カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている 作:暁刀魚
「あ、店長、屋台でてますよ」
第一試合開始前。
長丁場になるので、お菓子の類を調達しようということになり外に出た俺とエレア。
ちょうど、会場の外に屋台が出ていたのでそこで色々と調達することにした。
お高いけどいいんだよ、お祭りなんだから。
「ってあのマーク……ネッカのお兄さんの屋台じゃないか」
「え!? やったー! 当たり屋台です!」
エレアが目を輝かせて屋台に突撃していった。
屋台に書いてある変なマーク……なんというか、黒い炎が燃えてその上に鬼が描いてある。
ネッカ少年の兄が好んで使うマークだ。
なんでも自分は修羅だといいたいらしい。
まぁ、闇堕ちしまくるからな……。
で、なんでネッカのお兄さんがここで屋台を出しているのかと言うと……まぁ、色々あるのだ。
少し待っていると、エレアがいろんなものを買い込んでホクホク顔で帰ってきた。
「いやー、大盛況でしたよ。買えてよかったです」
「おー、焼きそばにたこ焼きにクレープにかき氷に……本当に一通りなんでもあるな……」
「ありがたいですよね」
幾つかは別の屋台で買ってきたものだが、大体はネッカのお兄さんの屋台で買ってきたものだ。
どれもこれも美味そうである。
「それで、確かネッカくんのお兄さんって屋台の料理がまずかったのが原因で闇堕ちしたことがあったんでしたっけ?」
「ああそれで、究極の屋台料理を求めて暴れる怪人になってしまったんだ。ただ、改心した今はこうして、その時身につけた屋台料理の技術を使って、美味しい屋台を出してるんだ」
「モンスターランドカーニバルにも、屋台だしてくれてましたよね」
器用ですねぇ、と自分用に買ったらしいクレープに口をつけるエレア。
美味しそうに頬を抑えていた、かわいい。
「それにしても、本当に器用ですね。前はスピリッツのヒーローショーで悪役してましたよ?」
「うっかりそのまま闇堕ちしちゃったけど、ヨシゾウ店長が頑張って何とかなったやつな」
「結果的に、悪者だったヨシゾウ店長の株が上がったそうですけど」
他にも、ネッカのお兄さんは色々なことをやっている。
町中のゴミにキレて闇堕ちした結果、ゴミごと人間を吸い込む巨大掃除機を開発したり。
レンさんの店の料理が美味しすぎて闇堕ちして、店に迷惑をかけたお詫びに店員として働きその日の売上を二倍にしたり。
「なんというか、ネッカくんのお兄さんって死ぬほど闇堕ちする面倒臭い人ですけど、その度に変なスキルを取得しますよね」
「めちゃくちゃ万能なんだよ、しかも闇堕ちする度に屋台の料理が上手く作れるようになったりするから、できることがどんどん増えていくんだな」
以前、ネッカのお兄さんが愛読している漫画が休載だらけなことにキレて闇堕ちしたことがある。
結果ネッカのお兄さんは、作者のところまで凸ってサボり癖のある作者を馬車馬の如く働かせつつアシスタントとして漫画を世に出させた。
それ自体はまぁよいことなのだが、無理をさせすぎた結果作者がダウンして事態が発覚。
ネッカ少年とご家族が菓子折りをもって謝りに行きつつ、お兄さんの闇堕ちをなんとかしたことがあった。
その後は、作者さんとお兄さんが和解。
以来、お兄さんは時折作者の家にアシスタントとして通っているそうだ。
なお、このとき身につけたスキルのおかげでお兄さんは漫画が描ける。
結構面白いのだが、作品の内容より定期的に闇落ちする作者の方が面白いと評判で、それが理由でまたお兄さんは闇堕ちした。
とまぁ、そういう感じでとにかくネッカ少年のお兄さんはいろんなことができるのだ。
器用さで言うとレンさんも色々やれるタイプだが、基本的には経営方面に才能が特化している。
ネッカ少年のお兄さんほど、マルチプレイヤーって感じではないだろう。
「そして、マルチプレイヤーだからこそ超一流には勝てなくて闇堕ちしてしまう……と」
「それ自体は、正直闇落ちするのも解らなくはない悩みだと思うよ」
何でもできてしまうからこそ、一つのことが誰よりもできるタイプに敵わない。
それこそ、ファイトの実力でネッカ少年に勝てないように。
だからお兄さんが闇堕ちしてしまうのもわからなくはないのだ。
ただ頻度が頻度だし、最終的にいい方向に転ぶけれど他人に迷惑をかけるのも事実。
「ネッカくんが言ってましたよ。誰よりも尊敬できる兄だけど、できれば近寄りたくないって」
「だろうなぁ。まぁ、俺は
「避けられてますからねぇ」
意外に思われるかもしれないが、俺とネッカ少年のお兄さんと面識はない。
いや、顔を合わせたことはあるんだが、言葉を交わしたことがないのだ。
書面でならあるんだけどな、モンスターランドカーニバルで屋台を出す時に契約書のやり取りとかしたし。
そのうえで、直接会いたくはないみたいだ。
今も、おそらく俺が屋台に突撃したら席を外されていただろう。
他にもスタッフはいると思うが、間違いなく主力はネッカのお兄さんなので、迷惑になるだけだ。
と、そんな時である。
「そりゃあ、お前みたいな奴、実力のあるダークファイターなら近づきたくないだろう」
意外な声が聞こえてきた。
振り返るとそこに立っているのは、渋い顔のおっさん。
と、その横に見知った顔。
「――デビラスキングじゃないか」
「今は逢魔カラスだ、逢魔でいい」
「じゃあ、逢魔さん。と――」
「やっほ、ミツルにぃ、エレアねぇ」
そこにいたのは、デビラスキングこと逢魔さんと、キアだった。
二人は、エレアみたいに屋台の料理を山程抱えている。
考えることは一緒ということか。
「で、近づきたくないって?」
「文字通りの意味に決まっているだろう。お前は強すぎるのだ」
「……まぁ、そうかもしれないけどさ」
そもそも俺が悪魔のカード事件に関われないのは、ダークファイターの方から避けられてるというのも一因なのは間違いない。
だから勝負を仕掛けてくるのが、木端の力の差を理解できない連中に限られるのである。
「ところで、私の記憶だと逢魔って、こっちに来た当初はミツルにぃをボコボコにしてやるって息巻いてなかった?」
「……それどころではなくなったのだ。ネオデビラスは厄介だったからな」
そういえば、確か以前アロマさんから聞いたけど、アロマさんと決着を付けた時。
デビラスキングは俺を倒してやるって言い放ったらしい。
その割には一度も逢魔さんとファイトできてないんだが。
「それに……現代での生活もな! ああくそ、半額惣菜の悪夢を思い出してしまったぞ!」
「ああ……」
何でも、今でこそ就職して収入もあるそうなのだが。
ネオデビラスに解放された直後は、食うにも困る状況だったらしい。
まぁ、それは俺とファイトしてるどころじゃないよな。
「とはいえ、今ならそんな切羽詰まった状況も存在しない。ファイトでお前を屈服させるのも悪くないかもなぁ」
「……まぁ、時間がないから無理なんだけどな」
「チッ、命拾いしたな」
いや、正直やりたいかやりたくないかで言えばやりたいんだが。
とにかく時間がないのだ。
話をしている時間ならあるが、ファイトとなるとそうもいかない。
「んじゃあミツルにぃ、ちょっといい?」
「どうしたんだ、キア」
「二人で、話がしたいの」
ふむ、と俺はエレアに視線を向ける。
エレアは少しだけすねた様子を見せつつも、頷いてくれた。
「というわけで逢魔、食べ物もって先に控室まで戻っててもらってもいい?」
「まぁ、構わんが……あまり遅れるなよ」
「大丈夫だよ、遅れちゃ不味いのはミツルにぃの方だから」
俺の方も、エレアに料理を持っていって貰う。
「じゃあ、ごゆっくりー。キアちゃんと楽しんでいってくださいね」
「それ、ミツルにぃの彼女さんが言うことじゃないと思うよ?」
キアにはセンサーが反応しないからだろうな。
どうやら、本気で妹扱いしているらしい。
さて、エレア達が控室に向かっていって、俺達は二人きりになる。
「んじゃあ、話ってなんだ?」
「まぁ、ミツルにぃも想像はできてるんでしょ?」
「キアが巻き込まれた事件と……最高のショップについてか」
「……うん、時間もないし、手短に……ね?」
さて、俺も少し暗い真面目な話をしないとな。
そう思いながら、エレアが立ち去る際に渡してくれた鳥からを食べるのだった。