カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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170 貴方にとってトウマって、何?

 ミーシアさん、俺にとっては昔からの友人で、ファイターとしてはライバルでもある。

 超絶火札の時代から一緒だったんだから、当然だな。

 

「イグニッション!」

『ん……イグニッション』

 

 かくしてファイトは静かにスタートする。

 俺の先攻だ。

 モンスターを展開し――

 

「出ろ! <極大古式聖天使 アークロード・ミカエル>!」

『……いきなり、<アークロード>』

「今更、牽制から入るような関係でもないだろ!」

 

 ターンを終える。

 普段なら<ロード・ミカエル>から入っていく俺にしては、珍しい立ち上がり。

 ただこれには、理由があるのだ。

 

『ん、私のターン。来て<ドリーミースター・アルタイル>!』

 

 現れるのは、流星のようなエフェクトを発する光の人型。

 これがミーシアさんの愛用するデッキ、『ドリーミースター』デッキだ。

 星をモチーフにしている。

 そして、問題はこの次だ。

 

『このモンスターは、『ドリーミースター』モンスターがいればサモンできる』

「……いきなりか!」

『<ハイドドリーミースター・ムーングロウデビル>!』

 

 おどろおどろしい、悪魔のような光の人型が現れる。

 こいつはミーシアさんのエース……のようでエースではない挨拶代わりのモンスター。

 一言で言えば、こいつはミーシアさんが夢想郷での事件で操られた際に使ったモンスターだ。

 つまり、劇場版のボスモンスター。

 ミーシアさんが無事に解放された後、何故かデッキの中に残っていたので今も使用しているのだ。

 

 恐ろしいのは、こいつが劇場版の短い尺で登場することを想定されているからか、サモン条件がめちゃくちゃゆるいこと。

 『ドリーミースター』モンスターがいるだけでいいのだ。

 それでいて、破壊耐性と1妨害は当然のように確保していて、打点も高い。

 こいつがいるから、<ロード・ミカエル>で牽制なんて悠長なことがしていられないのである。

 

『ふふふ、今日こそミツルに勝つ。何故なら……』

「なぜなら?」

『――トウマとコハナが見てる』

 

 ふふ、と表情の乏しい顔で笑うミーシアさん。

 

『いけー、ミツルをボコボコにしろー!』

『ぼ、ボコボコって……。が、頑張ってねミーシアちゃん!』

『むふー、頑張る』

 

 あ、向こうからダイアたちの声が聞こえてくる。

 こいつ、俺に対抗したいって理由で先鋒戦はこっちに来て、大将戦は向こうにいるな?

 この野郎……。

 まぁ、いつものことだ。

 

『このように、今の私は最強の私。どこからでもかかってきなさい』

「……今はそっちのターンだろ」

『はっ! そうだった。てれてれ』

 

 照れるミーシアさんは置いといて、ファイトは続いていく。

 <ムーングロウデビル>は強力だが、厄介なのはそこではない。

 ミーシアさんの一番厄介なところは<ムーングロウデビル>がポン出しできるサブエースにすぎないということだ。

 

『そして来て、<シャイニードリーミースター・オリオン>!』

 

 本来のミーシアさんのエース格は星座モチーフのモンスターだ。

 黄道十二宮以外の星座をモチーフにした星座がモンスターとして登場する。

 なんで黄道十二宮がハブられるかって? そっちはそっちでモチーフとして美味しいからですかね。

 

 その後、俺の<アークロード・ミカエル>が突破されるもミーシアさんは俺を倒しきれずターンエンド。

 俺が反撃して、何とか<ムーングロウデビル>の方は退かすことができた。

 場には、<極大古式聖天使 ハイエクシード・ラファエル>とそのエフェクトで蘇生した<アークロード・ミカエル>が並ぶ。

 

『くっ……やっぱり、ミツルはつよいね……っ!』

「ミーシアさんだってな」

 

 結局俺は、<オリオン>を撃破できずにターンを終了させることとなる。

 次のターンの反撃で、俺は苦境に立たされるだろう。

 それもこれも、ミーシアさんの実力あってのことだ。

 

『私は……でも』

「でも?」

『トウマやミツルには……勝ちきれてない』

 

 ――単純な勝率で言えば、確かにミーシアさんは俺とダイアには少し見劣りする。

 だからといって、ミーシアさんが弱いわけではないし。

 俺やダイア相手に勝率が三割とか四割ある時点で、この世界ではトップクラスのファイターなのだ。

 それでも、いや、だからこそ。

 トップには届かないと、解ってしまう。

 

『それに私は……誰よりも、トウマに勝ちたい。私にとって、トウマは私をこの世界に連れてきてくれた人。私にとって誰よりも大切な人――そして私が、初めてファイトに負けた人』

「……」

『負けたくない、勝ちたいって思う。でも、届かない。ねぇ、ミツル。この世界でトウマに本気で”勝てる”って私が思える人は、貴方だけ』

 

 ミーシアさんにとって、どれだけダイアが大切で。

 どれだけ、手を伸ばしたいと思っているか。

 それでも届かないと思っているか。

 俺には、想像することしかできない。

 

『ねぇ、ミツル』

「……ああ」

 

 そしてミーシアさんは、まっすぐこちらを見ながら問いかけてきた。

 

 

『貴方にとってトウマって、何?』

 

 

 ――俺にとって、か。

 ミーシアさんにとって、俺はダイアと唯一対等に渡り合える人間だ。

 実際がどうかはともかく、()()()()()()()()()()()()()()という意味で。

 少なくとも俺は、そういう立場にある。

 

 そして、俺にとって逢田トウマとは。

 ライバルであり、親友であり、そして誰よりも大切な人だ。

 家族を除けば、もっとも失いたくないと思う他人。

 それはつまり――

 

「俺にとって、ダイアはすごいヤツ、なんだよ」

『すごいヤツ?』

「そう。大切な人、愛している人なら他にもいる」

 

 エレアを一瞥してから、続ける。

 

「でも、一番すごいと思う奴はダイアだ。多分ソレは、これからも一生変わらない」

『……それは、きっと私もだ』

「だって、その方が――目指しがいがあるだろ? 越えたいとおもうなら、やっぱ一番すごいやつを越えないと」

『……!』

 

 ミーシアさんが目を見開く。

 それはきっと、当たり前過ぎてミーシアさんの中ですっぽりと抜け落ちていた部分だと思う。

 

「ミーシアさんにとって、ダイアが凄いのは当たり前過ぎたんだ。本当なら、だからこそ凄いダイアを越えたいと思うはずなんだけど」

『……私は、初心を忘れてたんだね』

 

 人間、初心というのは三歩歩けば忘れてしまうものだ。

 流石にそれは鶏頭が過ぎるけど、それでも忘れやすいものであることに違いはない。

 何せ、あのファイター仙人すら忘れてしまうものなのだから。

 

『なら、まずは……ミツルに勝って、私がトウマに負けないくらいすごいってことを、証明する!』

「いいぞ、来い!」

『私の……ターン!』

 

 さぁ、最後の攻防だ。

 ミーシアさんは連続でモンスターを展開し、攻勢を仕掛けてくる。

 トドメは彼女の最終エースだ。

 

『これが最後! <シャイニードリーミースター・サンライズ>!』

 

 ――このエースモンスターは、ミーシアさんが高校を卒業する時に手に入れたエースモンスターだ。

 こっちの世界にやってきて、ダイアとともに暮らし、成長してきた彼女の集大成。

 それが今、俺のモンスターを圧倒する!

 <ハイエクシード・ラファエル>が破壊され、残るは<アークロード・ミカエル>のみ。

 そして俺のライフは残り少なく、おそらくこれで決着が付く。

 

『……勝つのは、私だよ! 行け! <サンライズ>!』

「いいやまだだ! カウンターエフェクト、<ファイブカウント・ビルドアップ>!」

『何!?』

 

 このカードは、デッキの上から五枚めくってその中のモンスターカードをすべてセメタリーに送る。

 そして、セメタリーに送ったモンスターの数だけフィールドのモンスターの打点を上げるのだ。

 

「これで俺が四枚モンスターをセメタリーに送れたら、俺の勝ちだ!」

『でも、三枚までなら私の勝ち……』

「そういうことだ……一枚目、モンスター!」

 

 俺は、その後、二枚目を外し三枚目を当てる。

 そして四枚目――

 

「四枚目は――――カウンターエフェクト」

『……! やった!』

「そんな、店長!」

 

 思わず、といった様子でエレアが叫ぶ。

 これによって、俺の敗北は確定した。

 嬉しそうにミーシアさんが喜ぶ中、俺は最後の一枚に手をかけた。

 

『……ミツル』

 

 その瞬間、映像の向こうから、ダイアの声が響く。

 ……その言葉の意味は、俺には判別がつかない。

 ただ、俺はこの一枚を、敗北が決まった後の一枚をめくるうえで。

 それでも逃げてはいけないと、そう強く感じた。

 

「最後は……モンスター!」

『それでも、私の勝ちは揺るがない!』

「ああ、そうだな……ミーシアさん、()()()()()()は、君の勝ちだ」

 

 けど、と俺はめくったモンスターをミーシアさんに見せる。

 

「俺は、たった今めくられて、セメタリーに送られた<古式聖天使 カロル>のエフェクト! このモンスターがセメタリーに送られた時、フィールドのモンスター一体の攻撃力を200アップし手札に戻る!」

『200……まさか!?』

 

 現在、俺の――いや、チーム”デュエリスト”のライフは残り600、対してドリームランドは300だ。

 これで、<アークロード・ミカエル>が破壊されダメージを受けると、俺の残りライフは200になるわけだが――<カロル>のエフェクトがあればライフは400。

 元のライフが4500だったので、これでもこのファイトは終了するわけだが。

 そうなると、最終ライフはデュエリストが400、ドリームランドが300になるわけで。

 

「俺は<アークロード・ミカエル>の攻撃力をアップ。さぁ来い、<サンライズ>!」

『く……私はミツルに勝った! 今はそれで……十分!』

 

 かくして<アークロード>は破壊され、ファイトは決着する。

 全体で見れば、デュエリストは二勝三敗。

 けれども、ライフのやり取りがギリギリの状態で行われた結果、最後は敗北しながらも勝利するという、なかなか珍しい結果に終わった。

 

『トウマー、ひーん』

『お疲れ様、ミーシア。頑張ったな』

 

 ミーシアさんが、敗北のショックで泣きながら――嘘泣きである――ダイアに飛びついていく。

 おそらく、向こうではダイアとコハナちゃんがミーシアさんを慰めていることだろう。

 

『でも、ミーシアもすごかったぞ。ミツルに勝ったんだ、確かに店としては負けてしまったかもしれないが、本戦や決勝でリベンジする機会もあるかもしれない』

『うん』

『だから……これからも、頑張っていこうな』

『うん。ひーんひーん』

 

 ――そうだ、このファイトはあくまで予選の最終戦にすぎない。

 ここからまだ対抗戦は続く。

 そこで、再びドリームランドと当たる可能性もあるだろう。

 まぁ、運命力が働いて一度ぶつかったカードはそうそう当たることはないだろうが。

 そこは運命を捻じ曲げて他のショップを倒し、戦いの舞台に上がってきて欲しい。

 何よりその時こそ、俺は改めてミーシアさんに、店としても個人としても勝つのだから。

 

「……ところで、頑張っていこうって言われたのに、更に泣き出してるのはどうしてかしら?」

「ああアレは、しれっと途中で”誰よりも大切な人”って言ったのにスルーされたからじゃないですかね」

「いや……それは流石に伝わらないでしょ、しれっとさせすぎよ」

 

 なお、エレアとヤトちゃんが泣いているミーシアさんについて分析していた。

 やめてあげなさいって。




というわけでドリームランド戦決着です、こういう勝ち方もあるので、最後まで勝負がわからないのも団体戦ルールのいいところだと自分で思ってます。
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