カードゲームで世界が滅ぶ世界に転生してカードショップを開店したら、周囲から前作主人公だと思われている   作:暁刀魚

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192 様子のおかしいスピリッツ

 一日目、最後の試合。

 カードショップドリームランドと、スピリッツ事業監査部特命チーム。

 どちらも、決勝に駒を進めるだけあって、優秀なチームだ。

 特にドリームランドは、トッププロのシズカさんを有する。

 その実力は誰もが知る通り、トップの名にふさわしいもの。

 だからこそ、

 

『嘘でしょ……この私、水面シズカが……負けた?』

 

 その敗北は、観客に衝撃を与えることは――そんなになかった。

 

 第四試合先鋒戦、シズカさんが出場。

 対するスピリッツ監査部は、スーツ姿のキチっとした印象を覚える男性。

 だが同時に、どこか闇に染まったような雰囲気も醸し出していた。

 で、シズカさんが負けた。

 ぶっちゃけスピリッツの様子がおかしいのは、観客もなんとなく察している。

 そしてシズカさんは、そういう様子の怪しいやつに突っ込んでいって負けることが多い。

 かませ……ではないのだ。

 むしろ、シズカさんをカマセにしてきそうな強いファイター相手には勝つことが多いのだから。

 

「シズ姐ってなんかこう、調子に乗って敵と戦うと負けるけど、それを見て油断した幹部相手には大物食いするタイプですよね」

「肝心な時しか強くないのだ!」

 

 うーん、エレアとレンさんが酷いこと言ってる。

 けど、否定できない。

 実際負けちゃったし……。

 

「それにしても、スピリッツのデッキって……いわゆる”レジェンドカード”デッキよね」

 

 んで、ヤトちゃんが本題に戻る。

 スピリッツ事業監査部が使うデッキの話だ。

 基本的に、スピリッツのスタッフはある一定以上の役職につくと、使用するデッキが会社から支給される。

 それらは、いわゆる”レジェンドカード”と呼ばれるカードを中心としたデッキだ。

 

 レジェンドカードが何かと言われれば、いわゆるカードゲームの初期を支えたカードである。

 遊戯王ならブルーアイズやレッドアイズ。

 バトスピならジークヴルム系列。

 デュエマならボルシャック・ドラゴン……え? ボルメテウスじゃないかって? まぁ、どっちもだと思う。

 

 とにかく、そういうレジェンドカードを中心に据えたデッキを使うのだ。

 そういうデッキは割とよくあるからな。

 遊戯さんのデッキとか、アレカードごとに何分割できるんだ?

 

「スピリッツは、それを社風にしているのだ。スピリッツといえばレジェンドカード。そういうイメージを作っているのだな」

「そのために、使い慣れないデッキを使いこなすんだから。すげーよな」

 

 カードの相性ってやつがあるのに、イメージのために慣れないデッキを使う。

 中々大変な社風だ。

 とはいえレジェンドカードにも色々ある。

 その中から、比較的相性の良いカードをさがせばいいのだから、やってやれないことはないだろう。

 まぁ、今はそれどころではないのだが。

 

「なんというかこう、全体的に闇に染まってますね」

「だなぁ」

 

 アレだ、パンドラ風のブラマジみたいな。

 明らかに闇っぽくなってる絵違いカードにカードがすり替わっている。

 一応、デッキそのものは通常のレジェンドカードデッキなわけだが。

 

「カード相性が格段に上がってる。本戦までの比じゃないぞ」

「そのギャップに、シズ姐はやられちゃったんですね」

 

 エレアと二人で、今のスピリッツの厄介さをまとめる。

 これまでのスピリッツ監査部は、たしかに強かった。

 だが同時に、どこかプレイングにぎこちなさがあったのだ。

 相性の違いが、彼らを苦しめていた。

 しかし今はそれがない。

 完璧にデッキを使いこなしている。

 シズカさんに、正面から打ち勝てるくらいに。

 

「こりゃあ強敵だぞ……ミーシアさん、どう攻略する?」

 

 何にしても、俺達はそれを固唾をのんで見守るしかない。

 試合は、続いていく。

 

 ――第二試合、次鋒はクローだ。

 ミーシアさん、相手を警戒して最大戦力二人を前に並べたな?

 クローは、シズカさんの敗戦を受けかなり慎重に戦いを進めた。

 しかしそれが結果として、悪い方向に転がってしまったのだろう。

 クローの持ち味は大胆さ、慎重さが強みなのはネッカだ。

 結果、打開するための一手が打てず、ジリジリと敗北。

 流れが悪いな。

 

 ここで更に悪かったのが、中堅にフィレナを配置してしまったことだろう。

 ファイトロボであるフィレナは、安定したプレイングが持ち味。

 ただそれは、相手が強ければジリ貧に陥ってしまうことを意味する。

 副将のアキラくんも同じようにジリジリと追い詰められ、大将戦。

 リードを許したまま、ミーシアさんと良空さんの対決だ。

 

 とはいえ、これが最悪かと言われるとそうではない。

 四連敗を喫したとはいえ、ライフ差はそこまで大きくない。

 むしろライフ差1200と、逆転の余地を残した状況だ。

 おそらくこれは次善の策。

 正面から勝てるのであれば問題ない、仮に勝てなくてもライフ差の消耗を極力抑えて大将戦で逆転を狙う。

 実に堅実な戦術だ。

 

 問題は、その上で大将戦に勝利し、ライフを削りきれるかということ。

 

『――ターンエンド、どこからでも来て』

 

 そして先行を取ったミーシアさん。

 フィールドには二体のエース。

 <ハイドドリーミースター・ムーングロウデビル>と<シャイニードリーミースター・サンライズ>。

 どちらも、ミーシアさんの最強カードだ。

 対する良空さんは――

 

『……ドリームランド店長、ミーシアさん』

『……何?』

『貴方は、この世界で最も輝く星がなんであるか、知っていますか?』

 

 ふと、そんなことを口にする。

 その様子は、以前であった良空さんとは似ても似つかない。

 怪しい雰囲気を醸し出していた。

 対するミーシアさんは――

 

『――太陽、この星から見える最も輝ける星。そして何より……私を照らしてくれるモノ』

 

 力強く、<サンライズ>を指さして言った。

 ミーシアさんにとって太陽は、月の下で眠るしかなかった自分を連れ出してくれた存在。

 つまり、ダイアだ。

 

『ええ、ええそうでしょうね……ですが、事実は違います。太陽とは、所詮この星から見ることのできる最も大きな星に過ぎない』

『何がいいたいの……?』

『太陽を上回る大きさの惑星なら、この銀河に山程あるでしょう?』

 

 狂ったように、それこそ三日月のような笑みを浮かべる良空さん。

 対してミーシアさんは、その動かない表情を少しだけ不快そうに歪めている。

 看過できないことだからだ。

 

『なのに、愚かにも辺境の惑星で呑気に暮らすあなた達は、大して大きくもないちっぽけな星を輝いていると抜かす……実に不愉快です』

『不愉快なのは、こっち』

『おやおや、では教育してあげなければいけませんね』

 

 言いながら、良空さんはモンスターをサモンする。

 現れるのは――

 

『<星道の魔女(トゥインクルスター・ウィッチ)>、真実を彼女に教えて差し上げましょう』

 

 <星道の魔女>! 誰もがよく知るレジェンドカードの一枚であり――以前あった時にも、良空さんはこのカードを所有していた。

 そりゃそうだ、良空さんに支給された社用デッキは、<星道の魔女>を中心としたデッキなのだから。

 だが、その様子は俺達がよく知る<星道の魔女>とは全く異なる。

 

「……宇宙人の、<星道の魔女>ですか?」

「そんな感じだな」

 

 エレアの言葉に、俺は同意する。

 その姿は、なんとなく俺達のよく知る宇宙人――イグニッション星人ズと似通った特徴があった。

 あのはた迷惑侵略者星人の近縁ともなれば、そりゃあ悪役ムーブも納得だ。

 ……しまらないなぁ。

 

『さぁ、これこそがこの星における、輝ける一番星! あなた達がひれ伏すべき、真なる銀河の王者の名!』

 

 そして、良空さんがそれを呼び出す。

 

 

『サモン! <星道の(トゥインクルスター・)新星皇帝(ダークマター・スーパーノヴァ)>!』

 

 

 銀河のようなマントを身にまとった、魔女と皇帝を一つにしたようなモンスター!

 荘厳な星の誕生を意味するそのモンスターは、今。

 サモンと同時に、ミーシアさんの二大エースを粉砕する!

 

『そんな、私のエースが……どうして!?』

『皇帝の前に、チンケな塵芥の存在は許されない! ひれ伏すのです、この世で最も輝ける星の前に!』

『く、ああああああっ!』

 

 かくして、良空さんのモンスターが、きっちりミーシアさんの残ったライフを削り切る。

 完勝。

 まさしくそう言っていい内容で、スピリッツが第四試合に勝利した。




ホビアニあるある、悪役の販促に負ける展開!
悪役の販促は店長よりシズカさんが被害を被る事が多いです。

そして書籍版の第二巻刊行が決定しました。
二巻ってことはつまりあれですよ、あれ。
こう、ち……。
ともあれ、一巻も出てますので合わせてよろしくお願いします!
【Amazon】様
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