カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
大将戦、ここまでこちらが三勝しているものの、ライフ差はそこまで大きくない。
一番ライフ差を稼げた対アリスさんでも、1000点も稼げていないからだ。
かなり一方的なファイトだったけど、きっちりライフだけは削っていった辺りは流石アリスさんである。
『本日はよろしくお願いいたします。デュエリスト店長様』
「ああ、こちらこそ。仮面さん」
仮面さん。
性別と年齢の読めない、仮面を被ったスタイルのいい人だ。
カードショップ”仮面舞踏会”の店長。
底しれぬミステリアスな雰囲気の、今回の優勝候補店長が一人。
そして、俺は彼……彼女? ともかく、仮面さんに聞かなくてはならないことがある。
「なぁ、仮面さん」
『はい、いかがいたしましたか?』
「仮面さんは――どうしてカードショップを開いたんだ?」
店長は、それ相応に就くのが困難な職業だ。
それでもなお、カードショップの店長になって、カードショップを開こうと思ったら。
そこには理由が必要になる。
俺の場合は、カードに関わる職業の中で一番俺にしっくり来たから。
ミーシアさんの場合は、故郷をこの世界で形にすることと、俺への対抗心。
前者8の後者2くらいの割合だ。
キアの場合は、自分の経営の才能を最も活かせて、父親にも近づけるから。
じゃあ――仮面さんは?
『それは……困りましたね。私の理由は、とてもつまらない理由ですよ』
「申し訳ないな、でも俺は聞いておきたいんだ。ダイア……逢田トウマが言ってただろ? 最高のカードショップとは何か、って」
『ファイター仙人の、”最初の問い”ですね』
「知ってたのか」
『
なるほど。
ファイター仙人の店長推薦状は、有望な店長になるなら是非とも持っていたい推薦状だ。
ミーシアさんも、仙人の推薦状は持っている。
「俺にとって、最高のカードショップとは最高の店長がいる店だ。仙人の最初の問いの答えを探すなら、店長のことを知らないと」
『なるほど……でしたら、すでに貴方はそのための手段を理解しているはずでは?』
「まぁ、そうだな」
わざわざ、仮面さんの口から過去を詳らかにしてもらう必要はない。
仮面さんが「つまらない」というなら、その理由はとても個人的な理由なのだろう。
それを衆目に晒す必要はない。
と、いうわけで。
俺達は――
『では、イグニッションでございます』
「ああ、イグニッション!」
ファイトは開始する。
□□□□□
仮面さんのデッキ。
『
仮面をつけた人形のデッキだ。
なんとなく、その格調高い動きからギミックな残酷人形を思い出すカード群だが。
こっちは、仮面を主軸にした貴族っぽいテーマだ。
『では、続きまして<仮面舞踏会 リチュリカル・ドラマー>の招待に応じ、<仮面舞踏会 ページェント・ドール>が満を持して舞台に上がります!』
「来たか……エースモンスター!」
『どうぞ、万雷の喝采で以てお出迎えくださいませ……』
仮面さんが一礼。
同時に、仮面さんのエースモンスターである<ページェント・ドール>が姿を見せる。
仮面さんのデッキは、とにかく展開力が高い。
サモンを許すと、デッキから可能な限り<仮面舞踏会>をサモンするモンスターとかいるからな。
それを通してしまうとこちらの負けってくらい強力なカードだ。
表舞台で<ゴッド・デクラレイション>を使ったのは久々かもしれない。
「仮面の演者が、更に演者を招待し舞台を盛り上げるデッキか……店長向けのデッキだな」
『そうでしょうか? そういったデッキはパフォーマー――プロファイターの方も使用するかとおもいますが』
「そういうプロファイターは、モンスターが仮面をつけることはないよ」
アロマさんがいい例だろう。
アロマさんはヒールファイターとして戦う時は仮面をつける。
だが、試練を与えるファイターとして戦う時は仮面を付けない。
なぜか? プロファイターは目立ってなんぼの商売だからだ。
顔を隠すことは、目立つという意味で正解ではあるが。
顔を隠す理由がないなら、わざわざ隠すほどではない。
「だから、仮面をつけることが第一義の仮面さんは、プロファイターではなく店長向きってことさ」
『そうですね。貴方様のおっしゃるとおりです。仮面をつけることは、私がここにいる前提の条件ですから』
ファイトは続く。
<ページェント・ドール>が俺の<アークロード・ミカエル>を撃破。
返しのターンで、<ハイエクシード・ラファエル>が<アークロード・ミカエル>を蘇生。
盤面を整え<ページェント・ドール>と激突した。
「その仮面……似合ってるぞ! <アークロード・ミカエル>、やれ!」
『恐悦至極……! 迎え撃ってくださいませ、<ページェント・ドール>!』
――やはり。
仮面さんは、必要があって仮面を付けているのだ。
俺の言葉を嬉しそうに受け取ってくれる仮面さんを見れば解る。
であれば、必要があって仮面を付ける理由がどこにある?
顔の傷を隠したいから。
正体を隠したいから。
理由はいくらでもある。
でも、仮面さんが仮面を付けなければいけない理由は、それではないはずなのだ。
『……カウンターエフェクト! <
「でたな、とんでもないカード!」
すげぇ字面だ。
サーチして打点まで上げてるよ。
とはいえ、「仮面舞踏会」の戦闘に反応するカードなので、そのインパクトと比べて使いやすさという点ではそこまでとんでもなくはない。
まぁ、厄介なことには違いないんだが。
「ただ、こっちも流石に負けてられないんでな。カウンターエフェクト<
『……<仮面舞踏会の招待状>による打点上昇は、この戦闘にのみ適用されます!』
「ああ、透かさせてもらう! 現われろ――<極大古式聖天使 エクス・メタトロン>!』
かくして、俺のフィールドに最終エースが降臨する。
現れた<エクス・メタトロン>を見て、仮面さんが感嘆の息を漏らした。
『貴方を象徴するカード……こうして、対面すれば理解できてしまいますね。ああ、なんという威容……!』
「悪いが、仮面さんのエースは破壊させてもらう! <エクス・メタトロン>!」
『<ページェント・ドール>……!』
<メタトロン>が<ページェント・ドール>を撃破。
<ラファエル>が<リチュリカル・ドラマー>を撃破して、仮面さんの盤面は空になった。
とはいえ、決着は付けられない。
ここからが正念場だな。
「仕留めそこなったな……」
『命拾いした……と、言いたいところなのですが』
渋い顔をする俺と対照的に、どこか仮面さんは楽しげだ。
『どうやら、お見せしなくてはならないようですね。私が築き上げてきた
「……来るか」
『私のターン!』
やはり――とても、楽しそうだ。
仮面さんは、このファイトを楽しんでくれている。
それは、やはり仮面を被ることを仮面さんが肯定しているからだろう。
必要性によって仮面を被る理由というのは、基本的にネガティブな理由だ。
顔を隠す時点で、傷や正体という隠したいものを隠す用途で仮面が使われる。
だから、そういう理由で仮面をつける人間は、決して仮面にポジティブな印象を抱かないだろう。
けれど、仮面さんは違う。
必要性でもって仮面をつけていながら、仮面を望んでいる。
その理由は、なぜか。
俺は、仮面をつける理由はこの世界だと二つあるといった。
正体を隠したいから、そしてもう一つ。
『仮面こそが、私のすべて。私を司るもの。それを、こうして貴方にお見せできること、光栄に思います……来なさい!』
仮面さんが、自身の最終エースをサモンする――!
『<仮面舞踏会 ダムショウ・オリジン>!』
現れたのは、言葉なき仮面。
否、それは仮面そのものだ。
仮面だけで構成されたモンスターが、恭しく礼をしながら現れる。
ああ、やはり。
仮面さんは、
端的に言おう。
仮面さんには、仮面を付けていない状態で相性のいいカードが存在しないのである。
それこそ、ファイトロボのフィレナに相性の良いカードが存在しなかったように。
それが、仮面さんが仮面をつける理由だった。