カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
その日は、エレアの配信に呼ばれて県予選の振り返りをすることになっていた。
エレアの配信は俺が顔を出すと、同接が1000人増えるらしい。
すごいな。
「というわけで、今日は店長と県予選の振り返りをやっていきますよ!」
「よろしく、お、コメント欄にヤトちゃんがいるな」
エレアの挨拶に反応して流れていくコメントの中に、ヤトちゃんのアカウントがあった。
スパナを渡しているから一発で判別できる。
なお、チャンネルを覗きに行っても動画とかはないぞ。
エレアと撮って上げたショートなら数本あるが。
「ヤトちゃんもこんばんわー、さて、まずは……」
「まずは?」
「県予選、突破おめでとうございまーす! ぱふぱふ」
いいながら、エレアはパソコンを操作して「ぱふぱふ」のSEを鳴らしていた。
コメントに『おめでとう』と『8888』が並ぶ。
ヤトちゃんも嬉しそうだ。
「いやー、全勝でしたね、全勝」
「まぁ、仮にも優勝候補だからな……」
「こんなところで止まってはいられないと、店長も野心的ですねぇ」
いやぁそこは、優勝候補として求められる立ち振舞というか……。
やはり、強者は強者として振る舞うことが求められているのだ。
ダイアが謙遜しまくって自分なんて……みたいなことになるのはなんか違うだろ?
ショップ対抗戦において、デュエリストとマスターズはダイアと同じ立場にいるのだから。
優勝候補として、どっしり構えておく必要はある。
「そう考えると、今回最後に負けたのは個人的には悔しい点だな」
「公式戦で店長が負けたことってほとんどないですからね……これで二敗でしたっけ?」
それは単純に俺が公式戦に出ないからってだけなんだが。
なんなら公式戦での対戦経験が三桁いかないぞ。
この世界の強いファイターは本当に強いので、百戦くらいなら無敗でこなせるファイターはそこそこいる。
俺の知る限りだとプロならダイアにアリスさんに……あれ? 各地域のチャンピオンクラスだけだな。
まぁ、俺もそれくらい強いし、違和感はない。
ただし、一つだけ訂正する余地があるな。
「三敗だ、実はほとんど知られてないけど、三回負けてるんだよ」
「え!? 初耳ですよ!?」
「学生時代に、団体戦の助っ人として公式戦に出る機会があったんだがな」
「ふむ、まさか今回みたいに?」
「いや、逆。俺に出番が回ってくる前に、オーバーキルでこっちのチームのライフが切れた」
基本的に、団体戦での全体の敗北も公式戦での黒星に含まれるぞ。
じゃあちょっと気になるのが、どういった試合が公式戦に含まれるのか、ということ。
答えは簡単だ。
「……あ、本当だ! ファイターデータベースにあります! わわぁ、店長が中学生のころなんですね。中学生の店長……じゅるり」
「エレア?」
流石にそれはまずいって!
コメント欄が大慌てで『それはまずい』とかヤトちゃんがドン引きしている間に、話を戻そう。
ファイターデータベースと呼ばれる物がある。
超高性能AIが管理する、この世界の公式なファイトのデータを収集するデータベースだ。
このデータベースに収集されているファイトが、すべて公式戦として扱われる。
そしてこのデータベースがまた凄いのだ。
使用したファイターのデッキレシピが閲覧できたり、VRで当時の試合を再現できたりする。
なんなら、自分がどっちかの立場にたってファイトすることも可能だ。
やろうと思えば、これだけで一年は遊び倒せる凄いデータベースである。
まぁ、個人的にそのうちどっかで人類に対して反乱を起こすんじゃないかと睨んでるが、その時はその時だな。
「こほん、気を取り直してですね! ほかチームの様子も見ていきましょう」
「確か、俺達以外に県予選を全勝したチームはマスターズだけだったな」
「一敗に絞れば結構いるんですけどね、ドリームランドとか」
つまり、あそこでドリームランドが勝っていたら、ドリームランドがマスターズと並んで全勝チームになっていたわけだな。
もしそうなってたら、ドリームランドがそのまま優勝してたんじゃね? ってくらい勢いづいてただろう。
「そういえば、仮面舞踏会はどうなったんだ?」
「例の、仮面を付けないと入れない店でしたっけ?」
『一敗で予選突破だって、特殊な環境に建ってる店はどこも強豪ぞろいだったから』
ヤトちゃんがコメントしてくれた。
なんでも、普通にハクさんレベルのファイターがゴロゴロしてるんだとか。
まぁ、仮面舞踏会のメンツもえげつないからなぁ。
「個人的には、
『ちょうどその二人が連闘制限で出れなかったの。姉さんは出れたんだけど、姉さんのデッキって火力が高いタイプじゃないから』
とはいえ、全部のチームが強いなら一敗くらいしてても問題はないということらしい。
実際それで、一枠しかない枠を勝ち取ってるわけだから仮面舞踏会も強豪だな。
というか――
「……そりゃあ強豪になりますよ。
「まぁなぁ、とにかく最大出力が高すぎる」
「ツカサちゃんの方は、レンさんがなんとかするって燃えてましたけど」
仮面舞踏会は、強い。
ハクさんもそうだが、日本トップクラスのエージェントである仮面の聖獣――鵺野ヒジリさんが参戦しているからだ。
ただし、Vの者としての姿である、聖山ツカサとして。
まぁ正体は秘匿組織のエージェントだからね。
これ、面白いのがリアルにVの者として3Dモデルを利用して顕現していることだ。
なんでも、エクスチェンジスーツの応用らしい。
あのスーツ本当にすごいなぁ。
ともかく、ヒジリさんもとい、ツカサさんの相手はレンさんが務めることになるだろう。
運命力がそう導くというのもあるし、レンさん自身もそれを望んでいるだろうからだ。
なお、ツカサさんはファイターとしてはVの者最強クラスらしい。
どっちにしろ、彼女が仮面舞踏会を強豪たらしめる一因であることは誰の目から見ても明らかだ。
とはいえ……
「まぁ、あの人ほどヤバくはないけどな」
「あの人はもう、なんていうか……ヤバすぎですね」
ハッキリ言って、もう一人はツカサさんより更に酷い。
あと、名前を言及できないのもある。
仮面ファイターは、正体を自分から暴露するか仮面ファイター同士のファイトに負けるまで、正体を明かしてはならない法律があるからな。
「そういえば、下馬評だとウチより仮面舞踏会の方が強いんじゃないかって噂もあるらしいですよ」
「何だと、それは聞き捨てならないな」
「優勝候補筆頭がマスターズ、対抗が仮面舞踏会、三番手がウチらしいです」
まぁとはいえ、これは少し致し方ないところもある。
割と、ウチのファイターは平均こそ高いが、最大出力が低めなのである。
ドリームランドのシズカさんみたいな、誰もが認めるトップクラスファイターがいないのである。
ギリギリネッカ少年が入るかってくらい。
いや、俺はいるけどな? 仮面舞踏会とマスターズは二人いるから。
その点が、若干俺達にとって不利だろうと世間は見てるのだろう。
「けど、断言するよ。優勝するのは俺達だ」
「おお、大胆宣言。理由はどうしてですか?」
「そりゃあ当然――俺がいるからだよ」
だって、俺は最強の店長なんだからな。
最強の店長のいる店が最強なのだ、これは揺るぎない事実である。
――なお、この発言は多大に挑発の意味合いが含まれています。
「む、何やらDMが届いています! たった今届いたみたいですね! チェックチェーック!」
「それ、口に出して良いのか……」
「出した人は――――ぎゃぴ!?」
と、そこでエレアが変なポーズで固まった。
その狐みたいな指はなんだよ。
「えーと差出人は……」
どれどれ、と俺は固まったエレアをどかして内容を確認する。
何故かコメント欄が『店エレてぇてぇ』で埋まった。
それで良いのか君たちは。
「……なんだ、キアか」
と、思ったら俺の発言で一瞬で『は?』に染まった。
そりゃまぁ、マスターズの店長がいきなり連絡とってきたら誰だってそうなる。
俺はまぁ、キアのことをそれなりに理解しているので。
そして、DMの内容は単純だった。
「えーとなになに? 今のミツル
エレアが固まって動かなくなってしまっているが。
と、そこでちらりと視線をコメント欄に向ける。
またもコメントが一色に染まっていた。
『ミツルにぃ!?』
――あ、やっべ。