カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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179 アロマとアリスなユースティア

 レンさんと聖獣さんことツカサさんも従姉だが、アロマさんとアリスさんも従姉だ。

 そんなアロマさんにとって、アリスさんは自分を教え導いてくれる先達だろう。

 何せ自分のマジカルファイターとしての旅路を、導いてくれた存在なのだから。

 謎のフードの女性として。

 そして今、アリスさんはフードを被った謎の仮面ファイター――マジカルファイターAとしてアロマさんの前に立ちはだかっている。

 

「――あれから、しばらくが経って。わたくしも、わたくしの事件をあと少しで解決できるところまで来ましたわ」

『そ、そうです』

「貴方が去った後、一人で――いえ、仲間たちとともに歩いてきたこの旅路! その成果を、ようやくお見せすることができますの!」

『わ、私はアリスじゃないので知らないです、そうなのです?』

 

 が、それはそれとしてアリスさんはしらばっくれていた。

 以前、姉じゃないと言い張っていたハクさんみたいだ。

 

「イグニッションですわ!」

『あ、聞いてくれないです? ええい、イグニッションです!』

 

 というわけで、なんかグダグダしてるが中堅戦の始まりだ。

 

 

 □□□□□

 

 

 アリス・ユースティア。

 ヨーロッパチャンピオンにして、ユースティア家当主。

 ハッキリ言おう、この世界における最強の一人だ。

 ダイアや俺、それからファイター仙人、他にも多数。

 トップクラスのファイターの中でも、明らかに群を抜いているファイターってのは世界を見渡せばそこそこいる。

 その中にアリスさんを含まない人間はいないだろう。 

 そして、謎のマジカルファイターA。

 本来のデッキではなく、あくまで謎のマジカルファイターAとしてのデッキを使用しているものの、その実力は本物。

 油断してると調子が最高に良い時のハクさんに負けたりもするが、普通なら勝てる相手じゃない。

 だから本来なら、アロマさんにとって今のアリスさんは、謎のマジカルファイターAになったことで。

 絶対に勝てない相手から、勝つのがめちゃくちゃ難しい相手になったに過ぎないのだ。

 

 そう、本来なら。

 しかし、今。

 

「――アリスお姉様、この一撃が通ればわたくしの勝ちですわ」

 

 

 為すすべもなく一方的に、アロマさんに敗北しようとしていた。

 

 

『くっ……何故です!? いくらなんでも、ここまで一方的に追い詰められるなんてです! あとアリスじゃないです!』

「いやそりゃ……頑なに正体を認めないからだろ……」

 

 ハクさんと同じ轍を踏んでいるな。

 色々と理由があって、アロマさんに素直に自分はアリスなのだと認めたくないのだろう。

 どれだけバレバレであっても、アロマさんがアリスさんだと扱っていても……だ。

 しかしそれでは、アリスさんの本来の実力は出せないだろう。

 

「……仮面ファイターの弱点が出たな」

「レンさん」

「仮面ファイターが仮面を被る理由は幾つかある」

 

 ぬっと現れたレンさんが、腕組みをしながら解説を始めた。

 その顔は、なんだかんだヒジリさんに公の場で初めて勝ったからだろう、すごく晴れ晴れとしていた。

 というか、真面目な解説をしているのに顔がにやけまくっていて、なんというか微笑ましい。

 エレアとヤトちゃんが、バレないように微笑ましい眼で見ていた。

 

「大きな理由は二つ。正体を隠したほうが強くなれるから。もう一つは正体を隠したいからだ」

「前者がハクさん。後者がアリスさんだな」

「うむ。そして不思議の民(アリス)はそもそも、香の民(アロマ)に正体を知られたくないから仮面を被ったのだ」

 

 言われてみればそうだ。

 アリスさんは、アロマさんがマジカルファイターになったことでそのサポートのために仮面――正確に言えばフード――を被った。

 つまり、アリスさんにとって最も正体を知られたくないのはアロマさんであり、それは今も変わっていないということだ。

 

「そもそも、どうして不思議の民はこの大会に参加している? 他国の人間だろう、よっぽどの理由がなければ参加しないはずだ」

「仮面舞踏会の常連だから……というのもあるだろうが、それだけじゃあ参加する理由には弱いよな」

 

 アリスさんには立場があり、知名度がある。

 いくら仮面を被っているとはいえ、流石にショップ対抗戦に参加するには立場としては弱い。

 別にそれでどうこういう輩が出るわけではないが、やはりそれ以外の理由があった方が体裁は保たれるだろう。

 そして何より、アリスさん自身が参加しようとは思わないだろう。

 誰かが文句を言うから、ではない。

 自分が参加しようと思わないのだ。

 アリスさん以外に、海外のトップ層が大会に参加しないのはそういう理由である。

 

「逆に言えば、アリスさんには大会に参加する理由がある」

「十中八九、香の民のためだろう」

 

 だよなぁ。

 そして、ここまでくればアリスさんの抱えている秘密は明らかだ。

 というか、ぶっちゃけ最初からバレバレだった。

 

「ええい、こうなったら奥の手ですわ! <薔薇楼の茨姫騎士>! 参りますわよ!」

『あ、アロマそれは――!』

 

 アロマさんが宣言すると同時、<茨姫騎士>がポーズを変える。

 アシンメトリーなこの騎士は、顔の半分が仮面に覆われているのだ。

 そしてアロマさんもまた、エクスチェンジスーツを利用して仮面を手元に呼び出す。

 アリスさんが止める中、アロマさんはそれを――装着した。

 

「わたくしの名は……ブラックアロマ! これよりこの世界に混沌をもたらす、闇の化身ですわ!」

 

 ブラックアロマ。

 アロマさんのヒールファイターとしての形態。

 先程まではプリンセスアロマ――というか、通常のアロマさんとしてファイトしていたが。

 ここからは、ヒールとして戦うということだろう。

 否、それは正しくはない。

 この場合アロマさんが仮面を被ったということは――

 

「わたくしが勝てば、その正体を明かしてもらいますわ! 謎のマジカルファイターA!」

『くっ……! 解ってる、解ってるです……! 私は――』

 

 アリスさんが、焦りながらもカードをプレイする。

 セメタリーから、トドメの一撃を防ぐカウンターエフェクトを発動した。

 そして、

 

 

『私は――! 成長したアロマがかっこよすぎて上手く戦えてないです――!』

 

 

 その本音を吐き出した。

 え? あ、そういう!?

 概ね想像通りだが、若干思ってもみない理由であった。

 というか、そのせいで素で追い詰められてたのか。

 

『だってだって……アロマは昔は病弱だったです。でも、それを乗り越えて元気になったです。なのに、なのに……相性の良いデッキがロックバーンだったです!』

「あの、アリスお姉様? なんだかわたくしのパーソナリティが世界中に詳らかにされてますわ?」

 

 おろおろするアロマさん。

 とはいえ、最近アロマさんは割と色んなところで注目されている。

 プロを目指して頭角を現してきたことで、インタビューとかを受ける機会も増えたのだ。

 おそらくはダイアと同じく高校生プロになるから、と。

 その中で、アロマさんの過去はある程度明かされているのだが。

 ここまで要約された状態で、全国のお茶の間に広がるのは初めてのことだろう。

 

『ですが……最終的にこうして、立派にファイトできるようになったです! 今では、ロックバーン戦法も自分の一部に昇華して……アロマ……かっこいいです!』

「あ、ありがとうございますわ……?」

『うん、お姉ちゃんが間違ってたです。アロマのことを見守りたいけど、直接対決したらこうなると解ってたから、こんな形でしか戦えなかったです……! けどです!』

 

 そして、アリスさんは。

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『ここからは、アロマの従姉……アリス・ユースティアとして相手するです!』

「アロマさんが仮面つけたのに自分から仮面を剥いだ……!」

 

 アロマさんが仮面を付けた意味――――!

 

「お姉様……! わかりましたわ、胸を借りるつもりでこのアロマ・ユースティア……参りますわ!」

 

 あ、いや。

 まぁ、アロマさんがいいなら……いいか。

 

 なお、アリスさんが止められるトドメの一撃は一回だけだったので、その後のアロマさんのバーンでアリスさんは敗北した。

 まぁうん、いくら世界最強クラスのファイターがやる気出しても、あの状況から逆転するのは無理だよ。




というわけで勝ちました。

そういえば今回で200話です、応援ありがとうございます。
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書籍の方も間もなく発売です。
合わせてよろしくお願いします。
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