カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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166 激突! ネッカとクローの物語 ③

 きっとダイアは、悩みながらも前に進み続ける情熱を秘めたクローに、かつての自分を重ねていたのだろう。

 俺がネッカの、どんな状況でも冷静に前へと進み続ける精神に、かつての自分を重ねていたように。

 

 なんというか、昔の自分を見ているようだと、俺は思った。

 初めてネッカが店にやってきた時、彼はカードが大好きな熱血少年だった。

 けれども周囲のことをよく観察していて、見た目以上にいろいろなことを考えている少年だった。

 ネッカは、ファイトで他人の悩みを解決することが多い。

 それはネッカの観察力の賜物で、彼がファイトを通して相手が必要としている言葉とファイトを選択できるからだろう。

 

 対するクローは、一見クールではあるけれど、迷いが多くそれを振り払うために色々なことに挑戦している。

 以前行った修行も、そこから転じて、忍者や侍に興味があるのも。

 全ては彼が、強くなるために行動した結果だ。

 それは、ダイアにとってとても共感できることだろう。

 性格こそ正反対だけど、行動力で物事を解決しようとするのがダイアの十八番だったのだから。

 

 俺はネッカ少年の観察力に。

 ダイアはクロー少年の行動力に。

 かつての自分を重ねた。

 

 その集大成が、たった今サモンされた俺とダイアの他人の空似モンスター。

 楽園の守護者が、死を司る蒼穹の色に染まった破片の竜、<蒼穹と楽園の破片竜>。

 水晶の天使が、戦いに勝利するための力を身に着けた存在、<バトルエンド・エンシェント・アンゲロス>。

 

 どちらも、<破片竜>は『グランシオン』モンスターとしての名称を持ち、<アンゲロス>もそれは同様だ。

 

 ――それは、今から少し前。

 クローがドリームランドでの参加を決めた頃。

 ネッカから相談を持ちかけられたのだ。

 

『――店長、俺、クローに負けたくないんだ』

『そのために、力を貸して欲しいってことか?』

『……ああ』

 

 クローがネッカに勝てるか悩んでいたのと同様に、ネッカもまたクローに勝てるかどうか不安だったのだ。

 

『クローってさ、たまにぴょーんって凄い勢いでジャンプして先に行っちまうんだよ』

 

 一歩一歩を堅実に進んでいくネッカ少年にとって、時折思いも寄らない方法で前に進むクローはいつ置いていかれるんじゃないかと、気が気でない存在だった。

 お互い様だったのだ。

 ネッカもクローも。

 

『でもそれは、当然のことだと思うよ。俺は』

 

 そんなネッカ少年に、俺は声をかけた。

 

『人は、前に進もうと思う限り、前に進んでいくものだ。だけど、その方法は人によって違う。自分とは違う方法で前に進む人を見たら、羨ましいと思うのも当然だ』

『じゃあ……俺は、どんな方法で前に進んでいけばいいんだろうな、店長』

『簡単さ。目標を持てばいい』

 

 目標? と俺の言葉にネッカ少年は首を傾げる。

 

『そうだ、歩くためには道標になる目標がいる。その目標は何だっていい、クローだっていいし、俺だって。それ以外の誰かでも』

『……一番しっくりくる目標を選べばいい、ってことか』

『ああ。それに、目標なんて、いつ変えたっていいんだ。自分の胸に秘めてるだけなら、誰も文句は言わないんだから』

 

 そう言って、ぽんぽんとネッカの頭をなでる。

 それをネッカは、少し照れくさそうにしながらも、受け入れていた。

 

『……解った。俺、目標を決めた。その目標に向かって努力して――前に進む。だからさ、店長』

『なんだ?』

『きっと、一番大事なファイトでそれを、俺は店長に見せるから』

 

 ニッと笑顔で、いつものようにネッカは言うのだ。

 

『――期待しててくれよな!』

 

 

 □□□□□

 

 

 そして、今。

 俺の前に、そいつらはいる。

 きっと、クローもダイアから言葉を受け取って、ダイアを目標に前へ進んだのだろう。

 ネッカもまた、俺を目標としたように。

 

 ファイトは最終局面。

 両名の最終エースと、俺とダイアを模したエース。

 それらが激しくぶつかり合い、ついにはネッカとクローの最終エースが破壊された。

 あとに残ったのは――

 

「行くぞクロー! これが最後のデッキじゃんけんだ!」

『ふん……今度こそ、俺が勝つ!』

 

 <エンシェント・アンゲロス>のデッキじゃんけんエフェクトのみ。

 泣いても笑っても、勝敗はこのデッキじゃんけんで決まる。

 そんな状況で。

 

「……ここまで、二回やって二回とも引き分けでした。最後に勝つのは、どっちでしょう」

「引き分けなら、ネッカの勝ちだ。けど、クローがこの土壇場でそれを許すかな」

 

 お互いが、デッキのカードをめくる。

 これがカウンターエフェクトなら、次のカードをめくるわけだが。

 この状況で、極まった二人が一枚目にモンスターをめくれないわけがない。

 一発で、互いにモンスターをめくって相手に見せる。

 

 ――勝ったのは。

 

 

『……俺の勝ちだ、ネッカ』

 

 

 クローだ。

 クローの方が、一つだけレベルが高い。

 こうなれば、ネッカ少年のデッキじゃんけんはエフェクトを発揮しない。

 

 その状況で。

 ネッカ少年は、一つ大きく息を吐いた。

 そして、笑みを浮かべてクローに言う。

 

「――やっぱ、クローはすげぇな」

『……ネッカ』

 

 純粋な賛辞の言葉。

 それは、端から見ればクローの勝ちを認めたような発言だ。

 けれどネッカは更に続ける。

 

「このファイトの中で、思ったんだ。確かに俺達はライバルで、きっとどっかで決着を付けなきゃいけないんだと思う」

『それが……今なんだろ?』

「そうかもな。でも、仮にもしここで決着がついたとして――俺達の関係って、なにか変わるか?」

 

 その言葉に、クローは少しだけ考えて。

 

『変わらない……だろうな。これでネッカが負けても、次こそは勝つっていい出すのが目に見えてる』

「俺達は……そうやって、ずっとずっと、これからもライバルで居続ける」

『言いたいことは、さっさと言え。そうすれば、後はもうターンエンドを宣言するだけなんだから』

 

 そう急かすなって、とネッカは苦笑する。

 もう目の前に勝利が視えているからか、少しクローは焦っていた。

 

「そう、まるで――店長と、ダイアみたいに」

『……そうだな! でも今は、俺が一歩だけ前にいる! さっきのじゃんけんで、それははっきりしただろ!?』

「ああ、そうだ。クローはすげぇよ、今間違いなく、クローは俺の前にいる」

 

 ネッカの言葉に、俺とダイアが視線を見合わせる。

 ――そうだ、確かに因縁に決着はつく。

 でも、二人の関係はまだまだ続いていく。

 その先に何があるのか。

 最もわかりやすい例が、ここにあるではないか。

 

 物語が、終わった後の物語。

 後にあるのは、それからも続いていく二人の道。

 これからもきっと、ネッカとクローは切磋琢磨していくことだろう。

 ()()()()()()()()()

 

 そして、

 

 

「でも俺は――今、この瞬間の勝利が欲しい!」

 

 

 ネッカは、まだ諦めていない!

 

「今、セメタリーに送られた<ハイパーバトルエンド・エレメントウィッチ>のエフェクトを発動!」

『な、そのカードは……お前、俺の最後の切り札に気づいてたな!』

「気付かないわけないだろ、クローのやることなんて、ずっと前からお見通しなんだからな!」

 

 そしてクローも、この状況に必勝を期していた。

 仮にデッキじゃんけんで敗北しても、切り返す手段を残していたのだ。

 それを回避するには、ネッカは敢えてデッキじゃんけんに敗北し、セメタリーに送ったモンスターのエフェクトを使用する必要があった。

 たとえ、一歩前にクローがいることを認めたとしても。

 

「勝つのは俺だ、クロー!」

『くっ……ネッカァ!』

 

 そして、状況が決定的となり。

 <アンゲロス>が<楽園の破片竜>に狙いを定める。

 

『……ネッカ!』

「ああ、クロー!」

『俺はいつだって……今も、これからも、ずっと! お前の……ライバルであり続ける!』

 

 だから、と叫び。

 

『だから、次は負けない……! 迎え撃て! <蒼穹と楽園の破片竜>!』

「解ってるさ! トドメだ! <バトルエンド・エンシェント・アンゲロス>!」

 

 

 かくして二体のモンスターがぶつかり合い、勝ったのは――ネッカだ。

 

 

 デュエリストとドリームランドの最終戦。

 先鋒戦を勝利したのは、ネッカ。

 ライバル同士の因縁に、一旦の終止符を打ち。

 けれども、戦いはまだ続く。

 

「……次に待ち受けるのは、シズカだぞ」

「ああでも、……刑事さんなら、問題ないさ」

 

 ダイアの、どこか悔しそうな言葉に。

 俺は笑顔で返すのだった。

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