カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
さて、気を取り直して俺達も試合を進めていくとしよう。
と、思ったのだが。
本戦初戦。
『ウェーイ!』
『ウェーイ!』
『ウェーイ!』
「んにゃーーーっ! ぱぱぱ、パリピィー!?」
当たったのは、ウェイウェイ騒がしいパリピ集団だった。
というか、全員日焼けした海パン野郎だった。
オタク根性が染み付いていて、別にコミュ力が乏しいわけではないのにパリピに苦手意識のあるエレアが慄いている。
おおよしよし。
『俺達! カードショップ”海の家”メンバー! 俺は店長! ウェーイ!』
『ウェーイ!』
『ウェーイ!』
「う、海の家のカードショップかぁ」
なんとなく、理屈はわかる。
ビーチバレーみたいに、海でファイトをする人間もいるのだ。
そういう人向けのカードショップなのだろう。
焼きそばとかも売ってるんだろうか。
いやカードしながら焼きそばは……。
『デュエリストマジリスペクト! ウェーイ!』
『ウェーイ!』
『ウェーイ!』
「お、おうありがとう……いやなんで?」
リスペクトしてくれるのはありがたいが、俺と彼らに付き合いは無かったと思うけど。
首を傾げていると、答えを出してくれる人がいた。
なんと、それは――
「あー、こいつら、俺の身内なんすよ」
――刑事さんだった。
ぽりぽりと頭をかく動作をしながら、大学時代の後輩フェイスで苦笑する。
ああー……と納得せざるを得ない。
「けけけ、刑事さんとパリピさんたちが!?」
「……俺の学生時代の後輩だよ、昔はやんちゃしててな」
「けけけ、刑事さんはパリピだった……?」
「そこは疑問に思う所じゃないだろ……刑事さんはモテない以外はパリピだよ」
「モテないは余計だろ!?」
なんてやり取りをしつつ、刑事さんがよう、と気軽な様子で声を掛ける。
「まさか、お前さんたちがカードショップを経営するなんてな」
『草壁先輩! チッス! 俺達気づいたんすよ!』
『ダチは、多ければ多いほどイイ!』
『ラブアンドピース!』
いいながら、タテ一列に並んで順番にぐるぐるし始めた。
なんかパリピっぽいやつだ。
「ま、そういうことならお手柔らかに頼むぜ」
『胸を借りるつもりで行くッス! ミツル店長もオナシャーッス!』
「ああ、いいファイトにしよう」
見た目は威圧感あるものの、爽やかな海野郎だった。
なお、ファイトには勝利したが、エレアは苦手意識が抜けきれなかったのか一人だけ負けていた。
□□□□□
『いらっしゃませ、御主人様』
「きゅーん!」
前回のファイトでカタカタ震えていたエレアだったが、次の試合で息を吹き返した。
というのも、相手のチームがメイドさんチームだったからだ。
「このメイド服すっごいかわいいですねぇ! 自作なんですか!?」
『あ、そうなんですよ。エレア様ですよね? 配信みてますー』
「えへへありがとうございますー。あ、その……も、もう一回御主人様って言っていただいても……」
『はい、かしこまりました、御主人様』
「きゅーん!」
めっちゃ楽しそうだな。
どうやら、相手はメイド服にめかしこんだ女性たちで構成されたチームらしい。
レンさんのコンセプトカフェみたいな感じだなぁ。
違いは、食事を提供しているか否かってところかな。
こっちはあくまで、店員がメイドであるということがメインの店らしい。
「店長店長! うちでもメイド服を制服にしませんか!?」
「……それ、俺とメカシィもメイド服を着ることにならないか?」
「私は見てみたいです!」
俺はともかく、メカシィもか?
とにかく、エレアは爛々としていた。
さっきまでの微妙な感じはどこへやら、完全に本調子である。
いや、これはもはや本調子以上かもしれないな。
二戦目だから連闘制限にも引っかからないし、ここはエレアをメンバーにいれるのは確定だろう。
と、思っていると。
「ふむ……カードショップ”メイドの土産”か」
「……思ったより物騒な名前だなぁ、というかレンさん知ってるの?」
「メイド系のショップは、カフェやショップに関わらずリサーチしている。我は経営者だからな!」
ふふん、と胸を張るレンさん。
偉い。
「しかし……そうなると瞳の民には少し酷かもしれんな」
「……エレアが? 何でだ?」
「うむ、それは――」
と、そこで。
奥からショップの店長がやってくる。
地味な印象の青年だ。
『はじめまして、僕が店長の――』
『きゃー! 御主人様ー!』
そして、店長が名乗ろうとした瞬間に周囲のメイドさんたちがよってたかって店長を囲んだ。
同時に、エレアが固まる。
ああ、あれは――
「……メイドの土産のメイドたちは……全員、店長を好いている」
「なるほど、まぁそういうこともあるよね……」
ハーレムとか、たまに聞くもんね。
まぁ、俺には関係ないけど。
問題はエレアだ。
さっきからきゅんきゅんきていたメイドさんたちが、一人の男性を好いているのである。
いわゆるアレだ。
「ふぎっ」
寝取られに脳が破壊されるというやつだ。
固まったエレアの表情が、段々と凄いことになっていく。
おちつけおちつけ!
慌てて俺はエレアを回収した。
「店長! 私を大将にしてください!!」
「いやルールで無理だから」
「あのハーレム男に天誅をー! 私のメイドさんー!」
「エレアのじゃないぞ!?」
エレアのものなのは俺だけだ。
という冗談はさておいて、エレアが燃えに燃えていたので試合は快勝だった。
基本的に制圧型の『帝国』デッキでよくライフ8000一気に削れたな……。
□□□□□
『ネッカくん、久しぶり!』
「久しぶりだな、コウスケ!」
フィールド越しに、二人の少年が話をしている。
ネッカ少年と、同年代の少し気弱そうな少年。
彼の名はコウスケくん、少し前に天火市から他県に転校していった少年だ。
『ネッカくんの活躍、こっちにも聞こえてくるよ。いつも凄いね』
「へへ、そう言ってくれるとなんか照れるな」
『僕も、ネッカくんみたいになれたらなぁ』
「いつか、コウスケもコウスケのなりたい自分になれるさ。悪魔のカードなんて使わなくてもさ」
コウスケくんは、元々気弱な少年だった。
周囲に対して卑屈で、人付き合いに臆病な少年だ。
そんな少年が悪魔のカードに魅入られてしまったのは、ある意味必然だったのだろう。
そんなコウスケくんの起こした事件は、ネッカ少年によって解決された。
まぁ、ネッカ少年にとってはありふれた日常の1ページではあるのだが。
そこできちんと、相手のことを覚えているのがネッカ少年の良いところ。
彼にとっては、そんな日常の1ページすら愛おしいのだろう。
……同級生が悪堕ちすることを日常で済ませてしまえるネッカ少年の人生はさておいて。
『あれから僕……転校した先で、色々頑張ったんだ。友達もできたし……こうやって、ショップ対抗戦のメンバーに選ばれるくらいになったんだよ』
「へへ、流石だぜ。それでなんだっけ、カードショップ……」
『うん、カードショップ……”マッスル"さ! ……ふん!』
その瞬間、コウスケ少年の上半身が隆起して服が吹き飛んだ。
そして、ムッキムキなコウスケ少年がポージングをしている。
すごい光景だ……。
フィールドに、カードショップ”マッスル”の店長が現れる。
彼もまた、上半身裸でムキムキのナイスガイだった。
笑顔からこぼれる白い歯が眩しい。
『HAHAHA! コウスケくんはうちの最高の常連さ! こんなにも実直に筋肉と向かい合うなんて! スペシャルとしかいいようがない!』
『ありがとう店長……! さぁ、やろうかネッカくん! 僕の鍛え上げたマッスルを見せてあげるよ!』
「…………」
ネッカ少年は、ほんの少し沈黙した。
ああアレは、彼が理解できない現実に見舞われた時の、なんとも言えない哀愁漂う顔だ。
しかし、すぐにそれをいつもの熱血フェイスに戻して。
「ああ、お互い全力でやろうぜ!」
と、ネッカ少年は返すのだった。
彼の壮絶すぎる人生に、少しだけ祈りを捧げつつ試合が始まる。
なお、相手は普通に強敵で、ライフが三ケタになるまで追い込まれるも、何とか勝利した。
やっぱすげぇな……筋肉!