カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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189 挑戦! ポリスオブレジェンド!

 決勝トーナメント第一試合。

 俺達デュエリストが相対するのは、ネオカードポリス本部支店。

 つまり、実質ネオカードポリスのエージェント達が集うショップだ。

 こういうショップは色々とあるが、決勝トーナメントに出場できたのはこのネオカードポリスだけ。

 理由は単純で、組織で固まると使うデッキの方向性が偏ったりするからだ。

 方向性が固まると対策が立てやすい。

 

 ネオカードポリスなんて、ぶっちゃけその典型だ。

 何せ彼らは、警察系のデッキしか使わないのだから。

 しかしそれでもなお、こうして決勝に上がれた理由は二つ。

 一つはこの国最大規模のエージェント組織ゆえの総合力。

 そしてもう一つが――

 

「がーはっはっは! 久しいのう草壁! 直接顔を合わせるのは勲章を授与した時以来か!」

「まさか、貴方とこうして公式の場で戦えることになるとは思いませんでしたよ。――塚部総帥」

 

 塚部ケンジ。

 ネオカードポリス総帥にして、腐敗したカードポリスを打倒した張本人。

 そして何より、この国最強クラスのエージェント。

 ヒジリさんや周防さんに並ぶツワモノファイターだ。

 そんな塚部さんと相対するは、言うまでもなく我らが刑事風ネオカードポリスの草壁こと刑事さん。

 まぁ、ネオカードポリス本部支店が決勝に上がってきた時点で、このカードは想定済みでしたよ。

 刑事さんも開始から一時間ほど精神集中をした成果で、なんとか塚部さんと正面から向かい合えている。

 

「棚札の坊主も息災そうだな! 今回はお前さんと戦えないのは残念だが、次は俺が勝つからな!」

「次も負けませんよ、塚部さん」

 

 塚部さんはとにかく豪快な人だ。

 当時、酷いことになっていたカードポリスを叩き直し、ネオカードポリスとして再出発させた英雄。

 まぁ、俺も塚部さんもトップクラスのファイターだ、面識は当然ある。

 というか、昔周防さんに紹介されたんだ。

 その時、ダイアと順番にファイトした。

 ダイアは負けたけど、俺は勝ったんだよな。

 いやぁとにかく強かった。

 強いのもそうだけど、豪快で威圧感がすごいんだよな。

 目の前に立つと萎縮してしまうし、萎縮したら一瞬で持っていかれる。

 恐ろしいファイターだ。

 

「では行くとしようか……草壁!」

「え、ええ……!」

 

 気圧されている、けど気合だ、頑張れ刑事さん!

 

「イグニッション!」

 

 かくして、決勝トーナメント第一戦、先鋒戦がはじまる。

 つまり――決勝トーナメントにおける最初の試合が始まったのだ。

 

 

 □□□□□

 

 

 実をいうと、塚部さんのデッキに対して刑事さんのデッキは相性がいい。

 塚部さんのデッキはモンスター破壊に特化したビートダウンデッキなのだが、対する刑事さんは展開力が高くリカバリーが利くのだ。

 だからこそ塚部さんと刑事さんの間に実力差があっても。

 刑事さんが萎縮していても、一方的なファイトにならずに済むのだ。

 

 逆に言えば、刑事さんは追い詰められているということだが。

 

「……切りがねぇですぜ、これは!」

「ははは! 素が出てきたな。草壁はもう少しぶっきらぼうな方がらしいだろ!」

「勘弁してくださいよ、総帥!」

 

 そもそも追い詰められる原因は、二人の対戦が初めてじゃないということ。

 先程の会話で勲章がどうのこうのと出たが、以前刑事さんはネッカ少年の件で活躍に対する勲章が授与されている。

 このとき、刑事さんは塚部さんとファイトしているのだ。

 ちなみにネッカ少年もファイトした。

 どちらも塚部さんが勝ったが。

 「若いもんにはまだまだ負けん」だそうで。

 

「ちぃ、俺は<ポリスペットアニマル・ターンドッグ>のエフェクトを使用!」

「おおっと、そいつは()()()()ぜ。<ポリスライクメタル・パトロールレイル>のエフェクト!」

「前回より厄介度が増してますぜ、これぁ!」

 

 刑事さんのモンスターがエフェクトを発動しようとすると、塚部さんがそれを防ぐ。

 何気ないやり取りだが、塚部さんの凄い所は刑事さんのデッキの動かし方を理解したうえで的確に防いだところだ。

 無論、俺だって刑事さんのデッキは知っている。

 だが塚部さんはどうだ?

 超巨大組織のトップが、その一員のデッキをすべて覚えられるか?

 塚部さんならできる。

 少なくとも、本人の前でファイトしたことのあるデッキはすべて記憶しているだろう。

 トップファイターなら誰しもある程度はできることだが。

 塚部さんはその中でも特に、記憶力が優れているという話。

 

「だが、鋭さは確かに増してるぜ、草壁! お前さんのデッキの牙は、可愛さに比例して磨かれていくなぁ!」

「へっ、そう言われると光栄ですがね……もうちっと加減ってもんを……」

「そいつはできねぇ相談だ! ここが神聖なファイトの場とくれば、なおさらな!」

 

 気遣いの人。

 それが塚部さんだ。

 きっと塚部さんは、俺とのファイトのことも覚えてくれていることだろう。

 俺だって当然覚えているが、あの楽しかったファイトを思い出し、こうして言葉をかけてくれることのなんと嬉しいことか。

 まさしくカリスマとは、彼のことを指す言葉だ。

 そのうえで――

 

「刑事さん! 諦めるな! まだファイトは終わってない!」

「って言われてもよぉ!」

「くく、刑事さん……か。実にお前さんらしい呼ばれ方だな」

「大変光栄ですがね……! 流石に総帥の前だと荷が重い!」

 

 俺は刑事さんにそう呼びかけた。

 ()()()()()

 俺がこのファイトでするべきことは、これでおしまいだ。

 

「だがどうかな……? たしかその呼び名は、昔からお前さんが刑事みてぇだからって付けられたあだ名だろう?」

「……まぁ、そうっすね。俺ぁ総帥にあこがれて、店長と出会った頃からネオカードポリスを目指してたんすから」

「ならぁよ! ここで簡単に諦めていいのかい? 憧れを前に、足を止めていいのかい!?」

「……!」

 

 その言葉に、刑事さんの目が見開かれる。

 先程まで刑事さんは諦めかけていた。

 しかしそこに、俺の一言と塚部さんの言葉が待ったをかけたのだ。

 ()()()()()()()

 

 ――結局、刑事さんと塚部さんの間には相応の実力差がある。

 俺ですら勝率はおそらく五分五分か若干こちらが上であろう程度の相手。

 刑事さんには、まだ荷が重い相手だ。

 だが、塚部さんは刑事さんにとって憧れの相手であり、塚部さんは刑事さんを導く存在である。

 だからこそ、追い詰められた状況できっかけがあれば、塚部さんは発破をかけると思った。

 俺が刑事さんと呼びかけることで、塚部さんが刑事さんに声を掛ける、と。

 

 塚部さんの視線がこちらを向いて、「礼には及ばねぇ」と笑みを浮かべる。

 対する俺も、「悪いが利用させてもらう」と笑みを浮かべた。

 ハッキリ言って、塚部さんの人間性を利用するような一手だ。

 だが、()()()()()()だろう。

 塚部さんにとっては、俺すら成長が喜ばしい若造にすぎないのだから。

 

「刑事さん! やっちまえ!」

「ええい、礼は言わねぇぞ店長! やってやりますよ、総帥! 俺があのときから更に成長してるってことを、見せてやりまさぁ!」

「いいぞ、その意気だ! かかってこい草壁!」

 

 かくして、そこから刑事さんの反撃が始まる。

 失いかけていた牙は鋭さを取り戻し、もふもふなポリスモンスター達の可愛さは更に一段上へとランクアップ。

 猛攻をしかけ、塚部さんを追い詰める。

 

 そして、結果は――

 

「草壁、お前さんは強い。その若さで、勲章を授与されるのはお前さんの強さの証だ」

「総帥……」

「…………だが!」

 

 塚部さんの目が開かれる。

 くわっ! と、威圧感が溢れ出す。

 

 

「勝つのは俺だ! 総帥として、部下に後れを取るようなマネはできん!」

 

 

 勝ったのは、塚部さんだった。

 今回は再戦で、刑事さんも奮起した。

 なら、勝つのは刑事さんの流れじゃないか、と思うかもしれないが。

 甘い、最強ファイターってのは、それくらいの逆境はなんとかしてしまうものなのだ。

 俺がアロマさんとの最終ファイトで、きっちり勝利してみせたように。

 

「ぐ、あああああああ!」

 

 刑事さんが、とどめを刺されて吹き飛ぶ。

 勝者は塚部さん、それが明確となり歓声が上がった。

 

「いいファイトだったぜ、草壁」

「ありがとうございやす、総帥」

 

 最後に、倒れた草壁さんを塚部さんが引き起こし、歓声が拍手に変わる。

 実にいいファイトだった。

 そして、草壁さんは確かに負けたけれど、決してただ負けただけじゃない。

 現在、デュエリストとネオカードポリス本部支店のライフ差は1000。

 あちらが1000リードしている形なわけだが――刑事さんは敗北の傷をそれだけに抑えてみせたのだ。

 お互いの強さを考えれば、これはまさに大金星。

 

 塚部さんの言う通り、このファイトは――まさしく、”いいファイト”だったと言えるだろう。

 さぁ、後は俺達が頑張る番だ!

 




決勝トーナメントの一回戦と準決勝は、それぞれ決勝に登場しないメンバーの個人回になります。
具体的には店長以外の男性陣。
その関係で勢いよくさぁ次だ、って言ってますが次回の冒頭でネオカードポリス戦は終わります。
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