カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
一日目と二日目の本戦を勝ち抜いて、俺達は全勝で最終戦まで駒を進めた。
やはり県予選を勝ち抜いてきた猛者たちだけあって、中には危機一髪な内容もあったものの。
何とか、俺達はそれらすべてに勝利できたわけだ。
個人的には、相手するチームがどれもこれも色物ばっかりだった印象だが。
なんなら仮面舞踏会も痴女と謎のマジカルファイターAのせいで色物確定である。
まぁ、何にせよついに仮面舞踏会との対決だ。
ここからは気合を入れて挑まなければならない。
「と、言うわけでメンバー決めなんだが……ハッキリ言って、確定してないのは一人だけだ」
「私と、レンさん、それからアロマは確定よね」
「うむ!」
「ですわー!」
今回の相手、仮面舞踏会は強敵だ。
特に、ハクさん、アリスさん、ツカサさんの並びはとんでもない。
一人ひとりが、店舗のエースを張っててもおかしくないのに、それが三人も。
しかも今回――
「……仮面舞踏会は、エース格をこのファイトに全員出せるよう調整してきた」
「向こうも本気で私達を倒そうってわけね」
なので、言うまでもなくハクさんたち三名は選出される。
俺達も対応するメンバーは連闘制限に引っかからないよう調整しているから、メンバーのうち三人――俺を入れて四人は確定だ。
と、そこでふと疑問をネッカ少年が口にする。
「しっかし、なんだってわざわざここで全力をぶつけてくるんだ? 負けても決勝があるだろ? そりゃあ、負けるなんて誰だって嫌だけどさ」
「ネッカ少年は、仮面舞踏会が勝つためじゃなくて、
変な物言いだが、話は単純だ。
今回、本気で仮面舞踏会が決勝トーナメントに進出するつもりなら、この最終戦に向けての出し惜しみはするべきではなかった。
何故なら最終戦は負けてもいいのだから。
それなら最終戦にハクさんたち三人が選出できなくても気にせず、戦力を投入するべきだった。
……そうしなかったのは、何故か。
「それこそ、決勝トーナメントのためさ。決勝トーナメントは、本戦の連闘制限が適用されないからな」
「つまりだ、熱血の民! ここで全力を出すことで、仮面舞踏会は決勝で誰に対してどの程度全力を出せばいいのか測っているのだ!」
決勝トーナメントと本戦の連闘制限はそれぞれ独立している。
決勝は決勝で、準々決勝から決勝までの三連戦の中でのみ、連闘制限が発生するのだ。
そこで駆け引きが生まれる。
仮面舞踏会は所有している個々の戦力においては最強だが、総合力ならどうか?
デュエリストやマスターズ相手に、出し惜しみをして勝てるのか?
それを測るために、こうして負けてもいい最終戦で最も強い相手である俺達に全力をぶつけるのだ。
「なるほどなぁ」
「と、いうわけで、ウチの最後のメンバーなんだが……」
「俺は無理だな。ちぇ、連闘制限がニクいぜ」
ネッカ少年は、選出できない。
連闘制限に引っかかってしまったのだ。
メカシィも同様に連闘制限に引っかかる。
とすると、残るメンバーはエレアか刑事さん。
「はい! 私が行きたいです!」
「じゃあ、エレアな」
で、エレアが手を上げたので決定。
メンバーはこんな感じになった。
ついでに、相手のメンバーも発表されたので並べる。
デュエリスト。
先鋒、エレア。
次鋒、レンさん。
中堅、アロマさん。
副将、ヤトちゃん。
大将、俺。
仮面舞踏会
先鋒、ビア・ビーア。
次鋒、ツカサさん。
中堅、謎のマジカルファイターA。
副将、ハクさん。
大将、仮面さん。
と、こんな感じになった。
レンさん以降のメンバーの並び順は、相手にするファイターのデッキの火力順だ。
万が一大きく削られても、ライフが0にならないよう火力の高い相手が前に来るよう選出している。
向こうはこちらに合わせる形になるが、向こうにしてみれば自分たちは格上である。
こちらの意図から外れることはプライドがヨシとしないだろう。
というわけで、試合開始だ。
□□□□□
さて、誰もが思っただろう、ビア・ビーアって誰だよって。
答えは簡単、仮面舞踏会が建っている秘境に住まうモンスターである。
あのジョッキ型モンスターだな。
エレアが率先して手を上げたのも、同じモンスターであることの親近感からだろう、と思っていたのだが。
「ふご、ふごご」
先鋒戦に現れたエレアは、変なキグルミをまとっていた――。
というか例の<サーヴ・タイガー>のキグルミだ。
何故そんなものを持ち出してきた……?
ふごふご言っているエレアは何も答えてくれない。
「ふごごー!」
『びあー!』
いきなりバックに引っ込んだと思ったら、これで出てきた時ばびっくりしましたよ。
というかそれ、どこにしまってたの?
「ふごご!(自室に飾ってあります)」
「そ、そう……」
まぁいいか。
店内が何だあれ、みたいな空気が広がる中。
「ふごー!」
「ビアー!」
イグニッションの宣言とともに、ファイトは始まる。
すごい、どっちもイグニッションを宣言できてない。
ファイト自体は順調だ。
以前きぐるみを着用した時は、カード相性の関係でなかなかうまく行っていなかった。
しかし今回は、エレアもかなりデッキ構築を洗練させたのだろう。
若干噛み合わないながらも、かなりいい感じに回せている。
喋れないモンスター同士のファイトというシチュエーションも、いい方向に働いているかもな。
いや、エレアは喋れるだろ……。
ただ、問題があった。
「ふごご! ふご! ふごごー!」
『ビア! ビアビアー! ビーア!』
――内容がわからないのである。
会話の内容もそうだが、ファイトの内容も。
何せ、ふごふごビアビアいいながら、勝手にファイトが進んでいくものだから。
傍目から見ると、何をやっているのかさっぱりである。
一応、<サーヴ・タイガー>を使ったデッキは俺もレンタルデッキで組んだことがある。
ただエレアは、俺も見たことないカードをたまに使うから、細かい展開が理解らない。
「……店長は、エレアの言ってることは理解できるのよね?」
「ああ、まぁな。でもビア・ビーアの方はさっぱりだ。なんかエレアも、主体性のないふわふわとしたエモいセリフが多い」
「相手の主張がわからないから、エレアの話してる内容もふわふわしちゃうのね……」
なんか、二人……二人? はめちゃくちゃエモいファイトをしているらしい。
しかしこう、俺達にはさっぱり内容がわからないのである。
くそ、惜しい……見たい! エモいファイトを見たい!
なのに、想像するしかない……。
「とりあえず、そろそろ決着が付くらしいことだけは解る」
「それはなんとなく、私も解るわ」
以前戦った際にサモンされた、ビア・ビーアのエースモンスターがフィールドに躍り出る。
対するエレアも、俺の知る限り<サーヴ・タイガー>を使ったデッキで最も強いモンスターがサモンされた。
そこからはもう、凄まじい攻防の応酬である。
カウンターエフェクトと、モンスターのエフェクトが無数に飛び交い、カードが使用されては破壊されていく。
まさしく怪獣大決戦……なのだが、そのファイトを正確に理解できたものはいなかった。
そして最終的に。
「ふごー!」
『ビアー!』
エレアが勝った。
ライフはこちらが16100、本当にギリギリって感じだな。
代わりに、最後の一撃が結構大きく、向こうのライフを15000まで削っている。
これで、少しは今後も楽になるだろう。
んで、その後ファイトが終わって、キグルミを脱いで戻ってきたエレアに聞いてみた。
「で、ファイト中に何の話をしてたんだ?」
「あの子が、好きなモンスターがいるっていうから、相談に乗ってたんです」
「まさかの恋バナ……!?」
「可愛い女の子ですよね、ビアちゃん」
「女の子!?」
困惑することしきりだったが。
とりあえず一戦目はこちらの勝利である。
このまま順調に進んでくれればいいんだがなぁ。