと。
わかりやすい参加理由だな。
そしてもうひとり。
『うふふ、今日はよろしくおねがいしますね? ネッカくん』
「まけないぜー! クルミせんせ!」
皆倉クルミ先生。
ネッカ少年とクロー少年の担任で、なんと彼女もドリームランドのメンバー。
参戦理由は、アキラくんと同じく家が近いからだそうな。
……そう考えると、もしかしたらダイアとクルミ先生って小学校時代は同級生だったりしない?
年、同じくらいだし。
この場合、コハナちゃん――教師になったダイアの幼馴染――とも同級生ってことになる。
その方が、なんとなく繋がりを感じるな。
ところで、忙しいだろう教師が参加して大丈夫? と思うかも知れないが。
この世界において、全国規模のカード大会というのは仕事や勉強よりも優先されるべき事態だ。
どんなブラック企業だって、全国規模の大会への参加を理由に有給を申請したら断れない。
もしも休ませてもらえないなら、それはブラックを通り越してダーク――つまりダークファイターが運営している会社の可能性があるので逃げたほうがいい。
というわけでクルミ先生や刑事さんも、問題なく大会に参加している。
刑事さんは、職務も兼ねてるけどな。
そして、ドリームランドはこの五名が今回の対戦相手――ではない。
もう一人、無視できない人がドリームランドに加わっていた。
その名も――
『さぁ、ミツル! 今日こそ年貢の納め時よ! 私、水面シズカが貴方に公式戦で勝利するの!』
水面シズカさん。
この国の女性プロファイター最強と呼び声高い、トッププロだ。
「シズ姉は卑怯じゃないですか!?」
『それを言ったら、ミツルが店長な時点であなた達の店が一番卑怯じゃない?』
「ぐぅ」
エレアの文句は、即座に論破される。
今回、出禁になっているプロはダイアだけ。
あいつだけは完全にパワーバランスぶっ壊れるからな。
俺の店に来てもまずいのに、ミーシアさんの店に参加してたら、それこそ絶対に負けようのない布陣になっていただろう。
シズカさんとダイアとミーシアさんとクローって、誰が勝てるんだよそんなチーム。
『ま、私に限らず、トウマ以外のプロファイターや、国中の凄腕エージェントが参加してるわけだし。普段からそういう強いファイターを店に呼び寄せた店長の人徳よね、こればっかりは』
というわけで、シズカさんの他にも、強豪プロや強豪エージェントがいろんな店のメンバーとして参加している。
ドリームランドを選んだのは、言うまでもなくミーシアさんと大学時代の同期だからだな。
案外仲良かったんだよ、コハナちゃん含めて。
他にも、ハクさんが参加してる仮面舞踏会も、ちょっとシャレにならないメンバーが集まっている。
まぁ、そっちはそのうち触れることもあるだろう。
とにかく。
「そういうわけだ、ミーシアさん。最高のファイトにしよう」
『絶対に負けない。メラメラ』
俺とミーシアさんは、そう言葉を交わし合う。
さぁ、ドリームランド戦のスタートだ。
□□□□□
「さて、言うまでもないことだけど、今回のポイントはメンバー選出と配置だ」
「店長、可能であればワタシをメンバーに入れて欲しいのデスが。ピガガピー」
「ああ、最初に選出が確定してるメンバーが二人いる、ネッカとメカシィだ」
この二人は、対戦相手との因縁がある。
不思議なことだが、こういう団体戦、示し合わせていないのに因縁のある相手と同じポジションに配置されることがよくある。
これもまた、運命力ってやつだな。
つまり、ネッカは先鋒から副将のどこに配置しても、自然とクローとぶつかる。
メカシィも同様に、メカシィの場合はアキラくんかフィレナのどちらかだが……。
「アキラくんは、現在連闘制限で選出される可能性はない。メカシィとフィレナがぶつかることになるだろうな」
「わかりマシタ。……彼女とファイトするのは初めてデス。必ず勝ちます。ピガガピー」
とにかく、ネッカ少年とメカシィは確定。
そしてポジションも、ネッカ少年に関しては確定だ。
「そしてネッカ、君は先鋒を頼む」
「……応!」
「正直、君とクローに関しては、運命力関係なく先鋒でぶつかるだろうな」
だってネッカもクローも、自分が一番! ってタイプの性格だからな。
希望を聞いたら、絶対に二人とも先鋒を選ぶだろうことが手に取るように解る。
「メカシィは、ポジションに希望はあるか?」
「お任せしマス。やはり問題は
「――シズカさん、だな」
今回の最大の障害は、言うまでもなくシズカさんだ。
何と言っても、彼女に対して俺達の中で因縁のある相手はいない。
俺が自由に配置できるなら、自ずと俺と当たるだろうが、店長は大将固定だ。
そしてそうなると、シズカさんは俺達に対して強すぎる。
誰と当たっても、実力差がありすぎるのだ。
「最悪、シズカさんが残りの俺達のライフを全部削って終わり……なんてこともある」
「流石にそれはない、と思いたいですが……」
エレアはそう言いながらも、自信なさげだ。
俺達のチームメンバーは全員強い、レンさんだって上位層には負けがちなだけで、そこらのエージェントよりはずっと強いのだ。
そのうえで、トッププロ”水面シズカ”は別格である。
「水面シズカと戦えるってなったら、そりゃ嬉しいけど……私だったら胸を借りるつもりで……ってなっちゃいそうね」
「わたくしもですわー! アリス姉さまのご友人でもありますもの!」
と、話をしているのがヤトちゃんとアロマさん。
どちらもうちのチームのエース格ではあるが、やはりシズカさん相手では萎縮してしまうだろう。
「ふん、水の民がどれだけ強かろうと、我は一歩も引かん!」
「レンさんのその言葉が頼もしいよ」
この中で、シズカさんに萎縮せず戦えるのは、レンさんだけだ。
ネッカ少年だって戦えるし、何なら勝ち目もあるだろうけど、クローがいるからな。
というわけで、シズカさんの相手はレンさんが濃厚だ。
レンさんの場合、単純に表舞台のファイトが弱いというわけではなく、何かしら一手足りないファイトになってしまうというのが実情なのだ。
なので、シズカさん相手でも決して一方的にやられることはないのである。
「一つ幸いな点があるとしたら、シズカさんは目立ちたがり屋だ。中途半端なポジションは嫌うはずなんだよ」
「つまり、どういうことですか?」
「次鋒は、まずない」
加えてシズカさんは、いくらこっちのライフを一気に消し飛ばせる実力があると言っても、デッキ自体の火力はそこまでではない。
なので、配置するなら中堅か副将。
可能なら、ライフが少なくなる副将に配置したいだろうが――
「そこにはメカシィを配置する。いいか?」
「問題ないデス。ピガガピー」
メカシィの言葉に、感謝の言葉で返しつつ。
俺は、断言した。
「とすれば自然と――シズカさんは、中堅に座る」
□□□□□
「――と、ミツルが考えることは解っている」
「そうね。ミツルは私のことを昔の私のままだと思っているから」
ドリームランド。
こちらでも、選出と配置の作戦会議は行われていた。
そして今、ミーシアがミツルのシズカを中堅に据えると考えることを、看破していた。
「実際、ここまでは先鋒か中堅に配置してきた。でも今回は……シズカ、お願いしてもいい?」
「ええ、解っているわ。
仮にも、ミーシアもシズカも、ミツルとは長い付き合いだ。
向こうがシズカの考えを読み取れるように、ミーシア達もミツルの考えを読み取れる。
だから、逆手に取るのだ。
「……よし、決まった。さぁ皆。ミツルに……”デュエリスト”に……勝つよ」
「おー!」
ミーシアの音頭に、皆の言葉が唱和して。
そして、しばらく。
フィールドのホログラフモニターに、それぞれの選出メンバーが表示された。
ドリームランド。
先鋒、クロー。
次鋒、シズカ。
中堅、クルミ。
副将、フィレナ。
大将、ミーシア。
そして、
デュエリスト。
先鋒、ネッカ。
次鋒、
中堅、レン。
副将、メカシィ。
大将、ミツル。
そのメンバー表を見た時。
「あ」
「あ」
やべぇ、その可能性を完全に忘れていた、と。
ミーシアとシズカは思ってしまうのだった。
なぜか。
二人の脳裏に、ミツルが作戦会議でエレア辺りと話していそうな内容がよぎる。
『――と、シズカさん達が考えそうなことは解っている。だが、こっちにはもう一枚手札がある』
『もう一枚?』
『刑事さんだよ。刑事さんはシズカさんの後輩だ。因縁は十分だし、シズカさん相手にも物怖じしない。だから俺達は――
そして何より、刑事さんは今回敢えて最初の挨拶に顔を出していない。
二人の意識から刑事さんの存在を外すためだ。
「――や、やってくれたわねぇ!」
「策士! 泥棒猫!」
シズカとミーシアの怨嗟が、ドリームランド店内に響くのだった。