カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
ネッカの先攻で始まったファイトは、エースの登場から始まった。
<バトルエンド・ドラゴン>、ネッカが昔から愛用する切り札であり、切り込み隊長でもある。
「行くぞ、<バトルエンド・ドラゴン>のエフェクト……デッキじゃんけんだ!」
『……ああ!』
二人が同時にデッキからカードを一枚めくる。
お互いのレベルを比べて、高い方が勝利する「バトルエンド」デッキの共通効果。
『レベルは……お互い7、引き分けか』
「なら、<バトルエンド・ドラゴン>のエフェクト! 俺のモンスターのレベルが相手のモンスターのレベル
デッキじゃんけんは特性上引き分け――あいこが発生する。
その場合は、エフェクトを使用したファイターが勝利する。
これをずるいと見るか、ネッカ少年らしいと見るかは人によるな。
俺の場合は、実に負けず嫌いなネッカ少年らしいと思うが。
『だったら俺も、<蒼穹の死神>のエフェクト! このカードがデッキからセメタリーに送られた場合、セメタリーからサモンする!』
対するクロー少年も、自身の最も基本となるエースをサモンした。
「……二人のエースが並びましたね」
「まさに、立ち上がりって感じだな」
エレアとそう言葉をかわす。
ここから、戦いはどんどん激しくなっていくだろう。
「……懐かしいな。昔はデッキじゃんけんのせいで<死神>をサモンされて、俺が負けたりしたっけ」
『今だって、サモンさせてるじゃないか』
「けど、あの頃とは違うんだ、俺は。さっきデッキじゃんけんでセメタリーに送られた<ハイパーバトルエンド・グラビティオーガ>のエフェクト!」
かつて、ネッカ少年にとって、セメタリーに送られることで効果を発動する「蒼穹」デッキは天敵だった。
しかしそれを乗り越え、今のネッカ少年はある。
今だって、相手か自分のモンスターがセメタリーでエフェクトを発動したときに反応する「ハイパーエンド」モンスターのエフェクトで<蒼穹の死神>に対抗している。
『まったく、油断ならないな。けど、それはこっちも同じだ。解ってることだけどな!』
「ああ、いつでも来い!」
『手札から、<蒼穹と再生の番犬>のエフェクト発動!』
ネッカ少年の「ハイパーバトルエンド」と同じように、クロー少年が成長によって手に入れた新たなモンスター群、それが「蒼穹と再生」。
死を司る<蒼穹>デッキでありながら、再生の名を冠するそれは迷いを抱えながら進むクロー少年にふさわしいものだ。
かくして、戦いは苛烈さを増していく。
そんな中、ふと店の入口が開いた。
「――やってるみたいだな」
そこに立っていたのは――
「……ダイア? どうしてここに?」
自力で運営から脱出を?
「おう、店長……いや、対抗戦の間はミツルって呼んだほうがいいか。ミツル、元気そうだな。私は少し時間が出来たんで、店の様子を見に来たところだ」
「思い返すと、ダイアが店に来るのも久しぶりだな」
本当に自力で脱出してたわ。
とにかく。
よくよく考えると、ここしばらくダイアが店にやってきていなかった。
最後にあったのはドリームランドで行きあったときだ。
どうも、対抗戦の準備でめちゃくちゃ忙しかったらしい。
「しかし、うちとドリームランドが戦ってるときにこっちに来ると、ミーシアさんがむくれそうだな」
「向こうにも顔は出すさ。多分、大将戦のタイミングで着くんじゃないか?」
「……そういうとこだぞ」
下げてから上げやがって、ダイアを好きな女性陣がどれだけそれに苦しんだことか。
本人が無自覚なのが、また色々と厄介さを引き上げている。
まぁ、話を戻すと。
「……わざわざやってきたってことは、目的はネッカとクローだろ? 何のためだ?」
本人の言う通り、先鋒戦を見届けてからドリームランドに向かうと、大将戦が始まるかどうかってタイミングで到着するはずだ。
そうなると、俺の店で見れる試合は先鋒戦か大将戦だけになり。
ドリームランドもまた、同様になる。
そのうえで俺の店で先鋒戦を見て、大将戦をドリームランドで見るということは。
俺の店で先鋒戦を見たい理由と、ドリームランドで大将戦を見たい理由があったはずだ。
後者はなんとなく解るけど、前者は聞かなければわからない。
「何、見ていれば解る」
そう言って、ダイアは俺の隣に立ってネッカとクローのファイトへ視線で促す。
反対側にいたエレアが、俺にひっついて威嚇を始めた。
どうどう。
そしてファイトはと言えば――
「行くぞ! 俺は<バトルエンド・ラグナロク・ドラゴン>をサモン! コレが俺の……最強の切り札だ!」
『ふっ……俺の<蒼穹と真紅の死神>に勝てるか?』
「それは……これから解ることだ! いくぞ! デッキじゃんけんだ!」
いよいよ、最終局面を迎えようとしていた。
お互いの最終エースがフィールドに並び立つ。
どちらも、長い戦いの末に二人が手に入れた最強のモンスターだ。
「……壮観だと思わないか?」
「そりゃあ、思うが」
満足気に、ダイアは頷く。
そりゃあ俺が二人の成長を一年以上見守ってきたように、ダイアだって二人とは同じ客の目線で関わってきたわけだが。
だからこそ、このファイトにはダイアも思うところがあるのだろう。
「私が初めてあったとき……クローは、色々と難しい時期だったんだ」
「クローが? ……ああ、そうか」
ふと、話し始めたダイアの言葉に、俺はふと思い至る。
そういえばダイアはネッカとクローが、今の関係に至る前のクローと関わりがあるのか。
俺は、荒んでいた頃のクローとは殆ど面識がないから、いまいちその辺りの機微はわからない。
「私としても、何とかできればとは思ってたんだが……思いっきり敵視されてしまってな。とりつくしまがなかった」
「そりゃあ……ダイアはこの国の誰もが知る最強のチャンピオンだからな。最強を目指してた当時のクローにとっては、一番の敵だっただろうさ」
当時のクローは、父親からの圧力で最強にならなくちゃいけないと思ってたからな。
ダイアにとっては、どうにかしたいのに自分の立場のせいでどうにか出来ないのは歯がゆかっただろう。
「それをネッカが解決して……二人の関係は、そこから少し停滞してきた」
「そうだな。んで、クローはそれを変えようと思って、今回の対抗戦でドリームランドに所属することを選んだ」
「俺としても、そんな二人の行く末は気になるんだ」
なにせ――ダイアはそう続けようとして。
しかしそこで、ファイトが動いた。
ネッカとクローがデッキじゃんけんをして、その結果が出たのだ。
「レベルは……10! また、引き分けだ!」
さっきから、ネッカとクローは引き分けしかしていない。
恐ろしいことに、一度もどちらかが勝利したことはないのだ。
無論、それでもネッカ少年のデッキは十分に回るが。
だからこそ、お互いは完全に拮抗したまま全力でぶつかっていると言えるだろう。
そして、その拮抗を完全に崩すときが来たのだ。
セメタリーに送られたお互いのモンスターが、エフェクトを発動する。
「……ようやくだ、ようやくこの時が来た。ネッカ! 俺はお前とは違う! それをここで見せてやる!」
「そんなこと……言われなくても知ってるよ。俺だって、クローとは違う道を選んだんだから!」
まず、クロー少年が宣言した。
「俺は、たったいまセメタリーに送られたモンスターのエフェクトを発動!」
「来るぞ――」
ニィ、とダイアが笑みを浮かべて。
そいつは、姿を見せる。
「このモンスターを、フィールドにサモンする! 現れろ! <蒼穹と楽園の破片竜>!」
その姿は、見るものが見れば、すぐに分かる。
ダイアのエースモンスター――<グランシオン・デウス・ドラグバニシメント>を模したモンスター!
「なっ、ダイアさん! 貴方まさかここにわざわざ訪れたのは、これを店長に見せつけるためですか!?」
「そうだ!」
エレアの驚愕に、なんて清々しい笑顔で返すんだ!
人生エンジョイ勢め!
とはいえ――。
「しかしまぁ、なんだな」
「うん?」
「
「――何?」
笑みを一転、驚いたようにこっちを見るダイア。
どうやら、察したようだな。
「へへっ、俺はモンスターがセメタリーからサモンされた時、セメタリーからモンスターエフェクトを発動するぜ!」
そして、ネッカ少年もまた。
「自分自身をセメタリーからサモンだ! 現れろ! <バトルエンド・エンシェント・アンゲロス>!」
水晶の天使を、降臨させる!
かくしてココに、俺とダイアのエースを思わせる、ネッカとクローのモンスターが現れた!
ネッカ「聞いたかクロー! 俺達の活躍が本になるんだってよ!」
クロー「情報が遅いぞ、俺はもうとっくに予約したからな。本では色んなエピソードが収録されるそうだ」
ネッカ「ヤトの姉ちゃんが初めて店長に会った時の話とか、ダイアと店長のファイトとかな! それと、何でも書き下ろしの新しいエピソードもあるらしいぞ?」
クロー「は? 俺は聞いてないぞそんなの!」
ネッカ「へへ、今回は俺の勝ちだな!」
クロー「チッ……ほら、一緒に言うぞ」
ネッカ・クロー「『カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている』予約受付中!」
なんかこう……アニメのDVDのCMみたいな……