カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
シズカさんと刑事さん。
同じ大学の先輩後輩ということもあり、因縁というのは決して小さくない。
というか、結構多い。
何せ大学時代から、割と事あるごとに衝突してきた二人なのだから。
「ふふふ、まさか大舞台でアンタと激突する機会があるなんてねぇ」
「正直結構気が重いッスけどね、先輩」
おそらく、次鋒に置けばシズカさんを最も有効に運用できるとドリームランドチームは考えていただろうが。
そんなこと、おくびにも出していない辺りはプロって感じだな。
逆に刑事さんは、割とガチでシズカさんと当たりたくなかったのか、今でもげんなりしている。
ただ、自分とレンさん以外にシズカさんの相手ができるファイターはいないので、仕方がないということも理解していた。
一つ大きく息を吐くと、刑事さんは構える。
「……っし、これ以上は言ってても仕方ねぇ。悪いが、今日は勝たせて貰うぜ、先輩」
「あらぁ? 一度もこういう場で私に勝てたことないじゃない、アンタ。アンタの役割はダメージ・コントロールでしょ? せいぜい踏ん張りなさいよ!」
「そもそも戦う機会が少ないからだろ……! 十回に三回から四回くらいは、俺だって先輩に勝てるんスよ!」
かくして、対ドリームランド。
次鋒戦が始まる。
「イグニッション!」
「イグニッションだ!」
□□□□□
大学時代から、二人はそこそこ関わりが深い。
というのも、姉御肌なシズカさんと、体育会系の刑事さんは割と趣向が似通うからだ。
もっというと超絶火札からの進学組はオタク志向が強いのに対し、シズカさんと刑事さんが陽キャの最前線みたいなタイプだったのである。
俺もダイアもそれなりにオタクだし、それに付き合うことの多いコハナちゃんとミーシアさんもインドア派だからな。
結果、陽キャ組のシズカさんと刑事さんは、同じく陽キャの知り合いを伴って色々と遊び回ることも多かったらしい。
ちなみにダイアは、オタクでもあり陽キャでもあるので、結構その付き合いに加わっていたぞ。
そもそもあいつはコミュおばけだしな。
――で、
「だぁから! どーして私ばっかりモテないのよ……! アンタたちは、みんなみんなモテてたってのに!」
「い、いやぁそれいったら先輩。俺だって全然モテてなかったッスよ……」
なぜかこういう話になっていた。
ファイト中に、大学生活の思い出話とかして盛り上がっていたからだろう。
こういう過去のことを話しながらファイトすると、事情を知らない側も二人に深い因縁があるのだと思ってエモさを感じてくれるからな。
が、それがよくなかった。
そもそも二人にとって大学時代の話はまだ五年も経っていない比較的最近の過去だ。
まぁ、二人の付き合いがそれくらいなのだから仕方ないが。
そしてその中で、シズカさんが思わぬことを口にした。
「アンタが! 一番! モテてたのよ!?」
「はぁ!?」
それは、俺にしても刑事さんにしても意外だった。
モテるんだ、刑事さん……。
大学時代に浮いた話は聞かなかったのに。
「そりゃそうでしょ。ダイアは競合が多すぎだし、ミツルは全然そういう話に興味なさそうだったし。私達の周りで、一番手頃だったのがアンタだったんだから」
「妥協じゃねーッスか」
「後、その見た目で可愛いもの好きってところに、ギャップ感じてた子も結構いた」
「そっちは大学時代に聞きたかったッスね……」
シズカさんほどがっついているわけじゃないが、刑事さんだって別に色恋とかに興味がないわけじゃない。
もし仮に、この情報を知ってたらもう少し積極的に周囲の女性にアプローチをかけていただろう。
「だから教えなかったに決まってるでしょ!」
「この人は……!」
シズカさんの、あまりにもあんまり過ぎる言葉に、ギャラリーが爆笑する。
このあたり、シズカさんのキャラとかが周囲に認知されているからこそだな。
それはそれとして、もはやギャグの域に達している行き遅れネタに関して、シズカさんは少し危機感をもった方が良いと思うぞ。
「つうか、それ言ったら先輩だって大学時代はそこそこモテたんスからね!」
「はぁ!? だったらどうして私に言い寄ってこないのよ、ありえないわ!」
「トウマ先輩の周りで、フリーなのがシズカ先輩だけだったからッスよ!」
大学時代の友人関係で、ダイアと関係のあった女性は三種類に分けられる。
ダイアのことが好きか、すでに別の人と付き合っているか、シズカさんか、だ。
だから唯一恋人のいないシズカさんが、多少は人気を集めるのも道理である。
とんでもない美人なのは、間違いないしな。
「あ、ん、た、ねぇ! それを最初からいいなさいよ!!」
「言ったら先輩がっつくじゃねぇッスか! そんなことしたら、多少気になってる連中も引きますよ!」
ギャラリーが笑っていられるのも、自分には関係のないことだと思っているから。
仮にココから、シズカさんがアンタたちも恋人にしてやりましょうか、とかいって襲いかかってきたら阿鼻叫喚が発生するに違いない。
いや、俺は何を言っているんだ?
「それに先輩を気になってるのに、声をかけない時点でなんとなく察しはつくでしょ? 先輩の趣味じゃねぇんスよ、そいつら!」
「……まぁ、私の趣味は私より強くてガツガツ来るタイプだけど」
よかったな、世界の男性陣。
世界でトップクラスに強い美女ファイターの好みが、全世界に公開されてるぞ。
この条件満たせるやつなんて世界に十人もいるかどうかなのが問題なんだが。
正確にはもっといるけど、既婚だったりガツガツ行くタイプじゃなかったりするのが多いって話だ。
「チッ、どっちにしても可愛いもの好きにギャップ感じてる子がいるの、教えるんじゃなかったわね」
「まぁ、俺も年ですから、そろそろいい出会いの一つもほしいなとは思いますがね」
「ミツルがくっついたし、
ちらりと視線をこっちに向けてくるシズカさん。
いや、シズカさんはドリームランドにいるから、こっちの光景は視えてないはずなんだが。
ファイターとしての直感なんだろうなぁ。
とにかく。
ダイアが年貢の納め時ってのも、同感だ。
なんか、ミーシアさんとコハナちゃんが結託して、色々やってるらしいしな。
まぁ、同情はすまい。
「ふむ」
「……どうしたんだ、エレア?」
と、そこでエレアが何やら考えている様子。
考えたまま、フィールドの方に寄っていって――ぽつり。
「……お二人、案外相性いいのでは?」
その瞬間。
二人がとんでもない顔で、エレアの方を見た。
もうなんていうか、めちゃくちゃびっくりした感じの顔で。
ちなみにフィールドが音を拾っているので、エレアの声はシズカさんにも聞こえるぞ。
「お二人共アウトドア派で、趣味もあいますし。刑事さんって、たまにはシズ姉にも勝てる強いファイターなんですよね?」
「…………」
『…………』
「あ、失礼しました。続きをどうぞ」
そう言ってエレアが一歩下がっても、二人は沈黙を貫く。
そしてギギギギ、みたいな効果音を出してお互いの方を向いた。
さらに、少し沈黙。
やがて同時に口を開くと、
「こいつだけは絶対にない!」
二人の声が、完全に一致した。
エレアは満足げである。
まぁうん、相性良さそうだね。
――なお、ファイトはシズカさんが特に波乱もなく勝利した。
なんか、二人の会話がそれどころじゃなかった気もするけれど。
とはいえ、ライフ差はほとんどなし。
ネッカ少年の稼いだ貯金は吹っ飛んだものの、それもそもそもネッカ対クローが激戦過ぎてあってないようなものだった。
シズカさんが求められた役割をこなせなかった時点で、戦略的には刑事さんの勝利だ。
さて、ここからは完全に未知の戦いだ。
何せメカシィとフィレナはともかく。
レンさんとクルミ先生も、対戦経験がないのだから。
仮にも担任と教え子であり、レンさんは強いファイターだ。
それなのに、なぜ?
理由は簡単。
「……レンさん。そろそろ出番よ、レンさん」
ヤトちゃんが、
「い、いやだぁ……」
なぜ、そんなことをしているのか?
恐怖に震えているからだ。
何せ――
「
クルミ先生は、レンさんが最も苦手とするデッキの使い手なのだから。