カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
この世界には運命力というものが当然のように存在していて、因縁という形で人々をつなげている。
因縁とは、物語のように収束していくものだ。
だからこの世界には、物語のような流れというものがある。
少年と少女が出会い、世界を救うように。
しかし、物語とは完結するものだ。
世界が救われ、少年と少女は幸せになってハッピーエンド。
視聴者はそこで満足感とともに物語にピリオドを打つ。
けれど、少年と少女の物語はそれ以降も続いていくのである。
この世界は、そういう世界だ。
具体的な話をしよう、アロマさんはデビラスと呼ばれる存在に対抗するためマジカルファイターになった。
アウローラさんやアリスさん、デビラスキングとの対決の末、勝利でもってその物語を終えた。
それでも、アロマさんの人生は続いていく。
アロマさんの夢はプロファイターであり、プロになるために今後も努力を続けていかなくてはならないのだ。
この世界は、そういう世界だ。
ここに、二人の少年がいる。
熱血少年のネッカと、クール少年のクロー。
二人は終生のライバルで、常に競い合っている。
けれども二人の運命は、もうすでにひとつの決着を見ているのだ。
一つ、話をしよう。
これはネッカ少年とクロー少年の、因縁に決着がついた後。
物語が、終わった後の物語だ。
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ネッカとクローの出会いは、今から一年以上前に遡る。
二人は当時、地元では有名な小学生ファイターだった。
ネッカ少年は天火市で、俺の店を中心とし。
クロー少年はダイアの故郷で、ドリームランドをホームとして。
そんな二人が出会うのは、きっと必然だったのだろう。
ただ、このときクロー少年はなんというか、色々と問題のある子供だった。
ネッカのことを明確にバカにしていたし、そもそもそうなる原因が色々とあったのだ。
家庭の問題とか、悪の組織が裏でクローを操っていたりとか。
まぁ、後者に関しては本人は自覚していなかったけれど。
物語的に言えば、明確にクローは悪役としてネッカの前に立ちふさがった。
幾度かの衝突の後、二人は小学生だけが参加できる県内の大規模大会。
「フューチャー・イグニッション・フェス」で雌雄を決することとなったわけだ。
で、最終的にクローの抱えている問題をネッカが解決。
裏でクローを操っていた悪の組織を壊滅させて、クローと和解したのだ。
結果、クローが歪む原因になっていた父親にして悪の組織の首領から離れる意味合いもあって、クローは母親とともに天火市に引っ越してきた。
それ以来、ネッカとクローは同級生として、ライバルとして、切磋琢磨しながら今に至っている。
それ自体は、最終的にめでたしめでたしで終わった事件だ。
ただ、一つ問題があった。
その事件以来、ネッカとクローが本気で激突する状況が発生しなかったのである。
二人は、その後も色々な事件――ワルゾウ市長の事件とか、ヨシゾウ店長の事件とか――に巻き込まれた。
けれども、その中で二人は常に仲間同士だったのだ。
クローが悪堕ちすることも、ネッカが悪堕ちすることもなく。
そうなると、自然。
二人はライバルという関係でありながら、親友としての立場の方が大きくなっていく。
そうなると、クロー少年はこう感じてしまうのだ。
自分は、温くなっている。
誰にも負けない熱意――強くならねばならないという強迫観念――によって前に進み続けてきたクローにとって、何かに追われる感覚のない生活というのはそう感じるには十分なものだった。
ネッカ少年や俺に言わせれば、それはトラウマから抜け出せていないだけなのだが。
ただ、こういうメンタルの問題は、この世界において最も繊細に扱われなければならない問題だ。
ファイトに負けても死なないからこそ、事件が終わった後には精神へのダメージだけが残る。
そしてそれを時間と、周囲の環境、本人の意識が解決していくのがこの世界においては大事なのだ。
加えて言えば、ネッカ少年の性格も、クロー少年を焦らせる原因だろう。
ネッカは熱血少年だ。
しかしその根底には、冷静に状況を分析する能力がある。
他人の問題やトラウマを、ファイトと言葉で解決できるのはこの冷静さあってのものである。
対するクローはクール少年だ。
しかしその根底には、誰にも負けない情熱を秘めている。
強くなることへの執着は、その情熱によって支えられている。
これがどういうことかというと、ネッカ少年はその冷静な分析力から自分の課題を分析し、解決する能力がある。
だからいつだって熱血に、前に進み続けることができるわけで。
たいしてクロー少年は、心の何処かに常に迷いを抱えている。
それが悪いことかと言えばそんなことは決してなく、むしろその迷いを解決することで爆発的に前に進むことができるのだ。
どちらがより優れているということはない。
ただ、迷いを抱えるクローにとって、常に前に進むことのできるネッカの在り方は焦りを生む。
いつか自分は、ネッカに追いつけなくなってしまうのではないか。
故に今回、クローはドリームランドのメンバーとしてショップ対抗戦に出場したわけだ。
話を戻すと、クローとネッカの因縁は、「フューチャー・イグニッション・フェス」で決着がついた。
それ以来、二人は本気で激突する機会がなかったのである。
そのことにクローは焦りを覚えていて、今回のショップ対抗戦でこれ幸いとネッカに勝負を挑んだ。
一応、本気で激突する方法がないではない。
悪魔のカードに身を委ねればいいのだ。
迷いを悪魔のカードに捧げることでダークファイターになれば、ファイトの中でその迷いを解決することができる。
ただこの方法をわざとやるというのは、あまりにも情けない話であるし。
何より、定期的に悪堕ちしてネッカに迷惑をかける某人物の存在もあって、クローはそれだけは避けたいと考えていたのだ。
というか、クローの悩みはクローがかつて抱えていた問題と比べたら、悪堕ちしてしまうほど深刻ではなかった。
物語とは、終わりを迎えればその先は存在しない。
けれども、この世界は運命が因縁に決着を付けた後も続いていく。
それが人生というものだ。
『――ネッカ、俺はお前に負けたくない』
「……俺もだ、クロー」
今ここに、ホログラフで投影されたクロー少年が、ネッカ少年と向かい合っている。
『……でも俺は、ネッカを超える方法がわからない』
「……」
『ネッカが常に、俺の前にいるんじゃないかと思えてならないんだ』
県予選決勝。
その緒戦となる先鋒戦は、しかし。
”デュエリスト”と”ドリームランド”において、最も因縁の深い対決となった。
静かな店内、俺達は二人のライバルの空気に呑まれていた。
『だから今日、俺はここでネッカに勝つ。ここに来るまで俺は俺なりの方法で、ネッカに勝つために努力してきた』
「知ってるぜ」
『行くぞ、ネッカ……!』
そして、クローが構える。
対するネッカも、顔を上げた。
鋭い視線が、クローに向けられる。
「どうしてだろうな。クローを前にすると……不思議と、いつもみたいなドカンと爆発する感じじゃなくて、体中が我慢できないくらい熱くなるんだ」
『それくらい、俺に負けたくないってことだろ?』
「へへ、その通り! 俺はまけないぞ、クロー! 俺だって、クローに勝つためにここまで頑張ってきたんだ」
そして、ネッカはいつものように燃えるような笑みを浮かべる。
クローもまた、静かに笑みを浮かべた。
その笑みの下に、獰猛としか言いようのない炎を燃やして。
「――イグニッション!」
「イグニッション――ッ!」
かくして、二人の少年の死闘が始まる!
店長がファイトしない複数話かけてやる初めてのファイトですね。
総合評価が45000を超えました。
ここまで応援ありがとうございます。
まだまだ頑張ります。
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